クニエが切り開く、会計の未来と生成AIの可能性
業務改善提案におけるグローバルの先進事例など情報収集を支えるスピーダ イノベーション情報リサーチ
株式会社クニエ


会計は企業経営に不可欠な基盤ですが、近年はその役割が急速に変化しています。従来型の決算業務の枠を超え、スピードと正確性の両立、業務の生産性向上、戦略的な管理会計情報の提供、さらには内部統制やガバナンス対応まで、財務部門に求められるものはより多様かつ高度になっています。
今回は、各企業が抱える会計領域の課題に挑む株式会社クニエ(以下、クニエ) ファイナンシャルマネジメント担当のマネージャーを務める桜井啓斗氏にインタビュー。日々の業務におけるスピーダ イノベーション情報リサーチのカスタムリサーチ※活用シーンのほか、生成AIが台頭するなかコンサルタントとしていかに情報と向き合うべきかを伺いました。
※カスタムリサーチ:専属アナリストが、お客様独自の調査テーマについてレポートを提供するサービス。平均2週間で、専属アナリストが専門知見を活かして公開情報を体系化。具体的なイノベーション技術やソリューションについて、市場規模、成長予測、プレイヤー情報、ユースケースなどをまとめてご提供。
サマリー
- ・他社の成功事例や取り組みを幅広く調査し、先進性のある情報をお客様へ提供
- ・非財務情報のKPI管理における欧米の事例をリサーチすることに活用
- ・1週間ほどかかっていたリサーチ業務が即日または中2日で完了
多くの企業が抱える会計領域に「システム導入」「業務改善」から課題解決をサポート
桜井さんが所属する会計ソリューションチームの役割やミッションについて教えてください。
桜井氏:前提として、クニエはNTTデータグループのビジネスコンサルティングファームで、製造業をはじめとした幅広い業種業態のお客様に、経営改革、業務改革などさまざまなコンサルティングサービスを提供しています。そのなかで、私が所属するファイナンシャルマネジメント担当では、財務戦略、経理、経営管理といった領域に携わるお客様に対し、業務そのもののあるべき姿を描き、仕組みと運用の両面から実現を支援しています。たとえば、業務プロセスの再設計や組織運営の見直しに加えて、必要に応じてそれを支えるシステムやデータ活用基盤の構築まで含め、一貫して伴走することも可能です。
多くの企業が会計領域において、決算の早期化や業務効率化はもちろん、経営層へのインサイト提供、グローバル対応、ガバナンス強化、管理会計の高度化といった課題を抱えています。私たちは、そうしたお客様の課題に対して、状況や緊急度に応じた最適なアプローチで伴走しています。例えば、「新たな仕組みを導入して抜本的に変えたい」というご相談には、構想策定から実行支援、定着までを1〜3年かけて継続的にサポートします。一方で、「今直面している業務上の悩みを早急に解決したい」というケースでは、現場の声を丁寧に聞きながら、短期間で実行可能な打ち手を共に考え、実現に導きます。私自身は、後者のように現場に深く入り込み、お客様と一緒に本質的な課題解決を図る場面を多く担当しています。
スピーダで得た先進性のある情報はお客様の視野を広げるきっかけにもつながる
クニエさんではスピーダ イノベーション情報リサーチを使っていただいております。どのようなプロジェクトで、どのように活用されているのでしょうか。
桜井氏:さまざまなシーンで活用していますが、特に「業務改善提案」において非常に有効だと感じています。
具体的には、他社の成功事例や先進的な取り組みを調査する際に活用しています。お客様へ業務改善をご提案する際には、自社の状況だけでなく、他社がどのような手法やアプローチを採用しているかをご説明することで、より裏付けのある、説得力を持った提案が可能になります。
ただし、多くのお客様は先進性そのものよりも「現実的かつ短期間で実行可能な解決策」を求めてられています。ですので、得られた情報をそのまま適用するのではなく、自分たちの知見を広げるインプットとして活用し、そこから現実解に落とし込んでいく、という使い方をしています。お客様にとっても、私たちが広い視野をもって議論に臨んでいることは伝わるようで、前向きに議論に参加していただけることが多いですね。
また、スピーダ イノベーション情報リサーチのカスタムリサーチは、非財務会計分野におけるソリューション検討の場面でも欠かせない存在です。たとえば、非財務分野におけるKPI管理について「どのように設計・運用すべきかが不明確」といった課題に対しては、日本国内に限らず、欧米を含むグローバルな最新事例をリサーチしお客様への情報提供に活用しています。その結果として、より実効性が高く、具体的な解決の方向性を示すことができています。
こうしたサービスがない頃は、各種文献調査や有識者へのヒアリングの場を設定するなど、単純な情報収集だけでも1週間以上かかることが一般的であり、プロジェクトと並行して行うには相当な負荷がありました。しかし、スピーダを活用することで、専門性の高いリサーチを最短即日、通常でも2〜3営業日程度で入手できるようになり、調査範囲・精度・スピードのすべてにおいて大きな優位性を実感しています。
「コンサルタントとして専門性を高めたい」と思い、会計領域へ
桜井さんが会計領域を担当することになったきっかけは何だったのでしょうか?
