【じげん×ユーグレナ 対談セミナーレポート(後編)】「攻めの経営戦略を実行している少数精鋭組織の実態」2018.09.10

【じげん×ユーグレナ 対談セミナーレポート(後編)】「攻めの経営戦略を実行している少数精鋭組織の実態」2018.09.10

セミナーイベント「攻めの経営戦略を実行している少数精鋭組織の実態」の開催レポートの後編です。

伊佐敷 一裕

2018年5月23日、株式会社ユーザベースが主催するセミナーイベント「攻めの経営戦略を実行している少数精鋭組織の実態」が開催されました。

実際に「攻めの少数精鋭経営」を実践されている、株式会社ユーグレナのCFO永田暁彦氏と株式会社じげんのCFO寺田修輔氏の2名を登壇者に迎え、セッション形式でその経営組織の実態を伺いました。

前編ではイベント前半に行われた2社の取り組み発表の内容を、中編ではパネルディスカッションの前半内容をお送りしました。

後編(本記事)では、2社の経営組織における失敗経験など、実態をより掘り下げたパネルディスカッションの内容と、会場からの質疑応答の内容をお送りします。

テーマ④少数精鋭組織にも悩みがある

〜スピード経営をさまたげるもの、その課題〜 

「やった後悔よりやれなかった後悔の方が敗北感を味わうことが多いです」(寺田氏)

過去の投資の失敗について

山中(ユーザベース / 以下山中):過去これまで経営されてきた中で、失敗経験もあるんじゃないかと思うのですが、生々しいところもぜひお伺いしたいなと思います。これまでじげんさんは10件M&Aをされてきたという話がありましたが、失敗だったなということ、またその失敗から仕組みや考え方を変えてきたことはありますか?

寺田修輔氏(以下、寺田):過去10件のM&Aを自分たちで採点すると、花丸が2個か3個、丸が5個、三角が2個か3個。損してバツというのはないです。三角の1件として、10件中9件は100%株式取得なんですが、1件だけ20%弱の出資をしまして、そこは成果が出せなかったです。

ちょうどその頃、100%の株式取得で経営に入ってトップラインを伸ばしていくやり方に勝ちパターンが見えて来ていました。一方でマイノリティ出資先に対してはアドバイスをしてハンズオンで動かすことができず、結果損益ほぼなく売却して手離れしています。

ただそれ以上に、やった後悔よりやらなかった後悔、もしくはやれなかった後悔の方がM&Aで敗北感を味わうことが多いです。

自分たちの方が伸ばせる自信があったのに、色々な関係性や歴史的な背景でディールが決まってしまったり、我々にPMIを任せられる人材がいないので踏み込めなかったりとか、それは悔しいことが多いです。

山中:なるほど。ユーグレナさんはどうですか。

永田暁彦氏(以下、永田):うちも結果10件くらいなんですが、M&Aでいうと減損したのが1社。他はみんな一応成功かなと思うんですけど、M&Aでも新規事業でも失敗しているプロジェクトは一つ共通点があると思っていて。担当役員の「メモリの振り方」があると思っています。

経営では投資することと辞めることの二つがとても大切で、何を投資するかと言えば金と人とモノは定量化できる当たり前のこととして、もう一つは担当役員の「脳のメモリ」をとても大切にしています。

投資家の「社長が家を建て始めたら株を引き上げる」っていう話があり、すごくわかるんですよね。家を建て始めると、床をどうしようとか、脳のメモリがそちらに取られるんですよね。新規事業やM&Aでも担当役員のメモリの振り分けかたでかなり成否が決まるなと思います。不祥事が起こる場合もそうですね。メモリを振り分けていればわかったことや、気づけた成長のドライバーを見過ごしているパターンが多くて、そこをすごくコミュニケーションしてます。それって管理会計上出てこないんですよね。そこが大切だと最近思っていますね。

会場からの質疑応答

質問者1:ユーグレナさんでバンバン新規事業走らすということですが、その際の管理会計の扱いって非常にブレ幅が大きくなって難しくなると思うのですが、その割り切り方やどのような対応をしているか教えてください。

永田:マトリックス的になると思っていて、横を事業で切って、縦をコストセンターと収益センターで分けて管理会計を設計しています。収益センターはわかりやすいんですけど、共通で使われるコストセンターの振り分けは難しいなと思っているんですね。

それの振り分け方は非常にシンプルで、コストセンターのマネージャーに何対何か決めさせています。彼らはどこのプロジェクトが成功しようとつぶれようと評価に関係ないので、それで振り分けています。

どこまでアクセルを踏んでいいかは人の数とキャッシュの金額で大体の線が決められていて、そこを超え始めると査定に入っていく感じです。

 

