SPEEDA EXPERT RESEARCH

2022/3/9 開催 セミナーレポート 2022/8/3更新

エキスパートと探る未来の事業機会 vol.2 メタバースとXR -空間コンピューティングによるリアルとバーチャルの進化-

メタバースとXR -空間コンピューティングによるリアルとバーチャルの進化-

昨年より急速に注目を浴びているメタバース、そしてそれを支えるXR技術。ゲームやエンタメ業界に留まらず、都市開発や教育、医療、交通、観光など様々な分野と結びつき、「現実世界」と「仮想世界」にまたがる新たな価値創出が始まろうとしています。

今回は、電通にてXR事業開発を長年リードする足立光氏にトレンドや最新事例を交えながら、メタバースの存在意義や今後の産業化への道筋をお話しいただきました。

Speaker

足立 光 氏

足立 光 氏

株式会社電通 CXPC(カスタマー・エクスペリエンス・プランニング・センター)
ライブ・エクスペリエンス・デザイン部 シニア・プロデューサー

25年以上前から広告コンテンツ・LIVEイベント、スポーツコンテンツなどのXR事業開発に携わり、電通のXR事業を推進する「電通VRプラス」を創設。当領域における多くの知見と関連企業、団体とのネットワークを持つ。5G、スーパーシティ、空間コンピューティングなどの近未来社会を見据えたXRの可能性、超高齢化社会におけるIoTやレジャー産業、デバイスの未来などについて精通。直近ではコロナ禍に於けるXRの加速化に伴い、デジタルツイン、ミラーワールドにおける研究開発、マーコム業務、事業化に従事。

メタバースとは?

特徴と国内外の動き

メタバースとは、ネットワークの仮想空間上でアバターを介してコミュニケーションができる体験価値サービスで、スマホやPC、VR/ARデバイスを使ってその仮想空間に入っていくものだと私は捉えています。

企業ごとにメタバースの考え方は異なっていて、MetaはVR起点、「Pokémon GO」で知られるNianticはAR起点のメタバースと分けられます。また中国からは「TikTok」の運営会社であるByteDanceがVRデバイスのPicoを買収してこの領域に参入するなど、メタバースのムーブメントは日本だけではなく世界中で起き始めていると感じています。

メタバースのプラットフォーマー

今はまさにメタバース群雄割拠という状態ですが、大別すると企業運営型とUGC(User Generated Contents)型があり、目的としてはコミュニケーション型かゲーム型に分けられるのではないでしょうか。

グローバルメタバース新勢力図と注目のメタバースのプラットフォーマー

出典:登壇者資料

その中でも代表的なのは、過半数が13歳未満にもかかわらず4700万/DAUを誇るゲーム型プラットフォーム「ROBLOX」や、会員数が約1000万人のコミュニケーション型プラットフォーム「VRCHAT」です。これらに対し、これからMetaが「horizonWorld」というコミュニケーション型のメタバースでどこまで攻勢をかけていくのかに注目しています。

メタバースの特徴

メタバースの特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  1. 物理的な制限のない仮想空間へいつでもどこからでも赴ける
  2. リアル建築では不可能なものを簡単に低コストで実現可能にする
  3. アバターを活用することで、年齢・国籍・性別・言語などを超越した自由なコミュニケーションができる

そして今、なぜビジネス活用が注目されているのかというと、
マーコム:Z世代に向けた新たなコミュニケーションと体験価値を提供できる
業務効率:リモートでビジネスパートナーと円滑な交流ができる、PoCが簡単にできる
新規事業:イベントや観光、店舗をバーチャルマーケット化できる
というように、あらゆる産業が困窮している国内において新たな事業創造の要として期待が高まっているからだと考えています。

メタバースのビジネスチャンス

ゲームとの違い

ではゲームとの違いは何でしょうか。
ゲームの場合、ゲーム内で課金したアイテムはそのゲーム内でしか使用できません。一方メタバースでは、自身で作ったデジタルデータを販売したり、それらをキュレーションし価値をつけて転売したりと、ビジネス分野でも幅広く参入の余地があります。

メタバース内ではアイテムの生成や譲渡が可能なので、ブロックチェーン技術によって消費活動を生み出すことも可能です。また「NFT」技術では複製不可能な唯一のアイテムをデータ所有でき、商品資産価値を保有することもできるので、こうした技術がメタバース内の経済圏確立に寄与していくと思っています。

