機能性表示食品の現状と課題2016.06.11

機能性表示食品の現状と課題2016.06.11

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は、制度開始から約1年となる機能性表示食品の現状と課題をみる

Nijie Kuboki

機能性表示食品の現状と課題

保健機能食品は効能表示が可能

2015年4月から機能性表示食品制度が開始され、1年が経過した現在では商品としても報道においても、何かと目にする機会が増えているだろう。

まず機能性表示食品とは何か、類似制度である特定保健用食品(以下トクホ)や栄養機能食品と合わせて概略を述べる。
1_健康食品分類

トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品はいずれも「保健機能食品」であり、通常の食品と異なり食品の効能を表示できる。

トクホは、医薬品ほどの精度ではないが、明確な根拠が確認できた食品について、効能の広告を許可する制度である。個別に審査を要するもので「国のお墨付き」となるが、申請・承認された文章のみが表示対象となる。

栄養機能食品はビタミンなどの栄養素の機能について、あらかじめ規定された表記を記載することができる。表記内容は限定されるが、審査等の手続きは不要である。

2015年に新設された機能性表示食品は、両者の中間に位置する制度となる。明示的な機能の広告を行うことができるが、個別審査が不要となるため、販売までの時間及び費用が大幅に短縮できる。

市場規模でみると、保健機能食品の中では特定保健用食品が最大であり、機能性表示食品の市場はまだ小さい。また特定保健用食品にしても、健康・美容食品全体の市場からすると1/4程度と一部にしかすぎないことがうかがえる。
1.5_健康食品市場内訳
なお、参考までに広告の表記について関連法令を記載する。
2_参考関連法令

トクホには制度上の課題

機能性表示食品の制度が開始されたのは、トクホについて多くの課題が指摘されていたためだ。特に課題とされていたのは許可取得にかかる期間の長さと費用の問題である。

やや古いデータになるが、2009年の調査によると、申請から許可取得までの期間は2年が最多、中には5年以上かかった企業もある。開発開始から販売までの期間ではさらに長く、最多が3年、次いで5年以上の順となる。

また根拠となるデータを取得する試験費用もかかり、ヒト試験では6割が2000万円以上となっている。

審査期間の長期化や費用の拡大の要因の一つに、審査中に指摘事項が出された場合、追加試験の実施が必要であったことが挙げられる。

このような時間と費用の投資が可能なのは大企業のみであり、トクホは中小メーカーには活用しにくい制度といえる。そのため、審査基準の明確化とともに、より簡便な手続きで活用可能な制度に対する要望が多く、新制度の導入に至った。
3_トクホ取得期間

4_トクホ_費用

機能性表示食品市場が大幅拡大

健康食品市場全体からみると、機能性表示食品市場がまだ小さいことは冒頭で述べた通りであるが、成長余地は大きい。富士経済研究所によると、トクホの市場は2016年0.6%減と横ばいだが、機能性表示食品は131%増と2倍以上に拡大する見込みである。

2015年前半の届出が少なかったこともあるが、これまでトクホ申請をあきらめてきた企業の参入も予想される。2016年は昨年以上に機能性表示食品が注目されるだろう。
5_健康食品市場

トクホは乳製品、清涼飲料が中心

ここで、機能性表示食品の類似市場としてトクホ市場をみてみたい。日本健康・栄養食品協会によると(富士経済とは集計方法の違いから数値が異なることに留意いただきたい)、トクホ市場はヨーグルトなどの乳製品が最大品目となる。

近年、増加が目立つのは清涼飲料だ。2012年にメッツコーラ、ペプシスペシャル、2013年に伊右衛門特茶など清涼飲料の投入が相次ぎ、清涼飲料は2011年から2015年で2倍以上に拡大した。

これらのトクホ市場をけん引するのはメガブランドで、乳製品では明治のブルガリアヨーグルト、ヤクルト、サントリーの各種トクホ飲料はそれぞれ500~800億円程度の売上を持つ。
6_トクホ市場

 

7_トクホ製品

機能性表示食品に300件超の申請

ここからは新制度である機能性表示食品の現状をみてみたい。

機能性表示食品の届出件数は1年間(2015年度)で300件を超えた。2016年に入ると月間200件ペースであり、今後さらなる増加が見込まれる。

また届出企業数107社(3月時点)のうち、トクホの許可を持つ企業は35社にとどまり、トクホを申請できなかった企業に活用されていることがうかがえる。幅広いメーカーに利用可能な制度という、新制度の目的の一つは満たしていると考えてよいだろう。
8_申請件数

ファンケルは「えんきん」が好調

では、実際に新制度を活用した商品の売上は伸びたのか。ここでは具体例として、ファンケルのえんきん、カゴメのトマトジュースを挙げる。

まずファンケルの事業別売上高をみてみよう。

近年は他の通販化粧品メーカーに押されいずれの事業も減少傾向にあったが、2015年度は大きく増加、特に栄養補助食品事業は23%upとなった。特に代表商品であるえんきんは売上高が27億円増加、その他の機能性表示食品も表示前比で3.3倍と大きく寄与した。
9_ファンケル売上

 

 
10_えんきん売上

カゴメのトマトジュースも売上増

今回えんきんとともに報道されることが多いのがカゴメのトマトジュースである。発売自体は1933年にさかのぼる同社の看板商品の一つだが、「高リコピントマト使用」「血中コレステロールが気になる方に」という表記で1/25〜2/14の出荷量が前年比328%となった。

同社の1-3月期の売上、伊藤園の売上、野菜飲料市場をみても明確な増加がうかがえる。
11_カゴメ売上

各社で売上増が頻発

参考として機能性表示食品を販売した各社の販売動向を示す。報道ベースのため大手メーカーが多いが、効能の表記によって消費者の購買行動を大きく促すことがうかがえる。
12_各社売上

現在は既存の商品について届出を行う商品が多いが、今後機能性表示食品用に開発・新規販売する商品が増えるだろう。

トクホでは10~20%の価格上乗せが実施されており、新制度にも同様の付加価値効果が認められれば、価格低下圧力に悩むメーカー側としては大きなメリットとなる。
13_トクホ価格

まとめ~有効性、品質に課題

メーカー側にはメリットの多いことが明らかな機能性表示食品であるが、いくつか課題も指摘されている。特に、消費者側の知る権利、選ぶ権利に対して適性な表示がされているかどうか、また表示通りの品質が担保されているかどうかなどが重要ポイントとして挙げられる。

消費者庁が行った機能性表示食品に届出された商品の事後調査では、品質管理上の問題が見つかった。

・ 機能性関与成分の含有量が、表示値を下回っている、若しくは過剰に含まれている

・ 同一製品にもかかわらず2ロット(または2パッケージ)間でのばらつきが大きい

機能性表示食品は建前上、トクホと同程度の安全性、有効性を求めている。その担保が専門家による第三者機関か、企業自身かという違いだが、実際には製造時の品質を含め、疑義が持たれる場合も多いようだ。

開発、根拠データの取得とチェック、販売を一貫してメーカーが手がけることは、効率的ではあるがストッパーがいないともいえる。表記文章を変更するだけでも許可が必要なトクホと異なり、機能性表示食品の場合は過剰な広告表示となりやすいことに注意を要する。

消費者の購買行動に与える影響の大きさと、実生活を想定した科学的・客観的根拠の測定というジレンマは、ある意味、自動車の燃費問題と同じ構図とも言える。

企業、消費者の双方にとってよい制度となるには今後も注視が必要となる。