データを根拠に投資家と対話し、自社のエクイティ・ストーリーを精緻化
スタートアップの企業分析工数を約80%削減。大企業アライアンス戦略・資金調達・上場準備を支えるSpeeda
リージョナルフィッシュ株式会社
リージョナルフィッシュは、ゲノム編集による品種改良技術を武器に、水産領域で新たな価値創造に挑むディープテック・スタートアップです。同社代表取締役社長・梅川様は、前職のプライベート・エクイティファンド時代からのSpeedaユーザー。創業後は限られた時間とリソースの中で、経営の意思決定を行うためにSpeedaを活用しています。今回は大企業とのアライアンスや資金調達、上場準備などにおいて、Speedaが日々の意思決定をどのように支えているのか、その具体的な活用法を伺いました。

水産業界の構造変革に挑むディープテック・スタートアップ
リージョナルフィッシュの事業概要を教えてください。

梅川様:私たちは魚の品種を変えるスタートアップです。ゲノム編集技術や最先端の品種改良技術を用いて、これまで品種改良が行われてこなかった、天然のまま「美味しい」と言われてきた魚の領域で新しい品種をつくり販売する、種苗(しゅびょう)販売事業などを展開しています。
天然の魚は美味しい一方、漁獲量の不安定さや生産の負荷が大きく、安定的に供給することが難しいという背景があります。また、世界的な“タンパク質クライシス”や、日本の水産従事者の減少も深刻です。私たちはこうした課題を技術で解決し、日本の水産業をサステナブルな成長産業に変えたいと考えています。
私は代表として社長室をリードしながら、エクイティ・ストーリーの作成、資金調達、IPO準備、そして大企業とのアライアンスをどのように進めていくか、その方針を考える役割を担っています。
元Speedaユーザーと伺っています。当時どのように活用されていましたか?
2020年までプライベート・エクイティ(PE)ファンドに所属しており、Speedaは業界再編・統合(M&A)の検討で日常的に使っていました。業界全体の企業を比較し、営業利益率やEBITDAマージンなどの収益性指標や売上成長率といった業界平均値の推移を把握することで、どの領域に再編の余地があるのかを判断していました。また、収益の高い業界と低い業界の違いを整理し、構造的な要因を分析するなど、かなりのヘビーユーザーでした。
最大の課題は、アライアンス候補企業の情報収集
創業後、情報収集するうえでどのような課題がありましたか?

私たちは創業時から大企業と組むことを前提にしていました。PEファンド時代の調査・分析の経験から、スタートアップ1社で市場トレンドをつくるのは難しいと感じていたためです。ただ、そのために不可欠となるアライアンス候補企業の情報収集が大きな課題になりました。
アライアンス候補企業との面談では相手企業の事業セグメントや収益の柱、IRで示される戦略トピックや重点課題を把握し、先方が抱えるイシューを理解したうえで提案する必要があります。しかし、いざSpeedaがない環境に移ってみると、大企業の情報収集は想像以上に負荷の大きい作業でした。
当時は各社のWebサイトや決算資料、株価情報などを手作業で確認するしかなく、1社を調べるだけで丸1日かかることもありました。十分な準備ができないまま面談に臨まざるをえず、貴重な面談機会を活かしきれないケースもありました。
こうした状況もあり、今後の事業拡大を見据えてSpeedaの導入に踏み切りました。メンバーにはコンサルティングファームや証券会社の出身者が多く、「たしかに必要だよね」という形で、社内の合意形成も非常にスムーズでした。
Speedaは、創業前の意思決定にも影響したそうですね。
実はリージョナルフィッシュの事業領域も、PEファンド時代に検討したテーマです。種苗販売事業がなぜ有望なのか、バリューチェーンのどこで優位性を確立すべきかという観点で、他の農産物や茶産業の産業構造をSpeedaで調べて分析しました。
自分たちの技術との親和性、利益率が高くなる構造、企業が集約される産業特性を読み解いた結果、水産業界では“種苗販売が最も企業価値を高められる”という判断に至りました。こうした市場構造や収益性の比較をスピーディに行えたことが、リージョナルフィッシュの現在の事業ドメインを決める大きな後押しになりました。
IPO準備から競合分析まで、困ったら「Speedaに聞く」
経営者として、どんなときにSpeedaを使いますか?

