#営業/マーケティング 2025/12/22更新

日立製作所・富士通が実践する「AI活用×営業企画」。受注貢献 前年比127%も可能にした仮説検証の高速化

日立製作所・富士通が実践する「AI活用×営業企画」。受注貢献 前年比127%も可能にした仮説検証の高速化 日立製作所・富士通が実践する「AI活用×営業企画」。受注貢献 前年比127%も可能にした仮説検証の高速化

生成AIによる恩恵は、もはや単なる作業効率化にとどまらない。法人営業の最前線では、営業前のリサーチと仮説立案のプロセスそのものが根本から変革し始めている。

法人営業部門の戦略立案を担当する株式会社日立製作所の加瀬奈月氏と富士通株式会社の朝倉愛氏は、「Speeda AI Agent」を活用し「アプローチプランの策定時間 50%削減」「受注貢献 対前年比127%」といった具体的な成果を生み出した。AIは営業企画をどう変え、現場は何を得たのか。両社が実現した「仮説検証の高速化」と「商談の”質”の向上」、その実践知に迫る。

※本レポートは、「Speeda Day 2025」 ユーザーセッション「現場はどう変わる? AI×営業企画の最前線」の内容を再構成したものです。

Speeda Day ‘25 

「Speeda、新生する」というコンセプトのもと、2025年10月9日に東京ポートシティ竹芝ポートホールにて開催されたSpeeda主催の1DAYイベント。情報収集・分析の先にある「意思決定と実行のありかた」を変えるべく約400人のお客様にお越しいただきました。当日はSpeeda史上最大の転換点として、AIエージェントを起点にした新プロダクト「Speeda AI Agent」のデモンストレーションやユーザー企業様によるセッション、ネットワーキングなどが行われました。

AIが変える営業プランニングの最前線

──まずはお二方のお取り組みについて、概要を教えてください。

朝倉氏  富士通では「デジタルセールス」といういわゆるインサイドセールスの部門があり、その部門がアウトバウンドによる新規開拓、インバウンド対応、カスタマーサクセスという3つの機能を担っています。

私はその中でも新規開拓の前段階となるアプローチに向けたプランニングを担当し、「どの部署にどの商材を提案し、どう顧客を開拓するか」について戦略策定を行っています。デジタル技術を使い倒し、生産性を高めて仕事をしようという組織のミッションを掲げているため、非常に多くのシーンでAIを活用しています。

     

富士通のDigital SalesにおけるAI活用

加瀬氏 日立製作所では2018年頃からデジタルマーケティングに取り組み始め、最初は私の「1人担当」のようなかたちでしたが、体制を強化し現在は専門の部署ができています。

近年では、自社に適したデジタルマーケティングのあり方と現場への貢献を模索した結果、従来型の「商材・ソリューション軸」によるアプローチから、特定の企業に対するアプローチ戦略に伴走する「アカウント軸」の活動へとシフトしています。

AIについては、各事業部や営業と連携しながら案件創出活動を行う際に、マーケティング戦略立案からメール作成、ウェブサイト案の作成まで幅広く活用しています。

      

日立製作所の営業は商材・ソリューション軸からアカウント軸へ

アプローチプランの策定時間を50%短縮した富士通のAI活用法

──AIの活用で、どのような成果や変化がありましたか?

朝倉氏 アプローチプラン(顧客企業ごとに策定する戦略的な営業計画)の策定にかかる時間は、人間がゼロから作成していた頃に比べて50%に短縮されました。とはいえ、単純に「AIが30秒で答えを出すから時間が短縮された」というわけではありません。

AIは一瞬で答えを出してくれますが、それを人間が読み解き、自分のものとしてお客様に伝えるために「咀嚼(そしゃく)する時間」が別途必要になります。この咀嚼時間を含めても、トータルでは半減できている、というのが実感値ですね。

      

富士通はアプローチ戦略の策定にAIを活用

朝倉氏 当然ながら、AIを活用してもお客様の課題を100%理解した提案を策定できるわけではありません。最終的な答えはお客様しか持っていないからです。

AI活用の真価は、「スピードアップによる仮説検証サイクルの高速化」です。AIの活用、中でもSpeeda AI Agentの活用によって、1つひとつの案件について高速で仮説を立て、お客様への提案を通じて検証、素早くピボットして次の提案につなげるというプロセスが圧倒的に早くなりました。

       

富士通株式会社 カスタマーグロース戦略室 Digital Sales Division マネージャー 朝倉 愛 氏
富士通株式会社 カスタマーグロース戦略室 Digital Sales Division マネージャー 朝倉 愛 氏

加瀬氏 当社でも同様の効果を感じています。Speeda AI Agentを活用させていただいたところ、プロダクトのバージョン切り替えのタイミングで一時的に使えなくなるかもしれないという話が出たことがありました。そのときはチームで「1日使えないなんて、どうしよう」とざわついたほどです。それだけ業務に欠かせないツールになっていることを実感しています。

