拡大する収納ビジネス~セルフストレージ2016.04.02

拡大する収納ビジネス~セルフストレージ2016.04.02

SPEEDA総研ではSPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は拡大する収納ビジネス、セルフストレージを取り上げる。

Yo Yamadori

拡大する収納ビジネス~セルフストレージ

セルフストレージとは?

都市部を中心にトランクルーム(貸コンテナ)を見かける機会が多いのではないか? 家庭の季節用品から趣味のコレクション、法人需要の書類・資材など荷物の保管ニーズは様々、最近は24時間自由に出し入れできるサービスも出現しており身近になってきている。

セルフストレージとも称されるが、米国が発祥の地で、1970年代から普及が始まり、現在では全米で5万カ所、1700万室以上まで拡大。10世帯に1世帯が利用するまで浸透している。日本ではまだ50万室程度の供給数であると推定されているが、都市部を中心に需要は高まる傾向にある。

足元では、京葉物流とマレーシア・香港にストレージ事業を展開しているGeneral Storage Companyがジャパンセルフストレージを設立するなど、セルフストレージ市場の活発化がみられる。

トランクルームの成り立ち

日本セルフストレージ協会によると、セルフストレージとは、主に一般の利用者が収納スペースをレンタルし、家具や衣類、趣味のものやスポーツ・レジャー用品などを置き、自身で荷物を出し入れできるサービスを指す。

屋内型トランクルームと屋外型コンテナがあり、収納用途により使い分けられている。海外では「セルフストレージ」と呼ばれているが、日本では「トランクルーム」のほか「貸倉庫」や「レンタル倉庫」といった複数名称が使われている。
トランクルーム-01

トランクルームは、個人の家財道具・書籍・美術品・衣類・書類等、または企業の事務機器や書類などの、商品ではない物品を預かる。2002年に改正された倉庫業法では、トランクルームの定義を、「その全部又は一部を寄託を受けた個人の物品の保管の用に供する倉庫とすること」としている。

広義のトランクルーム業者の多くは、寄託者の保管責任を負わない。このようなサービス業者を区別して「レンタル収納スペース業者」と呼ぶ。トランクルーム業者とレンタル収納スペース業者はユーザー層においても違いが見られる。

・トランクルーム業者・・・企業(文書保管、海外赴任者の荷物、貴重品・美術品等)、個人(家財道具中心)

・レンタル収納スペース業者・・・ほとんどが個人向け(家財道具がほとんど)

となっており、トランクルーム業者のユーザー層は実際には法人が多い。なお近年、文書保管の需要が拡大し、電子化や磁気化による保管が行われるようになった。

このため文書保管業事業は従来のスペース貸しのサービス範疇ではフォローしきれなくなっておりトランクルームとは独立したサービスとなっている。

トランクルームの歴史

わが国最初のトランクルームは、1931年に三菱倉庫が開設した。国民生活が豊かさを増し家財道具が増え保管スペースへのニーズが高まったことにより、徐々に参入業者が増加。バブル期以降急速に拡大した業界である。

トランクルームサービスが台頭してきた1980年代には、海外赴任者などの家財道具一式を預けるニーズが急増してきた。

基本的にサービスは個人の荷物の長期預かりであるが、契約はBtoBで行われることが多かった。これに付随して文書保管や美術品、貴重品などのニーズも生じてきた。

また、試験的に港湾部の海上コンテナを仕切り、スペース貸しを行ったところ、通常の貨物預かりよりも収益性の良いビジネスが成立することがわかり、こうした形態のサービスが拡大した。

米国・海外との比較

翻って世界のセルフストレージ市場をみわたすと、米国が最大市場で220億ドルの規模、市場普及率においても先行している。日本は住宅事情や文化も異なることもあり、現状では規模感に隔たりがみられる。今後は、より的確なサービスの拡充による成長余地が期待される。

米国と日本では、トランクルームのユニットのサイズと料金が、大きく異なる。これは、米国の大量消費型購買と住宅の広さ、不動産価格が大きな要因となっている。

日本では、住宅が密集する都市部に集中しており、坪単価も比較的高くなっている。ユニットの平均サイズは、日本は約9平方メートル、アメリカでは約13.5平方メートル。アメリカの平均サイズ約3×4.5メートルに対し、日本で特に人気があるのは1畳から2畳となっている。
トランクルーム-02_世界のセルフストレージ

