SPEEDA総研 現状総点検 #4 家計消費の現況2015.10.17

SPEEDA総研 現状総点検 #4 家計消費の現況2015.10.17

総点検の第2回は設備投資、第3回は給与と消費の関係をみてきた。第4回の今回では、より細かく家計の消費状況とそれに連動する小売事業の状況などをみていく。

Nijie Kuboki

GDPにおける家計消費は2014年度大幅減、15年4-6月期でようやくプラスに

まず、これまでにもSPEEDA総研で触れてきたように、家計最終消費支出はGDPの6割近くを占める最大の構成要素である。設備投資や輸出、政府支出なども当然重要だが、家計の消費が増えなければ経済は停滞する。長期的には実質賃金が緩やかに減少する中で、消費が伸び悩んでいることは第3回で述べた通りである。

近年の家計消費の推移に注目すると、2008年度の大幅減から徐々に回復してきたが、2013年度に消費税率引き上げ前の駆け込み消費があった後、2014年度は反動により減少となった。2015年に入って4-6月期でようやくプラスに転じた状況である。

家計消費のうち食料品が2割、非耐久財は4割

では、家計支出の内訳はどうなっているのか、ここからは家計調査で詳細をみていく。

家計の消費支出のうち、最大品目である食料品19%など非耐久財が37%を占める。これらは日々消費する財であるため相対的に景気変動の影響を受けにくい品目である。さらに被服・履物などの半耐久財が8%、家電や自動車などの耐久財は6%となっている。

商品の単価は非耐久財から半耐久財、耐久財になるほど高額になるが、購入頻度の点では逆転する。耐久財ほど消費サイクルが長くなるため消費支出における変動は大きく、家計消費の変動要因となりやすい。

また、商品購入だけでなく外食、通信費、住居費、娯楽サービス費などサービスに対する支出も39%と多い。
20151016_01_消費支出構成比2

食品は変動しにくく、家電や自動車は各種イベントの影響を受ける

品目別購入数量の推移をみると、例えば非耐久財である肉は変動が少なく、半耐久財の衣料品はやや季節や景気変動の影響を受ける。さらに冷蔵庫やテレビ、自動車は購入頻度が低いため、市場を取り巻く環境によって特定の時期に需要が集中しやすい。近年の変動要因として2009~2011年3月に実施されたエコポイント制度や、アナログ放送の終了に伴うテレビの買い替え、自動車税制の変更、消費税率の引き上げなどが挙げられる。
20151016_02_購入頻度2

消費財は概ね堅調だが家庭用耐久消費財は低下したまま

以上が消費の一般的な傾向だが、以下では現在の消費動向を細かくみていく。

消費のベースラインとなる食料や家事用消耗品などの消費財は増加している一方、家庭用耐久財は2013年の駆け込み消費で需要を先食いした形で、現在も低下したままとなっている。自動車については2014年以降減少しているとはいえ過去の水準から比較すると堅調といえる。

また2014年に一時低下した品目も2015年から回復基調にある点は注目される。これには後述する物価の影響もあるが、このまま消費が堅調に増加するか否かが重要な分岐点となる。
20151016_03_用途別消費支出

コンビニ、専業スーパー、衣料品小売などは堅調だが家電小売や総合小売は不振

ここまでは家計の支出状況から消費をみてきたが、次に事業者側から消費を眺めてみよう。

家計消費では食料の支出は堅調であったが、販売側の動向は業態別に異なる。コンビニエンスストアや飲食料品小売が堅調な一方、百貨店や総合スーパーは2008年に大幅低下した後も漸減、現在も2010年の水準を下回ることが多い。特に2011年以降コンビニエンスストアの増加が目立つ。衣料品は2010年から回復傾向で推移している。

また支出が大幅に低下していた家庭用耐久財に対応して、家電量販店などの機械器具小売業もやはり低迷が著しい。特に家電については前述の通り特定の期間に需要を先食いしていることに加え、インターネット通販の普及がさらに小売事業者の低迷につながっていると考えられる。経済産業省によると家電のEC化率は2014年で24%に上り、物販系全体ではEC化率5%未満の中で際立って高い。

なお、百貨店や家電量販店についてはインバウンド需要が注目されているが、現時点では全体を底上げするまでには至っていない。
20151016_04_業種別指数1

総合小売は衣料品事業が足を引っ張る

ここで食品を中心とする小売についてさらに分解してみる。

品目別の売上動向をみると総合小売の低迷要因は主に衣料品にあることがわかる。特にスーパーでは飲食良品の増加に対し衣料品の低迷が非常に顕著である。

またコンビニエンスストアについては弁当などの日配食品が売上を牽引する。家計消費の中でも調理食品の支出は過去一貫して増加しており、百貨店やスーパーでも惣菜に力を入れているが、調理食品を主力とするコンビニエンスストアは直接的にその恩恵を受けている。
20151016_05_業種別指数2

