ドーナツ市場の行方2016.06.18

ドーナツ市場の行方2016.06.18

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は、コンビニドーナツの投入から1年が経過したドーナツチェーンの動向をみる

Nijie Kuboki

ドーナツ市場の行方

専門店市場はミスドの寡占

日本のドーナツ専門店の市場は、事実上ミスタードーナツの寡占となっている。

現在のドーナツチェーンの店舗数を比較すると、100店舗に満たないクリスピー・クリーム・ドーナツや、はらドーナッツに対し、ミスタードーナツは1,271店舗と大幅な差がある。

他の外食チェーンを見ても、ドトールコーヒーを超える大規模チェーンである。
1_ドーナツ店舗数_

参考までに世界のドーナツチェーンを紹介すると、首位が米Dunkin’ Donuts、次いでカナダのTim Hortons、Krispy Kreme Doughnutsとなる。

なお、これらのドーナツチェーンは、スイーツやファストフードというよりは、低価格帯のカフェチェーンのような位置付けとなっており、日本のドーナツ市場とはやや異なっている。
2_世界ドーナツ店舗数

コンビニ以前の新規参入はわずか

ドーナツ市場の経緯を簡単に振り返る。1970年代に米ダンキンドーナツが上陸、1971年にミスタードーナツ1号店がオープンした。同時期にハンバーガーやファミリーレストランなど日本の外食チェーンが相次いでオープンしており、外食産業ブームの中で成長してきたことがうかがえる。

1990年代から外食産業自体が低調期に入り、特に1998年のダンキンドーナツ撤退後のドーナツ市場は、ミスタードーナツの競合となるプレーヤーがいない。2006年に米クリスピー・クリーム・ドーナツが日本市場へ参入したが、前述の通り最大でも100店舗に満たない規模であった。

しかし、2015年にセブンイレブンが「セブンカフェ ドーナツ」の販売を開始、ローソン、ファミリーマートも後に続いた。持ち帰りの比率が高いとされるドーナツ市場に対し、突然の巨大プレーヤー参入が話題となったことは記憶に新しい。

2016年にはクリスピー・クリーム・ドーナツが20店舗以上店舗を閉鎖、また、はらドーナッツは「まいどおおきに食堂」のフジオフードフードシステム傘下となるなど、業界内ではさまざまな動きが生じている。
3_ドーナツ経緯_

国内首位でも赤字

長らくミスタードーナツの寡占状態だったドーナツ市場だが、コンビニ参入以前から同社の業績は悪化している。ダスキンのフード事業をみると、2000年から売上の減少傾向が続いており、2013年度以降は営業赤字となっている。

なお、2014年度はダスキンの売上は微増となったが、ミスタードーナツの全店売上(FCを含む全店の総売上)では減少のままである。
4_ダスキンフード売上

5_ミスドチェーン売上

 

原価、人件費上昇も利益圧迫要因

利益低下の要素として原材料価格や人件費などのコストアップが挙げられる。ドーナツの主要材料である小麦粉、砂糖類、油脂類は2~3割近い上昇を見せる。また人手不足による人件費の高騰なども外食産業に影響を与えている。
6_物価

外食産業は総じて好調

しかし、原材料や人件費の高騰は他の外食企業にも当てはまるものであり、他の企業はそれほど悪い状況にはない。直近年度の営業利益率と直近5ヵ年の売上増加率(年平均成長率)をみると比較対象時期がリーマン・ショック直後ということもあり、各社売上は増加、営業利益率についてもほとんどがプラスである。ミスタードーナツのような3期連続営業赤字となると(ダスキン全社では黒字であるため同列にはできないが)、外食上場企業約100社の中でも1社のみである。
7_外食散布図

海外ドーナツチェーンも堅調

海外のドーナツ企業の業績も好調である。売上高は米国内事業を中心に増加しており、利益水準も高い。Krispy Kreme Doughnutsは営業利益率10%程度、Dunkin Brands Groupはフランチャイズ店舗の多さから40%前後の水準を維持している。

