住宅新時代の基準、ZEHの展望と課題2016.03.05

住宅新時代の基準、ZEHの展望と課題2016.03.05

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を取り上げる。

Yo Yamadori

住宅新時代の基準、ZEHの展望と課題

注目度高まるZEHとは

国内の住宅・建築物部門のエネルギー消費量が増加傾向を辿っている。資源エネルギー庁によると、他部門(産業・運輸)を含めた全エネルギー消費の約3分の1を占め、1990年から2011年の約20年経過で約33%(住宅部門だけでは約25%)の増加となっている。

また、同期間において住宅部門の二酸化炭素排出量は48.1%も増えた。このような背景から、建築物における省エネルギー対策が重要な課題となっており、政府もさまざまな施策を打ち出している。

また、先頃のCOP21の約束草案(2020年以降の削減目標)では、温室効果ガス排出量の9割を占めるエネルギー起源二酸化炭素の排出量については、2030年度に2013年度比で家庭部門約−39%にて提出、新たな枠組みが採択された。

そこで注目度が高まっているのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)である。

ZEHとは、快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などによりエネルギーを創ることで、1年間で消費するエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅のことを指す。

まず、住宅に関わる政策について整理する。

住宅に係る今後の主なエネルギー政策

2016年
 ・各家庭へのスマートメーターの本格設置開始、2020年設置完了

2020年
 ・改正省エネ法の義務化
 ・標準的な新築住宅でZEH の実現

2030年
 ・新築住宅の平均でZEH実現
 ・ホーム エネルギー マネジメント システム(以下、HEMS)を全世帯(5000万世帯)へ普及

(出所)
 「エネルギー基本計画」(平成26年4月11日閣議決定)
 「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(平成25年6月14日閣議決定)

政策の後押しも進む

エネルギー基本計画では、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現することを目指している。

また、住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指している。

日本再興戦略においては、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する。

具体的には、省エネルギー対策の一層の普及や住宅・建築物や建材・機器等の省エネルギー化に資する新技術・新サービス・工法の開発支援等を実施するという内容である。

強化される省エネ施策

「次世代省エネルギー基準」が見直され、集大成ともいえる改正省エネ基準が、非住宅建築物については既に2014年4月から、住宅については2015年4月1日から完全施行された。但し、全ての新築住宅における「義務化」は2020年をめどに実施される予定で、それまでの5年間は努力義務期間となっている。
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拡大する省エネ・創エネ製品群

このような省エネ施策が先行する中、創エネを含めた住宅設備や水廻り設備、断熱材などの需要も変化がみられる。これまでも、断熱材や斜熱塗料、複層ガラスなど施策の影響もあり市場に浸透している。

近年では、住宅用太陽光発電市場が急成長から持続的成長への移行期を迎え、高効率給湯器の普及も進展がみられる。さらに、家庭用燃料電池や家庭用定置型蓄電システムなども注目されている。

ここからは、代表的な設備について説明していく。

住宅用太陽光発電

創エネ領域で既に浸透している住宅用太陽光発電市場は、2013年まで拡大を続けてきたが、余剰電力の買取り価格引き下げや補助金終了の影響を受け2014年は減少している。

住宅用太陽光発電は、2009年に政府が「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」、「余剰電力買取制度(10kW未満対象)」を導入、急速に拡大した。

さらにFITの導入に伴い、戸建住宅においても10kW以上のシステムを搭載するケースが増加、FITの20年全量買い取り対象が導入件数の約2割を占めるまで拡大している。

今後は住宅用太陽光発電の容量である10kW未満中心の市場に戻り、安定的な市場形成が求められている。また、市場の縮小局面から、国のZEH推進による回復が期待されている。

住宅用太陽光発電の主要ベンダーには、大手ハウスメーカーの積水化学工業、積水ハウス、大和ハウス工業や太陽光発電工事のウエストホールディングス、住設などに強い商社のユアサ商事や高島、専業のエクソルなどが挙げられる。ただし、市場分散型であり、上位企業でも10%未満のシェアである。
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エコキュートvsエコジョーズ

オール電化で代表的な「エコキュート」は、空気中の熱エネルギーを集めて活用する省エネルギー技術「ヒートポンプ」を導入し、大幅なエネルギー消費を抑制できる高効率電気給湯器。

2009年10月には累計出荷台数が200万台、2011年8月には累計出荷台数が300万台を突破し、その後約2年間で100万台を出荷するなど普及が進んでいる。2013年10月には、累計出荷台数400万台まで拡大している。

2011年に発生した東日本大震災後、事業環境は悪化し、年間出荷台数は減少傾向を辿っていたが、ようやく復調の兆しが出てきている。このような状況下、メーカー各社は省エネ性を高め、使い勝手を高めた製品を投入による市場の活性化を図っている。

本分野の有力プレーヤーには、トップクラスの三菱電機、パナソニックをはじめ、ダイキン工業、コロナなどが挙げられる。パナソニック エコソリューションズ社は、業界トップクラスの年間給湯保温効率を実現、2016年1月には21機種を発売するなど品揃えに拡充、商品強化によるシェアアップを図る。

エコキュートに対抗し、比較的低コストの高効率ガス給湯器(エコジョーズ)(都市ガス仕様+LPガス仕様)が競合製品に挙げられる。2002年10月の販売開始以来、補助金制度の追い風もあり2014年3月末までのエコジョーズの累計出荷台数は534万4000台となっている。

業界全体でガス給湯器の年間総出荷台数におけるエコジョーズタイプの出荷台数の比率を2014年の33.5%から2017年には60%以上とすることを目指しており、2020年には合計2000万台の普及を目標としている。

