物流業界の動向を見る~後編、中国市場2016.01.16

物流業界の動向を見る~後編、中国市場2016.01.16

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は、物流業界における日本と中国市場の動向に着目。2週にわたってお届けする後編の今回は、中国市場の動向を解説する。
物流業界の動向を見る~前編、日本市場〜

Xixi Du

物流業界の動向を見る~後編、中国市場

急速に発展する中国物流業界

中国経済の急激な成長、経済構造の第3次産業へ変換、都市化の加速などの背景に伴い物流業の市場は大きく拡大している。CEInetによると、世界金融危機の2009年を除いて、中国国内総生産は2001年の11兆元から2014年に63.6兆元へと成長した。

2001~14年までの輸出は年平均18.2%、輸入は年平均17.4%で増加、2014年度に2兆2,423億ドル(輸出)、 1兆9,592億ドル(輸入)に達した。これに基づき、中国社会物流総額も2001年の20兆元から年平均20%で成長、2014年には214兆元となり、世界第1位となっている。
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しかし、今、中国経済の発展は減速という「新常態」となっている。2011〜14年にかけて、実質国内総生産の年平均成長率は10%台から7%へ、同時期に輸出入の年平均成長率もそれぞれ7%、4%へと鈍化した。物流業界にも様々な影響が出てきたが、膨大な内需(詳しくは下記)が牽引しているため、10%台の伸び率を維持している。
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貨物運送量から確認すると、2001~2014年にかけて、トンベースでの貨物運送量は年平均9.2%で拡大している。モード別を見ると、2014年度、各モードの輸送分担率は:鉄道が8.7%、道路が76.0%、水運が13.6%、航空が0.01%、パイプラインが1.7%である。この14年間、道路モードの占有率は安定、鉄道モードから水運などへのシフトの傾向が見られる。
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次にトンキロベースから見ると、2001~2014年にかけて国内の貨物運送量は年平均9%で成長した。道路モードの伸び率は大幅な19.5%である。輸送分担率では、水運は約半分の割合を維持している。過去鉄道の比率は大きかったが、2007年から道路モードへシフトし始め、2014年度鉄道と道路の占有率はそれぞれ14.8%、32.8%となった。
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また、中国の道路建設や運送トラックは急速に整備され、宅配業の発展などによる要因で道路モードの占有率が増加してきていると考えられる。
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物流貨物額では工業製品が高シェア

物流貨物額を種類別で見ると、2014年度工業製品は社会物流総額の92%を占めたが、中国経済発展の減速、工業製品の生産過剰などの原因で、伸び率は鈍化している。これとは対照的に、企業・住民用品(主に社会小売品)は高い成長率を維持、2014年の貨物額は前年比33%増の3,696億元となった。社会小売品の単価は低いため、金額面では占有率が低かったが、数量面では、かなり拡大していると考えられる。
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社会物流費用の対GDP総額はまだ高水準

中国社会物流の費用を見ると、2004~2014年まで年平均13.8%で成長したが、2010年から成長は鈍化、年平均成長率は8.5%へと減速した。しかし、中国GDP総額に対する総物流コスト比率は先進国と比較して、まだ高水準である。中国統計局によると、中国GDPに対する総物流コスト比率1991年の24%から2014年には16.6%へ低下したが、日本やアメリカ等の主要先進国水準(約8%)の2倍にも及ぶ。
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総費用のうち、運輸と保管費用が8~9割を占める。物流費用が拡大しているものの、物流産業自体のソフト(サービス)面、管理面の品質は未だ低水準である。具体的な物流管理費をみると、 2014年度管理費は全体のわずか12.2%であった。さらに中国物流業企業でのバーコード、電子データ交換(EDI)と無線周波数識別(RFID)技術の普及率はそれぞれ80%、40%、20%で依然として低い水準である。

物流産業自体の未成熟な構造、割高な物流コスト、在庫の圧縮困難などに加え、物流サービスの品質や自動化システム、政策法規の未整備などが改善課題となっている。
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ネットショッピングは中国の宅配便業を牽引

CNNICの「中国のオンライン小売市場評価報告書」によると、2014年度中国のネットショッピング市場規模は2兆7,898億元、同年の小売総売上高の10.6%に相当。2010~14年までの年平均成長率は53%にも及ぶ。ネットショッピングのうち60~70%が配達の必要な実物の商品と推定されている。
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中国国家郵政局の「宅配便市場規制報告」によると、同時期(2010〜14年)に、宅配便の取扱件数は年平均成長率56.3%で23.4億件から139.6億件へと成長。2014年度、中国の宅配市場規模は初めてアメリカを超え、世界1位となった。月別で宅配便の取扱量分布を見ると、シングル・デイの影響で11月はピークの16.5億件に達し、通年の11.8%を占めた。
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収入面を見ると、2014年中国宅配便の総売上高は前年比42%増の2,045億元となった。2010~14年の年平均成長率は37.4%。収入の成長率は取扱件数より低かったため、宅配便の単価は2010年の24.6元から2014年の14.7元へと低下した。

