日産追浜工場見学から国内生産を考える2016.03.19

日産追浜工場見学から国内生産を考える2016.03.19

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は昨年訪問した日産追浜工場を再度訪問したので、その変化を追った。

Nozomi Nakagawa

日産追浜工場見学から国内生産を考える

海外生産比率は各社で大きな差

海外生産比率は日産とホンダが8割超と突出して高い。トヨタ自動車も比率ではゆるやかに上昇を続けており、今後は各生産拠点間の統合や集約なども進むものと考えられる。特に生産設備の老朽化が進む一部の国内工場などは、今後の再編の対象となるだろう。
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引き続き好調な北米販売

世界の販売台数で、第3四半期までの累計と通期見通しを比較すると、トヨタとマツダが第4四半期でややペースを加速する必要はあるものの、概ね達成が期待される。
車_修正版-03_販売台数_通期順

地域別では各社濃淡あるものの、総じて好調な北米販売が台数増加のけん引役となっている。それに対して中国やASEANでは成長率の鈍化がみられ、日本の販売も苦戦が続いている。

日産追浜工場を再訪

こうした環境の中、昨年日産追浜工場を訪問し、その後の変化を追うために、2月末に同工場を再度訪問した。(前回2015年5月の動向については、こちらの記事にまとめた。)
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前回の記事で指摘した通り、直近数年は工場稼働率がかなり低かった。1直の場合、年間生産能力は12万台。当時のシフト計画やヒアリング情報などから算出すると、稼働率は約60%であった。

今回の訪問時には、シフト計画は90台増加しており、月間計画台数では2倍以上の水準となっていた。稼働率も79%となり、約20%上がっている計算になる。ただ、タクトタイムは70秒ほどで、最近の高稼働工場と比較すると、まだまだペースは緩やかである。
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先日、追浜工場が今年8月から2直体制になると報道された。組立作業の従業員も400人ほど増え、車種としてはノートが追加される。追浜工場の大幅な稼働率上昇で、本来の生産能力に向けた再構築が進められることとなる。

追浜工場の役割を確認

日産追浜工場の特徴として、1つの生産ラインで電気自動車(EV)である「日産リーフ」とそのほかのガソリン車を混流生産していることは、昨年の記事で触れた通りである。追浜では、2010年から日産リーフの生産を開始し、同車種にとってはマザー工場としての役割も果たしてきた。

日産リーフは、2012年に米国スマーナと英国サンダーランドでも生産が開始された。年間生産能力はどちらも55万台で、スマーナについては2014年度末までに65万台に増強された。

車種について、スマーナでは「アルティマ」や「マキシマ」、「ローグ」などセダンとSUVが中心。サンダーランドは、SUVの「キャッシュカイ」も手がけるが、日産リーフのほかはコンパクトカーの「ノート」と「ジューク」を生産している。

ここで、生産車種の位置づけを確認したい。

kg単価で分析

現在販売されている車種の販売金額を車両重量(kg)で割ると1kgあたりの単価が算出できる。たとえば、追浜の生産車種である、「ジューク」は1836円/kgとなる(中間グレードにて算出)。

このような算出方法で、国内販売車種を縦軸にkg単価、横軸に排気量をプロットすると以下のグラフが作成できる。
車_修正版-04_kg単価

ちなみに昔は、排気量順に並べるときれいな右肩上がりのグラフが描けたが、エンジンの集約化や近年のHVの導入で変化が出ている。

追浜工場の生産車種であるEVのリーフを計算すると、2499円/kgとなり、上記のグラフに当てはめてみると、従来のエンジン排気量の3Lクラスの値付けがされていることが分かる。

追浜工場でのほかのガソリン車の生産車種はkg単価でいうと、1500円/kgから2000円/kgの車種を生産している。参考までに、栃木工場では3000円/kgを超える車種を生産している。

このグラフを、フルモデルチェンジごとに作成して変化を追っていくと、値上げの様子など面白い分析ができる。ここでは紙面の都合で詳細分析はまたの機会としたいが、原材料である鉄やアルミの1㎏あたり価格と比較するなどして、付加価値を考えることなどもできる。

