首都圏マンション価格の上昇は続くのか2015.07.25

首都圏マンション価格の上昇は続くのか2015.07.25

景気回復の兆しを受けて、消費者のマンションの購入意欲が高まっている。中でも首都圏の好立地物件が人気で、販売価格は上昇傾向。活発化してきた国内マンション市場と大手デベロッパーの最新動向を、「SPEEDA」のデータも活用してリポートする。

Yo Yamadori

首都圏マンション価格の上昇は続くのか

マンション供給戸数は減少の方向へ

景況感の改善や株価上昇による資産効果などを背景に、消費者の購入意欲は引き続き旺盛で、都心の好立地物件を中心に販売価格は上昇基調で推移している。都心回帰の機運の高まりを受けて、東京都心部や湾岸部といった人気エリアで大型の再開発物件が計画されているが、高騰するマンション価格の動向が懸念されるところだ。

不動産経済研究所によると、首都圏マンション供給戸数の推移は、バブル崩壊後のデフレで企業が用地を放出したことから、1994年から2007年にかけては6万〜10万戸の間で推移、主には8万戸水準が続いた。その後、リーマンショックを境に、2013年の5万戸台を除いて4万戸水準に抑制がかかっている。

2014年年間(1〜12月)の発売戸数は4万4913戸、全国の54%を占め2年連続50%を上回った。2015年の発売見込みでは前年比0.2%増の4万5000戸、これは消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった2013年の同12.2%の増加から、同21%減の反動減となった2014年とほぼ同じ水準となる。足元の2015年上半期の前年同期比は7.1%減とやや下振れている。

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供給戸数上位4社でトップを争う

マンション発売戸数では、三井不動産レジデンシャル、野村不動産ホールディングス、三菱地所レジデンス、住友不動産の4社が例年上位を占め、2014年では東京23区や駅前といった好立地の物件を中心に販売する住友不動産が始めてトップとなった。

また、2015年度の計上戸数計画をみると、住友不動産が6000戸(対前年度305戸減)、三井不動産レジデンスが4500戸(同358戸減)、三菱地所が4100戸(同503戸減)、野村不動産が5650戸(同512戸減)と各社抑えた供給戸数の水準となっている。

人気の高い湾岸エリアでは開発・分譲が進む。住友不動産の「DEUX TOURS(ドゥ・トゥール)」、三菱地所の「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」、鹿島建設を幹事会社とする5社JVマンション「勝どきザ・タワー」などが分譲中である。

なお、三井不動産では2015年度以降「パークホームズ豊洲 ザ レジデンス」「パークタワー晴海」など大規模プロジェクトが控えており、2015年3月末時点で再開発事業を含めて計画段階が約2万3000戸ある。

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価格は上昇傾向続く

マンションの平均購入価格の推移をみてみる。不動産経済研究所によると、リーマンショック後の2010年度に持ち直し、その後は上昇傾向が続いている。特に、2014年に入り5000万円台に乗る月が増加、2015年6月には5815万円に達している。

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住宅購入に大きな影響をおよぼす消費税率の8%から10%への引き上げは、2017年4月へと1年半先延ばしとなった。これにより、当初の2015年10月の消費増税を想定した駆け込み需要はなくなり、供給量は再調整の局面となった。

一般に不動産は、需要と供給の関係で決まることから、マンション価格も例外ではない。2015年の上位4社の計画を見る限り、2014年度と同程度もしくは下回る供給量となる可能性が高い。

一方では、かねてより建築費と地価の上昇が続いている。東京圏の2015年の地価公示では、住宅地が前年比で0.5%上昇、前年は同0.7%上昇だったことから、上昇率はやや鈍化したものの2年連続の上昇となっている。

また、東京の集合住宅(SRC)の建設費指数は、建設物価調査会データによると、直近3カ年の年平均伸び率は5%で上昇をみせており、特に2014年は前年比8.9%増と、過去10年間で最大の伸びとなっている。

マンションデベロッパー各社は、都心の好立地エリアを厳選、供給を調整しつつ高価格帯のマンション供給を手がけている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、湾岸部をはじめ国家戦略特区区域を中心とした住宅・商業・ビジネス集積地域での開発エリアなどを中心に、資産価値の上昇を期待する高額マンションに需要が高まると予想される。

また、海外からの不動産投資も大きく膨らんでおり、2014年の海外企業による日本の不動産取得額は1兆円近くとなり、前年の約3倍に増加、過去最高額となっている。海外からの投資意欲も企業、個人ともに旺盛であることも相場上昇のひとつの背景とも言える。

こうした中、2015年上期最大の注目マンションとされる東京建物などの「Brillia Towers 目黒」の坪単価は600万円と、破格の物件も登場した。このほか、2014年6月から売り出された駅直結のタワーマンションという好立地の野村不動産「プラウドタワー立川」は、坪単価340万円超えにもかかわらず、2カ月前後で完売している。

