CVCで「新たなエンタメ創出」を目指す
バンダイナムコエンターテインメントが求めるスピーダ スタートアップ情報リサーチの提供価値
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
2022年にCVC「Bandai Namco Entertainment 021 Fund(以下、021 Fund)」を設立したバンダイナムコエンターテインメント。社内外の力を掛け合わせた新たなエンターテインメントの創出を目指す021 Fundは、スピーダ スタートアップ情報リサーチ(旧称:INITIAL)を通じて多くのスタートアップとの出会いを実現しています。スピーダが同社のCVC活動にどのように貢献しているのか、CVC業務全般を担う岩崎様と松田様に話を伺いました。
サマリー
- ・情報収集からネットワーキングまで一貫してできるため、ソーシング業務の効率が向上
- ・スタートアップや事業会社との出会いを通じて得た情報を事業部に共有、連携が強化
- ・エキスパートからヒントを得て、より質の高いアイデアが生まれるようなった
新たなエンタメの創出を目指し「021 Fund」を設立
021 Fundの事業内容やミッションについてお聞かせください。
松田様:バンダイナムコグループでは、IP(キャラクターなどの知的財産)価値の最大化をはかるべく、エンターテインメント分野において多彩な事業領域と豊富なノウハウをいかし、IP軸戦略を推進しています。
株式会社バンダイナムコエンターテインメントは、IPを軸に、ネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム、ライフエンターテインメントを通じて、長く深く遊べる良質なコンテンツと多彩なエンターテインメントを世界中のファンに届けている会社です。投資ファンド『021 Fund』を設立し、ベンチャー企業の皆様が持つ技術やアイデアと弊社グループの強みを掛け合わせることで、既存エンターテインメント事業の強化、そして次世代のエンターテインメント事業の創出を目指しています。
その実現に向け、私たちはUGCやCtoCを促進し、コミュニティを盛り上げる技術・サービス、そしてAIやWeb3関連のほか、デジタルとフィジカルがシームレスにつながるための技術やサービスなどのエンターテインメント領域へ3年間で30億円程度の投資と協業を推進しています。
021 Fund設立の経緯と、社内での立ち位置について教えてください。
松田様:021 Fundはバンダイナムコグループの中で唯一のCVC組織です。コンテンツ開発を自社グループ内で推し進めることも可能ですが、新しいエンターテインメントを生み出したり、既存のエンターテインメント事業を強化したりするには、社外の力や最新テクノロジーの活用は欠かせません。そこで、メタバースやWeb3.0市況が活発化した2022年、メタバースの構築および新たなエンターテインメントの創出を目指し、021 Fundの設立に至りました。
岩崎様:バンダイナムコエンターテインメントとしては、以前からスタートアップ企業への出資を行ってまいりました。年に2〜3社のペースで出資を行うなかで、事業部とのシナジーを生みながらいかに新しい事業をつくっていくかを模索し続けてきました。
どこの会社も同じだと思いますが、事業部としては単年度や3ヶ年の売上にどうしても注力せざるを得ないなか、既存事業の目標数値を持ちつつ新しいテクノロジーを追いかけるのはなかなか困難です。市場トレンドの情報収集も含め、その機能を021 Fundが担っている側面もあります。
事業部と目線を合わせ、お互いの機能が最大限に発揮できる動きを模索
021 Fundのメンバー構成と、チーム内でのお二人の役割を教えてください。
松田様:021 Fundの投資領域は国内に閉じていないため、海外のスタートアップの情報収集やソーシング(投資先の選定)を担当するメンバーや、ヨーロッパとアメリカの現地法人に在籍しているメンバーなど、計10名と少数ながら多様な人材が揃っています。約半分が私のように前職で新規事業の立ち上げやM&A、IRなどのバックグラウンドのあるメンバーで、残りの半分は、もともと事業部でゲーム開発などに従事していたプロパー社員のメンバーです。