質問者2:弊社は今本業のサービスを伸ばして行こうというフェーズなんですが、次の新規事業やM&Aをやっていくフェーズに移っていくときのきっかけはどういったものがあったのかお聞きしたいです。

寺田:我々はファイナンスのステージが移った時が事業フェーズが移った時、というのがあったかと思います。

スタートアップであれば、シードなのかシリーズAなのかプレIPOなのかとか、バリュエーションによっても求められるリターンは変わるでしょうし。また上場するとデットが使いやすくなったりとか。当社も上場してすぐデットで資金調達しています。

経営にとって投資は非常に重要なファクターで、そのためには当然調達が必要で、そこがまずちゃんと回っていることが事業側が回る前提になるはずなので、ファイナンスのステージと成長のステージはリンクするのかなと思います。

永田:根底に、大企業とベンチャーの最大の違いは何かと考えると、ベンチャーは多動の人の集まりなんですね。新規事業を社内でやる理由の一つは、「やらないと辞めちゃう」というところですね。

新しいことにチャレンジしようとしている人がベンチャーに集まるので、売り上げが上がって業界であるポジションに着くと、次のことをやりたくてしょうがなくなるんですね。事業の営業キャッシュフローが出て初めて、100の努力じゃなくて50の努力で維持成長になり始めると、みんなが新しいことをそわそわ探し始めると言うのが人に寄った話かなと思います。それも営業キャッシュフローの成長や人の余力と相関しているんだろうなと思います。

それ以外だと、常に自分たちのサービスはあと3年で死ぬと考え、だからキャッシュフローを作り続けないといけないよねと言い続けているチームがいて、そこをいかに尊重するかが僕たちのパターンかなと。だから絶対にピークアウトする前提で経営戦略を作っているのも一つの観点かなと思っています。

 

質問者3:PMIをする人間に必要な人的要件はなんだと思いますか。また、ディールをやる人間とPMIをやる人間は違うことが多いと思うんですけども、評価されるのはディールをやる人間で、PMIをやる人間はモチベーションが落ちると思うんですけども、そこを保つにはどうしたらいいのでしょうか。

寺田:PMIに限らず、事業やコーポレートの責任者に一番重要な要素の1つは圧倒的な当事者意識だと思います。組織課題や経営課題、財務課題から逃げることが許されない。そこをどう動機付けしていくかは経営側でも工夫が必要なわけですけども、結局大切な要件は当事者意識かと思います。

ディールとPMIの人材の評価では、私が気付いていないだけかもしれませんがそこまでハレーションや矛盾を感じたことはないです。ディールをやった人間がPMIをやるべきだと思いますし、そう言う点ではPMIの計画策定自体はDDと並行してやっていまして、DDやPMIの策定をやるのは後のPMI責任者ですね。

他社のM&A失敗事例を研究して内情を伺うと、だいたい責任所在が不明確というか、「経営企画や社長が勝手にやった」「PMIを押し付けられた」とか、「そもそもこの値段で買うことに同意していない」とか、結構ハレーションが起こったりしていて、そこはディール担当者とPMI担当者を分断させては行けないところかなと思います。

永田:PMIという言葉の定義によると思いますが、担当者と会社という軸で語られがちなところ、うちはファンクションでかなり切られています。

経理チームは当然買収先の経理を一部上場企業基準に持っていくというミッションは持っていますし、規定周りや法務周りもそうですし、コストカット・人員施策は人事が持ちますし…とファンクションで横切りにしていますね。

経理責任者には、毎年M&Aは2社やるんだからそれに耐えうる経理体制にし続けろ、っていうコミュニケーションをしていますし、人事もそうですね。例えば経理上問題があったときにPMI担当者が叱られるのではなく、経理責任者が叱られる、というような仕組みです。コーポレートサイドはうちがM&Aをし続けることを前提とした本社機能の人材強化・採用・教育をしていますね。

 

質問者4:各事業を任せた人間に、資金調達の責任をどこまで任せているのかというのと、今後3〜5年を見据えての銀行との付き合い方をどのように思っていられるのかお伺いしたいです。

永田:資金調達は任せないです。子会社に関してはグループ会社間でファイナンスをするので、親会社に対して稟議を書きます。それに合理性があるかどうかだけですね。うちのM&Aの方針かもしれませんが、やると決まったら全社ごとというのがあるので、基本的にトップを伸ばすところ以外は全社で見ます。

銀行との付き合い方とは、具体的ポイントはどこですかね。

質問者4:今いろんな資金調達の選択肢があると思います。以前は銀行との付き合いが必須だったところ、これからいろんな仕組みがある中で、どう銀行と付き合っていくのかなと。

永田:銀行側もキーワードが変わっているなと思っています。銀行として子会社の証券会社がエクイティを成功させると成功だ、とか銀行側の成功モデルも変わってきているなと思っています。金融の担当者が来ると、「あなたは何をすると点数上がるんですか?」ということを毎回聞くんですが、それを満たす方法だけはやります。