基本的に、意思決定に迷ったときは「Speedaに聞く(調べる)」という形を取ります。用途は大きく3つあります。
1つ目は、意思決定のエビデンスを確認したいときです。例えば、IPO準備では主幹事証券会社や監査法人の選定があります。一般的には「4大監査法人が無難」という見方もありますが、本当に株価に差が出るのか検証したいと考えました。Speedaで上場企業のPERやEV/EBITDAマルチプルを比較したところ、4大か否かで1倍も変わらないことが分かりました。 この結果、大手のみに絞らず、より広い選択肢の中から自社に合うパートナーを検討できるようになりました。こうした思い込みの検証をデータに基づいて行えることは大きいです。
2つ目は、スタートアップや業界全体の動向をリアルタイムに把握したいときです。例えば、水産業界の盛り上がりを検証する際には、「スピーダ スタートアップ情報リサーチ」で時価総額や社員数の推移を見ることで競合の健全性やリスクが分かります。社員数が急減していれば何かが起きていると判断できます。こうした兆候の察知や、資金調達と従業員数などから競合のバーンレート(毎月の資金消費額)の把握に重宝しています。
3つ目は、大企業とのアライアンスにおける価値説明のストーリー設計です。例えば、候補企業のベータ値(株価変動リスク)を分析すると、社会的な投資に積極的な企業ほどベータ値が低い傾向があることが分かります。ベータ値の低下は市場リスクの低減を意味し、結果として企業価値向上にもつながり得ます。つまり、私たちのようなスタートアップとの協業は「社会的意義がある」だけでなく、「株主価値に寄与する可能性がある」という説明ができる。こうしたロジックは、特にCFOの方に強く響きます。

意思決定をデータで語ると、組織と投資家の「納得度」が変わる
Speeda導入後の効果を教えてください。

一番の効果は、意思決定プロセスに「説得力」が備わったことです。経営の意思決定に絶対的な正解はありませんが、判断の根拠をデータで示せるかどうかで、社員・株主・投資家の「納得度」は大きく変わります。「なぜその判断に至ったのか」を数字で説明できるようになったことで、決定に対する腹落ち感が増し、組織として前向きに次のアクションへ進めるようになりました。
その結果、自社のIR資料や事業計画の一貫性や説明力も高まりました。スタートアップとして投資対効果が気になるかもしれませんが、上場後にPERがわずかに1倍改善するだけでも、企業価値には大きく影響します。Speedaはその「1倍を積み上げるための根拠」を与えてくれる存在だと感じています。
また、情報収集の効率にも明らかな変化がありました。従来Speedaで取得していたレベルの情報を自力で調べようとすると1社あたり丸1日かかっていたところ、Speedaなら1〜2時間で完了します。1件あたり75〜88%の工数削減になり、本来集中すべき検証や戦略設計に時間を割けるようになりました。
Speedaは他のスタートアップにもおすすめできますか?
強くおすすめできます。スタートアップはリソースが限られているからこそ、意思決定の精度が事業成長に直結します。特に資金調達では、「競合は誰か」「市場のどこを取りに行くのか」「自社のバリュエーションは妥当か」といった点を、客観的なデータで説明できるかどうかが大きな差になります。
ディープテック領域の場合、Speedaの導入はシリーズB以降が良いと思います。理由はシンプルで、事業初期には競合企業が存在しないケースが多く、比較分析や市場構造の把握がしにくいためです。技術の実装にも時間がかかるため、シリーズB以降になって事業が立ち上がり、市場が形になってから導入したほうが費用対効果が高いと感じています。
一方で、ディープテック以外のスタートアップはシード期から使う価値があります。この領域ではどの業界にも必ず競合企業が存在するためです。だからこそ最初の段階で、「誰と競合し、どこで勝つのか」を誤らずに判断することが極めて重要になります。市場構造やプレーヤーの動きを立体的に把握し、意思決定を支えるツールとして、Speedaは非常に有効だと思います。

IPOを視野に、上場市場の読み解きにSpeedaが活きる
大型の資金調達を行い、事業フェーズや意思決定に変化はありますか?
私たちもそろそろ上場を意識しなければいけません。事業フェーズが進むにつれて、意思決定の軸がプライベートマーケット(未上場市場)からパブリックマーケット(上場市場)へと移りつつあります。私はファンド出身でプライベートには詳しいのですが、パブリックに移るタイミングでは、市場のメカニズムを理解しながら判断していくことが求められます。その際、特に上場企業の分析にSpeedaを活用していきたいと考えています。
新たに必要になってきた情報はありますか。
近年IPOした会社の評価を追うことは、ますます重要になります。未上場時のバリュエーションと上場時から上場後にかけて評価がどう変化するのか。その過程で経営者の意思決定がどう変わり、投資家が何を重視するのかも理解しなければいけません。
これまでは事業領域が異なる企業を深く分析する必要はありませんでしたが、上場を視野に入れた今はパブリックマーケットの情報をより広く収集し、評価の移り変わりや投資家の反応まで視野に入れることが欠かせないと感じています。こうした読み解きにおいても、Speedaは今後の意思決定を支える重要な基盤になっていくと期待しています。
2025年11月インタビュー
※本文中に記載の企業名・役職・数値情報、Speedaのサービス名・機能・仕様等はインタビュー当時のものです
リージョナルフィッシュ株式会社
regional.fish/業種
製造・メーカー
部署・職種
経営企画・事業戦略、研究開発、IR・広報、新規事業開発、投資・融資
企業規模
100人未満
主な利用シーン
IR情報の整理、投資家への情報提供他、事業戦略・全社戦略の策定、事業開発/新規事業開発、ビジネス戦略策定、投融資前リサーチ
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リージョナルフィッシュ株式会社
代表取締役社長
梅川忠典 様