中国、見えてきた第13次5ヵ年計画と現状を確認2015.11.07

中国、見えてきた第13次5ヵ年計画と現状を確認2015.11.07

第18期中央委員会第5回総会(5中全会)が北京で開催された。会議では、「中国共産党中央委員会の国民経済と社会発展・第13次5カ年計画の制定に関する建議」を公表した。今後の中国を見るうえで重要なものであることから、今回はその情報を整理する。また、関連するデータも確認することで、現状を再確認してみる。

Xixi Du

中国、見えてきた第13次5ヵ年計画と現状を確認

第12次5カ年計画を振り返る

第12次5カ年計画は中国経済成長の加速、長期的な消費拡大など「経済発展」、「国民生活」、「科学技術・教育」、「資源環境」の4つの分野を強調し、23指標を策定した。2011年から2015年にかけてのGDP平均成長率を7%、2015年までに55兆8000億元を達する計画となっている。主な経済と国民生活目標は以下の表にまとめた。
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第13次5カ年計画の骨子

こうした状況を踏まえ、第18期中央委員会第5回総会(5中全会)が北京で開催された。会議では、「中国共産党中央委員会の国民経済と社会発展・第13次5カ年計画の制定に関する建議」が公表された。

今回の5カ年計画は「革新」「協調」「グリーン」「開放」「共有」という5つの発展理念が注目すべきキーワードとなる。

「革新」

研究・技術・管理の革新。需要科学分野で国家研究センターを設立、「中国製造2025」を実施、金融規制の枠組みを改善する。商品の価格形成を一部自由化する。航空機エンジン、量子通信、インテリジェント製造・ロボット工学、深宇宙深海探査、新素材を中心に、脳科学、ヘルスケアなどの分野で長期的な戦略を立てる。

「協調」

都市部と農村部の協調発展を推進、農村部の貧困緩和を目指す。工業化、情報化、都市化、農業近代化同時発展、民事・軍事的統合を促進する。都市と農村の発展を統合するため、メカニズムを改善、都市部の公共サービスを農村部に拡張、農村インフラ投資を向上させる。

「グリーン」

「美しい中国」という概念。グローバル生態系保護を強調、海外と環境保護を協力、「保全を優先、自然の回復はベース」という理念で天然林、海湾を保護する。低炭素循環生態系を強調。水資源利用、土地利用、耕地保護を厳格規制。

「開放」

サービス産業の規制緩和化、医療、教育、ペンション、健康、金融などの領域を社会資本と海外資本に開放。グロバール自由貿易網の構築、自由貿易区戦略を推進。

「共有」

都市部と農村部の給与・消費の差を縮小、順調な伸び率を維持する。健全な賃金システム、決済保障、最低賃金の成長などのメカニズムを改善。都市化を推進しながら、農村部の生活水準を向上する。さらに「健康中国」と「人口発展戦略」という概念を提出した。

※健康中国
医療制度改革を深めるため、薬の価格の合理化、全国で基本医療・健康システム、病院管理システムなどの体制を確立する。

※人口発展戦略
人口のバランスを改善。2014年に中国の総人口に占める65才以上の老齢者は約10%。8都市の出生率は1%以下となっており、「少子高齢化社会」となった。これに対して、中国は夫婦が2人の子どもを産む政策を全面的に実施する。

国の支援として、中等職業教育の学費、貧困学生の高校までの学費を免除することとなった。これから2人の子どものサポート政策も次々と打ち出される可能性が高い。

ここからは、関連データを確認していこう。

中国も少子高齢化時代に

まず、人口関連から確認すると、中国の総人口に占める15才以下の子どもの比率は1990年の27.7%から2014年の16.5%へ大幅低下した一方で、65才以上の高齢者の比率は5.6%から10%までに増加した。

さらに、各都市、省の出生率も1%前後となっており、中国も少子高齢化社会に入る。ちなみに、「一人っ子」政策を維持した場合、2020年高齢者の占有率は12%になると予想されていた。
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※ここでの出生率は人口1000人あたりの1年以内出生人数を示している。

GDPから産業構造を確認

中国の産業構造は、GDPの比率を見ると、第2次産業と第3次産業が拡大し、徐々に第3次産業化が進んでいることがわかる。第12次5カ年計画では2015年までに第3次産業の対GDP比率を47%まで引き上げることが目標だった。2012年に第3次産業は初めて第2次産業を上回る46%となり、2013年には47%となり目標を達成している。
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※1958〜1961年までの間、中国が農業・工業の大増産政策(大躍進政策)を実施、生態系全体のシステムをも完全に無視し、単に数字上の生産目標達成のみを目的とした政策だった。結果中国経済の大混乱と、推計2000万人から5000万人の餓死者を出す大失敗に終わった。

さらに地域別で一人当たりのGDPをみると、「先富論」に基づき、沿岸部の成長は速く、内陸部の経済発展は遅れ、地域差の存在がある。実際に地域別データを見ると、2014年天津市は甘粛省の約4倍となっている。
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さらに雇用面を見てみると、2014年に就業者の数は1952年の3.7倍の7.7億人となった。1995年に第3次産業の従業員数は始めて第2次産業を上回り、2014年には全体の41%を占めている。
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個人消費の源泉、所得の動向を確認

中国の人口構成をみると、1978年から都市部の常住人口は1.7億人から2014年の5.5億に増加し、2011年に都市人口は初めて農村人口を超え、2014年に都市化率は55%に上昇した。都市化の進展につれ、中国人の所得水準も上昇している。
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給与は高成長

