なぜ飲食チェーンは突然減速するのか2020.02.06

なぜ飲食チェーンは突然減速するのか2020.02.06

鳥貴族は2019年、上場後初めて店舗数が減少した。過去にも丸亀製麺、塚田農場など、注目を集めた飲食チェーンが突然減速する例が散見される。なぜこのような事態が発生するのか、また回復できる企業とそうでない企業の分岐点を探る。

Nijie Kuboki

なぜ飲食チェーンは突然減速するのか

突然の減益発生

鳥貴族、apカンパニー(塚田農場など)、串カツ田中、いきなりステーキの過去5年間の営業利益をみると、突然の大幅減益が発生している(グラフ中の●部分)。いずれも前年同期比で半減近い状況に陥った。

成長ステージでの減益は不可避な課題

なぜこういった事態が発生するのか。

まず前提として、飲食チェーンには成長段階に応じて1.新興期、2.成長期、3.安定期の3つのステージがある。規模が大きくなるにつれて利益率は低下し、ステージ2ではある分岐点を超えると前述のような減益が発生する。そこから回復できれば無事ステージ3の安定期へ、回復できなければ低迷期が続く。

減益の主な要因は店舗の過剰出店による商圏の重複(カニバリゼーション)で、回転率が低下しコスト増が売上増を上回ることが原因だ。減益はいわば、飲食チェーンを拡大していく上では避けて通れない課題といえる。

過剰出店の事前の見極めは困難

過剰出店の回避をしようとしても、ジャンルやターゲット層、競合店の有無など様々な要因が関係するため、店舗の飽和点を見極めることは難しい。

例としていきなりステーキと丸亀製麺の店舗状況を示した。いきなりステーキは都心部に集中しているなど店舗分布の違いはあるものの、商圏人口()では丸亀製麺の方が低い店舗も多く、いきなりステーキが危機的状況にあるとは断定できない。

KPIから分岐点を察知することが低迷離脱の鍵

ステージ2(成長期)からステージ3(安定期)に移行するための鍵は、分岐点をいち早く察知し、適切な対処を行うことである。

前出の企業について、減益となった期を基準に既存店売上高をみると、半年~1年前から既存店売上高が前年割れとなっている。既存店にアラート(=減収)が出ていた中でも、新規出店を優先し続けた結果、経費増加が売上増加を上回り、減益に至ったと考えられる。

逆にいえば、既存店が前年割れを続けた時点で警戒レベルを上げ、減益が発生次第、迅速な対応を行う準備が必要となる。

対処法は不採算店舗の閉鎖

分岐点を超えた場合の対処法は、基本的には不採算店舗の閉鎖である。商圏が重複していた店舗を集約し、コストを抑えることで利益を確保する。

同時に、新店開発に当てていた資源を既存店に振り向け、人材教育、改装やシステム整備、メニュー開発などでテコ入れを図ることも重要となる。

減益決算後、丸亀製麺は店舗拡大をストップし、鳥貴族は早期に店舗縮小に動いた一方、いきなりステーキは大幅な出店拡大を続けたことがさらなる減益を招いたと考えられる(2020年に44店舗の閉鎖を発表)。

安定期への移行には戦略的な取り組みが必要

不採算店舗の閉鎖で低迷を脱した後でも、店舗を拡大しようとすると同様の問題に衝突する。収益性を落とさずに拡大し安定期に移行するには戦略的な取り組みが必要である。

選択肢の1つに、70店舗の拡大に13年をかけたHUBのような超低成長型もあるが、スピード感に欠けるというデメリットがある。

もう1つは、サイゼリヤのように店舗拡大と利益改善の期間を分ける手法がある。サイゼリヤは2002年度の大幅な減益後、数年間既存店の回復(利益率の改善)に注力し、2012年頃から再び拡大、さらに2014年頃から既存店の回復と、時期を分割している。

計画的なインフラ整備も重要

しかし時期を特定する手法をとった場合でも、商圏の重複という問題は解消しない。そのため、展開ブランドを増やす、出店地域を拡大するなどの対応を並行させることが多い。

ただし、出店地域の拡大には、セントラルキッチンや物流網、店舗の管理体制など、チェーンインフラの計画的な整備・増強が必要となる。

単一ブランドを追求するサイゼリヤを例にとると、この10年で設備投資を行い、関東以外の地域に店舗を増やした。

まとめ:KPIの注視と迅速な対処が最重要

拡大期において、収益性が低下することも、カニバリが発生し既存店売上高が前年割れになることも、避けることは難しい。値上げや禁煙化など他の要因と店舗の飽和が複合的に作用することも多く、事後的な対応になることはやむを得ない。

重要なことは

・近いうちに店舗が飽和することを前提として認識すること
・既存店が低迷した場合は早期に把握し、店舗拡大から不採算店舗の縮小と既存店のテコ入れに資源を振り分けること

の2つである。

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