#新規事業開発 2023/2/27更新

セミナーレポート SPEEDAって何ができるの?-顧客のDXを加速するソリューション営業編-

SPEEDAって何ができるの?-顧客のDXを加速するソリューション営業編- SPEEDAって何ができるの?-顧客のDXを加速するソリューション営業編-

2022. 3.3 THU / 株式会社ユーザベースが主催するセミナー『SPEEDAって何ができるの?- 顧客のDXを加速するソリューション営業編-』が開催されました。顧客の課題解決を図るために、自社のアセットを用いて新規事業の開発や新規市場の開拓を目指す企業も多いかと思います。一方でソリューション営業の難しさとして、顧客課題の設定は正しいのか、提案に時間をかけても顧客から選ばれるのだろうか、など悩みは尽きないのではないでしょうか。今回は、NTTコミュニケーションズ株式会社で共創案件を推進する福原氏と、株式会社マクニカイノベーション戦略事業本部で顧客のAIプロジェクトを支援する本村氏をお招きしました。お二人が、確度の高い顧客や共創パートナーの探索、真に迫った顧客課題への提案、また顧客・共創パートナーから選ばれるために実践されていることは何なのか。経済情報プラットフォーム『SPEEDA』を活用した仮説構築の実践を、実際のサービス画面をお見せしながらお話いただき、お二人が見出したソリューション営業の活路をご紹介いただきました。

Speaker

福原 伸太郎 氏

福原 伸太郎 氏

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部 事業推進部マーケティング部門 主査
OPEN HUB Catalyst / Business Producer

入社以来、電話プロダクト主幹、NTTグループ連携推進、フロントセールス、業界戦略検討支援といった幅広い業務を経験。現在は『OPEN HUB』カタリストを統括する立場で、共創案件を推進するためのプログラム『PLAY』の設計・運営やカタリスト間連携をリードしつつ、複数の実案件支援にも携わり“現場感覚”を重視した共創案件創出に注力している。

本村 健登 氏

本村 健登 氏

株式会社マクニカ
イノベーション戦略事業本部
AIビジネス推進部 部長代理
DXコンサルティング室 ディレクター

2017年以降100件以上のAIプロジェクトを支援。現在はマクニカのAIサービス『Re:Alize』のサービス責任者に従事。クライアントの事業戦略立案、データ統合基盤~AI作成、実装運用などの知見を活用し、DXコンサルティング事業を兼任。

ソリューション営業の取り組み

1.事業紹介:社会実装を目指す事業共創の場『OPEN HUB 』(NTTコミュニケーションズ)

-まずは福原さんが、NTTコミュニケーションズで担っている役割と取組みについて教えてください。

福原 伸太郎 氏(以下、福原):NTTコミュニケーションズは2021年10月、顧客やパートナーとともに豊かで幸せになる未来の実現を目指す事業共創プログラム『OPEN HUB for Smart World(以下、OPEN HUB)』を立ち上げました。

持続可能な社会を目指すためには、単に顧客が求めるものを提供し続けるのではなく、顧客や社会の課題を起点に、Smart Worldの実現に結びつくものを作っていかなくてはいけません。そしてそれを社会実装するには組織や分野を超えて、顧客やパートナーと私どもの技術や知見を掛け合わせることが不可欠だと考えました。それらを加速させる取り組みが『OPEN HUB』です。

『OPEN HUB』は、共創ビジネスを創り出す機能として「人」「技」「場」を提供しています。

「人」は、「カタリスト」と呼ぶ社内外の専門部隊です。200名以上の多様なメンバーが、事業コンセプトを創るオリジナルプログラム『PLAY』の枠組みに沿って共創をサポートしています。
「技」は、NTTグループが持つアセットです。単に提供するだけでなく、顧客やパートナーが持つアセットと組み合わせて何ができるのかを考えていきます。
そして「場」は、5GやIOWNなど最高峰のICTインフラを基盤としてリアルとバーチャルをつなぐワークプレイスやオウンドメディアを提供し、インスピレーションの創発を促しています。

