GDPを構成する付加価値とは何か2015.08.05

GDPを構成する付加価値とは何か2015.08.05

これまでのGDPリポートでは需要側について解説してきた。需要側というのは財やサービスを消費する側ということである。消費された財やサービスがあるということは、その財やサービスを供給する者がいるということでもある。GDPが特定の期間(3カ月や1年)に消費された財やサービスの合計ということは、一方で供給された財やサービスの合計ということもできる。この供給された財やサービスを付加価値の点から推計したものがGDP(供給側)である。今回は、前半でGDP(供給側)の根幹をなす付加価値について考えたい。後半では、その付加価値の概念にもとづいてGDPを分解し、日本のGDPの供給側の状況について、「SPEEDA」も活用してみてみたい。

Tomoki Sasaki

GDPを構成する付加価値とは何か

付加価値とは何か

付加価値という文字を見て何をイメージするだろうか。

普段、付加価値という文言は慣用的な使われ方をしている。たとえば、付加価値の高い製品を開発するとか、付加価値の高い仕事を目指すという、ほかよりもプラスアルファ高い価値を示していることが多い。

ただし、マクロ経済では付加価値とはもっと現実的な見方をされている。 

販売した時点の価値から仕入れた時点の価値を差し引いたもの

たとえば、身近な店頭で購入した果物と、産地で生産者から購入した果物という状況を考えてみたい。これら2種類の果物は、マクロ経済では同じ価値とはみなされない。

grp01_付加価値の概念 (2)

産地で生産された直後の果物は、どちらも生産者が価値を生み出したものとして同じものである。しかし、流通経路を経て店頭に並んだものを購入した場合は、消費時点では同じ果物であったとしても、生産者が生み出した価値と、流通業界が生み出した価値の合計になる。

この流通業界が生み出した価値こそが、流通業界が生産した付加価値である。また、生産者が生み出した価値も新たに生み出したものであり、付加価値といえる。

仮に、今回の例として取り上げた、生産者と流通の間に加工業者を入れて考えても、付加価値の考え方は変わらない。生産者の付加価値を加工業者が仕入れ、加工業者が付加価値を新たに生み出して流通に引き継ぐ。流通は、生産者による付加価値と、加工業者による付加価値の合計を運び、流通業者の付加価値を加えたうえで、消費者に販売するのである。

ここでの考え方は、付加価値のアプローチでも、控除法と呼ばれる付加価値の考え方を理解するためにはわかりやすい。つまり、付加価値とは、販売した時点での価値から、その商品や、原料を仕入れた時点での価値を差し引いたものという考え方である。 

付加価値の生産で追加されたものとは

流通業者の生み出した付加価値は、いったい何が追加されたものだろうか。先ほどの例をもとに商品を運ぶために必要なものを考えてみる。

人手はもちろんのこと、トラックなどの輸送手段が挙げられる。また輸送手段において、輸入品や長距離輸送であれば船舶や鉄道も必要だろう。さらに、手段だけではなくターミナルや販売するための店頭なども考えられる。

流通業者が生み出す付加価値とは、これらにかかった費用が、もとの生産者の価値に上乗せされているものと考えることができる。また、流通業を営む法人であれば、これらの費用に加えて、企業としての利益や法人税を上乗せして販売することになる。

ここでも、加工業者の生み出す付加価値についての考え方は流通業者同じで、加工に関する人手や工場といった手段などにかかる費用の合計が付加価値ということになる。

このような考え方にもとづくのが、加算法と呼ばれる付加価値のもうひとつのアプローチである。

前述した控除法は、売上高から原材料費などの仕入れを差し引いた粗利益に近い考え方である。また加算法は、その粗利益を費用項目や利益などに分解したものという見方ができる。いずれのアプローチにしても、付加価値の考え方は同じものを別の視点で捉えたものであることがわかる。

grp02_付加価値の位置づけ

付加価値を合計するとGDPになる

供給側から見たGDPの説明としては「国内経済活動における付加価値総額を市場価格によって評価したもの」とされている。では、なぜGDPは付加価値の合計なのだろうか。
grp03_付加価値の合計

