アドテクノロジーに求められるもの2016.07.20

アドテクノロジーに求められるもの2016.07.20

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は、技術や媒体の拡大に伴って変化し続ける広告業界について、アドテクノロジーを中心とした動向を見る。

Tomoki Sasaki

アドテクノロジーに求められるもの

インターネット広告市場は拡大継続

先週のSPEEDA総研でも取り上げたが、現在、広告市場の拡大の原動力はインターネット広告の分野である。
アドテク-03_ネット広告の動向

 

インターネット広告の市場規模拡大は、スマートフォンなどのモバイルツールの普及などが相まって、消費者が商品やサービスを購入する際にインターネットを経由することが多くなったことを示している。

実感としても、商品やサービスを購入する際にAmazon.comやYahoo!ショッピング、楽天市場などを利用する機会は増えているだろう。また、購入に先立って商品やサービスを調べる際にも、複数の店舗を回って実際に比較するより、インターネットで公表されている比較サイトや、各販売店のWebサイトを見て比較することも多くなった。

アドテクノロジーの拡大がけん引

インターネットを使って商品やサービスの購入や情報収集をしているときに、インターネット広告を目にすることになる。例えば、検索エンジンの検索結果に表示させるリスティング広告などが挙げられるが、近年はWebサイトで表示されるバナーなどのディスプレイ広告をいかに効率的に配信するかというアドテクノロジー(広告を示す「ad」と技術を示すtechnologyの造語)の市場が拡大している。
アドテク-04_市場規模

ここで取り上げられているCPC・CPM課金型アドネットワークやRTBを経由したディスプレイ広告とはいったいどういうものなのか、その概要を見てみよう。

広告主とメディアを結ぶ

インターネットの普及期における広告は、従来の雑誌や新聞などといったメディアと同じく、面や場所を利用するという使われ方をしていたと考えられる。このような状態では、広告の商流も従来型の広告代理店やインターネット上の掲載メディアをまとめたメディアレップを通じたものが中心だった。

しかし、Webサイトが大企業によるものから個人のブログまで、膨大に増えたことで、広告メディアはよりいっそう広がった。また広告主が広告として掲載するコンテンツもテキストだけでなく、画像などを使ったものになってきた。そうなると、これら一つ一つについて広告枠を設定し、その広告枠すべてに対して画像を含んだ広告を配信し、その利用による広告料を設定する必要が出てくる。

もちろん、非常に人気の高いWebサイトや個人のブログなどであれば、コストにみあった広告効果を得られるかもしれない。とは言え、すべての媒体がそうであるとは言えず、効率的に広告を配信する仕組みが必要になった。
アドテク-02_アドネットワーク概要

アドネットワークは、広告主が発信したい広告コンテンツの発信元と、ニュースメディアやソーシャルメディアなどの多岐にわたる配信先の広告メディアをネットワークで結んだものである。Googleが提供している「Google AdSense」やYahoo! JAPANが提供する「Yahoo! ディスプレイアドネットワーク(YDN)」などがその主なサービスである。

なお、前述のCPC・CPM課金型というのは、広告として掲載された実績に基づいて広告料が発生するインプレッション課金(CPM)や、広告がクリックされた回数によってカウントするクリック課金(CPC)といった広告料を決める仕組みである。また、広告を経由して実際に商品を購入するなどの一定の条件を満たした場合に広告料が発生するアフィリエイト広告などの成果課金型がある。

広告をユーザー属性に最適化する

広告主としてはこのようなネットワークを活用することで効率的に広告を配信することが可能になった。その一方で広告を受け取る側としては、興味のない広告が届いても効果はない。むしろ嫌いな内容となればマイナスの効果すら懸念される。そこで、広告の効果を高めるための仕組みとして、リターゲティングなどといった技術が用いられている。

これは、cookieの情報等をもとに、過去に検索した情報や、閲覧したWebサイトの情報など(オーディエンスデータ)を分析しユーザーの属性を推定し、その属性に最適とみられる広告を選んで配信するものである。Webサイトを閲覧していて、よく見るWebサイトや商品、サービスがバナー広告などに表示されるのはこのような仕組みによるものである。

RTBは最適なコストで広告を取引する

今日では、前述したような大規模なプレーヤーがアドネットワークを提供している一方で、特殊なユーザーや機能に特化したアドネットワークも数多い。たとえば、動画や、モバイル機能、SNSなどに特化したアドネットワークである。

