#営業/マーケティング 2025/10/23更新

営業のAI活用における最適解 Salesforceと質の高いデータで「属人的な営業」から脱却する方法

営業のAI活用における最適解 Salesforceと質の高いデータで「属人的な営業」から脱却する方法 営業のAI活用における最適解 Salesforceと質の高いデータで「属人的な営業」から脱却する方法

特定のタスクを自律的にこなす「AIエージェント」が、営業組織のあり方を根本から変えようとしている。しかし多くの現場ではAI活用が属人化し、成果に結びついていないのが実情だ。本記事では、SalesforceとSpeeda AI Agentをいかに連携させ、質の高い営業活動を実践する仕組みを組織に実装するのかについて、ユーザベース アライアンス本部 シニアマネージャーの今津圭敦が具体的な手法を明かす。

※本記事は2025年9月25日開催、「Salesforce×AIエージェントで、営業現場はなぜ変わるのか」セミナーを再構成したものです。

なぜ、営業現場のAI活用は浸透しないのか

──まず、営業現場におけるAI活用の現状について教えてください。

今津 2025年5月に実施したユーザベースの調査によると、営業業務でのAI活用は約3割程度という結果が出ています。これは他の職種と比較すると相対的に低い数値です。例えば、経営企画部門では利用率が8割程度に達しており、営業現場での浸透には依然として課題がある状況です。

出典「営業AI白書2025」(ユーザベース発行)

▶︎ ハイパフォーマー特有の行動を明らかにした「営業AI白書2025」はこちら

──なぜ、営業業務でのAI活用が遅れているのでしょうか。

今津 大きく2つの要因があると考えています。1つ目は、AIの利用が「属人化」している点です。営業担当者が個人のアカウントで無料のChatGPTやGeminiを使って調べ物をするといった、個人レベルでの活用にとどまり、組織的な取り組みになっていません。結果として、AIを使う人と使わない人の二極化が生じているのです。

2つ目は、「データの品質」です。AIはインプットされるデータによってアウトプットの質が大きく左右されます。営業業務を効率化するうえで、正確なデータが十分な量、AIにインプットされているかという点が課題になっているのではないでしょうか。

この仮説を裏付けるような興味深いデータが、PwCのレポート(「生成AIに関する実態調査2024 春」)にもあります。AI導入で期待以上の成果を上げた企業に共通する取り組みを調べたところ、日米ともに「ユースケースの設定」と「データ品質の向上」と2つの要因が上位に挙げられました。

 株式会社ユーザベース  マーケティング本部 アライアンスチーム  シニアマネージャー 今津 圭敦
株式会社ユーザベース マーケティング本部 アライアンスチーム シニアマネージャー 今津 圭敦

──「ユースケースの設定」「データ品質の向上」とは、具体的に何をすることなのでしょうか。

今津 AIに任せるべきタスクを明確に定義し、業務を「型化」すること。そしてAIの精度を高めるために、営業担当者が自信を持って使えるような、正確でハルシネーションの少ない「質の高いデータ」を準備することです。この2つがそろえば、本当に業務に活かせるAI活用が実現できると考えています。

営業組織におけるAI活用の「壁」をSpeedaで解決
営業組織においてAI活用の「壁」は未だ多い

AIエージェントが営業の「戦略的思考」を加速させる

──属人化しがちなAI活用ですが、SalesforceをSpeedaに連携することでどう変わるのでしょうか。

今津 営業の属人化という課題を解決するために生まれたのが、2025年9月1日にリリースした「Speeda AI Agent for Salesforce」です。これは営業担当者がSalesforceの画面から離れることなく、AIエージェントと会話するだけで、アカウントプラン(個社戦略)の策定からそのプランに基づいた「営業資料」の自動生成まで完結できるサービスです。

Salesforce内のエージェントに対して、Speedaが持つ企業データや市場環境の情報、企業が抱える課題、業界全体の動向といった外部情報を提供することで、すばやく営業活動に活用できるようになるのです。

──具体的には、どのような仕組みなのでしょうか。

今津 Speedaが持つ、信頼性の高い企業データや市場環境、業界全体の課題といった社外の「外部情報」に、Salesforce内に蓄積された活動履歴や商談状況といった社内の「一次情報」を組み合わせます。AIエージェントがこれらを瞬時に統合・分析して、アカウントプランを策定し、営業資料を自動作成するという仕組みです。

これまで営業担当者が時間をかけて作成していた資料作成や、上司への確認プロセスといった工数を大幅に削減できるだけではなく、多くの営業担当者が最も時間を費やす、戦略の「0→1」を考える部分をAIが担うのが大きな特徴です。

──単なる情報収集ツールではない、と。

今津 ここで重要なのは、AIが作ったプランが最初から正解である必要はない、ということです。このプランがあることで、営業担当者はすぐに顧客とのディスカッションに移ることができます。そして、顧客からのフィードバックを元にプランをブラッシュアップしていくのです。

