電力小売自由化を迎える日本の電力事業を確認2016.02.20

電力小売自由化を迎える日本の電力事業を確認2016.02.20

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今年4月以降の電力小売完全自由化を前に、小売部門への参入事業者が相次いでいる。今回は、その前提となる電力事業の歴史を、データをもとに振り返る。

Nozomi Nakagawa

電力小売自由化を迎える日本の電力事業を確認

発受電電力量のピークは2007年度

電気事業連合会によると、2014年度の発受電電力量(10社合計)は8936億kWh。2007年度には1兆kWhを超えてピークに達した。その後、金融危機の影響による生産活動の停滞で、発電量も減少。2010年度には回復の兆しがみられたものの、2011年度以降は原子力発電所の稼働停止などの影響もあり、緩やかな減少傾向にある。

なお、電力会社(2016年4月以降は一般電気事業者)の発受電電力量は、自社発電の電力量に、卸電気事業(現在は電源開発、日本原子力発電の2社)などからの受電量を加えたものである。
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販売電力量は2011年度以降減少傾向

販売電力量は、2007年度に9195億kWhでピークを迎えた。その後は、発受電電力量の推移と同様、減少傾向となっている。

販売電力量とは、電力会社から顧客に販売される電力量であり、発受電電力量から発電所内で使用した電力量や送配電などの過程で発生したロスを除いたものである。

なお、需要先の区分は、これまでの電気事業制度改革と部分自由化に伴って変化してきた。現在は、自由化対象となる特定規模需要とそれ以外に分類されている。
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大口電力量は経済動向を反映

大口電力は、産業用に使用される電力で、契約電力500kW以上のものを指す。現在も、販売電力量の約3割を占めている。

大口電力は、産業用である特性上、経済動向の影響を受けやすい。1965ー1990年の25年間は、著しい経済成長を背景に3倍以上の規模にまで急速に拡大したものの、その後販売電力量ピークの2007年までは年平均成長率1%程度と、成長率では鈍化している。
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産業別にみると、鉱工業が大口販売電力量の8割以上の水準を維持している。さらに内訳をみると、1965年度時点では化学と鉄鋼がそれぞれ2割以上だったのに対し、2014年度時点では化学と鉄鋼が減って機械が2割を超えており、鉄道・その他の割合も拡大している。

これにより、日本の産業構造において、素材型から加工組立型へと移行が進んだことや、第3次産業が拡大したことなどが読み取れる。
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石炭とLNGの使用比率が増加

2015年6月、2030年時点の日本の電源構成に関する原案が固められた。内訳は、再生可能エネルギーが22ー24%、原子力が20ー22%、石炭火力が26%、天然ガス火力が27%、石油火力3%である。

日本は、世界的にもエネルギー自給率が非常に低く、資源エネルギー庁「エネルギー白書」によると、2013年では約6%となっている。そのため、燃料の安定確保や経済的リスクの分散などの必要性から、幅広い燃料を使用している。
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電源別の発電電力量構成比をみると、2014年度は水力9%、石炭31%、LNG(液化天然ガス)46%、石油9.3%、LPG(液化石油ガス)他1.3%、新エネ3.2%となっている。前述の通り、2011年度以降は火力発電の割合が増加したが、その内訳は石炭やLNGの増加となっている。

石炭は、化石燃料の中では価格帯が低く、コスト面で対応しやすい。環境面にも注目すると、日本は、排煙の脱硫・脱硝において、世界的にも高い技術優位性を有する。また、LNGは、液化の際にCO2や硫化水素などの硫黄分が除去されるため、一般的にはクリーンエネルギーとされる。

水力発電は、発受電電力量全体の約1割と小さいが、これが安定供給されるかどうかによって、それ以外の発電にかかるエネルギー配分に影響をおよぼす。

水力発電の主流である自流式発電所(流れ込み式発電所と調整池式発電所の総称)では、基本的に川の水量が低下すると発電量も低下するため、水量の推移には十分留意する必要がある。水量に関する指標としては、一般的には出水率が用いられる。