桜井氏:会計領域でコンサルタントとしての専門性を高めたいと思ったことがきっかけでした。
私のキャリアは電力会社でスタートし、調達購買や経理を担当してきました。購買の現場では、日々の取引や調整を通じて企業活動の現実を学び、経理では数字として表れる結果の背後にある現場の動きや課題を実感しました。こうした経験から、現場と経営をつなぐ役割を果たし、企業全体をより良い方向に導く鍵は会計領域にあると考えるようになりました。数字は単なる結果ではなく、意思決定を支える起点であり、組織を動かす力を持つものです。クニエに入社したあとは購買のプロジェクトも経験しつつ、より本質的に企業経営に関わる領域で価値を発揮したいという思いが強まり、シニアコンサルタントとなったタイミングで会計領域を専門に取り組むようになりました。
「生成AI×会計領域」に興味・関心を持ったきっかけ
桜井さんはクニエのサイト内でも「生成AI×会計領域」をテーマにコラムを執筆しています。生成AI関連に強い興味があるのだと感じました。
桜井氏:とても興味深いテーマですね。生成AIが一般化してから約2年が経ち、経理・財務に限らずさまざまな領域で活用が進んでいます。
私自身も、単に生成AIを使って自分の業務を効率化するとか、便利なプロンプトやツールを活用するといった個人レベルにとどまらず、クライアントの組織全体に生成AIをどう組み込み、業務を変革していくかに強い関心を持っています。
もちろん個人レベルの業務効率化も重要ですが、イメージとしては「個人が業務に生成AIを適用する」というより、「生成AIに合わせて組織の業務そのものを再設計する」という発想に近いです。
こうした考え方については、生成AIが登場した当初からコラムでも発信してきました。当時は「そんなことが本当にできるのか?」という声もありましたが、ここ最近では実際にそのような動きや事例も現れはじめており、自分が当時思い描いていた方向性が間違っていなかったことを実感しています。引き続き、この領域の可能性を追いかけていきたいと考えています。
▼第1回:生成AIは、会計部門をどう塗り替えるか
ChatGPTをはじめとしたLLM(大規模言語モデル)の会計業務への活用
https://www.qunie.com/quriosity/230720_00/
▼第2回:生成AIは、会計部門をどう塗り替えるか
生成AIで勝つ会計組織になるために
https://www.qunie.com/quriosity/231130_00/
そして改めて思うのは、こうした変革を実現するための土台となるのは「情報の質と鮮度」だということです。どれだけ優れたアイデアや構想を描いても、古い情報や偏った視点に基づいていては実現には至りません。特にコンサルタントは、「必要だから調べる」のではなく、「必要になる前から知っている」状態をつくっておくことが重要です。だからこそ、自分の専門領域にとどまらず、スピーダなどの情報収集ツールを活用して日頃から幅広い分野にアンテナを張っておくことが欠かせません。
そうすることで、「今どこで新たな潮流が生まれているか」「次に注目すべきテーマは何か」といった感度が高まり、自分の言葉にも説得力と深みが生まれます。さらに言えば、生成AIを取り巻く動きそのものも非常に速いサイクルで進化しています。ほんの一ヶ月前に「画期的だ」と思われていた機能が、すぐに当たり前となり、陳腐化することも珍しくありません。その流れを的確に捉え、必要なものを取捨選択しながら、自身の知見や視点を常にアップデートしていく姿勢がこれまで以上に求められていると感じています。
会計領域で生成AIはどのように受け止められているのか
桜井さんは生成AIを、会計領域のコンサルティング業務でどのように活かしているのでしょうか。
桜井氏:生成AIの活用については、大きく分けて「日々のコンサルティング業務で活用すること」と「クライアントの業務改善施策として実装すること」の二つに分けられます。
前者については、多くのコンサルタントが日々活用方法を検討しており、私自身も一定の知見を有していると自負しています。
しかし、コラムでも触れたとおり、私は後者、すなわち、クライアントの業務そのものに組み込み、価値提供を行うことに特に注力していきたいと考えています。