追浜工場は、以前はマーチを生産していたが、今はリーフなどを生産し、やや高付加価値車種にシフトしたと言える。一般的にkg単価が高い車種は、生産工程でも工数をより必要とすることが多い(EVの部品点数の問題は別として)。

追浜工場は、これまで通りマザー工場としての役割を果たしつつ、工数を抱き込むことで付加価値を向上させながら、国内生産100万台体制を担う位置づけとしていきたいのだろう。

しかしながら、今回の2直に向けた追加生産車種であるノートのkg単価は、1589円。既存の生産車種であるキューブの1485円/kgと比べても大きな差は無いことから、今回は単純に稼働率向上を狙った動きと言える(採用されているプラットフォームの関係もある)。

今後、国内の生産能力は余剰が予想され、こうした生き残りをかけた工場間の競争も激化するだろう。

各社今後の成長戦略を発表

今年に入り、各社今後の体制についての発表が相次いだ。

トヨタは、今年4月付で7つの製品群と2つの地域に分けたカンパニー制を導入する。今回の体制変更のポイントは、機能から製品へと軸を移すことで、機能間の調整を低減し、全ての仕事を「もっといいクルマづくり」とそれを支える「人材育成」につなげていくことである。
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日産も、新しい指針である「インテリジェント・モビリティ」を発表。電動化、知能化、社会とのつながりについての総合的な考え方を打ち出すのは、今回が初めてとなる。

具体的には、自動運転に関する「日産インテリジェント・ドライビング」、EVに関する「日産インテリジェント・パワー」、クルマと社会のつながりに関する「日産インテリジェント・インテグレーション」である。

自動運転については走り、快適性、安全性の3要素を重視する。2020年までに日本、欧州、米国、中国向けの主要モデルに自動運転技術を搭載予定とし、高速道路などで走行可能なレベルのものについては、2016年中に日本で発売するとしている。

ホンダは北米、中南米、欧州、日本、中国、アジア大洋州の世界6極体制を構築し、車種については、電動化の主軸をプラグインハイブリッド車(PHV)とする。2030年をめどに、四輪車の販売台数のうち3分の2を、PHVを始めとした環境対応車にする方針である。

なお、2030年時点でFCVとEVが販売台数の約15%、PHVとHVが50%以上に達すれば、CO2削減目標も達成可能と見込んでいる。

3社がグローバル市場における立ち位置の確立を目指す一方で、自社のブランド力向上や生産効率化、得意な市場への強化を中心とした戦略もみられる。

たとえばマツダは、今年に入ってから国内の販売チャネルを一本化し、ミニバンの現行車種を2017年に生産終了、SUVに経営資源を集中するなどの方針を示した。

富士重工業は、先日「スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)」の概要を発表した。ガソリン車だけでなく、ハイブリッド車(HV)、PHV、EVなどの電動化車両も全てSGPで製造できるようにする。2016年投入の次期「インプレッサ」から全車種で順次採用し、2025年までの商品展開を見据えている。

また、北米の子会社Subaru of Indiana Automotive(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)の最大のミッションは「能力を増やすこと」と明言し、これまで得意としてきた北米市場にさらに注力する方針である。

まとめ~国内生産の生き残る道

各社、電動化や燃料電池車など多様なニーズに対応するべく、様々な研究開発を行っている。従来の内燃機関もまだまだ活躍が期待されるものの、こうした新しい車が量産規模に成長してくると、生産側での対応も複雑になってくるだろう。

追浜工場のように、ガソリン車とEVの混流生産や、現在は実質手作りでの対応となっているトヨタの燃料電池車など、新しいものに対する対応は、やはり日本国内の工場で行われることが今後も予想される。

たとえば独Mercedes-Benzは、従来型のロボットの置き換えが進んでいないことや、近年カスタム化のバリエーションが増えてきたことなどを受け、人による作業の方が効率的であるという判断から、Sクラスの生産ラインのロボットを削減している。

今後は、人とロボットの作業領域の最適化も重要になってくると考えられる。純粋な生産台数能力という規模ではなく、多種多様な生産車種に対応しながら付加価値をどれだけ高められるかが、今後の国内生産の行方を左右することになりそうだ。

 

(写真:iStock.com/EdStock)