「時代に合わせて企業に変化を促したい。スピーダは不確実性の高い領域の探索に必要な地図帳のような存在です。」

大手素材メーカーの海外事業部門における活用

大同特殊鋼株式会社

User's Voice

特殊鋼をベースとした高度な技術力を背景に、高付加価値商品の開発や既存商品のイノベーションで社会の期待に応え続ける大同特殊鋼グループ。
自動車業界に関連する製品が半分以上を占める一方、国内市場は少子高齢化が進み、主要顧客である自動車業界では電気自動車化をはじめとする大変革が起きています。今回は海外事業部で海外子会社のマネジメントや投資計画時の市場環境分析を行っていた際にスピーダを同社に導入し、現在は中国現地法人で管理部門の統括をしている外山氏に、自動車業界と素材メーカーを取り巻く状況やスピーダの果たす役割などを伺いました。

サマリー

  • 電気自動車への移行や少子高齢化などの外部環境変化を受け、新規事業開発・海外展開・M&Aなど将来に向けての企業変革を促す提案をしていくことが必要と感じていた。
  • 競合動向の調査や海外の出資先の競合比較など、相対的な自社のポジションを把握するための企業調査にスピーダ 経済情報リサーチを活用。
  • さらにスピーダ エキスパートリサーチを合わせて活用することで、顧客視点で自ら課題を探索していける組織を目指したい。
  • イノベーションに向けて、スピーダ 経済情報リサーチはリアルタイムに更新される地図帳、スピーダ エキスパートリサーチは目的地までのガイドを紹介する案内所のような存在。

大変革が起こる自動車業界の中で、将来に向けた事業成長を描く

スピーダ導入当時に所属されていた海外事業部のミッションと、現在の外山様のお取り組みについて教えてください。

私が所属していた海外事業部の担当業務は、海外子会社のマネジメントや投資計画を提案する際の市場環境分析でした。私は2021年6月より中国現地法人で管理部門を統括するポジションを任され、買収企業のPMI(Post-Merger lntegration)にも取り組む予定です。
大同特殊鋼は素材メーカーで、製品のエンドユーザーを見ると自動車業界に関連するものが半分以上を占めています。一方で自動車業界では100年に1度の大変革と呼ばれる動きが起こっており、内燃エンジン車に変わる電気自動車が主流になると言われています。また、国内市場では少子高齢化も進み、需要そのものが縮小すると考えられています。このような環境変化の中で事業成長を描くには、自動車関連だけでなく、新たな市場を開拓していくこと、そして海外展開を視野に入れることは不可欠となっています。海外事業部ではM&Aなどの大胆な意思決定も選択肢に入れながら、将来に向けての挑戦的な取り組みを自ら提案したり、事業部やグループ会社の挑戦を支援したりすることを目指していました。

外部環境の変化は社内ではどのように受け止められているのでしょうか。

2000年代初頭から将来を不安視する声があり、発電や航空機など様々な業界で市場開拓を模索し続けていました。例えば原子力発電に注目が集まっていた2010年頃、大同特殊鋼も原子力関連の材料・部品事業を加速させる準備を進めていました。しかし翌年の2011年に東日本大震災が起こり、その事業計画は見直さざるを得ませんでした。石炭・ガス火力発電でも拡販を進めてきましたが、カーボンニュートラルの動きの中で、石炭はもちろんガス火力発電もいずれ逆風にさらされるリスクがあります。
このように市場の多角化を目指しながらも、自動車関連に並ぶ柱を見いだせず、結果として過去10年間において、今後起こるであろう大きな産業転換に対して必要な変革になっていないのではないかという危機感があります。

中長期の戦略を立てるためには、自ら情報を取り、分析することが重要

なぜスピーダのような経済情報プラットフォームを必要と感じたのでしょうか。

新規の事業展開を視野に入れるためにも、まずは議論を始めるための情報をスピーディに集める必要がありました。一方で、なかなか取引の少ない領域テーマついてはどうしても情報収集のハードルが高く、議論はもちろん、具体的な調査など行動に移すのにも時間がかかっているという課題意識がありました。新しい分野ほど未知のことが多く、想定していた仮説が結局成り立たないという場面もあります。そんな中で価値のある戦略にたどり着くためには、まず仮説検証の数をこなすことが必要だと感じていました。
スピーダ 経済情報リサーチ導入前は、1つの仮説に向けた情報収集に時間がかかり、苦労した分なかなか簡単に諦めきれない心理も生まれ、結果的に検証が不十分に終わってしまうこともありました。事業戦略の検討に十分な時間を取るため、とにかく簡単に仮説検証したり、M&Aのシミュレーションをしたりする必要があり、外部環境や他社動向を幅広くかつスピーディに情報収集できるサービスを探していました。特に新規事業はうまくいかないことが多いので、極端に言えば、100回提案・議論するなどの数をこなすことが大事だと思っていますし、その過程で磨かれていくものだと思っています。