そのなかで私は主に、日本のスタートアップのソーシング・投資実行と協業推進を担当しています。スタートアップと面談を行い、投資仮説を立てて投資委員会に起案するのと、投資した会社との協業を検討、推進することが基本の業務です。
岩崎はソーシング・投資実行や協業推進に加えて、ミドル・バック業務も担当しており、CVC活動の一連のプロセスすべてを021 Fundのメンバーで全て担う体制で活動しています。
岩崎を含め、事業部でゲーム開発などを経験してきたメンバーは、新規プロジェクトの初期段階の知見が豊富なので、ノウハウを教えてもらいながら進める場面も多く、バランスのとれたチーム構造になっています。
CVC活動において事業部との連携に悩む企業は多いと思われますが、意識されていることはありますか。
岩崎様:CVC活動では、事業部との良好な関係性の構築がいちばん大事だと考えているので、普段から密なコミュニケーションを意識しています。事業部としては各事業において目下の目標があるわけで、そこで私どもがいきなり「スタートアップへ投資をして、こんな開発がやりたい」と持ち込み、無理やり進めてしまうと当然事業部とコンフリクトが生じてしまいます。
その状況を避けるためにも、私どもの方で案件をまず整理して、どのタイミングで事業部に関わってもらうべきか、協業するメリットや意義は何か、を明確にするようにしています。その点が曖昧だと「突然よくわからないものが振られた」と捉えられかねません。事業部と私どもが持つお互いの機能が最大限に発揮できる動きを意識しています。
松田様:021 Fundの基本的なスタンスとして、ファイナンシャルリターンだけを追い求めているファンドではありません。既存事業をいかに拡大していくか、当社のIPをどのようなかたちで新しいエンタメとしてお届けできるかの追求が私どものミッションなので、岩崎が申し上げた通り、事業部との連携を非常に大切にしています
情報収集からネットワーキングまでスピーダひとつで完結
CVCの立ち上げからどのような困りごとがあり、どう乗り越えてきたか、スピーダ スタートアップ情報リサーチ(旧称INITIAL、以下「スピーダ」)がお役に立てた場面があればお聞かせください。
松田様:最も困ったのは、スタートアップとの接点づくりです。「優れたスタートアップの周囲には、優れたスタートアップが集まる」がこの業界の定説なので、いいスタートアップと出会うには、属人的なつながりやネットワークが非常に重要になります。そのため、ゼロから自分たちで出会いを求めてスタートアップを探索しても、取れる情報はそんなに多くはありません。
コネクションが少ない立ち上げすぐのCVCにとって、スピーダは日々のソーシング業務に欠かせないツールです。とくにスピーダのユーザーが集う「スピーダ ユーザーグループ」(旧称:INITIAL Circle)の交流イベントは本当にありがたいです。スタートアップ系のネットワーキングイベントは年々増えていますが、スピーダ ユーザーグループは毎回4社〜6社のピッチを聞ける時間が十分にあり、各社の特徴や取り組みがよくわかるので、その後の交流がさらに充実します。興味のあるスタートアップには即その場でアプローチもできるため、時間を有効に活用できて助かっています。
また、私どもはBizDev(事業開発)の役割も担っているので、大手の事業会社などさまざまな属性の方と接点を持てる上に他社の活動内容を知れる、一石二鳥の機会となっています。
岩崎様:スピーダ ユーザーグループは足を運ぶ価値があるイベントです。スタートアップや事業会社がスピーダを中心に、その名の通り輪のようにつながることで、ビジネス創出のきっかけの場になっていると感じます。しかもその機会が定期的にあるので、気になるスタートアップや事業会社の近況を知れるだけでなく、情報交換やちょっとした相談の場として機能してくれるのは、大きな価値だと思っています。
スピーダ ユーザーグループには毎回ご参加いただいていますが、CVC活動のネットワークの重要性を社内でどのように周知しているのでしょうか。
岩崎様:おっしゃる通り、投資先になり得るスタートアップと出会うにはネットワークの構築が重要です。しかし、その必要性が社内で理解されていないと動きづらくなるので、イベントへの参加は「価値ある活動」ということをわかってもらうしかありません。「021 Fundに聞けば、スタートアップに関する情報や新規領域・企業のインサイトは手に入る」と思われるよう、活動で得た知見や情報を可能な限り共有しています。