宅配便市場の集中度は下降傾向、競争激化

「中国人民共和国郵便法」による中国宅配便企業の参入基準は以下となっている。
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2014 年末時点、ライセンスを取得した企業は約11,000社である。参入基準は他の業界と比べ比較的低いが、宅配単価も下がり続け、現在中国の宅配便サービスへのクレーム率は高くなり、ユーザー情報のリーク、荷物の遅延、紛失、損害、そして接客態度が悪いことがよく指摘されている。

2008年1月に、「宅配サービス業務基準」という初の業界規範が実施された 。2015年11月 、国務院はさらに「宅配便条例(意見募集案)」を公開。宅配便会社に定期的にユーザー情報の処分、ユーザーの情報の確保などが要求されている。

参入基準の低い、物流専門業者に対する不満、自己の物流情報の守秘も含め、たくさんの大手荷主企業(生産企業やネット通販事業者)は自らの物流資源を整えて、物流システムを構築している。例として、ハイアール、TCL、美的、京東、蘇寧などが挙げられる。2014年末時点、京東は全国46都市に倉庫196カ所、配送員2万人以上を持つ。また、蘇寧は全国1,700店舗を活用し実店舗から配送システムを構築した。

専門宅配便事業者は、国有の中国郵政速逓(以下EMS)、順豊速運、そして「四通一達」に代表される民営事業者の3大勢力が拮抗している。中国国家郵政局の「宅配便市場規制報告」によると、中国の専門宅配便市場の集中度は下降傾向で、トップ4位の市場占有率(取扱量)は2010年度の70.3%から2014年度の49.9%へと低下した。加えて2014年9月から国内の宅配便サービス市場が初めて外資企業に開放されており、競争は激化していくと予想される。
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EMSは2010年6月に設立され、国有企業中国郵政傘下の直営宅配物流企業。2011年と2012年に二回も上場申請を提出したが、「継続経営三年未満」と「オーディットに関する問題」の原因で、上場計画延期。2011年の目論見書によると、2009~11年EMSの売上高はそれぞれ196億元、225億元、258億元。運輸費用と人件費は総コストの半分を占め、同期間、EMSの純利益率は1.2%、2.2%、3.5%。2011〜15年宅配便の単価低下並び中国での人件費上昇(約年平均10%増)で 、近年EMSの純利益率はより低くなると予想される。

直営モデルのEMSと順豊の単価は比較的に高いが、運営安定、スピードと品質が良いため、ハイエンドの企業顧客の多様なニーズに対応できる。特に、国有企業、政府部門などのビジネス文書はEMSのみ配送でき、他の民間フランチャイズ企業は個人顧客と淘宝網Eコーマスを中心に事業展開している。企業の運営コストと人件費は抑えられたが、無差別化低価格戦になって、利益が出にくくなった。圓通速逓の取締役会長喻渭蛟によると、2014年夏以降、オーダーごとの利益は1元以下となって、2015年には0.5元へと低下する可能性もあり、非常に困難な状況となっている。
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まとめ

中国物流業界 は2012年からアメリカ超えて世界第1位の規模に成長した。「第12次五カ年計画(2011〜2015年)」の後期、経済発展の減速、対外貿易額減少の環境の中でも、中国物流業界は着実な成長を果たした。2015年1月~11月までの全国物流総額は202兆元。ハイテク産業、社会小売品などの物流市場の成長が注目される。

2016年から「第13次五カ年計画」が始動、GDPの成長率は6.5%と見込まれており、物流や輸送の需要の伸びも鈍化すると予測される。中国での物流企業は新たな成長ポイントを見つけ出すことが必要。そのうえ、貨物輸送単価の低下、競争の激化、中国物流業の効率ならびサービスはまだ低い水準、先進国と比較して改善の余地が大きい。

5カ年計画の他に、「一帯一路(1ベルト・1ロード)」構想は「シルクロード経済ベルト」と「21 世紀海上シルクロード」の二つのルートを通じて、中央アジアおよび南アジアをつないだ一つの輸送網形成を促進し、域内の潜在的な成長を喚起すると計画している。これは、元々中国国内で物流業発展が遅れている北西経済区と西南経済圏に新たな力を注入することを意味し、港湾、空港、道路、鉄道の建設と運営に加え、 物流業などにかかわる中国企業にとって、朗報であることは間違いないが、競争環境は一段と激化するだろう。

(写真:LeeYiuTung/iStock.com)