メタバースのビジネス構造

出典:登壇者資料

NFT×メタバース

NFTとはブロックチェーン技術を使用してデータの唯一性を証明するもので、音楽データやデジタルの絵画データなど様々な権利を獲得するためや投資目的で活用したり売買されたりしています。

メタバースとNFTは同時に語られることが多いのですが、メタバースの中で楽しんだり、商売していくためには、NFTとアバター機能が非常に重要になってきます。アディダスがコレクションを発表するなど既に多くの企業がNFTに参入し始めていますが、今後ますます土地やアバター、アイテムなどメタバースの中で使用できるあらゆるものがNFT化され、売買される動きは増えていくでしょう。

企業のNFT活用例①

出典:登壇者資料

アバターとアイデンティティ

もう一つ、メタバースで特徴的なのはアバターです。アバターは最もマネタイズしやすく、ユーザーにとってあるときは自分をキャラクター化したり、またあるときは全く自分とは異なる外見としたり、プラットフォームごとに異なる人格を形成するようなことも起こっています。

その活用例としては、バーチャル成人式やカウンセリングへの活用、Microsoft Teamsへの参加など様々で、私が初めてアバターで会話した頃に比べると没入感は大進化を遂げています。

(左)cluster バーチャル成人式 (右)Microsoft Teams

(左)cluster バーチャル成人式 (右)Microsoft Teams
出典:登壇者資料

他にも “Play to earn” 遊びながら稼ぐという概念で、メタバース内アルバイトなども登場しています。そこではユーザーが自身のアバターにスタッフガジェットを装着して、接客サービスを行います。バーチャルイベントのスタッフやVRホストなどがすでにありますが、今後アバターによる接客も増えていくと思います。

左から、HTC NIPPON株式会社、Moon Creative Lab Inc. メタジョブ

左から、HTC NIPPON株式会社、Moon Creative Lab Inc. メタジョブ
出典:登壇者資料

さらに、アバターとAIを組み合わせた技術革新もどんどん進んでいます。AIが組み合わさることで、自分がリアルで遊んでいてもID管理されたAIボットがメタバース空間で稼いでくれる、ということも期待できるようになります。つまりID管理をすることで、リアルな一人が複数のメタバース上に存在でき、仮想人口が増加していくという解釈もできるかもしれません。

様々な動きがありますが、一番大切なことは「メタバースの本質は人と人との交流にある」ということです。将来的には人種や国籍、言語、ジェンダーなどに捉われないボーダーレスの「魂の交流」を目指しているのではないでしょうか。

IDとAIによる下層人口増加?

出典:登壇者資料

バーチャルとリアルの融合

メタバースの社会実装へ

今後はさらに「バーチャル」と「リアル」が融合する世界になると考えています。
時代はSociety4.0から5.0に向かっており、仮想空間に集積された様々な情報をAIが自動的に解析して現実世界にフィードバックできるようになりつつあります。そうすると、ITリテラシーの低い人でも様々なサービスを享受することが可能になります。これは空間コンピューティングという技術のもと、産業と都市の価値が再構築されるということに他なりません。

デジタルツイン

そこには「デジタルツイン」という技術が欠かせないのですが、デジタルツインとは現実世界に実在しているものをデジタル空間でリアルに表現したものです。例えばある車のデジタルツインを作り、デジタル上に稼働状況や地域情報などを入れると、実際にこの車がどのくらい走行し、何が原因で故障するのかといったことを一瞬でシュミレーションできます。

もちろん、これは都市にも活用できます。デジタルツインの都市に現実世界の気象データや交通データなどを投入するとAIが解析し、その結果を現実世界にフィードバックすることで相互の価値を高め合うことができる。これを「ミラーワールド」と言います。

さらに、例えば地下鉄での火災発生時、火や煙の流れをシミュレーションして地下鉄にあるサイネージで自動的に避難誘導を行うなど、人の力ではできないことをAIが行い豊かな生活を提供する「スーパーシティ」に変わっていく。そうした構想も始まっています。