このような無数のアドネットワークが形成されていく一方で、広告が掲載されるメディアには人気、不人気の差がある。広告主はアクセス数の多いメディアに掲載したいし、そのためには高い広告料もいとわないだろう。しかし、一方で比較的アクセス数が少なかったり、売り込みたい商品やサービスが対象としない特殊な視聴者を持つメディアはできるだけ避けたい。このような需給と広告料を調整する仕組みがRTB(Real Time Bidding)である。
アドテク-01_RTBを経由した商流

 

広告主側としては複数のメディアを対象としてその都度広告のコンテンツを発信するよりは、広告コンテンツの配信をとりまとめているところがあった方がいい。この仕組みが広告を発信する側をまとめるDSP(Demand-Side Platform)で、マイクロアドやフリークアウトなどがサービスを提供している。一方、アドネットワークなどを経由した広告メディア側をまとめているのがSSP(Supply-Side Platform)で、DSPとSSPの情報を付け合わせる市場のような役割をもつアドエクスチェンジなどの仕組みが運用されている。

RTBの流れとしては、閲覧者がWebサイトを閲覧したときに、その閲覧者の属性がSSPを通じて広告の発信者側に提示される。DSPを通じて提示された発信者側は閲覧者の属性に応じて広告料を提示する。その広告料を最も高く提示したところが落札し、閲覧者の画面に広告が表示される。これら一連の作業は、閲覧者がクリックしてから画面が表示されるまでの間に実施されるようになった。

RTBにより、人気のある広告メディアはより高い広告料が設定され、そうでないところは広告料が比較的安く設定されるようになる。そのため、広告主としては、一律の広告料ではなくターゲットにより広告料を調整することで費用対効果を上げることができる。また広告メディア側としても、比較的人気の低いところも広告料を引き下げることで広告主を探すことができるようになっている。

取り扱う情報も高度化が進む

広告は、その内容が適切なユーザーに届かなければあまり役に立たない。そのカギとなるのはユーザーの情報をいかに分析するかにかかっている。ユーザーの属性情報と親和性の高い広告の分野はどこかなどといったデータ分析部門もアドテクノロジー業界にとっては重要なセクションである。

なかでも、DMP(Data Management Platform)の注目度が高まっている。広告主が持っている顧客の属性情報や購買履歴などの情報、また自社Webサイトのアクセス履歴などのとりまとめに加えて、オーディエンスデータを用いたユーザーの興味・関心など、点在する各種データを統合、分析するツールである。

一方で、データ分析が今まで以上に必要とされているのは、同一ユーザーかどうかの判定の分野であろう。モバイル端末経由では同一ユーザーかどうかの判定が難しい状況になっているため、様々なデータを可能な限り収集し解析することで、同一ユーザーかどうかの判定精度向上が進められている。
アドテク-06_ユーザー認証方法_修正2

なぜアドテクノロジーが必要か

インターネット広告にはユーザーの反応がわかりやすいという利点が考えられる。アドテクノロジーは、ユーザーがどのような経緯で消費に至ったのか、いまどのような興味を持っているかを分析し、適切な広告活動をすることで数少ない販売チャンスを確実に得るためのツールになる。またこのような広告活動を含む効果的なマーケティングによる付加価値はデフレ経済が長引くなかで価格競争に陥らないための手段の一つでもあるだろう。

一方で、ユーザー側から見ると、アドテクノロジーは流れてくる広告情報を選別するフィルターという意味があると考えられる。ほぼ無意識ではあるものの、欲しいのか欲しくないのか、興味があるのかないのかを、個人情報とは切り離してデータとして蓄積することで、自分に最適な情報を効率的に収集する手段にもなる。

M&Aでデータ解析等を取り込む

広告情報の効果的な配信に積極的に取り組んでいるのが、GoogleやYahoo!、Bingなどのポータルサイトや、FacebookやTwitterなどのSNSである。これらは、自社が囲い込んでいるユーザーの情報を活用することができるという強みを持つ一方で、情報サービスとして、ユーザーが見て喜ぶ良質な広告を供給したいというニーズがある。

一方で、インターネット広告市場におけるスマートフォン広告の比率は年々上昇しており、同一ユーザーかどうかの認証の問題はより重要になってきていると考えられる。そのため、これらポータルサイトやSNSを運営する企業群は、アドテクノロジーを提供している企業群を積極的に買収しており、モバイル通信技術やデータ解析技術に特徴を持つ企業群などが対象になってきている。

アドテクノロジーの進化と同時に、アドテクノロジーを提供する企業の動向にも注目される。
アドテク-05_企業買収例

(写真:iStock.com/Ellagrin)