スピーダ導入前はどのように情報収集されていましたか。

情報収集は新聞などのメディアや取引金融機関などの外部から無料で提供してもらっていました。これらはマクロ的な業界の整理にはいいのですが、自社あるいは所属事業部の中長期戦略を立てる際の情報整理やデータ分析に使うことは難しいと感じていました。例えば特殊鋼の需要予測が載っている既成レポートのグラフを見るだけでなく、情報元のデータを使って違う角度から数字を分析したり、主要客先の業界動向との相関を見たり、代表企業の投資動向を見たり、結果だけでなく自分で生データを使って情報分析することが大切だと考えました。

スピーダを導入する際、決め手となったポイントは何でしたか。

お世話になっている銀行がスピーダ 経済情報リサーチを使用していることを知り、あわせてFacebookで経営企画部の業務を効率化する、というスピーダの広告を見て、面白そうだなと注目するようになりました。また、コロナ禍で在宅勤務が増え、スピーダのオンラインセミナーに何度も参加し、ゲストの方々のスピーダ活用状況を伺ううちに、これは凄いと思うようになりました。他社ツールとも比較検討しましたが、業界分類が非常に細かいこと、海外マーケットの情報が充実していることなどから導入を決めました。情報検索の機能に加えて、特に魅力に感じたのはサポートデスクに相談できる体制でした。社内にはなかなか調査に関する専門人材がいなかったので、行き詰った時に相談できるサポートデスクの存在は非常に心強いです。

丸2日かかっていた調査がたったの1時間で完結。現場の顧客理解の促進にも役立てていきたい

導入後、具体的にどのようにスピーダを活用していますか。

大同特殊鋼の競合動向の調査や海外の出資先の競合比較など、相対的な自社のポジションを把握するための企業調査に活用しています。過去のデータを分析することで、今後の可能性を見極めて将来予測を立てることができます。
直近では提携会社の将来を考える際、アジア圏にある複数の企業の財務データの調査を過去10年分行いました。スピーダ 経済情報リサーチ導入以前、これらの情報収集だけで丸2日以上かかっていましたが、1時間程度でまとめられるようになりました。丸2日と言っても、他の業務もあるので実際にレポートができるのは下手をすると1週間後とかになってしまうこともあります。何かの業務と並行して1時間程度でデータ分析ができることは、見た目以上の時間短縮効果があると思っています。

※SPEEDA『競合財務比較』より抜粋

※SPEEDA『トレンド』より抜粋

またトレンドレポートは、電気自動車や水素エネルギーなど、日々変化する新領域での動向を知る際に非常に役立っています。製造方法の比較や各国の動向、サプライチェーンの全体像などがまとまっており、各事業部にも情報を提供していてわかりやすいと好反応を得ています。

導入後に調査の効率化以外の側面で何か変化はありましたか。

冒頭でもお伝えしましたが、もともと私たちのような企画・管理部門では、情報収集にかける時間が多いと感じていました。ここを効率化することで生まれた時間を、今は戦略立案に充てることができています。さらに情報の質が高まると、社内のコミュニケーションが変わります。かつての会議では情報の不足によりなかなか結論が出ず、次の回に宿題が持ち越されるという場面もありました。そんな時はスピーダ 経済情報リサーチを使ってその場で素早く情報を取得することで、議論を前に進めることができます。
顧客理解という面でも変化を起こせると思っています。例えば取引先との会話でも、お客様の背景にある所属業界の課題、隣の業界の動向について広く情報をインプットした上で話をすると、問いの質も変わります。お客様の見落としているような視点で「そういえばこういうのもありましたけど、これってどうなのでしょうか?」という一言の質問を投げかけるだけで、いただける情報の深さも変わるのではないでしょうか。お客様との会話から得られる情報は引き続き一番大切なものですが、こちらが予備知識を持って会話を広げ、知見を引き出すことができれば、これまで以上に深い理解の上で、お客様が必要とする提案をできるのではないかと思います。また、個々のお客様からの声を業界動向や競合動向などのスピーダ 経済情報リサーチで得られるマクロの情報の中で捉え直すことで、自社の戦略立案に向けた思考の整理にもつながると考えています。

インタビュー機会を通じて、各事業部が顧客視点で自ら課題を探索していける組織を目指す

スピーダのグループサービス、スピーダ エキスパートリサーチの導入背景についても教えていただけますか。

海外展開の加速の有効な手段としてM&Aには関心が高く、スピーダのオンランセミナーでM&Aをテーマにしたものは、必ず聴講するなどして知見を深めていました。ただ、海外事業部でM&Aを検討するとなると、私はもちろん、社内にも実績やノウハウがなく、エキスパートにヒアリングしたいと考えたのがもともとの導入を検討したきっかけでした。
ちょうど同じタイミングで、各事業部との連携が海外事業部の重要ミッションの1つとして議論されていました。そこで、まずは事業部を支援する形で市場調査を担う体制をつくり、スピーダ エキスパートリサーチを使うことに決めました。自社のホットトピックに合わせて柔軟に活用方法を拡張できるのも良いところですよね。