トランクルーム-03

 

国内トランクルーム市場の動向

キュラーズはじめ主要トランクルーム大手の公開している情報によれば、年間約10%の伸び率で成長し続けている。特に、施設の品質の向上と消費者の認知度の高まりが追い風となっているようだ。

トランクルーム市場全体の市場規模は、2014年、2015年では約500億円前後に迫り、2027年には1000億円規模まで拡大が見込まれている。
トランクルーム-04

ビジネスモデル

屋内型トランクルーム市場は上位3社で約50%をシェアとみられるが、ビジネスモデルは各々異なる。

キュラーズは、好立地にありながら活用されていない建物を取得し、コンバージョンによりセルフストレージ施設に改修するモデル。ほとんどの施設がビル一棟を所有し、店舗スタッフが常駐している点が特徴となっている。昨年には、全国50店舗目となる500室を超え大型新物件を東京・中野に購入、物件取得を加速している。

上場企業のエリアリンクは、日本最大級の店舗数を誇る「ハローストレージ」を全国に展開。活用されていないオフィスビルの1フロアまたは複数フロアをリース、ユニットを設置し、収納スペースをエンドユーザーにまた貸しする。

ライゼは関東と関西に約480店舗を展開。土地の所有者とライゼが組んで、ライゼが2階建てのセルフストレージ施設をその土地に設置し、ライゼが所有者に代わって施設の管理運営を行う。
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近年、セルフストレージ市場は、稼働率の低い古いビルや土地のオーナー、REITなどの投資プレイヤー、ビル管理会社などのアウトソーシングサービスの3者が揃ったことで大幅な供給拡大が可能になったとみられる。

今後の成長ステージは、トランクルームの滞納保証が主力のパルムの予測によると、国内大手や外資系企業のビルイン型セルフストレージに参入が活発化し、その後、セルフストレージへのファイナンス拡大によりマーケットが本格的に立ち上る。

さらに、2025年にかけては一般消費者への認知が高まり世帯普及率が向上し、REITなどファンドへの組入れも定着すると予測、普及率3%の2,500億円程度まで拡大すると見込まれている。
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収納ビジネスに新たな可能性、「minikura(ミニクラ)」

このような中、美術品やワインセラーの保存事業など専門性の高い倉庫事業を手掛ける寺田倉庫のウェブサービス「minikura(ミニクラ)」が注目されている。

ウェブを使ってマイページで自分が預けたものが可視化できることと「箱1つあたり月額200円」とシンプルな料金体系がポイント。2012年9月スタートから2014年12月に会員数20万人、収納物1000万点を突破している。

また、同社はこのサービスをプラットフォームとして、ヤフオク!やバンダイとの協業「魂ガレージ」、アニメイトとの連携による「アニメイトコレクション」、NTT東日本などさまざまな企業と協業を行っている。
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まとめ~ITの活用が成長のカギ

近年、都市の集積により機能・便益の向上が一層求められている。このため、不稼働建物のストックをコンバージョンなどにより再生することが注目されている。

都市や経済の発展や時代の変遷に伴い、建物の用途が地域のニーズと適合しなくなった事例が多く散見される。建築物の築年数が比較的浅い場合、トランクルームへのコンバージョンにより有効活用ができる一方、遊休地を活用したいオーナーニーズの中でも、トランクルームが選択肢の一つに挙げられる。

業界としては、利用料の安いコンテナ型トランクルームでは建築確認の不適合やセキュリティ機能など未整備な状況にある。さらに、こうしたコンテナ型は統計などにも補足されていない状況で、市場動向も不透明な部分もある。

一方で、大手屋内型トランクルーム事業者は、消費者への認知度を高め、サービス向上を図っており、市場としては発展段階にあるといえる。

このような中、寺田倉庫のWEBサービス「minikura(ミニクラ)」の箱1つからのクラウド収納は、新たな収納ビジネスとして注目される。旧来のコンテナ型トランクルームの概念を超えた新たなサービスが、今後の市場創造の牽引役となることが期待される。

今後の日本市場の拡大は、ITの活用がポイントとなりそうである。

 

(写真:iStock.com/GaryMuth)

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