受注貢献 前年比127% 日立製作所のアカウント型アプローチ

──先ほどお話しされていた、日立製作所の「アカウント軸」での取り組みについても詳しく教えてください。

加瀬氏 アカウント軸の活動においては、営業とマーケティングが一体となってターゲット企業にアプローチしています。まず社外の公開情報をSpeeda AI agentなどのAIツールで整理し、企業の経営課題や事業部門ごとの仮説課題、提案したい商材を含めた戦略を立案。この資料をもとにディスカッションペーパーを作成し、お客様との初回商談で活用しています。

これまではお客様と1時間のお打ち合わせ時間をいただいても、弊社側が一方的に9割近く話して終了、というケースが多くありました。しかし、お客様の状況を正しく聞かせていただくことが何よりも重要です。事前に顧客理解の姿勢を示すディスカッションペーパーを用意することで、お客様により多く話していただけるようになりました。

        

株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス 営業統括本部 Executive Strategy Unit デマンドジェネレーションセンタ 部長代理 加瀬 奈月 氏
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス 営業統括本部 Executive Strategy Unit デマンドジェネレーションセンタ 部長代理 加瀬 奈月 氏

──具体的な成果も出ているそうですね。

加瀬氏 この取り組みの結果、受注貢献が前年比127%を達成しました。具体的な成功事例として、Webからの資料ダウンロードをきっかけにインサイドセールスがアプローチし、営業が訪問して短期間に受注したケースや、インサイドセールスが中断していた顧客社内のプロジェクトの再開を察知してアプローチし、受注に至ったケースなどがあります。

朝倉氏 私たちもコールで得たお客様の情報を仮説と結びつけながら、より解像度の高い情報として営業へと連携するプロセスを強化したいと考えているので、加瀬さんのお話に非常に共感します。

エンタープライズ企業では、お付き合いはあってもまだ開拓できていない、いわゆる「既存新規」の部署へのアプローチが重要です。その部署の課題や組織図などの情報が分かると、課題を結びつけてコールができるので非常に効果的です。

AI活用は『使いこなした者勝ち』。手探りで進める重要性

── 今後のSpeeda AI Agentの進化に期待することはありますか。

朝倉氏 Speeda AI Agentの「組織図機能」の進化を期待しています。エンタープライズ企業の「既存新規」部署開拓では、部署の抱える課題や経営層との関係性、責任者についての情報が重要です。しかし組織図は頻繁に変わるため、毎回人の手で最新の状態にメンテナンスするのは困難だと感じています。このタスクをAIでサポートいただけると嬉しいですね。

加瀬氏 当社では公開情報からお客様情報を整理するところまでは非常にやりやすくなりましたが、そこから実際に「どの部署に何を持っていくか」を詰めていく際に、当社の商材情報と組み合わせた提案が自動で出てくると理想的です。

             

SpeedaDay セッションの様子

──お2人の事例から、AI活用は単なる作業効率化にとどまらず、仮説検証の高速化や顧客との関係構築の質向上など、営業プロセスの根本的な変革につながる可能性を感じました。最後に、今後のAI活用に向けてメッセージをお願いします。

加瀬氏 AIは「使いこなしたもの勝ち」だと思います。使う前はその良さがなかなか分からないかもしれませんが、まず「使ってみる」という姿勢の方が増えると、より効果的に活用が広がるのではないでしょうか。

朝倉氏 私たちも日々手探りしながらAIを使っているところで、決して「これが正解」という使い方ができているわけではありません。より多くのみなさまと情報交換し、「このように使っている」「ここに困っている」といった率直なお話をお伺いできれば嬉しく思います。

Speaker

加瀬奈月 氏

加瀬奈月 氏

株式会社日立製作所
デジタルシステム&サービス営業統括本部 Executive Strategy Unit
デマンドジェネレーションセンタ 部長代理

2002年日立製作所入社。製造業のお客さま向けSEとして ESR導入等に従事後、企画部門に異動し、新規事業の立ち上げ・ プロモーション業務などを幅広く担当。 2018年よりデジタルマーケティングの立ち上げから関与し、 営業SEと連携しながらデジタルを活用した新規案件創出を推進中。

朝倉愛 氏

朝倉愛 氏

カスタマーグロース戦略室 Digital Sales Division
マネージャー

2000年富士通株式会社入社。システムエンジニアとしてCRM/SFA パッケージの開発・保守、導入支援に従事。2014年にマーケティング部門へ異動後は、富士通におけるSalesforceビジネスの立ち上げや推進、全社RPAタスクフォースを牽引。ABM(アカウント ベースドマーケティング)の一環で企業調査、アプローチ戦略の立案に携わったことをきっかけに、現在は営業部門にて、戦略・重点顧客の新規商談機会創出に向けたアカウントプラン強化を担当。より生産性の高い営業活動を目指し、市場・顧客の調査分析や仮説立案にAIをフル活用。これまで100%人力で調査・分析してきた経験から、AIによる効率化の効果を強く実感しており、人とAI の最適な協働のあり方を日々追求中。企業調査が隠れ趣味。

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