急成長する中国保健食品市場の動向を見る2017.02.05

急成長する中国保健食品市場の動向を見る2017.02.05

今回は中国の健康食品市場の動向をみる。日本では珍しく成長を続ける健康食品市場だが、中国でも市場は急速に拡大している。中国国内企業、外資企業と多くの競合がひしめくなか、日本企業の進出可能性なども考えてみたい。

劉 騰騰

急成長する中国保健食品市場の動向を見る

日本同様法規制が存在

一口に健康食品といっても、日本では特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品などがある。
中国でもの健康食品には法的に規定された分類があり、中でも保健食品は、特定の保健効能有する食品(功能性保健食品)あるいはビタミンやミネラルの補充を目的とした食品(栄養補充剤)を指す。CFDA(国家食品薬品監督管理総局)による厳格な登録管理が必要だが、通常の食品と異なり功能が表示可能となる。
しかし保健食品は、手続きが煩雑で申請に時間がかかることや、実験検査で多大なコストがかかるというデメリットがある。海外メーカーは一商品の許可申請で、最少で50万元、2年以上が必要となる。
**伝統類:人参、冬虫夏草、阿胶(ロバの皮を煮詰めてゼラチン状にしたもの)など。 

保健食品は急成長

それでも市場は拡大している。中国の保健食品市場は2009年より急成長し、2015年には2360億元を上回った。
各国における一人当たりの年間消費金額を比較すると、中国は22ドルで最も低い。アメリカや日本、韓国は中国の5~6倍であり、所得水準の増加を考えればまだ拡大の余地がある。
 
また、中国保健食品の構成比をみると、栄養補充が最も多く、全体の約6割を占めている。中国の独特な食文化で人参、冬虫夏草、阿胶に好まれた消費者が多いため、伝統類保健食品は3割以上を有する。その一方、体重管理と運動栄養の割合はまだ低いが、今後消費者の健康意識の向上により、この2種類の市場は拡大する見込みがある。

高齢人口の増加が後押し

成長要因には、可処分所得の増加に加えて高齢化の進展が挙げられる。
2015年、都市部一人当たりの可処分所得は3万1,195元となり、10年間で約3倍となった。また、高齢者はほかの年齢層より心臓血管病、高血圧、糖尿病などの患者が多いため、保健食品への需要が高い。高齢人口(65歳以上)は2005年比で1.4倍の1億4,386万人、人口全体に占めるシェアは2005年の7.7%から2015年の10.5%へと増加した。
 

ECチャネルのシェアが上昇

保健食品の販売チャネルは主に直接販売(対面販売を中心)、薬局、スーパーマーケット・デパート、EC(E-commerce)などがある。直接販売は中間の流通プロセスが減り、ランニングコストが節約でき、約半分のシェアを占めている。
電子商取引の発展を伴い、2015年、ECチャネルのシェアは2011年より17ポイント増の21%と伸びた。

2016年7月から輸入品の規制が緩和

しかし、2016年7月以降、「保健食品注册与備案管理方法」により、初回輸入の保健食品(ビタミンおよびミネラル補充剤)、保健食品原料目録に記載済みの原料で生産された保健食品は備案制度を用いる。備案制は届出制に近い制度で、この規制緩和により海外企業は参入しやすくなった。
このように中国の保健食品市場は大きなビジネスチャンスがあるが、簡単に参入する業界ではない。CFDAからの許可取得が必要なほか、さらに早くから参入していた外資企業が強いブランド力を持っている。国内の食品大手なども海外ブランドと提携しシェア獲得を図っており、日系企業は出遅れ感が否めない。 

海外企業が越境ECへ注力

実は保健食品市場は海外ブランドが強く、ローカル企業で著名なブランドは、东阿阿胶(Dong-E-E-Jiao )と汤臣倍健(BY-HEALTH )程度だ。
規制緩和前においても、既に海外から多数の商品が輸入されている。
理由は主に安全と品質である。
主な購入ルートは、①国内の越境 EC プラットホーム ②海外の EC サイト(アマゾンなど)③個人による「代購」(代理購入)がある。
越境ECの年間取引額は2009年の9,000億元から2015年の4兆8,000億元まで拡大、年平均成長率は32.2%となった。2020年には12兆元に達すると見込まれる。
海外企業はこの越境ECを利用して中国での売上を拡大している。オーストラリアの保健食品メーカーであるBlackmoresは2014年下半期に越境Eコマースをスタートし、T-mall公式旗艦店も設立した。報道によれば、2016年度6月期は中国人観光客の消費額を入れると、中国市場の売上高は全社の3割近くにのぼると見られている。当社の売上高は2015年より急成長し、2016年度は前年比52%増の7億1,700万豪ドルとなった。
 

早期から参入した外資企業が強い

中でも安利(中国)(AMWAY (CHINA))や完美(中国)(PERFECT (CHINA))を代表としたアメリカとマレーシアの企業が強い。1990年代頃から参入してブランド力が高く、また直接販売を利用し膨大な顧客を獲得したことにより、上位プレーヤーとなっている。
国内企業では、汤臣倍健(BY-HEALTH)と合生元国際(Biostime International)はそれぞれ実店舗とECチャンネルを活用し、競争優位性が構築している。

ローカル企業は買収、戦略提携が相次ぐ

中国消費者が海外原産地の商品を好むため、近年、ローカル企業は海外ブランドの買収や連携により、市場シェアの拡大を目指している。市場成長や規制緩和があるとはいえ、業界の上位プレイヤーは徐々に固まりつつあるとみられる。
西王食品(Xiwang Foodstuffs)は製油のメーカーであるが、カナダのKerr Investmentへの買収を通じて、競争相手がまだ少ない体重管理と運動管理の保健食品市場に取り組んでいる。保健食品事業の拡大で全社の成長を牽引することを狙う。

まとめ~高まる参入の壁

急成長している中国保健食品だが、消費者は安全と品質を重視して、海外で生産された保健食品を好むようになっている。そのために越境ECサイトや代購などのチャネルも活発に利用される。
海外企業にとっては、非常に魅力的な市場であるが、早期参入組やローカル企業による海外ブランドとの提携で、業界は徐々に固められている。
こうした状況のなか、保健食品で中国に進出している日本の大手メーカーは少ない。比較的成功した事例としては、大正製薬が挙げられるだろう。大正製薬は1997年に上海冠生園(集団)(GUAN SHENG YUAN (Group))と合弁会社を設立し、健康飲料の共同開発や営業・店頭販促の活用を目指した。リポビタンD「力保健」が上海を始め北京や広州など数多くの都市で販売されている。
しかし、ブランドが重要な保健食品市場において、後発で参入することは難しいだろう。日本市場が堅調であることで、大手の目はまだ海外には向いていないようだが、日本市場が縮小してからでは遅い。
今後、CFDA許可制度の緩和により、参入はしやすくなる一方で、業界の競争はより激しくなることが予想される。今年8月にはDHCが越境ECの「Wonderfull Platform」に出店しており、比較的認知されている日本のブランドでもあることから、今後の業界動向に注目したい。