松田様:CVCの活動は中長期的な目線でのアクションが中心であり投資価値の体感まで一定の時間を要するため、社内の他の部門にとって私たちの活動目的や実態は、なかなかイメージしにくいものでもあります。「何をしているのか分からない部門」と思われるのではく、社内に仲間をつくっていきたいです。最近では、イントラネットにイベントレポートを掲載することで、事業部に案件相談へ行った際に話がスムーズに伝わるようになってきました。出資活動を通じて私どもが何を実現したいかを、社内に浸透させる動きも大事だと考えています。
普段、スピーダをどのように活用されていますか。
松田様:スピーダで最新のニュースリリースをチェックし、紐づく企業情報にアクセスするのは日課です。個社の情報収集はもちろんですが、スタートアップの動向を網羅的に見られるので、トレンドの把握に役立っています。とくに私は昨年入社し、業界の知見や経験値も少ないので、投資の文脈や背景を想像しながら情報を整理することが自身の学びにもなっています。
また、スタートアップ各社へのアプローチ状況を「ステータス管理」機能で記録できるため、面談の履歴やスピーダ ユーザーグループで得た情報を「メモ(機能)」に残し、メンバー間で共有しています。 何よりいちばん助かっているのは、数多あるスタートアップの情報に瞬時にアクセスできる検索機能です。ニュースでは拾いきれない情報もあるので「エンタメ」「NFT」など、興味ある領域のキーワードを毎回変えて検索をかけ、そこから問い合わせを入れています。
岩崎様:競合分析を行うのに、検索からのレコメンド機能は非常に便利です。世の中にある有象無象の情報の中から、興味を持ったスタートアップと似たビジネスを手掛ける企業を探すにはかなりの労力が必要です。たとえば役員への説明時に「競合はありません」とは簡単に言えませんから、一瞬で類似企業を探し出せるだけでなく、事業概要や資金調達の状況などの情報収集がスピーダひとつで完結できることに価値を感じています。
スタートアップと共に成長し、頼られるCVCチームへ
今後の展望についてお聞かせください。
松田様:021 Fundは来期3年目を迎えます。目標に向かって今は意欲的に活動し続けることが大事なので、さらに多くのスタートアップと出会っていきたいと考えています。ネットワーキングをはじめ、情報収集や知識の習得に、引き続きスピーダの力をお借りしたいです。
また、私自身、前職でスタートアップの立ち上げと運営経験から「スタートアップの支援がしたい」という思いがあります。IPを武器に最先端のテクノロジーに挑戦していくチャレンジングな組織姿勢に倣い、私もスタートアップ企業と社内をつなぐチャレンジをし続けたいです。
岩崎様:まずは021 Fundのプレゼンスを高め、スタートアップ界隈で「エンタメのCVCといえばバンダイナムコエンターテインメント」と言われる存在に、いち早くなることを目指しています。そして、スタートアップと共に成長できるようなCVCを実現し、事業の立ち上げの際にはグループ各社に頼られるチームになれると嬉しいです。
個人的には、021 Fundの設立以前からスタートアップへの出資やM&Aに携わってきて、CVCの設立は念願でもありました。バンダイナムコエンターテインメントにしかできないことを追求し、スタートアップの方々とまだ誰も見たことがないエンタメを生み出したいですね。さらにワールドワイドに仕掛けることにも挑戦していきたいです。
※インタビュー実施日:2024年2月16日。掲載の情報は、取材時点のものです。
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
www.bandainamcoent.co.jp/業種
エンターテインメント
部署・職種
投資・融資
主な利用シーン
投融資前リサーチ
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株式会社バンダイナムコエンターテインメント
021 Fund アソシエイト
松田 愛里様
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株式会社バンダイナムコエンターテインメント
021 Fund アソシエイト
岩崎 覚史様