なお、Krispy Kreme Doughnutsは2016年5月にドイツの投資家グループJAB Holdingの傘下となった。JABホールディングは米コーヒーチェーンのPeet’s Coffee & Teaを傘下に持ち、昨年末にカプセルコーヒーの米Keurig Green Mountainを買収、3事業によるシナジーを見込んでいるようだ。
8_米売上

出店地域にみる戦略の違い

外食産業の問題でもドーナツ自体が敬遠されているわけでもないようだ。ここで日本のミスタードーナツに戻って、同社の戦略を考えてみたい。

数値データなどは公表されていないが、ブランドやターゲット層、ビジネスモデルなどの違いは出店地域にも表れる。ミスタードーナツ及び外食各社の店舗分布を下図に示す。

9_ミスド店舗
都心部には少なく、住宅地域を中心に満遍なく分布する

10_クリスピ&はら店舗_
画像ではわかりにくいが、ショッピングセンターなど集客力の高い立地が多い

11_ドトール店舗
都心部、特に東京駅、新宿駅、渋谷駅など主要駅に多く分布。住宅地域にも多い

12_マック店舗
都心部主要駅周辺に複数の店舗があるが、基本は住宅地域の駅前などに立地する

13_海外系店舗
表参道、東京駅近辺、お台場などブランド力・情報発信力の高い地域への出店が目立つ

ミスドはマス需要狙い

以上のように、ミスタードーナツの店舗立地は、住宅地域に「まんべんなく」が特徴である。地域別の人口と店舗数をみると、ミスタードーナツは人口比にほぼ比例しており、地域的にも満遍なく分布していることになる。1970年代という設立の経緯からしても、ファミリー層を中心にマス需要をターゲットとしていることがわかる。

しかし、マス需要をターゲットとした産業は、近年苦境に陥る例も多い。消費者の嗜好は多様化し、かつ品質・価格・サービスレベルについてもより厳しい目を持っている。またあまり店舗が分散すると効率性が低下する。

ドトールが都内中心なのはビジネス客が主要顧客であるためで、単純比較はできないが、ミスタードーナツの方針にやや古い印象を受けることは否めない。
14_地域別店舗数

ミスドvsコンビニの行方

ここで、新たに参入してきたコンビニとの競合状況をみてみたい。住宅地に満遍なく立地するミスタードーナツだが、店舗密度ではコンビニには到底かなわない。

都内でミスタードーナツの店舗が最も多い地域の一つである練馬区をみると、セブンイレブンがくまなく分布している。好調なコーヒーの存在、価格、立地の面ではコンビニは非常に脅威となることは確かである。

ただし、セブンイレブンは2016年に入ってドーナツを全面刷新している。非常に話題となったわりに、昨年度の売上はそれほどよいものではなかったのかもしれない。
15_ミスドVSセブン

海外からの上陸店舗は大人狙い

近くて低価格をうたうコンビニの一方で、前述した海外からの上陸店舗は高価格帯で大人の女性を狙う。2013年以降に出店したドーナツやパンケーキ、カップケーキ専門店は目に付くだけでも10店舗以上存在する。

おいしいドーナツを食べたい消費者は専門店に、気軽に食べたい消費者はコンビニに取られかねない構図にある。
16_上陸店舗

改装によるてこ入れを実施

しかし、ミスタードーナツも対策は講じている。さまざまな新業態を開発しており、2015年はオーストラリア発のミートパイ専門店「パイフェイス」、2016年はシフォンケーキ専門店などをオープンした。マレーシアのドーナツ専門店を買収し、海外事業を拡大していく姿勢もみえる。

また、すでにご覧になった方もいるだろうが、ミスタードーナツが今後5年間で1,300店舗のうち最大1,000店舗を改装するとの報道がなされた

高付加価値型を目指し、オープンキッチン、カフェスタイルの内装、主力製品を値下げし100円セールを廃止するというものだ。

近年の業績低迷と、コンビニなどの攻勢から飲食店としての空間を重視、効果が薄いといわれてきた100円セールの廃止で経営の安定化を図るものと考えられる。

やや半端であった立ち位置から脱却し、かつての地位を取り戻せるか、今後の5年間が注目される。

(写真:iStock.com/pictafolio)

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