熱効率や損失率の改善に取り組む

熱効率は、火力発電所において消費した燃料の熱エネルギーのうち有効に電気となった割合を示すものであり、火力発電所の性能を表わす目安でもある。

日本は、2000年度以降40%を超えており、世界でもトップクラスの水準である。また、排熱を利用して汽力発電を行うコンバインドサイクル発電を有する設備に関しては、さらに10%程度高い。
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主にガス火力発電所で使用されるタービンの中でも、大型のものについては、技術的な参入障壁が非常に高い。現在、世界シェアではGEが約4割、シーメンスが約3割と突出しており、三菱重工を加えた3社で9割以上を占めるといわれる。

なお、2014年に三菱重工と日立の事業統合で三菱日立パワーシステムズ(MHPS)が設立された。小規模発電所向けの中小型ガスタービンを中心として、2020年度までにガスタービンの世界シェア3割を目指す方針を示している。

効率性向上と同様に、損失の低減についても研究開発が行われている。電力は、発電してから顧客のところへ届くまでに、送配電線の抵抗、発・変電所での機械損、自社発電所内で消費される電力などにより、一定のロスが生じる。失われる電力を合計したものが「総合損失電力」であり、発受電電力量の1割弱がロスになるといわれる。

発受電電力量に対する総合損失電力の比率を「総合損失率」、さらに自社発電所内の消費電力を考慮したものを「送配電損失率」という。いずれも1980年度以降で1%程度の改善がみられる。技術的には、ビスマス系やイットリウム系の素材による超電導ケーブルなどが注目されている。
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電力会社の業績は悪化

ここで、電力会社の業績に目を向けてみる。各社の経常利益をみると、これまで安定的な推移を保ってきたが、2011ー2012年度は大きく下がっている。
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要因としては、東日本大震災の影響が大きい。東京電力では、特別損失として多額の原子力損害賠償費が計上されており、支払い状況をみると、2015年3月時点で総額約4兆7321億円となっている。

なお、賠償金については、電力会社全体での負担となっている。費用面では、原子力発電所の稼働停止に伴って燃料構成を変更したため、燃料費は2010年度の3兆6616億円から2014年度の7兆2921億円へと約2倍に増加した。

費用構成全体をみると、設備投資に伴う減価償却費、設備資金の調達にかかる支払利息、定期保安工事等に伴う修繕費などの割合が比較的高いが、各種設備の効率化や定期保安工事の抑制などの効果により、近年は減少傾向にある。

電気事業の構築物の耐用年数は、発送電用のものをみると、管路やケーブルなどいわゆる電線にあたるものが25年、鉄塔や鉄柱などが36年となっている。これを考慮すると、設備関連で修繕や新設を検討する時期に差しかかっており、減少したコストが再び増加する可能性も考えられる。
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電力事業者とは

日本の電力事業者の概要を改めて確認すると、発電部門、送電部門、配電部門、販売(小売)部門の大きく4つに分けられる。事業者については、電気事業法により4つに大別されている。
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電力小売自由化でPPSが注目

電気事業法は、段階的に改正が進められている。従来の電力会社は、これまで発電・送配電・小売を一貫して行ってきたが、2016年4月から実施予定の電力小売全面自由化以降は、一般電気事業者として送配電設備の建設、保守、運用などの役割を担う。一部の動向については、2015年3月の改正案閣議決定の際にも、こちらの記事で触れている。

電気事業法改正の第2段階では、小売自由化のほか、発電・小売・送配電ネットワークの事業ライセンス制の導入、発電事業の全面自由化、直前まで取引が可能な1時間前市場の創設なども行われる予定となっている。

さらに、2020年めどの第3段階にかけては、第2段階において経過措置として存続する既存の小売料金規制が段階的に撤廃されるほか、送配電ネットワーク部門における需給バランス調整用の電源調達市場創設と、発送電分離などが行われる。

現在、PPSの領域について、さまざまな業種の企業から電力小売事業への参入表明や料金プランの発表などが相次いでいる。2016年2月5日時点で、経済産業省資源エネルギー庁で発表されている特定規模電気事業者(PPS)一覧に掲載がある企業・団体数は802にのぼる。

電力の小売部門自由化によって、消費者が電力会社や料金体系を任意に選択できるようになるということは、電気事業における大きな転換であるとともに、電気事業というものが、ようやく消費者が体感できる領域にまで拡大してきたということでもある。

2020年にかけて、段階的に規制を撤廃しながら、どのように安定供給を維持していくのか、どのように適正市場を形成していくのかなども、今後注目していきたいポイントである。

(写真:Urban78/iStock.com)