富士通が挑む”顧客への提供価値最大化”に向けたデジタル変革
富士通株式会社
創業から80年以上にわたり様々なテクノロジーを創出し、社会や顧客の発展に貢献し続ける富士通株式会社。サステナブルな成長と企業価値向上、およびパーパスの追求による新たな価値創造に向け、2023 年4 月にCRO(Chief Revenue Officer)室を新設しました。
今回はCRO(Chief Revenue Officer)室で新規開拓を担うDigital Salesチームと顧客提供価値最大化に向けたアカウントプラン戦略を強化する役割を担うDiscovery Workshop / Discovery Discussionチームの皆様に、同社が考える理想の「顧客価値最大化」戦略やプロセス、顧客との向き合い方、日々の活動におけるスピーダの果たす役割を伺いました。
サマリー
- ・顧客提案に必要となる情報収集と戦略策定プロセスの体系化を実現
- ・仮説構築に関して、一貫性のあるロジックに基づいた取り組みを実現
- ・データを基に仮説を創出することで、組織連携における変革を推進
自社の収益最大化のための戦略立案・新規案件創出を担う
―現在のご職務のミッションや想いについて、お聞かせください。
及川氏:富士通は、2023年4月にCRO(Chief Revenue Officer)室を新設しました。CRO室は自社の収益最大化のための戦略立案・実行を目的として、営業・マーケティング・事業部といった各部門や経営層とのハブとしての役割も担う組織です。その中で、CRO室Deals Creationは収益最大化において重要な新規案件創出のフロント実行部隊として、生産性高く広くオポチュニティを創出する活動を目指し活動しています。体制は、実際に顧客アプローチを行うDigital Salesチームと顧客提供価値最大化に向けたアカウントプランを強化するDiscovery Workshop / Discovery Discussionチーム、これらの活動をグローバル展開するチームの3つで構成されています。
その中でDigital Sales、世の中でいうインサイドセールス機能は3年前から立ち上げました。最初は3名の小規模なプロジェクトからスタートし、スモールサクセスを積み重ね、現在は約90名まで拡大しています。私は立ち上げ初期メンバーとして参画し、現在は組織運営、イネーブルメント、デジタルセールスのプロジェクトの一部を担っています。木村さんと山口さんは、Digital Salesのオンボーディングからフォローアップまでを一手に担う、イネーブルメントを担当しています。
田代氏:私が担当する、Discovery Workshop / Discovery Discussionチームのミッションは、顧客のポートフォリオ整理を行い、営業組織と連携してアカウントプランを拡充・強化することです。オープンデータを基に市場/顧客起点で対象企業を深掘りし、当社のケイパビリティを踏まえ、既存のアカウントプランでは捉えきれていない当社が顧客に提供できる新たな価値をアカウントプランに盛り込み、顧客へのアプローチ戦略の新たな切り口を提供することを目指しています。
企業調査をベースに仮説課題を創出し、営業だけでなく事業部も交えて新たなビジネスオポチュニティの創出と顧客アプローチ戦略を立案するDiscovery Workshopと、より短い期間で企業調査を実施し営業とのディスカッションを通じて新たなビジネスオポチュニティを創出するDiscovery Discussionという2つの施策を使い分け、営業部門と連携しアカウントプラン戦略の強化を推進しています。吉原さんと田中さんは、2つの施策のうち、Discovery Discussionを中心に活動しています。
顧客が目指す将来に対して富士通がいかに貢献できるか
―お客様への提供価値最大化に向けた変革について、お聞かせください。
及川氏:現在、富士通はプロダクトビジネスからサービスビジネスへの転換を図り、DXビジネスの拡大を積極的に進めています。このビジネス転換において、顧客への提供価値を最大化するためにはプロダクトアウトからオファリング型への営業スタイルの変革が必要でした。また営業利益率の改善も重要な指標だったためインサイドセールスを導入し、専門分業体制へもっていくことで、属人化を防ぎ生産性を高める営業組織変革を推進しようとしました。
田代氏:重要なのは、顧客が目指す将来像に対して富士通がいかに貢献できるかです。当社がサービスビジネスへ転換するにあたり、富士通が貢献できるポイントを顧客が納得できる形で提案していく必要があります。こうした営業変革の一端も担っていると思っています。加えて、顧客がまだ気づいていない課題解決へも貢献できるような提案を実現することもミッションの1つです。
従来のIT領域とDX領域の2つのうち、富士通は前者の領域で顧客との確かな関係性を構築しています。後者は当社がこれから顧客との関係構築を実現していかなければならない領域です。そこで、顧客の目指す姿を市場や企業のデータから見つけ、提案していく上で、営業や事業部も交えて議論しながら富士通の強みを共に創出していくことが重要だと考えています。
―データドリブンな営業組織に変革するために行ったことを教えてください。