なお、コンビニエンスストアについてはこれまで既存店は前年割れが続いてきており、店舗拡大による売り上げを増やす傾向であった。しかし2015年に入って既存店もプラスに転じており、消費者の需要を確実に掴んでいることが伺える。

なお、全店売上高と既存店売上高の差分は店舗数の拡大を示しており、現在も店舗数が拡大していることがわかる。
20151016_06_コンビニ売上高

宿泊・飲食業が回復する一方で娯楽産業は減少

財の消費について小売業をみてきたが、次にサービス消費についても業界側の動向をみる。

消費者向けサービス業の売上高をみると、宿泊業、飲食店、生活関連サービスなどが増加傾向にある一方、洗濯・理美容業や娯楽業は減少傾向となっている。

減少の大きかった娯楽業について特定サービス産業動態調査をみると、一部増加している産業もある。ゴルフ場、パチンコホール、ボウリング場といった従来の娯楽産業で売上が低迷する一方、テーマパークやフィットネスクラブなどは堅調な推移をみせている。特にフィットネスクラブは現在テーマパークと同等の売上規模があるとみられ、健康意識の高まりを捕らえている。
20151016_07_サービス産業

本格化する物価上昇の中で実質消費の動向が鍵

最後に消費や小売業をとりまく環境について考えてみたい。

ここまで家計の消費支出や小売業、サービス業の販売動向をみてきたが、これには消費税の引き上げやコストの増加が含まれている。例えば物価(小売販売額)が3%上昇したことで数量を1%抑えた場合、額面では約2%の増加となるが実質的な需要は減少する。コスト増加分の価格転嫁と数量(実質)ベースでの需要維持ができるかどうかが鍵となる。

まず企業のコストについて企業物価指数をみると、食品などは2011年から、工業製品全般についても2013年から上昇している。

一方で消費者物価はむしろ低下傾向にある。参考指標として消費税を除き店頭価格ベースで算出している東京大学の物価指数をみると、2014年はむしろ価格は低下している。消費者物価をみれば全てのコストは転嫁できていない可能性が高い。

そのような状況下で2014年の実質消費は大きく減少した。世帯規模や年齢、物価などの変動要因を除いた消費水準指数でみると、2014年の減少幅の大きさが伺える。

東大物価指数は2015年に入ってようやく上昇に転じたが、物価上昇が本格的となる中で需要が維持できるかどうかが注目される。
20151016_08_企業物価指数-2

20151016_09_消費者物価指数

20151016_10_消費水準指数

まとめ

以上をまとめると
 -家計消費のうち食料品が2割、非耐久財は4割
 -変動しにくい消費財に対し、耐久財は増減が大きい
 -消費財は概ね堅調だが家庭用耐久消費財は低下したまま
 -消費財の小売業でも総合小売は不振、耐久財の家電量販店は低迷が著しい
 -総合小売では衣料品の不振が影響
 -サービス産業では宿泊、飲食が回復する中、従来の娯楽産業が不振
 -本格化する物価上昇の中で実質消費の動向が鍵

15日に政府が発表した月例経済報告では、8月の実質消費支出が2.9%増となったが、楽観はできない状況が続いている。賃金が徐々にではあるが回復している中、どこまで消費が伸びるかが今後も注目される。

家計の消費動向については以上となるが、最後に第3回で複数のコメントがあった人口構成比による変化について言及しておきたい。

消費の主体は高齢者にシフト、若年層の支出が低下

前掲の消費水準指数は年齢などの影響を除いても家計消費が減少してきたことを示しているが、年齢構成の変化が与える影響、つまり若年層の割合低下による総需要の減少も大きい。

家計調査から世帯主年齢別の消費額を推計すると、60歳以上の世帯の割合が増加し5割近くとなる反面、39歳未満の若年層の割合が低下、2006年比で5ポイント減少している。

さらに年代別の消費マインドをみると、50歳以上の世帯では消費支出があまり落ち込んでいないのに対し、40代及び29歳以下の世帯では低下が著しい。

これは世帯主による推計であるため実際の年齢別の消費ではないが、若年層世帯による消費マインドが低下していることは確かである。
20151016_11_年齢×世帯構成比

20151016_12_年齢×消費額

(文:窪木虹恵)

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