高まる購入のハードル、近づく限界点

このような首都圏のマンション価格の上昇を背景に、年収倍率でも上昇がみられ、一般の給与所得者層が購入可能な価格の上限に近づいている。住宅金融支援機構の調査による年収倍率(フラット35利用者の所要資金を世帯年収で除したものの総和をサンプル数で除したもの)の推移をみると、首都圏では2010年に6倍を超え、2013年で6.5倍、2014年では6.7倍に達している。東京カンテイによると、2013年で首都圏が8.8倍、東京都が9.79倍という算出結果もある。

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年収倍率の目安としては、国の策定した年収の5倍程度が購入可能な値として一般的に用いられている。今後もまだ、このような情勢が継続すれば、需給バランスもさることながら、世帯年収とマンション価格との乖離(かいり)が膨らむ可能性も懸念される。

従って、一辺倒な上昇は現実的とは言えないかもしれない。ただし、「年収倍率」は住宅価格や年収に関してはさまざまなデータがあり、抽出ケースにより大きく差異がみられる。このため、本指標は、不動産関係者でも意見が分かれることを補足しておく。

供給大手の業績

最後に、大手3社を中心に業績についてみておこう。

マンションデベロッパー大手5社の2015年3月期の営業利益は前年度比2.1%増の6435億円、2期連続高水準となっている。ただし、2015年3月期は、三井不動産、住友不動産、東急不動産ホールディングスの3社が営業増益となった一方、三菱地所、野村不動産ホールディングスの2社が営業減益となり、2014年3月期では5社すべて営業増益であったことからすると落差がある。

大手5社の売上高規模は、三井不動産の1.5兆円、三菱地所の1.1兆円に対し、続く住友不動産の約8000億円、東急不動産ホールディングスの7000億円、野村不動産ホールディングスの5000億円と後続を圧倒している。

面的大規模都市開発の三井不動産、丸の内地区開発の三菱地所、東京都心部開発の住友不動産といった独自の展開でオフィス事業などにも強みを持つ。2016年3月期予想では、三井不動産、住友不動産、野村不動産ホールディングスの3社すべてで増収増益となり、営業収益、営業利益ともに過去最高となる模様。これに対し、三菱地所は前期のビル事業と生活産業不動産事業で大型物件を売却した影響から減収減益を予想する。

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三井不動産は、「パークマンション」など7つのパークブランドを展開、高額物件(MANSION COURT)が28%、大規模物件(TOWER CITY)が24%と両者で5割を占める。個人向けが7割を占めるが、投資家向けも3割と収益に貢献している。

2013年に国内販売戸数で1位となった同社であるが、2015年3月期のマンション分譲の営業収益は前期比16%減の2495億円で、2016年3月期は2620億円を見込む。分譲事業の営業利益は回復基調にあり、期末完成在庫も減少していることから、収益力が安定してきている。東京都心の大規模開発を進めるほか、海外富裕層の需要も取り込むため、都心エリアでハイエンド物件を開発する方針である。

住友不動産の特徴は、東京都心部で自社物件を多数保有しており、特に地価の変動率が大きい3区(千代田区、中央区、港区)に集中していることが挙げられる。2015年3月期のマンション事業の営業収益は前期比13%増の2642億円、2016年3月期は2900億円を見込む。立地や外観・内部仕様の好条件により高めの販売単価設定を可能にしており、営業利益率は17%を確保、同業界で10%以下が多い中、高収益体質を維持している。

2015年3月期では、営業収益、営業利益はともに過去最高を更新、マンションの新規発売戸数は初めて6000戸を突破、契約戸数も3期連続で5000戸を上回り高水準となった。

三菱地所レジデンスは、2011年1月に三菱地所と三菱地所リアルエステートサービス、藤和不動産の住宅分譲事業が統合してスタート。三菱地所は、三菱グループの中核企業のひとつで、日本の一等地、東京・丸の内周辺に多くの不動産物件を所有する。

丸の内には約100棟のオフィスビルが林立、そのうち約3分の1を保有している。同社分譲マンションは、藤和不動産の統合により都心に加え郊外へも展開しており、首都圏7割、地方3割の状況。マンションブランド「ザ・パークハウス」を年間5000~5500戸程度でコンスタントに供給、粗利益率20%を基本戦略としている。

2015年3月期のマンション事業の営業収益は、前期比17%減の2394億円、2016年3月期には2230億円を見込む。

最後に都心5区を中心にマンション価格は上昇傾向が続き、一部の供給物件では、中国人などの海外投資家が全戸数の半分以上を占める物件も出始めている。海外から見ると日本の不動産は割安感があるかもしれないが、実需という観点からみるとそろそろ上限に近づいている印象である。今後は全体の指標での動向ではみえない、個別の物件特性による価格の二極化がさらに進むものと考えられる。