ミラーワールドの定義

出典:登壇者資料

海外ではオランダや深圳などでもデジタルツインが進んでいますが、日本でもその動きは急加速しています。国土交通省は日本の56都市を3Dデータ化し、誰でも自由に利用できる「PLATEAU」というプロジェクトを始めています。

他にも阪急阪神ホールディングスは、バーチャル展示会「デジタル甲子園」や、エイベックスと組んでメタバース上に再現した梅田でミュージックフェスを開催しています。2025年には大阪万博が控えていますが、それに先駆けて「バーチャル大阪」もローンチするなど、都市のメタバース化の動きも活発化しています。初日は吉村知事とお話し出来るということで私も参加しましたが、太陽の塔を見上げる感覚やバーチャル上だと大阪から渋谷まですぐに行き来できる点は面白いと感じました。

左)阪神阪急HDによる「デジタル甲子園」 右)「バーチャル大阪」では吉村知事や松井市長も参加。

左)阪神阪急HDによる「デジタル甲子園」 右)「バーチャル大阪」では吉村知事や松井市長も参加。
出典:登壇者資料

3年後の技術進化を見据えた展開とPoCとしてのメタバース活用を

このように加速度的な盛り上がりを見せているメタバースは、今後社会をどう変えていくのでしょうか。今はリアルとバーチャルが切り分けられている状態ですが、これからはリアルとバーチャルがさらに融合してくると思っています。

ミラーワールドの構築には時間とコストが膨大にかかりますが、メタバースの事業は違うと思っています。グローバル展開を見据えて、3年後の技術がどのようになっているのかをある程度予測し、バックキャストで今やるべきことは何か、自社がもつアセットをどう活用していくのかなど、今から模索し始めることが非常に重要です。

5G、3Dプリント、VR/ARなどエクスポネンシャルテクノロジーと言われる技術の融合によって、3年後にはすごい進化が起きると予測できます。空想の世界だった空飛ぶ車も、これらの技術の組み合わせによって実現できる時代がくるでしょう。様々な可能性の中で、法的整備面などの実現性も加味しながら自分たちが何をすべきか考える必要があります。

一方でメタバースに参加してみること自体は本当に簡単です。もしメタバースの事業を何か考えている場合には、絶対成功させると意気込むよりも、「無限に続くβ版」であると捉え、失敗や改善を繰り返しながら新しいサービスに変えていくことが重要だと思います。

質疑応答

講義中から様々な意見が交わされ、質疑応答においてもデバイス関連やメタバースの法整備など多数の質問が挙がりました。
特に注目の高かった医療ヘルスケア分野の話や、タイムリーな話題としてボーダレスな交流に関してのセッションをご紹介します。

Q.医療ヘルスケア領域ではどのようなメタバースの活用可能性があるでしょうか。
A. 足立氏:例えばアバターを介することによる身障者との関係づくりがありますね。また手術前にVR上でシュミレーションするといった技術もすでに認証を受けています。あとはロボティクスによって、外に出られない患者さんのために遠隔でロボット操作をして室外に出られるような体験を提供したり。将来的には身体のデジタルツインを作り、病気の予測や健康シミュレーションのようなこともできるのではないでしょうか。

事務局:身体障害者や高齢者といった領域に関しての活用ができると、社会意義も高く可能性も広がりそうとの意見がいくつもうかがえますね。

足立氏:本当にそのとおりです。日本は高齢者先進国ですので、高齢者向けのサービスにこうしたメタバースを活用できるといいですね。ただし、高齢者のかたを対象としたときに重要になるのはオペレーションです。普及させるためにはまずは安価で、テレビのチャンネルを変えるのと同じくらい簡単なVRシステムを構築することが必要だと思います。

最後に足立氏からセミナー参加者へ向けて、高齢者先進国として日本が世界に誇れるメタバースを構築できるように、様々なテクノロジーを組み合わせて新たなサービスを一緒に考えていきましょうと締めくくられました。

SPEEDA EXPERT RESEARCHでは、
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メタバースやXR領域においても、例えばXR×ロボティクスやスマートシティを専門とするエキスパートに以下のようなご相談が可能です。

メタバースやXR関連でのご相談事例

  • 医療ヘルスケア領域におけるメタバースの可能性
  • メタバースにおけるマネーと銀行の役割等の変化について
  • メタバースやVRのエンタメ分野以外での活用について 等

メタバースやXRに関して

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