銀行さんとの関係性上借り入れしないと…、みたいなことは一回もないですね。いわゆるトラディショナルな銀行付き合いみたいなのはうちはあまり無いですね。

寺田:ほとんど同じような回答になってしまうかもしれませんが、当社ではグループ会社で資金調達が必要になった時、直接外部からの調達を別にやってくれてもいいんですが、本体側から借りたほうがコストは安いので、主にはそういう形で対応しています。

銀行との付き合い方については、あくまで資金調達手段の一つであると思うので、他の社債やエクイティ、ハイブリッドなど色々あるのでフェアに比べます。

また、全ての資金調達チャネルからの調達手段を最適化していくことがファイナンス責任者としての役目ですので、単純にファイナンスのコストだけで比べるというよりかは、他の機会をどういう風にもらえるのかも考えます。

例えば金利はお金を借りているということに対して支払っているコストで、それ以上でも以下でもありません。逆に他の付加価値、例えばM&Aやアライアンスのご紹介があれば、喜んで追加のコストをお支払いしますという話もしています。

山中:他に質問はありますでしょうか。

永田:はい。

山中:では永田さん(笑)

永田:じげんさん大好きでこんな機会ないと聞けないんですが(笑)、子会社上場を考えることはあるんですか?

寺田:今はないです。(笑)

子会社上場させてしまうと、せっかくの虎の子のピカピカに磨き上げた事業が一部でも外部に流出したりとか、それは株と言う点でも、日々のキャッシュフローについても、情報も含めてですが、基本的にはデメリットのほうが当社の場合は大きいかなと思います。

子会社上場させなきゃいけない理由はいくつかあると思うんですが、当社では非常に巨額な投資が必要となるタイミング以外で検討することはないかなと。例えば我々が2,000億円の調達をしなきゃいけないとなったら子会社上場を含む色々な選択肢を考えるはずですが、数百億円であればそこに頼らなくても調達はできるのかなと思っています。

 

山中:私からも質問したいと思います。2社とも対外的な中期経営計画などで発表している目標と、対内的な目標は分けられているんですか、一致していますか?

寺田:ほぼ一致しています。

永田:ほぼ一致しています。ただ、この質問1年前にCFOが10人くらい集まった時に聞いたんですよ。僕以外は全部違う、と言いました。

山中:一致してる方がマイノリティですよね。

永田:マイノリティかもしれないですね。

山中:もともと「一致していない場合、経営陣が対外コミットしていて、中のメンバーは内部の目標持っている中で不一致が生じるので、どんな風にモチベーションコントロールしているのか」という質問をいただいていたんですけど、2社とも一致しているということで、そもそも心配ないということで、一致させなさいということでしょうか?(笑)

永田:なんで分けるんですかね。たぶん社内がアグレッシブで社外がコンサバティブなんですよね。僕らは両方アグレッシブにいこうというスタンスですね。

寺田:うちは社内計画を何パターンか作っています。アップサイド・ベース・ボトムと。毎年社内で中期経営計画を練る時に作るんですね。ただ、毎週の経営会議で追うオフィシャルな社内予算は対外予算とほぼ同じです。なので、中計の時に作ったアップサイドシナリオの中には山ほど施策があって、その施策からいくつか蓋然性の高いものをピックしてその時に建てた仮説をぶつけながら、なんとかアグレッシブな社外および社内計画を目指していくみたいなところです。

山中:その場合、社内の評価基準も、基本的には対外コミットしているものと一致させるということですね。

寺田:そうですね。アグレッシブな目標を追わせたいからアグレッシブな計画を作るというより、100点取るためには1万点を目指すことが必要だから、1万点取る方法をみんなで考えよう、という方が意図としては大きいかもしれません。

 

質問者5:新規事業の査定について質問です。先ほど永田さんより担当者のマインドシェアが重要だと言う話があったかと思いますが、例えば新規事業やM&Aのアイディアは良いものの、担当者のマインドシェアが不十分であったときに、潰す以外にどう言う選択肢があるでしょうか?

