【ベンチャー】資金調達レポート(投資家タイプ)2017.11.16

【ベンチャー】資金調達レポート(投資家タイプ)2017.11.16

entrepediaの2006年から2017年6月30日までのデータを対象とし、特に2017年上半期(2017年1月1日~2017年6月30日)にフォーカスした国内未公開ベンチャー企業の資金調達動向を概観する。

Atsuko Mori

【ベンチャー】資金調達レポート(投資家タイプ)

2017年上半期資金調達レポートは概要、投資家タイプ、クラスターの3つに分けて報告する。今回は、前回の概要に続いて、投資家タイプについて報告する。

投資家タイプ別ではVCと事業法人に大別

2017年上半期の投資金額は1,110億円と前年比約54%の水準で推移している。前回の概要編でお伝えしたベンチャー企業の資金調達額1,083億円と異なっている。
理由として、投資金額は「買収・子会社化」「株式の移動」を含むことと、集計時点における調査の進捗が挙げられる。ベンチャー企業と資金の出し手が公表する情報の内容と時期に不一致がしばしばあることが背景である。
投資家タイプ(詳細)(注2)別にその内訳をみてみよう。資金の出し手は、VCが45%、事業法人が38%と大別されていることがわかる。さらに、VCの内訳をみると独立系、金融系の割合が大きい。

系統別では金融機関系と独立系VC等が同程度

大まかな傾向を捉えるため、「VC 事業法人系」と「事業法人」を合わせて「事業法人系」、「VC 金融系」と「金融機関」を合わせて「金融機関系」にするなど、投資家タイプ(系統)とする(注3)。
同期間の投資金額をみると、事業法人系が41%と大きい。金融機関系16%と独立系VC等15%は同程度であることがわかる。また、政府・大学系も12%と存在感を示しているが、これは産業革新機構の投資金額が大きいことによる。
過去からの推移をみると、過去から一貫して事業法人系の割合が高い。2016年は事業法人系の割合が一時的に減少したが、2017年上半期に回復している。
なお、2012年に海外系の割合が高いのは、海外VCによる買収案件(gloops)の金額の大きさが要因である。

1社あたりの投資トレンドは系統によって異なる

続いて、1社あたりの投資件数、投資金額中央値、投資金額合計値の関係をみよう。中央値の全体のトレンドは、前回の資金調達の傾向からもわかるとおり、ここ数年上昇傾向である。1社あたりの投資件数に関して、全体平均は1.4件/社であり、直近3年は同水準であった。しかし、過去10年でみると減少傾向である。
過去は資金の出し手が限定されていたが、2015年の投資件数1,771件、2016年は2,005件と資金の出し手が増えている。しかし、概要でも述べたように投資先の選択と集中の傾向があり、決して全てのベンチャー企業の資金調達が楽になったとはいえない。
投資家タイプ(系統)別(注3)に、2017年上半期をみると、1社あたりの投資件数は、金融機関系、事業法人系、独立系VC等が相対的に多く、中央値は海外系、政府・大学系、金融機関系が相対的に高い。
昨今、ベンチャー企業のバリュエーションの高騰を危惧する声が聞かれる。その要因の1つが事業法人によるベンチャー投資の増加にあるとの見方もあるが、本データをみると、事業法人系の投資金額の中央値は高くなく、その傾向は読み取れない。
また、投資家タイプ別の投資傾向から、事業法人系や独立系VC等は、レイターステージの企業だけでなく、設立してから日が浅い企業まで幅広く支援を行っていることがうかがえる。

設立1年未満は事業法人系、独立系VC等、個人系が支える

実際にデータをみてみよう。設立1年未満のベンチャー企業を対象にした、投資家タイプ(系統)別(注3)の投資件数割合を確認する。2017年上半期をみると、事業法人系が44%、次いで独立系VC等の18%である。
ここ数年で個人系が大きく減少していることが特徴だろう。過去、個人系が多かったが減少トレンドにあり、その減少分を事業法人系と独立系VC等が吸収している。
エンジェル投資家がVCやCVCを設立し、そこから投資を行っていることが要因の1つと推察される。たとえば、シードに特化したベンチャーキャピタルであるKLab Venture Partnersなどがある。

2017年上半期は産業革新機構の投資額96億円が最大

2017年上半期における投資金額について、ベンチャーキャピタルとその他に分けて上位15社をみる。
まず、ベンチャーキャピタルの投資金額上位15社をみると、政府系である産業革新機構の96億円が最大であった。資金調達ランキング(ベンチャー企業)で調達金額1位であったスコヒアファーマの会社設立への出資額が大きいことが要因である。
また、投資会社上位3社である産業革新機構、ジャフコ、SBIインベストメントは、前回調査(「2016年未公開ベンチャー企業資金調達の状況(2017年5月26日)」)と同じ顔触れである。
上位15社にはCVCがおらず、金融系が目立つ傾向は前回調査と不変であった。
 
続いて、ベンチャーキャピタル以外の投資金額ランキング上位15社を確認する。こちらは対象母集団の違いによる影響はあるものの、前回調査と顔ぶれが異なることが目立つ。
ほとんどが上場企業、あるいは上場グループ企業の子会社であり、一般事業法人が多い。投資金額ランキング(ベンチャーキャピタル)の上位にCVCがなかったことをみると、事業法人はCVCを設立せず、または介さず直接投資していることがわかる。
トライステージやグリー、CYBERDYNEなど、2000年以降に設立した企業がいることも特徴的だ。また、VCの投資ランキングと合わせて金融機関がいることからも積極姿勢が窺える。
最も投資総額が高かったメディアドゥは、出版デジタル機構の子会社化が影響している。なお、今回の集計対象外ではあるが、2017年8月2日KDDIがソラコムを約200億円で買収したと話題になっている。
今回の調査で得られたその他の調査数値はentrepediaで公開している。2017年上半期資金調達レポート(クラスター)は来週以降に報告する予定である。
entrepediaの詳しい説明はこちら
 

用語の定義

About

企業・業界分析のためのオンライン情報サービスSPEEDAを活用し、アナリストが企業や業界、分析手法について解説・分析をします。