お客様が本質的に抱える課題に、もう一歩深くディープダイブする。これこそが、大きな価値だと考えています。これにより、Salesforceへの情報入力は、単なる進捗報告の「作業」から、より精度の高い示唆を得るための「種まき」へと変わっていくでしょう。

「Speeda AI Agent for Salesforceではディスカッションペーパーを簡単に作成できる(実際の操作画面)

トップセールスの暗黙知を、AIで組織の力に変える

──営業スキルの標準化という観点では、どのような効果が期待できますか。

今津 従来、営業担当者は自力で3C分析やSWOT分析を行い、それを上司に共有して意見を求めるというプロセスでアカウントプランを作成していました。それをAIエージェントが代替して質の高いアカウントプランを導き出すことで、経験の浅い営業担当者でもトップセールスと同じような戦略的視点を持てるようになります。

これはSpeedaが保有する企業データ、専門家の知見、Salesforceに記録された過去の成功事例など、より多くの情報源からの気づきをAIエージェントが提供してくれるためです。

──この仕組みは、営業個人のスキルアップだけでなく、チーム全体の生産性向上にもつながりそうですね。

今津 そうですね。特に興味深い活用例として、インサイドセールスでの利用が挙げられます。

これまで、インサイドセールスは1 to 1メールや電話による顧客ヒアリングが主流でした。この機能を使えば、インサイドセールスがディスカッションペーパーの素案を作成できるようになり、お客様の抱えている課題により踏み込んだメールアプローチやヒアリング、フィールドセールスへの引き継ぎができるようになります。

よって、その後のフィールドセールスへの引き継ぎの質も向上できます。単なるテキストメモではなく、ディスカッションペーパーそのものを引き継げる。「この提案内容でお客様が興味を持っています」と具体的な背景を共有できるため、部門間の連携ロスが大幅に削減され、営業プロセス全体の効率化が期待できます。

AIの成否を分ける「データ品質」。営業の役割は「真のパートナー」へ

──先ほど営業現場のAI活用が進まない要因として「データの品質」という課題が挙げられました。AIの成果を左右するデータの重要性についても教えてください。

今津 Salesforceが発表したレポートでは「AIはゲームチェンジャーになりうる。しかしそれは信頼性の高い情報源に接続された状態の時だけである」と明記されています。この「だけ」という表現は非常に強いメッセージです。

また、金融庁の発表によればAI活用における課題の筆頭に「データ整備」が挙げられています。AIの能力を最大限に引き出す上で、データ品質が最重要課題であることは論をまちません。

ここで言う「品質の高いデータ」とは、<最新性、ファクトチェックが済んでいるもの、専門家の知見、そして営業用途に適した情報整理がなされているもの>を指します。弊社では、これらすべての要素を満たしたデータセットの提供を強みとしています。

──データの質の違いは、アウトプットにどれほどの差を生むのでしょうか。

今津 一般的な生成AIに「A社の人事領域での課題は何ですか」と問い合わせると、「ダイバーシティ」や「働き方改革」といった、どの企業にも当てはまるような表層的な回答しか得られません。

一方、「Speeda AI Agent」に同じ質問をすると、中期経営計画の具体的な記載内容や、トップリスクとして挙げられている労働力不足の詳細など、その企業固有の課題が根拠となる情報源とともに提示されます。

営業担当者が顧客から信頼を得るためには、こうしたファクトに基づいたディスカッションが不可欠です。この差は提案の質、ひいては成果に決定的なインパクトを与えます。

AIのアウトプットに差を生む「品質の高いデータ」
「品質の高いデータ」の有無によって、AIのアウトプットに差が生まれる

── AIがそこまで優秀になると、営業担当者の役割はどのように変化するでしょうか。

今津 AIが情報を収集し、整理・体系化してタスクをこなすようになっても、営業担当者の価値がなくなることはありません。むしろAIが生成したアウトプットを理解し、顧客の業界や事業に対してよりディープダイブしていく能力がこれまで以上に重要になるでしょう。

営業担当者はお客様も気づいていない潜在課題を発見し、共に未来を創造する「真のパートナー」としての活動に、より多くの時間を割けるようになるはずです。

その鍵を握るのが、Salesforceに格納されている自社の「一次情報」と、我々が提供する信頼性の高い「外部情報」の融合です。この2つを「Speeda AI Agent」を介して掛け合わせることで、個人の能力を超えた、組織としての営業力を生み出すことができる。そうして営業組織、ひいてはビジネス全体をスケールさせていけたらと思います。

Speaker

今津 圭敦

今津 圭敦

株式会社ユーザベース
アライアンス本部 シニアマネージャー

前職はSalesforceコンサルティングパートナーとして、SFAやマーケティングオートメーションの導入・運用支援に従事。
2020年より株式会社ユーザベースのFORCAS事業(現在はSpeedaに統合)に参画。カスタマーサクセスとして顧客活用支援を経験後、現在はアライアンス担当としてSalesforceとのパートナーシップ推進を担う。Salesforce連携プロダクトの企画にも携わる。

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