永田:M&Aと新規事業で違うと思うのですが、M&Aの場合は買った後「やる人がいませんでした」はあり得ないのでスタート段階でコンセンサス取ります。のでその事例は起こらないと言うのが前提かなと。やった結果意外と「脳のメモリ」を使ってないパターンで失敗した事例はありますが。

新規事業の方は、ピッチフェスをやっているのでわかりやすいんですが、みんなやる気ありますと言うんですね。そして、やっぱり既存事業やっている中で新しいことをやりたいと言うパッションある人間って、本当にやりたいって時に準備してくるものが違うんですね。そこを最初のクリアラインにしていて。

例えば新しい商品をやりたいときにコンセプトだけ言う人と、モックまで作ってくる人の差は間違いなく存在していて。その時に、会社として採用できるかは大切だと思っています。

撤退基準はROIと3年目の収益性での基準が存在していて、それ以外に撤退する方法は、本人に諦めさせると言うことかなと思います。僕らが潰すんじゃなくて、コミュニケーションの中でロジックとパッション両方ぶつけながら、新規事業やる上で不足していることを感じさせて、それをなんとか取りに行くメンバーと収束させていくメンバーに分かれるので、ここに尽きるかなと思います。

だいたい本業がうまくいってる奴が新規事業もうまく行きやすいかなと。そこで新規事業に全振りさせる意思決定はやっぱり経営がする重要な意思決定なので、タイミングをどうするかがとても大切かなと常に思っています。

山中:ちなみに事業担当者自体を交代させる決定をCOOとCFOですることもあるんでしょうか?

永田:既存事業ではあります。新規事業はないですね。

山中:新規事業で責任者を変えない理由は?

永田:ほとんどがボトムアップでスタートした事業なので。トップダウンのプロジェクトで変えたことはあるんですけど、ボトムアップでスタートして担当者変えたことはないですね。その人間と事業が一蓮托生の構図になっています。

 

質問者6:ユーグレナさんには管理会計の部門がいるということですが、具体的にどういったところを管理会計で見ているのかなというのをお聞きしたいです。

永田:新しく事業を始めた人にとっては命がけの大切な事業だと思うので、やめる時の制度ってすごい大切だなと思っています。管理会計チームでは、「管理会計上の経常利益ギャップを上下300万円以内に収めろ」と言っています。プロダクトの生き死にの判断を誤らないようにしましょうと。

そして全てのコストを見ています。採用や研究開発など含めた全てのコストを、支払うたびにどの事業かと記録しているので、支払いが発生するものは管理会計上全てのプロジェクトに割り振られます。人のリソースに関しても、どこに割かれているか報告されていて、その実査定もやっています。そのくらい管理会計は大切にしていて、その粒度でやっています。

寺田:管理会計を当社では経営戦略部でやっているんですけど、ユーグレナさんとそもそも業態が違うのはあるのかなと思っています。我々はメディアビジネスなので、いわゆる管理会計をコーポレートが全てやるというより事業部のメンバー一人一人が数値管理しないと回らないというか、適正な人件費や広告費の投下に係る日々の意思決定ができないので。

そもそも事業部にその機能が備わっていて、どちらかというとコーポレートでは数値の確からしさを嫌になるくらいお互いに整合性取れているかの突合をずっとやっています。事業部で数値を出してもらい整合性をコーポレートで確認するというフローです。細かさで言うと、最近さすがにやめましたけど、全社で飲み会やった時にどこの部署の人間が何人来ていて、とかサービスごとに全部その都度集計していました。

 

最後の一言

寺田:今日この経営企画部というファンクションに関してのお話をいただいた時点で私が強く思ったのは、「経営企画部」ができることは限度があるなと。そもそもトップマネジメント、経営陣の強い意志とか、経営企画に対して何を期待しているかがあって輝ける部署だなと思っています。

逆パターンは難しくて、経営企画の個々人がどんなに素晴らしくてもそれを意思決定するトップマネジメントがブレているとなかなか経営が回っていかないというのがあると思います。そういうストレスを抱えていらっしゃる方は、虎ノ門オフィスで待ってますので、ぜひ直接ご連絡ください。(会場笑)

ありがとうございました。

 

永田:今日はなんとなく登壇側みたいになってますが、僕自身経営企画上手くいっているかというと、本当に苦しんでるし悩みまくっています。

一番苦しんでいるところは何かと言うと、僕達って一生横槍みたいな部門なんですよね。社長はトップダウンじゃないですか。経営企画って横なんですよ。経営企画が上だって言い始めた瞬間にその会社やばいなと思っていて、常に横だなと。

その時に並走型で導いて行くのか、どんと押すのかとかスタイル色々あると思いますが、僕らはとにかく並走型を取っています。だから僕事業部を持っているんですね。

事業部を持っている理由が、他の事業部へ物を言うために持っているところがあって。頭でっかちにならずに、みんなを納得させる方法ってなんだろうと思ったときに、営業も事業も成功させている、ある種、大谷選手に野球のやり方教えられたら全員ウンウンと言うと思いますが、甲子園で見ているだけのおっちゃんだったらムカつくと思うんですよね。その差がすごくあると思っていて、自分でも徹底してトライしています。

それでいて、会社が新規事業をやることにすごく幅広く受け入れてくれる会社になっているので、ユーグレナ社も是非よろしくお願いいたします。我々は三田ですので三田にお越しいただければ(笑)

 

(以上)

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