CEInetの統計データをみると、1978年の改革・開放後、中国一人当たりの平均給与の高成長が続いている。1984年から1996にかけ都市部と農村部一人当たりの平均給与はそれぞれ年平均18%、15%で成長した。1997年から2001年までの間に、年成長率は一度に10%以下に落ちたが、都市部は2002年、農村部は2004年から、年平均成長率は再び10%以上となっている。
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※農村部データは1人当たりの純収入だったが、2012年以降国家統計局は統計基準を統一して、都市部と同様に「一人当たりの可処分所得」となった。

2009年度には都市部と農村部の格差はピークの3.3倍となりその後は下落を始め、2014年にその格差は2.7倍にまで縮小した。2014年度の都市部一人当たりの平均給与は28,844元、農村部は10,489元となっている。当然だが、上海、北京など大都市の平均給与はもっと高くなる。
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最低賃金については、沿海部の深センは世界工場ともいわれ、近年若年労働力を確保するため、最低賃金を引き上げ、金融中心の上海を上回っている状況である。
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支出構成は都市部と農村部で大きな違い

都市部と農村部住民の所得水準の増大につれて、消費も拡大。CEInetのデータをみると、平均給与の推移とほぼ同様に、両部1人当たりの消費額は成長し続けている。全体から見ると、農村部の消費が都市部より速いペースで拡大しているといえる。

消費の構成からみると、交通・通信類消費の伸びが一番高く(都市部年平均成長率17%、農村部19%)、次は医療保険(都市部12%、農村部17%)となっている。住宅の消費比率については、都市部で10%前後、農村部では20%前後で推移している。
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所得とあわせてみると、都市部の消費額の割合は76%から64%へと減少、農村部は逆に50%から67%へと上昇した。残った約30%の所得は貯金や、金融商品に投資しているものと考えられる。

背景として、中国の社会保障制度の整備が遅れ、住民は老後の生活を心配し、貯蓄を増やしている状況。さらに現在は人口老齢化、不動産価格の上昇、高まる教育熱によって、各年齢層・地域の人々の貯蓄志向がより高まっている。

次に、企業の業績の概要をみてみる。

CEInetから、一定規模以上企業の一部の項目を抜粋した。1999年から企業の売上高は年平均19%で高成長している。2009年には世界金融危機の影響で、伸び率が鈍化したものの、9%の増加率を維持した。企業全体の税引き前利益率は1998年の2%から2014年の5.9%へと上昇している。

しかし、中国統計局の公開データによると、2015年1〜9月一定規模以上企業の利潤総額は前年比1.7%減少、うち国有企業は24.4%の大幅な減少となった。業界別では、石炭採掘(▲64.4%)、石油・ガス採掘(▲66.1%)、鉄金属製錬・圧延(▲60.5%)の3つの業界が減少が大きく、こうした企業の利潤を確保することが、次の5カ年計画の重要な課題の一つだろう。
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※一定規模以上企業の定義:1998~2006年、すべての国有企業と年間売上高500万元以上
2007~2010年、年間売上高500万元以上
2011年~、年間売上高 2000万元以上

株式市場を見てみると、2015年は中国株の急上昇に伴い、中国石油、中国工商銀行などの中国企業も世界の時価総額ランキングにもランクイン。10月まで、中国A株の時価総額ランキング上位10社のうち、7社は銀行、保険などの金融企業である。第12次5カ年計画の間、金融組織、商品・サービスの発展に力を入れたことも影響している。

これからの中国は「新状態」

各データをみると、2011年から2015年にかけ、第12次5カ年計画の目標はおおむね達成した。

GDPの目標は2015年度に55.8兆元だったが、2014年度に63.6兆元に達し、2015年度は68兆元が予想される。サービス産業のシェアは2014年に目標の47%を達成、2015年前半までさらに51.2%までに成長した。都市化も進んでおり、2014年末には計画の51.5%を超える54.6%となった。

2011年から2015年にかけ、都市部および農村部の住民生活水準も継続的に改善している。2014年度、都市部一人当たりの可処分所得は計画の26,810元を超え、2015年末には30,000元に達すると予測されている。

農村部の統計基準は2012年に純収入から可処分所得に統一されたが、実際の差は2%ぐらいと予測。2014年度に、農村部一人当たりの可処分所得は1万元を超え、計画の20%を超えた。都市部・農村部の給与と消費の差は縮小しているが、まだ2.7~2.9倍ぐらいの差がある。これらの都市化を推進しながら、農村部の生活水準を向上することが引き続き求められている。

また、第3次産業化への移行を進め、2015年前半、金融サービス業界はGDPの9.35%を占めた、2011年から2015年にかけの平均値は約7.3%(計画は5%)。しかし、今年前半の数字はかなり高く、経済減速の影響で今後低下する可能性が高い。

今の中国経済の状況はある意味、減速という「新状態」となっている。第13次5カ年計画は経済発展の速度変化、構造改善、パワーの3つの特徴を把握し、新たな計画を立ち上げる予定とされている。

共産党は、GDPを2020年に2010年の2倍するという目標を掲げている。そのためには、目指す経済成長率は6.5%となる。2020年に一人当たりの平均給与を2010年の2倍にし、貧富の格差を縮小することで、より豊かな社会を構築する方針。GDPの拡大により、品質を重視し、継続的な経済成長、経済構造を最適化、そして生態環境の改善を目指している。

都市化を進め、労働者の定住を加速するために、都市部のインフラや公共サービス施設への投資を拡大、さらに不動産市場を安定させることが、まずは喫緊の課題だろう。