給湯器大手のノーリツ、リンナイ、パロマが有力で、ノーリツは2015年7月にガスふろ給湯器の一部をエコジョーズへ移行した。省エネルギー基準改正にいち早く対応、デファクトスタンダード化が進展するとみられる。

また、コージェネレーションシステムの「エコウィル」は、2014年3月末現在で13万8000件の設置実績がある。導入された2003年発売当初は伸長したが、イニシャルコストが高いことから需要は低調な推移となっている。

本分野では、最大手の大阪ガスのほか、東京ガス、東邦ガスなども展開している。大阪ガスは、2015年3月末現在で累計約8万7000台を販売、うち太陽光発電を併用する「ダブル発電」は約6000件の実績、全体の約6割のシェアとなっている。
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家庭用燃料電池(エネファーム)

エネファームは定置用小形燃料電池システムのほとんどを占め、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくり出し、さらに、発電の際に発生する熱を捨てずにお湯をつくり給湯に利用する。

エネファームの導入支援のため、2011年の東日本大震災以降、「民生用燃料電池導入支援補助金」(燃料電池普及促進協会:FCA)の措置が講じられたが、2015年度で終了された。

2014年度の累積台数が11万5000台を超え、家庭用燃料電池発電システム全体が大きく伸長していることがわかる。エネファーム関連企業から成るエネファームパートナーズにおいては、2016年に市場を自立化し、2020年に140万台、2030年530万台(*全世帯の約1割)を普及させることを目標としている。

本分野については、東京ガスが注力しており、2014年度の累積販売台数4万3400台で約4割近いシェア、続く大阪ガスが同3万7021台で約3割のシェアとなっている。
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HEMS

HEMSとは「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略。家電や電気設備とつないで、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」、家電機器を「自動制御」することを指す。

政府は2030年までに全ての住まいにHEMSを設置することを目指している。電力の小売り自由化、2017年にはガスの小売り自由化が確実となった。自由化後のサービスの差別化において、省エネ対応・創エネ住設機器やHEMSはメニューに組み込まれ、市場としても拡大が期待され、ZEHでも必須のアイテムである。

HEMSの市場規模は、2011年度第3次補正予算などの導入補助制度を背景に導入が加速、2012年度の市場規模は20億円超の規模となった。足元では、ハウスメーカーなどでの新築物件への積極的な導入も奏功し、100億円程度の市場が形成されつつあるとの見方もある。

本市場には、パナソニックやNECなどを始め、ミサワホームや積水ハウス、トヨタホームなどのハウスメーカーなどのほか異業種からの参入も数多くみられる。

しかし、現状では「自動制御」などを行う際のメーカー間ルールなどがまとまっておらず現状では自動制御を行えるのはHEMSと同一メーカーの機器に限られることが大きな課題となっている。
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2020年に過半数をZEH化へ

改正省エネ基準の義務化や低炭素建築物認定制度の導入にみられるように、住宅の省エネ化・低炭素化に関する施策が近年、次々と打ち出されている。その背景にある方向性、政府が目指すところはZEHの実現に結びつく。

ZEHの定義・評価時方法や普及方策を検討するため、ZEHロードマップ検討委員会が設置された。今後、大きな流れとしては、実証事業によりガイドラインが設けられ、ブランディングや技術者の育成などが平行して進められる。

ZEHは、エネルギー特化型と総合評価型の中央に位置し、省エネ率は最も大きいゾーンに位置する。ただし、過去に設けられたLCCM(Life Cycle Carbon Minus)住宅、認定低炭素住宅、スマートウェルネス住宅など混在しており、基準区分などわかりにくく、理解が得られる土壌づくりが求められている。
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大手ハウスメーカーはZEHに積極的

大手ハウスメーカーはZEHをすでに展開しており、技術的には実現可能な領域にある。また、経済産業省 資源エネルギー庁では、導入費用を支援する「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業(ネット・ゼロ・エネルギーハウス支援事業)」を2012年から推進しており、その数は2014年度では6146件(ハウスメーカー5507件、一般工務店639件)に上る。

また、住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業の予算は、2016年度の概算要求額で190億円(2015年度7億6000万円)(2014年度補正150億円)と増額がみられる。

ハウスメーカーでは、大和ハウス工業「SMAEco(スマ・エコ)」、積水ハウス「Green First HYBRID」、住友林業「Green Smart(グリーンスマート)」、トヨタホーム「スマートハウス シンセ・フィーラス/シンセ・アスイエ」、パナホーム「CASART(カサート)」などが挙げられる。
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まとめ~普及の課題は地域工務店か

躯体の設計などの技術力やノウハウについて、大手ハウスメーカーは既に確立しつつあることは上記で述べた通りである。一方で、地域の工務店ではこうしたノウハウを持っていないところも多く、2020年に20万戸という目標については、この点が課題と言えそうだ。

大手ハウスメーカーの新築着工戸数は大体4分の1程度。残りの4分の3は地域の工務店などが担っている。本格的な普及に弾みがつくかどうかは、実はここの動きが大きなカギを握っている。

こうした状況を踏まえたのか、経済産業省は2月19日、補助事業向けに『ZEHビルダー登録制度』を創設すると公表した。ハウスメーカー、工務店、建築設計事務所などを対象に公募する。

平成28年度「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業費補助金ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)支援事業」においては、登録されたZEHビルダーが設計、建築(既築改修を含む)するZEHのみが補助対象となる予定。Nearly ZEHは含まない。

登録要件は2020年度における年間のZEH建築(改修)割合を50%以上と定め、各年度の目標値を設定・公表することなどである。公募期間は4月上旬から中旬としている。

今後もこうした動きが活発化することで、ZEHの普及が進むのか、工務店の動きに注目する必要がありそうだ。

 

(写真:MarioGuti/iStock.com)

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