現状総点検 #1 株価と中国2015.10.07

現状総点検 #1 株価と中国2015.10.07

ここ数か月で、世界経済の先行きへの懸念が急速に増している。そして、その懸念の拡大を受け、日本経済の先行きに関しても、懸念が増している。
そこで、SPEEDA総研では、さまざまなデータを用いて、今後数回にわたって現状を検証する。さらに、過去起こったことも検証し、未来にどんなことが起こるか、もしくは何を特に注意してみておくべきかなど、掘り下げられることに関しては掘り下げていきたい。
一回目の今回は、全体感を理解するために世界の株価推移を見た後に、中国の状況を見る。

Jun Kato

現状総点検 #1 株価と中国

株価の変化:中国の上下が大きく、年初来プラスは日本のみ

株価は、将来への期待を敏感に織り込み、変化する。「景気は気から」という言葉もあるが、株価が気を表す部分もあれば、気自体に影響を与える部分もある。敏感に織り込み変化するため、過剰に反応している可能性はあるものの、まず年初から現在まで、株価がどのように変化してきたかを見てみる。
grp01_世界の主要株価指数の変化

すでに多く報道されているが、中国本土株(上海総合指数)の変化が大きいことが、一目瞭然だ。6月12日には年始から60%上昇したが、一カ月も経たない7月8日にはピークから32%下落し、年初からの上昇率は8%まで縮小した。その後いったん持ち直したものの8月半ばから再度下落が始まり、現在は、年初からはマイナス圏にまでなっている。なお、その間にどのようなイベントがあったかは下記記事がわかりやすい。

津上俊哉は警告する。「中国問題は“対岸の火事”ではない」

8月半ばからの下落は、中国のみならず、世界全体でも起こっている。結果として、10月5日(月)時点の終値では、年初来でリターンがプラスとなっている株価指数は、取り上げた中では日本株(TOPIX)だけとなっている。なお、中国株が再度大幅な下落に転じた前日の8月17日からのリターンを見てみると、上海総合指数が-24%と最大で、次にTOPIXが-14%と続いている。MSCI World(世界先進国指数)、S&P 500(米国指数)、MSCI EU(欧州先進国指数)はいずれも-7~-9%の下落に留まり、先行して下落していたMSCI EM(世界新興国指数)に関しては-6%にとどまっている。

GDP:二次産業から三次産業に最大比率がスイッチ

一番変動が大きい中国の状況について深堀していく。まずは、中国全体の状況を見るために、信ぴょう性について議論があることは承知しているが、GDPから見ていく。

中国の名目GDPは2014年に63.6兆元となっている。主要国・地域のGDPに関して、2014年1~12月の各月末の平均為替レートを用いてドル換算して計算すると、図のようになる。
grp02_名目GDP

一次産業(農業)・二次産業(工業)・三次産業(サービス業)の比率を見ると、一次産業は減少傾向を継続し、二次・三次産業が増加傾向にある。その中で、二次産業は2006年にピークの48%となったが、それ以降はおおむね減少傾向にあり、三次産業が成長傾向にある。

つまり、二次産業が比率として大きいため、その動向は重要だが、成長のけん引役は三次産業に移っていると言える。GDPの成長率をみても同様で、2013年以降の四半期の実質GDP成長率(前年同期比)は、三次産業が継続して一番高い。

日本についても振り返ると、総務省統計局の記事によると、1970年(昭和45年)に一次産業6%、二次産業42%、三次産業52%だった。その後、三次産業が増加し、現在は7割超が三次産業となっている。経済成長にしたがって、一次産業から二次産業、そして三次産業にシフトすることは、基本的な成長パターンである。
grp03_産業構成比の変化

工業売上:上流の資源ほど厳しい一方、消費財は堅調

中国は長くに渡って「世界の工場」と呼ばれてきた。GDPでは三次産業が最大となったが、それは二次産業(工業)の成長率が鈍化しているからとも言え、また工業は一般的に変動が大きいため、まずは工業の状況を見る。

SPEEDAには、中国の統計データを多く格納しており、一定規模以上を対象とした36業種別の売上高統計などもある。全体感を見るためには細かすぎるため、いくつかに分類しなおして動向を見てみる。
なお、数値は1月からの累積値で各年計算している(※の「2014年7月からの売上変化/単月」を除く)。また、GDPは付加価値ベースだが、こちらは売上ベースである点には留意頂きたい(付加価値については「SPEEDA総研BASIC GDPを構成する付加価値とは何か」を参照)。
grp04_産業別表

まず、資源が最も厳しく、特に上流が価格下落の影響を受け、売上減少が著しい。電機・電子機器や自動車は比率を上げ、また一般消費の中心となる食品・衣服などは、全体に占める比率が小さいものの、安定的に増加している状況が伺える。