生成AIを活用して会計業務をいかに効率化・高度化していくか。実際、こうした相談をクライアントからいただく機会も増えており、企業側の高いニーズを強く感じています。
一方で、この領域は日々進化が続く分野です。事例が出揃うのを待っていては遅く、自らが業界のフロントランナーとなる意識で、業務と生成AIをどのように組み合わせれば今できる最適解になるのか、その可能性を探るため、第一線で活躍する専門家や実務家の方々と日々ディスカッションを重ねています。
「情報をキュレーションするだけ」のコンサルタントはもはや価値がない。情報収集力がないコンサルタントは、土俵にすら立てない
生成AIの進化によって、自ら情報をキャッチアップしにいく姿勢はさらに重要な要素になりそうです。だからこそ、これからのコンサルタントに求められる役割は何だと考えていますか。
桜井氏:今もそうですが、コンサルタントは今後ますます「情報収集の先でいかに付加価値を生み出せるか」で差がつくようになると思います。しかし同時に、情報収集力がなければ、そもそもスタートラインに立てないという現実もあります。
私自身、生成AIが登場したときに強い危機感を覚えました。これまで一部の限られた人材しかできなかった「深度ある情報収集」が、生成AIや関連ツールの進化によって、誰でも一定レベルで実現できる時代になったからです。つまり、表層的な情報を集めてまとめるだけでは、もはや差別化にはなりません。
だからこそ、スピーダのようなプロフェッショナル向けリサーチサービスなどあらゆる手段を活用して、自分から積極的に情報を取りに行く姿勢が求められます。しかし、単に情報を集めるだけでは不十分です。特に生成AIの活用においては、生成AIが提示する「もっともらしい情報」を鵜呑みにせず、自らの経験や知識をもとに正しさを見極め、解釈や示唆を加えていくことこそがコンサルタントとしての付加価値です。言い換えれば、「情報収集くらいはできて当然」であり、それすらできないようでは、この先ますます厳しい立場に置かれることになると感じています。
最終的に目指すべきは、「この人が言うなら信頼できる」「この人に話を聞くと、普段は触れられない面白い視点や新しい情報が得られる」と思ってもらえる存在になること。そのためには、結局のところアナログな行動への回帰が必要です。自分の足で現場に向かい、多くの人と対話を重ね、信頼関係を築いていく。その地道な積み重ねの先にこそ、真に価値ある情報へのアクセスが生まれ、自分自身が情報発信の起点となっていくのだと思います。
情報収集・活用方法は変われど「お客様の課題に向き合う姿勢」は変わらない
ともすれば、生成AIが「解らしきもの」を出してくれる世の中、コンサルティング企業はいかに価値発揮していくべきとお考えでしょうか。
桜井氏:これは多くのコンサルティング企業やコンサルタントが日々頭を悩ませているところだと思います。
生成AIがどれほど進化しても、営利企業が存在する限り企業間競争は続き、企業間競争がある限り、企業課題はなくならないと思います。そうした課題を解決する場面では、私たちコンサルタントのような人間が価値を提供できる余地は必ず残ると考えています。
一方で、生成AIが日常的に使われる世界において企業がコンサルタントに依頼する場合、求めるべき付加価値のレベルは当然、これまで以上に高まっていきます。その変化にどう向き合うかが重要であり、生成AIを「ライバル」ではなく「仲間」と捉えるべきだと思います。
ハイレベルな業務課題が増えるからこそ、私たちコンサルタントはあらゆる手を尽くしてお客様の課題解決に向き合う必要があります。「やり方は変わっても、お客様の課題に真摯に向き合い、全力を尽くす姿勢は変わらない」私はそう信じています。
株式会社クニエ
www.qunie.com/特色
クニエはグローバルビジネスコンサルティングファームです。製造業をはじめとしたさまざまな業種・業界のお客様に、最新のデジタルテクノロジーを用いた新しい価値創造・事業創出や、深い業務ノウハウに基づく業務改革のご支援をしています。
業種
業務支援・コンサルティング
部署・職種
コンサルティング
企業規模
1000〜4999人
主な利用シーン
コンサルティングサービスの提供
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株式会社クニエ
ファイナンシャルマネジメント担当
桜井啓斗様