スピーダ エキスパートリサーチの活用方法について具体的に教えていただけますか。

先日、事業部の技術系社員と一緒に自動車部品メーカーのエキスパートにお話を伺いました。すると、弊社の製品開発検討の前提となる競合製品や顧客ニーズの仮説に関して、自分たちの考えと大きな違いがあることがわかりました。前提が違った状態で開発が進むのは大きなリスクなので、開発段階で軌道修正できたのは非常に価値がありました。馴染みのあるはずの自動車業界とはいえ、自社に馴染みのない材料分野では十分にわかっていないこともあると気付いたのは私個人にとって大きな発見でした。

スピーダ エキスパートリサーチを通して、どのように事業部を支援していきたいとお考えですか。

スピーダ エキスパートリサーチの魅力は伴走型であるところです。調査テーマや細かな質問を、サポートを得ながら自ら設計するので、アクションを起こすために必要な情報が何かを主体的に考え、聞きたいポイントを重点的に確認できるリサーチ方法だと感じています。また、期待する情報を得られない時には、自分たちの質問設計のどこに問題があるのかを振り返ることができます。こうした過程を通して、調査する側自らが責任感を持ち、オーナーシップを持って進めることが会社としてのリサーチ力を上げるために大切なのではないかと思います。
また、当社は名前の通り、特殊鋼メーカーなので、社内の多くの人間が最終的に知りたいのは特殊鋼の需要です。ただ、エキスパートへのインタビューを検討しながら気づくのですが、お客様は直接的に特殊鋼を必要としているのではなく、特殊鋼が果たす機能を求めていて、その結果特殊鋼にたどり着いているということです。そのため、例えば装置メーカーのエキスパートに「特殊鋼がどのぐらい使用されているか?」とか、「特殊鋼の用途は増えそうか?」と質問しても、なかなか思うような回答をいただけませんでした。「装置開発の課題はなにか?」「課題解決のために重要な部品は何か?」「その部品を製造するために必要な材料は何か?」という流れで設計して初めて顧客起点の材料ニーズが理解でき、特殊鋼が使用された部品について詳しく伺うことができます。このようなインタビューの経験から得られるのは、どのような顧客ニーズを満たすと特殊鋼の需要が生まれるのか、自分で考えて予測する力です。各事業部が顧客視点で特殊鋼の新たな用途を探索していく際に、スピーダ エキスパートリサーチが役立てばいいなと考えています。

スピーダは不確実性の高い領域の探索に必要な地図帳のような存在

弊社サービスの活用を通して描く、外山様の今後の展望について教えてください。

2つのサービスがきっかけとなり、最終的には社内に多くの事業イノベーションが生まれることを目指しています。例えるなら、スピーダ 経済情報リサーチはリアルタイムで更新される地図帳、スピーダ エキスパートリサーチは目的地へのガイドを紹介してくれる案内所のような存在です。スピーダ 経済情報リサーチではこれまで関わりのなかった業界情報に触れ、幅広い世界を観察して進む方向を考えます。目的地を絞った後には、そこが思い描いている場所なのか、目指すために必要な装備は何かなどについてスピーダ エキスパートリサーチで深掘りしていきます。
“両利きの経営”で有名な早稲田大学の入山先生は「知の探索と知の深化、両方がないとイノベーションは起きない」と語っています。スピーダ 経済情報リサーチで知の探索を実践し、スピーダ エキスパートリサーチで知の深化をさらに極めることで、イノベーションが生まれるのではないでしょうか。

企業を変革することは簡単なことではありません。外山様のモチベーションはどこから来ているのでしょうか。

入社1年目で工場に配属された時、「今の仕組みや慣例上、現場にその指示はできません」と主張したことがありました。すると「既存の仕組みや慣例にならって仕事を進めることは期待していない。慣例にとらわれず、必要なら仕組みを変えて仕事をするのがお前にこれから期待される仕事だ。」と当時の上司に諭されました。現行のルールや仕組みも尊重することは大切です。しかし状況が変化すると、中には陳腐化するものもある。その時に変化を促す提案をすることが仕事の本質であると気付きました。
大同特殊鋼は創業100年を超える企業であり、その時代に合わせて事業を継続してきました。これからの時代に向けて新たな変化を起こすには、外部環境の変化を読み解くための情報は非常に重要です。スピーダ 経済情報リサーチは不確実性の高い未知の領域において、進むべき方向のヒントを得ることができ、新しい発見にたどり着く力を与えてくれる存在です。今後も情報を上手く活用しながら事業の将来像を考え、変化を促す提案を続けていきたいと考えています。

2021.8 インタビュー

大同特殊鋼株式会社

www.daido.co.jp/
  • 特色

    事業は、特殊鋼鋼材、機能材料・磁性材料、自動車部品・産業機械部品、エンジニアリング、流通・サービスの5部門に分かれている。主力の特殊鋼は構造用鋼、軸受鋼、ステンレス鋼、チタン合金などを製造している。

  • 業種

    製造・メーカー

  • 部署・職種

    海外事業部

  • 企業規模

    5000人以上

  • 主な利用シーン

    投融資前リサーチ、M&Aの企画・実行

  • 大同特殊鋼株式会社

    海外事業部

    外山 聡 様