『OPEN HUB』での私の役割は、カタリストとしてプログラム『PLAY』の枠組み作りです。『OPEN HUB』とそこで生まれる共創案件をいかにドライブさせていくかに今注力しているところです。

-NTTコミュニケーションズとして「人」「技」「場」を提供される一方で、『OPEN HUB』のマネタイズについてお聞きしてもいいですか。

福原:基本的に、『OPEN HUB』自体でコンサルティング・フィーなどはいただいていません。もちろん顧客接点としての機能もありますが、8,000社以上参加しているコミュニティを使って、例えばビジネスコンセプトを発信して仲間を探し、パートナリングする、人や技術、場をつないで共創全体をドライブしていく実践の場として、機能させていきたいと考えています。

2.事業紹介:AIの社会実装を顧客と伴に実現する『Re:Alize』(マクニカ)

-続いて、本村さんがマクニカで担う役割と取組みについて教えてください。

本村 健登 氏(以下、本村):2020年9月に立ち上げたAI社会実装サービス『Re:Alize』の責任者として、顧客のAIプロジェクトを支援しています。

マクニカは最先端のテクノロジーをいち早く取り入れて実装することを得意としている会社です。しかし、「産業のコメ」と言われる半導体事業が母体ということもあり、もともと顧客インサイトの深掘りが得意ではありませんでした。

5年くらい前に大手工作機械メーカーとのIoT予知保全システムの共同開発が当たり、予知保全ソリューションの事業創出が加速したことをきっかけに、「サービスソリューションカンパニー」を名乗り、AIの専門組織を立ち上げるなどを行いました。実際にはPoC含め300件のAIプロジェクトを支援したのに、社会実装にはほとんど至りませんでした。そこで、顧客が本当に求めるものは何かを考え、価値起点で新たなビジネスを始めようと立ち上げたのが『Re:Alize』です。

私どもは課題整理や目的・目標設定から伴走し、「本当にAIで価値が作り出せるのか」を顧客と一緒に考えていきます。まず「想いだけください」と伝え、プロジェクトスタート前にプロトタイプを作成し、顧客のあるべき姿の解像度を上げることを大切にしています。

SPEEDAってソリューション営業プロセスで何ができるの?-NTTコミュニケーションズ

1.事業仮説の初期段階:顧客と課題感の目線を合わせる

-顧客や社会の課題を起点に事業共創を進められる際に、初期段階の顧客に届ける仮説立案において大切にしていることを、まずは福原さんからお伺いできますか。

福原:課題感を「顧客あるいはパートナーと同じ目線で見ようとする」ことです。例えば「このテーマが流行っているから何か提供して」など、コンセプトが固まっていない中で顧客の要求をそのまま受けても外す確率が高いです。

失敗しないためにも、同じ目線で課題感を見ることで、提案がずれずに「本当にこれが課題解決につながるのか」を確認しながら進められます。

-「顧客と同じ目線で課題を見る」ことに関して、『SPEEDA』はどのようにお役に立てていますか。

福原:顧客やパートナーと目線を合わせる前に、まずは社内のプロジェクトメンバーとも目線合わせが大切だと考えています。例えば、自動車業界にアプローチしたい場合、『SPEEDA』画面の検索バーに「自動車」と入力するだけで関連する業界やトレンドレポートが短時間で手軽に手に入ります。『SPEEDA』のレポートを活用してメンバーと業界理解のレベル感を合わせたり業界課題を特定したりして、取り組むべき方向性を議論していきます。

そしてある程度テーマが決まり、もう少し深掘りたいときには専門家にインタビューを行えるサービス『EXPERT Interview』を活用して、その業界の方に「この仮説を持ってアプローチしていきたいがどう思うか」という聞き方をしながら可能性を探っていきます。ときには24時間以内に5人以上の専門家から回答を得られる『SPEEDA』の有料機能『FLASH Opinion』も併用しながら不足情報を補い、解像度を上げる使い方をしています。

