SPEEDA総研 現状総点検 #2 国内設備投資の現況2015.10.10

SPEEDA総研 現状総点検 #2 国内設備投資の現況2015.10.10

ここ数か月で、世界経済の先行きへの懸念が急速に増している。そして、その懸念の拡大を受け、日本経済の先行きに関しても、懸念が増している。現状総点検1回目では、世界の株価と中国の現状を検証したが、2回目の今回は国内の設備投資に焦点を当てる。
9月の日銀短観では大企業製造業の業況判断(DI)が悪化したが、設備投資計画は上方修正と堅調な様子が報道された。ではそもそも設備投資とは企業の業績や各業種においてどのような意味を持つのだろうか。本稿では、日本経済における位置づけや変動要因などを踏まえ、過去の推移から現況を推察する。

Nijie Kuboki

SPEEDA総研 現状総点検 #2 国内設備投資の現況

設備投資をGDPから見てみる

まず日本経済における設備投資の重要度を確認する。

2014年度の企業設備投資はGDPのうち14%を占め、民間最終消費支出(58%)、政府最終消費支出(20%)に次ぐ分野である。民間最終消費支出の1/3以下と比率は大きくないが、景気に対して大きく影響を与える場合もある。

GDP変化への寄与度をみると、2008~2009年は設備投資の大幅減がGDP減少に拍車をかけ、逆に2011年度や2013年度は全体の成長に大きく寄与した。
grp01_GDP項目別寄与度(実質)

製造業以上に非製造業の投資も重要

では設備投資は誰が行っているのか。設備投資というと製造業を思い浮かべる方もいるかもしれないが、製造業の占める比率は30%程度で、卸・小売、サービス業なども重要な位置を占めている。
grp02_業種別設備投資額

中小企業の設備投資が4割

企業規模の観点では、中小企業による設備投資も重要である。中小企業の設備投資は変化が大きいが、2014年度は積極的な投資が進み全体に占める割合が40%に達した。
grp03_資本金規模別設備投資額

企業は設備投資には前向き

次に直近の状況を再確認する。

先日発表された日銀短観9月調査では、大企業製造業の業況判断(注)が3ポイント減、同先行きが2ポイント減となって注目を集めた。全規模全産業では1ポイント増、大企業非製造業は2ポイント増と、全体としては横ばいである。先行きについてはほとんどの業種で悪化の見通しだが、それでも大企業の判断指数自体はプラス14と比較的高い水準にある。

設備投資はというと、2015年度の投資計画は前年度比6.4%の増加となっており、計画通り進めば投資は未だ積極的といえる。規模別・業種別にみても、大企業では中小企業を除けば2014年度、2015年度(計画)とも概ねプラスである。

注:業況判断=「収益を中心とした全般的な業況」の回答社数構成比:「良い」-「悪い」(選択肢は「良い」、「さほど良くない」、「悪い」)
grp04_短観_業況と設備投資の推移

設備投資は利益が出た後に増加

では、今後の設備投資を考える上で影響を与える要因は何だろうか。

企業の業績と設備投資のサイクルをみると、設備投資は利益に遅行して設備投資が増加する。企業の業績は、「売上・利益減→コスト・投資削減→コスト削減が進み利益増→設備の不足感から投資増→売上・利益減…」、となっており、利益が増加して余裕が出ると設備投資を行う場合が多いことがわかる。

経営が厳しい時期こそ次の投資に目を向けるべきではあるが、中小企業の割合が高い日本では自転車操業の企業も多く、東日本大震災の発生した2011年を除きEBITDA(注)に遅行する形で推移している。

この点から見ると、直近では経常利益・EBITDAが鈍化しているものの、マイナスにはいたっていない。設備投資も今後大幅な増加は見込みにくいが、当面は投資が続く可能性が高い。
grp05_業績と設備投資額の推移

次年度1%以上の景気拡大が見込まれる場合に設備投資が大幅増

設備投資に影響を与えるもうひとつの要因は景気拡大への期待である。内閣府によるアンケート調査では、景気後退局面であっても3年後の業界需要の実質成長率がプラスと期待される場合は、設備投資(3年間の見通し)もマイナスにならない。また次年度需要の1%以上の増加が見込まれる場合は、設備投資が3%以上増加する。これはあくまでアンケート調査による見通しだが、景況感と設備投資の関連性が高いことを示している。

この観点からすると、日銀短観の先行きが3期ぶりに悪化となり、設備投資の成長鈍化が予想される。とはいえ、過去の推移から業況判断がプラスの水準では、設備投資が減少に転じる可能性は低いと考えられる。
grp06_業界需要の成長率

中小企業の投資サイクルは短く景気動向に敏感に反応

最後に、企業規模や業種などで設備投資の内訳をみてみたい。

設備投資のサイクルを企業資本規模別にみると、中小企業ほどサイクルが短く、増減の幅が大きい。そのときの景況感や企業業績に敏感に反応することがうかがえる。

直近では大企業の設備投資は続いている一方、中堅・中小企業における鈍化が見える。しかし全体としてはいずれの階層においてもプラス基調で推移している。
grp07_資本規模別設備投資額_前年同期比_4期移動平均

製造業は各業種増加基調

業種別の状況については様々な指標があるが、一例として機械受注統計の需要先別の状況をみる。製造業では石油・石炭製品など例外はあるものの、概ね同様の傾向を示している。しかし業種によって時期のずれは生じており、消費者に近い電気機械などが先行しやすく、逆に化学工業は遅行する傾向がある。直近では化学工業はマイナスとなっているが、景況感に敏感な電気機械を始めとするその他の業種はプラスとなっている。
grp08_製造業業種別受注額

非製造業はサービス業が続伸するが先行きには懸念も

非製造業は業種によって状況が大きく異なる。業種ごとに様々な要素が影響し複雑な様相を呈している。

法人企業統計の設備投資額では、建設業は消費税増税後の反動で大幅減、小売業は2014年下半期から、運輸・郵便は2015年に入って減少傾向となった。

一方、不動産・リースは2012年から増加が続いているほか、卸売業やサービス業がようやく増加に転じた。特に2015年上半期では非製造業の設備投資全体に対し、サービス業の寄与度が3%と顕著である。

一方で、日銀短観の大企業対個人サービス業の先行き判断はプラス23と水準は高いが、12ポイント悪化と先行き不透明感が広がっている。
grp09_非製造業業種別設備投資額

設備投資は当面維持される見込みだが最後は消費が鍵

以上をまとめると、
・設備投資はGDPに占める割合は低いが寄与度は高い
・業種別では非製造業が7割、規模別では中小企業が4割
・設備投資の増減には、利益の増減や景気の見通しが影響
・現状では企業は設備投資には前向きで、前年度比6.4%増
・GDPでも設備投資は堅調
・今後については様々な要素が考えられるが、
経常利益・EBITDAの成長鈍化、先行きの不透明感などがマイナス要因

相対的に先行き悪化が見込まれるとはいえ、景況感は一定の水準を維持している点はプラス要因

以上により当面は緩やかな拡大が見込まれる。少なくとも設備投資の観点からは今後大幅に景気を押し上げることはないものの、減少に転じることもないという微妙な段階である。短観の結果が今後悪化を続ければさらに不透明感は強まり、設備投資を控える企業も多くなる。

強まる不透明感を打開できるかどうかは、結局今後の消費の強さに大きく影響を受けるだろう。

次回は各種データから給与と消費の動向を考察する。

(文:窪木虹恵)