自動車に関しても、年初にプラスで推移した寄与で累積ベースではプラス推移だが、単月ではマイナスになってきており、今後の厳しさが想定される。

輸出入:電気機械及びハイテク製品がどちらでも半分強を占める。輸出の鈍化と、資源価格の下落が著しい

次に輸出入額の動向について見る。まず中国の輸入及び輸出構造について見ると、輸入品は電気機械やハイテク製品及びその部品、加えて資源の輸入が多い。一方、輸出は、過去はアパレル関連が多く、90年代は2割を超えていた時期もあったものの現在は1割程度まで減少し、近年は電気機械やハイテク製品が多い。なお、ハイテク製品にはコンピュータや通信機器、またバイオ関連製品などが含まれており、電気機械は産業機械などが中心と見られる。

電気機械及びハイテク製品に関しては、輸出入ともに多い。ざっくりと考えると、部品や半製品を輸入し、製品として完成するまでの最後の加工・組立部分を多く受け持ち、それを輸出する加工貿易が中心と言える。なお、完成品はすべて輸出されるわけではなく、特に近年は購買力の上昇によって、国内需要に当てられる部分も多いだろう。
grp05_輸出入円グラフ

そして輸出額の推移をみると、金融危機の影響を受けマイナスとなった2009年を除くと、前年比で成長を続けてきた。しかしその成長率は、電気機械もハイテク製品も2012年以降は一桁%の成長にとどまっている。2015年になると、月次ではマイナスの月も多く、8月までの累積では電気機械がわずか1.2%の成長、ハイテク製品は-0.2%と縮小している。なお、毎年2月に下がっているのは旧正月の影響で生産が停止するためである。近年は、旧正月後の人員確保が、郷土から戻ってこないこともあり、厳しくなっている。
grp06_輸出額の推移

また、資源に関して輸入動向を同じように月次で見てみる。まず、金額ベースでは過去約1年で大きく減少していることがわかる。一方で大部分を占める鉄鉱石と原油それぞれの数量を見ると、鉄鉱石の成長こそ見られないが、大きくは減少していない。つまり、資源に関しては数量の減少ではなく、価格下落が起こっていることが伺える。なお、価格下落は、中国の成長を見込んで世界各地で資源開発が進んでいたが、その見込みほどに数量が成長していないことも背景の一つではあろう。
grp07_資源輸入の推移

投資:全体で10%程度の成長は維持、しかし住宅投資が弱い時に国営企業が投資する傾向は崩れている

続いて、中国国内の固定資産投資(設備投資)を見ていく。データが各年の1月からの累計のデータであるため、それを差し引きすることで各月ごとの数値を計算した後、過去12か月分を足したものを見てみる(単月だと旧正月の変動が大きいことと、1月のデータが欠落している場合があり、検証したいのはトレンドであるため)。

全体の投資としては増加傾向にあるが、成長率は鈍化傾向にある。2013年末までは20%かそれ以上をおおむね維持していたが、そこからは下落基調にある。なお、直近の12か月累積の前年比成長率は11.6%となっているが、7月や8月の単月の成長率は9~10%であり若干低いものの、急変はしていない。

要素として住宅投資額と、国営企業の投資額を見てみる。なお、住宅投資額の大部分も、国営企業が占めると見られる。2012年まではおおむね逆相関であり、住宅投資が弱いときは国営企業が非住宅関連投資を活発化させ、住宅投資が活発なときには国営企業が抑えている様子が伺える。特に金融危機の2009年においてはその状況が顕著である。

しかし、2013年以降は、その逆相関の関係がなくなり、両者とも減少傾向に転じている。特に住宅投資に関しては、2014年半ばから減少を強めている。2015年になってから前年比の減少が加速しており、3月以降の単月の前年比成長率はいずれも-1~+3%の水準で推移している。また、全体に占める比率も2000年代半ばと現在を比較すると、住宅投資は約20%から約15%に、国営企業も過半から約30%程度に縮小している。
grp08_投資

小売消費:10%以上を維持し、2015年になってからさらに増加。都市部が9割弱を占める

小売の状況を見るために、社会消費材小売総額の統計を見る。途中から都市部と農村部に分かれた開示もあるため、2010年以降はそれを用いた。

消費に関して、前年同月比成長率に上下はあるものの、おおむね10%以上の成長率を維持してきた。そして2015年になってからは上昇基調にあり、2013年及び2014年の12~14%程度から、直近では18%にまで成長している。

都市部と農村部を比較すると、都市部が消費全体の約85%を占めているが、2013年以降は、農村部の成長率がおおむね2%程度高い。

なお、下記の数字は月次であるが、規模感を比較するために2015年8月までの累計12か月分を計算すると28.7兆元となっている。
grp09_小売消費の推移

grp10_まとめ

(文・加藤淳)

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