またプロジェクトメンバーと目線合わせをして、テーマが絞れた段階で課題の大きさや展開性を踏まえ、NTTとして何が貢献できるのか出口戦略も考えないといけません。じっくり腰を据えるのか、とりあえずクイックに実施をするのか、その判断を早めるためにも検証のしやすさは重要です。

ただ、顧客と目線を100%合わせることは実際には難しいですし、そこにこだわるとスピード感が損なわれてしまいます。もちろん100%を目指して検討を進めますが、6~7割くらいの完成を目処に、余白を残して提案すると「それは確かにそうだけど、実はここも困っている」など顧客から議論を引き出せる場合もあります。そこまで目線が合えば、次のアプローチに移るタイミングだと捉えています。

2.アプローチすべき顧客の探索

-顧客の課題について設定ができれば、顧客パートナーとの具体的な共創の段階かと思います。パートナーとして事業を推進されていく際、一緒に共創していける方かどうか、また提案先の探索の際に大切にしている観点をお聞かせください。

福原:提案先の探索に関しては、リソースが限られている中、注力すべき案件かを見極めなくてはいけないため、コンセプトやその種を持っている“キーマン”にしっかりアプローチできるかどうかが非常に重要です。新しいビジネスの創出やDXの成功には、強い想いを持つ人の存在は欠かせないと思います。

そういった意味でも、先ほどお伝えした「目線合わせ」は大事です。同じ課題感を持って議論する中で「本当に困っているから我々としてもアプローチしていく必要がある」ことを見極められます。

逆も同じで、目線が合っていないと顧客からも共創パートナーとしても選ばれないと思います。NTTはDXを推進する上で重要なICTを持っていますが、共創案件を進める上では絶対にそれだけでは足りません。アセットの要件のみで判断されると勝負できないため、クイックに顧客と目線を合わせにいくこと、スピーディーに仮説を検証していくことが、選ばれる上では大切だと考えています。

-実際に顧客と長く共創を実行されていく上で、良好な関係を築くために意識されていることはありますか。

福原:顧客には「結論だけ」を持っていかないようにしています。『SPEEDA』で収集した情報をもとに資料にし、結論に至るまでのプロセスを伝えた方が理解も深まり、もし外れても話が次に展開しやすくなります。とくにオンライン環境においてはコミュニケーションのきっかけにもなり、提案の打率も上がると思っています。

SPEEDAってソリューション営業プロセスで何ができるの?-マクニカ

1.異業界の顧客の「目指す姿」の仮説を立てる

-先ほど、福原さんは事業企画の段階から、『SPEEDA』を顧客・メンバーの目線合わせに使っているとおっしゃっていましたが、本村さんはどうですか。

本村:『SPEEDA』では業界を俯瞰できるので、まさに福原さんと同じように利用しています。以前、ビルメンテナンス業界から予知保全に関して問い合わせが増えたとき、私どもには業界ナレッジがありませんでした。しかし、『SPEEDA』を活用すれば業界の概況が把握できるので、顧客のDX担当者にお会いする前に最低限の知識が押さえられます。

例えば、『SPEEDA』の情報から「清掃が売上の6割、人件費がコストの8割を占めているからDXとの親和性は高いだろう」とも俯瞰的にわかるので、シフトの最適化や清掃の効率化、施設管理の省人化など私たちが実現できるところが見えてきます。ただ、「何のためにこれをやるのか」の意義付けも大切だと考えています。例えば「ビルに来てくれる人たちに豊かな暮らしをお届けしたいと思って仕事をしているのに、ここがボトルネックになっていますね」など顧客の目指す姿を想像して伝えた上で、議論を進めています。

