iPhoneとサプライヤーの未来2016.09.07

iPhoneとサプライヤーの未来2016.09.07

SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回は今月発売が予定されているiPhone7に関連して、iPhoneの過去と未来を考える。

Nijie Kuboki

iPhoneとサプライヤーの未来

iPhoneで売上は40倍に

まずAppleの売上状況を確認する。2001年9月期では54億ドルにすぎなかった売上高は、2015年9月期には2,337億ドルとなった。

iPhone-01_アップル売上

内訳でその変遷をみてみよう。当初MacなどのPCのみであったがその後iPodがヒットし、2000年代半ばにはiPodが中核事業となったほどだった。

さらに2008年発売のiPhoneが世界を席巻、ハード、ソフトを含めビジネスの大半を塗り替えたことはご承知の通りである。

iPhone-02_売上構成-02

 

Appleの売上特異性

Appleの売上高にはかなり特異性がある。新機種の発売時に大きく売上が集中する点で、Samsungのモバイル事業にはみられない特徴だ。

Samsungの発売時期が分散していることを考慮しても、最先端の製品としてiPhoneの注目度が高いこと、またコアなファンが毎年新機種を待っていることがうかがえる。

iPhone-03_アップルとサムスン

中国の同時発売で集中度アップ

地域別にみると、iPhone6以降好調な中国での販売が売上を押し上げている要因の一つである。2015年からは中国でも世界と同時発売となったことで、さらに特定時期に対する集中度が高まっている。

なお、日本が単独で全体の1割近くを占めていることにも注目したい。やはり日本におけるAppleおよびiPhoneブランドは相当に高いことがわかる。

iPhone-04_アップル地域別

季節変動はメーカーに影響大

消費者にとっては年に1度のイベントとして楽しめる新機種の販売だが、こうした季節変動はサプライヤーにとっては対応が難しい。

Appleのサプライヤーのうち比較的スマートフォン向けの売上比率が高いと思われる企業の売上高をみると、かなりの企業で売上がiPhone販売状況に連動している。

先日の報道でも、2015年における日本企業からの部材調達額が300億米ドルに上ると発表、その規模からも多大な影響を与えているだろうことがわかる。

しかし、こうした巨大かつ集中的な需要に対し急激に生産量を上げることは難しい一方、実際の販売台数は蓋を開けてみるまではわからない。当初好調でもそれがいつまで続くかも不透明で、部品メーカーとしてはどうしようもない領域である。

iPhoneのような季節性が極端に高い商品の場合、事前に在庫を積み増しておくこともリスクが高い。

iPhone-05_関連企業売上高

 

メーカーには在庫リスクが問題

2014年以降売上規模が大幅に増加したことで、部品メーカーのリスクも一段と高くなっている。

iPhone 6sとiPhone 6s Plusの販売台数は、発売直後の週末は過去最高記録となったが、その後の低下が予想より早く、2016年1~3月期には当初の計画と比べて3割程度減産との報道がなされた。この期のメーカーの在庫回転日数(スマートフォン向け以外の事業も含む)は軒並み悪化、長期の販売動向が予想しにくいことの現れだろう。

Appleへの依存度が50%超となり話題となったジャパンディスプレイなどは、その影響を大きく受けているとみられる。

Appleの在庫回転日数が1週間未満であることを考えると、販売集中によるリスクは上流の部品メーカーを中心に負担していることになる。

iPhone-06_関連企業在庫-06

Appleの優勢は続くか

しかし、iPhoneの販売動向は、新たに発表された機能がどれだけ支持されるかどうかによるところが大きく、台数を予測することは難しい。

現状のシェアと市場動向から今後の普及可能性をみてみよう。
主要スマートフォンメーカーの台数シェアをみると、Samsungが低下しているのに対し、Appleは変動しつつも横ばいを維持している。この点はやはり驚異的といえるが、一方で近年勢力を伸ばしているのはXiaomiやHuaweiといった低価格帯のメーカーである。

iPhone-07_シェア-07

なお本論とはずれるが、日本国内におけるスマートフォンの出荷台数シェアでは、Appleが過半数と圧倒的な地位を維持している。

世界では20%前後であることを考えると、日本でのApple人気の高さがうかがえる。

iPhone-11_日本シェア-11

新規需要の拡大余地は少ない

本論に戻って、携帯電話やスマートフォンの拡大余地はどうか。世界の携帯電話普及率は100%近くまで達しているが、スマートフォンの普及率は携帯電話保有者の4割程度とされ、スマートフォン自体の市場拡大余地はまだある。

しかし、金銭的理由などでスマートフォンへ乗り換えることが難しい層が多いだろうことから、特に高価格帯であるiPhoneが獲得できる需要は限られる。
今後もiPhoneは一定のシェアを維持するとみられるが、需要は買い替えが中心となる。

iPhone-08_携帯普及率

順当ならiPhone7台数は昨年並み

ここで、iPhoneの買い替えサイクルを2~3年と仮定して、過去とiPhone7の需要の内訳を試算する(なお、各種調査ではスマートフォンの買い替えサイクルは2~4年程度であるが、iPhoneの場合感度が高いユーザーが多いとして短縮)。

ユーザーが大幅に増加したiPhone4やiPhone5sなどの買い替え時期に該当するため、新規需要が減少しても一定程度は買い替え需要で下支えされる。既存ユーザーの買い替え需要を確実につかみ、また新規購入者の増加率がスマートフォン市場全体と同様とすると、全体として昨年並みの台数に達することになる。

もちろん他社への乗り換えを起こさないだけの魅力的な製品が前提となるが、来年以降も、iPhone6で増加したユーザーの買い替え需要を逃さなければ、一定の台数は確保可能であり、iPhone市場は手堅く推移する可能性が高い。

iPhone-09_販売予測-09

スマホ強化か別市場か

しかし、全体としてスマートフォン市場の天井が見えていることは確かである。

電子部品メーカーは車載向けなど他の事業を強化しつつも、スマートフォン需要は未だ堅調であるため、村田製作所や京セラなどではスマートフォン向け投資を増加している。

また、パネルメーカーにとっては、有機ELというさらに大きな決断事項が生じた。2015年11月にAppleが2018年モデルから有機ELパネルを採用するとの報道がなされ、量産化に向けてSamsungは8兆ウォン(約7,400億円)、LGは1.9兆ウォン(約1,800億円)、ジャパンディスプレイは500億円の投資を計画する(一部機種は2017年に採用)。

当面の需要は堅調が見込めるとはいえ、こうした大規模投資が回収可能かどうかは不明だ。先行するSamsungに遅れを取っていることに加え、グループ内に出口を持たないジャンディスプレイにとっては大きな賭けとなる。

一方コネクタメーカーの第一精工では電子化が進む車載向けを次のコア市場として強化。2015年度はやや不振となったスマートフォン向け需要を車載向けが補う形となった。

ハードとしてのスマートフォン市場の成長余地、依然として強いAppleのブランド力と新興メーカーの動向など、考慮すべき変数は多い。車載向けで需要を獲得するには数年単位を要するが、投資が分散すれば現在のスマートフォン向けで競争力が低下する恐れもある。判断が難しいだけに、Appleだけでなく部品メーカーの戦略にも注目したい。

 

(写真:iStock.com/David Crespo Nieto)