GDPは国の経済規模を見たり、経済動向を把握したりするために設計されている。そのためには需要側だけではなく、供給側についても調査が必要だろう。

仮に国の経済が1次生産者のみの供給で構成されているようであれば、国の経済規模は売上高の集計で可能であろう。しかし経済が高度化し、加工業や流通、サービスが多層化すると、売上高を合計した場合、2重、3重の価値を集計することになり、需要側との消費と整合性が取れなくなる。

その点、控除方式の考え方で見てみると、付加価値を合計した場合、各生産段階のすべてを調査対象とできるうえに、付加価値の合計は消費者が最終的に財やサービスを消費する場合の価格と整合することがわかる。

需要側のGDPは各消費主体が対象期間に消費した財やサービスの合計として示されていた。そのため、付加価値を合計した供給側のGDPと、需要側のGDPは等しくなることがわかる。

産業別の付加価値合計は産業構造を見ることができる

grp04_構成比

GDPが経済活動から発生した付加価値の合計と考えた場合、付加価値を産業別に分類すると国の産業構造を見ることができる。このように集計されたGDPは供給側でも生産側と呼ばれる。

2013年度のデータを見ると、この中で最も規模が大きいのが製造業で21%を占め、続くサービス業が19%、卸・小売が13%、不動産11%となっており、以上が10%以上の比率を占めている事業部門となっている。製造業の中でも最も規模が大きいのは電気機械でGDPの5%の構成比である。

比較対象として、日本の1980年度のデータを見てみる。途中でGDPの統計基準が変更されたり、GDPの規模が約2倍に拡大しているなど、単純に比較することは難しいが、1980年度では製造業の比率が約30%を占め、サービス業が15%程度だったことと比較しても、日本経済が製造業からサービス業にシフトしていることがわかる。

 

加算法の考え方によるGDPの分類で付加価値の分配がわかる

grp05_GDPの構成比 (2)

加算法のところで説明した、付加価値が人件費や減価償却費、税金、利益で構成されるという考え方は、これらについて分類することで、供給された付加価値がどのように分配されたかがわかる。このようなGDPの集計は供給側でも分配側と呼ばれる。

実際に公表されている供給側のGDP内訳として、付加価値合計は雇用者報酬、営業余剰・混合所得、固定資産減耗、生産・輸入品に課される税および補助金(控除)に分類されている。

供給側の最大項目は雇用者報酬で、2013年度ではGDPの51%を占めている。これは供給した付加価値のうち約半分は人件費ということである。次に、営業余剰・混合所得が同20%、固定資産減耗が21%とほぼ2割ずつである。

 

GDPの三面を比較することで経済のバランスがわかる

grp06_三面等価 (2)

これまで出てきたGDPの分類方法である、需要側、生産側、分配側はいずれもGDPを需要側、供給側それぞれの面から見たものであり、最終的な合計はGDPであることに変わりはない。このことを三面等価と呼んでいる。

三面等価そのものは、統計上の不突合や公表されているデータの基準がそろえられないなどの理由で正確に観測することは難しいが、三面を概観することで把握できることもある。

たとえば、需要側の総資本形成と配分側の固定資本減耗とを比較することで、設備投資や住宅投資などが活発かどうかを見ることができる。

また、生産された付加価値から固定資本減耗を除いて分配された雇用者報酬と営業余剰・混合所得は、生産、輸入にかかる税などを加えて、需要側の民間消費支出と政府消費支出の原資となる。

これらを見ることで、日本における、需要と供給のバランスを観測することができる。

現在、総資本形成と固定資本減耗は均衡している。金融危機などの需要減に対応して、総資本形成が固定資本減耗を下回る状態になった時期もあったが、そこから回復している。

また、近年の好調な企業業績により営業余剰などは拡大することが想定されているが、一方で雇用者報酬への分配が拡大しているかどうかが、今後の注目点になるだろう。

また、消費税の増税は雇用者報酬から民間消費支出への移転についてマイナスになる反面、政府消費支出の増加とのバランスが注目される。

 

GDPは需要側と供給側の両面で見る必要がある

今回はGDPの中でも供給側に注目した。供給側で重要なのは付加価値の考え方である。

GDPは日本経済が新しく生み出した価値の合計ということができる。GDPを見る場合には消費の実態を示す需要側が重要である一方、その反対側に位置する供給側も見る必要がある。