-意義付けを含め用意された仮説を、顧客に届ける際に大切にされていることをお聞かせください。

本村:一言でいうと“The Greatest Show”を講演することですね。これはヒュー・ジャックマン主演の映画『グレイテスト・ショーマン』からヒントを得たのですが、不確実な状態の中で進めていくには、まずは自分たちのケイパビリティをお客さんの目の前で最大限に発揮することが大事です。

顧客と話す以前に立てた仮説よりも、当然お会いして話した方が仮説検証の解像度がぐんと上がります。だからこそ、その場(Show)を大事にしようということで自分たちをエンターテイメント集団に見立てて「顧客を楽しませるため」に、十分な仮説を準備していこうとメンバーにも意識付けをしています。

2.顧客の探索と効果的な営業アプローチ

-顧客へのエンゲージメントや楽しさを重視されていることが伝わってきました。一方で、それほど仮説に力を入れられる提案先の探索の際に、本村さんが大切にしている観点をお聞かせください。

本村:「変革の意思があるリーダーがいるか」を重視しています。投資意欲を見立てる上でも、ここはとても大事です。

私どもは『SPEEDA』から取得できるデータをもとに、社内製のVBA(Visual Basic for Applications)を活用して、投資意欲を定量的に判断できるツールを作っています。例えば、営業利益が出ているかに加え、「資産老朽化率」や「設備投資額の絶対値」から設備投資増加率を導き出します。大きく設備投資しているのであれば、DXへの投資意欲も高いと判断します。

-顧客探索も十分に行った末の実際の打ち合わせで、顧客の意思の引き出し方や、良好な関係を築くコツはありますか。

本村:先ほどの話と同じで「あなたの意思を聞きたいからShowを講演しにきた」と、まずはこちらから意思表示しています。

とくに初回の商談では、顧客と会話が盛り上がりそうなメンバーのアサインがカギです。コミュニケーションの種になるよう「実績、範囲、役割、顧客と話して盛り上がる趣味と特技」の5項目を入れたエンゲージメントシートをメンバー分作成しています。

また、『SPEEDA』のトップページにある記事は、タイムリーな内容もあり顧客の関心テーマを拾うのにぴったりです。会話の糸口にもなり、ある程度知っている情報でも解像度が高まるので顧客との会話も広がります。

-商談の段階でフロントに立つ営業が、一連のマーケティング活動の中で果たす役割について本村さんはどのようにお考えでしょうか。

本村:重責を担っていると感じていますね。自分たちの“Show”の反応がどうだったのか、ちゃんとマーケティング側にフィードバックすることが大切です。マーケティング側が施策としてコンテンツを発信し、Web問い合わせがきてインサイドセールスから熱いリードが届き、そして営業がフォローする。この一連のサイクルの中で一番重要なのは、営業が顧客をフォローした“その結果”です。結果をマーケティング側と一緒に仮説検証しないと提供価値は上がっていかないと思います。

また、フォローした結果がだめでも、リードは捨てずにマーケティング側に戻す活動も必要です。結果を共有しながらアップデートのサイクルを回し続ける、マーケティング部門と営業部門は共同体のようなイメージです。

今後の展望について

-では最後に、今後の展望についてお聞かせください。

福原:『OPEN HUB』はプログラムなどを、一旦“形”にはしたものの、お客様と共創の検討を重ねながらどんどん形を変えていきたいですし、変えていくものだと考えています。2022年2月には大手町に『OPEN HUB Park』というワークプレイスを開設しましたので、ぜひ活用していただきながら皆さんと接点を持ち、何か一緒に面白いことができるとうれしいです。

本村:マクニカは、2022年の2月に「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る」という新しいパーパスを策定しました。そこには、未来の構想だけではなく「今、きちんと実装する」ことにこだわっている会社である、というメッセージがこめられています。

私どもはテクノロジードリブンで技術検証をするだけでなく、“The Greatest Show” の講演をして、届ける価値を最大限に創出していきたいと考えていますので、ぜひお声がけください。

-本日は貴重なお話をありがとうございました。