及川氏:Digital Salesチームでは”デジタルを駆使してデータドリブンに再現性、生産性を維持し質の高い案件を創出すること”をコンセプトに活動しています。単なるリストにコールするアポ取りとは異なることを示す上でも、情報収集・ターゲティングの段階でも徹底的にツールを活用しようと考えました。
木村氏:データ基盤を整えるという観点では、どんなツールを導入する上でもある程度は実践できます。一方、データの利活用と定着には大きな課題があります。活用に関しては「こんな使い方をすると良い」という体験を重ねてもらうことが重要ではないでしょうか。並行して、ハイパフォーマーのやり方を積極的に共有する文化も大切です。自分自身の体験+ハイパフォーマーの体験の共有をもとに、使用頻度を増やし、定着させていくことが必要だと考えています。
吉原氏:Discovery Workshop / Discovery Discussionチームは、顧客から公開されているデータ等のオープンデータを分析し、富士通の強みを活かせる新たな提案仮説を創出します。データ分析に基づいた客観的かつ論理的な提案仮説は、顧客との信頼関係の醸成につながっています。
生産性を高めるだけではなく、取り組みを推進するうえでの伴走者
―スピーダの選定のきっかけについて、お聞かせください。
及川氏:Digital Salesチームでは、まず初めにリストのターゲティング精度を高める目的でスピーダ 顧客企業分析を導入しました。きちんと絞り込みを行ったうえで、優先度を付け見込み客へアプローチをすれば、成果も出やすく生産性向上にも繋がります。スピーダ 顧客企業分析のターゲティング機能は、日本企業に合う業界区分で、シナリオも非常に有効だと感じています。また、一製品の受注リストを掛け合わせ、スピーダ 顧客企業分析のスコアでマッチング度を確認するといったターゲティング手法は事業部の間でも評価が高く、実際に自分たちでもっと使いたいと独自で導入した事業部もありましたね。
木村氏:さらに、組織が拡大する中では、Digital Salesのメンバー一人ひとりが事前情報収集でも生産性を高め、精度の高い事前調査の再現性を保つことが重要だったため、WEB検索よりも効率的なスピーダ 営業リサーチを利用することにしました。
田代氏:Discovery Workshop / Discovery Discussionチームでは、調査の効率性を高める方法を探る中で、公開情報をまとめて調査できるスピーダ 経済情報リサーチの存在を知りました。スピーダ 経済情報リサーチは効率性を高めるだけでなく、我々の取り組みに関して様々な相談ができる存在でもあったことから導入を決断しました。
吉原氏:市場/顧客起点で企業を深掘りし、顧客アプローチ戦略の新たな切り口の探索をいかに取り組むかについて手探りで進めていく中で、情報収集という側面に加えて、スピーダの「専任コンサルタント」によるプレミアムサポートにより、共に考えながら取り組みを進めることが実現できています。
―スピーダの活用シーンについて、お聞かせください。
木村氏:インサイドセールスでは活動数の担保が求められるため、いかに顧客へのアプローチの数を確保するか、その時間に集中できるかが重要です。情報がまとめられているスピーダ 営業リサーチを活用することで、アプローチがスムーズに進みます。新規メンバーのオンボーディングでも、早期立上げで非常に助かっています。
田中氏:顧客情報、業界、競合といった視点から総合的にスピード感をもって情報収集する上で、スピーダ 経済情報リサーチは役立っています。我々は仮説課題を出し、富士通が解決できることを考えます。その前提となる情報はスピーダによって収集できています。
―スピーダの導入により生まれた変化について、お聞かせください。
山口氏:複合的な要素はありますが、組織連携における変化としては、Digital Salesに対する営業の期待値が変わってきています。顧客を深く理解した上でニーズやインサイトを引き出していくアプローチをみて、営業と同じ目線でコミュニケーションがとれるようになってきています。従来のような単純にセグメントで区切り、アウトバウンドでアポを取り、営業に引き渡すような”単なる請負作業”をしていたのでは、このような関係にはなれなかったと思います。本質的には難しいところもありますが、マーケットや顧客の事を理解し、顕在的な課題はもちろん潜在的な部分も発掘していくスタンスは営業からも評価されているので、これからも価値を発揮し続けていきたいです。また、Enablementの観点では事前準備のフレームワーク定着にも繋がっており、組織としてのカタチを作りやすいと感じています。継続的に成果を出し続けるためのスキルセットとして、とても重要な部分ですので、今後も浸透させていきたいと考えています。
田中氏:スピーダのプレミアムサポート導入後、客観的な視点を得られるようになったことが一番の大きな変化だと感じています。日々、調査・考察を継続していると、自らの解釈の枠組みに依存してしまうこともありますが、プレミアムサポートによる客観的な角度での分析や示唆があることで、新たな気づきや視点が得られるようになりました。また、顧客分析だけではなく、業界自体の動向も正確に把握・理解できるようになったことも大きな変化のひとつです。
様々な業界に精通するコンサルタントと情報の収集段階から伴走することで、一貫性のあるロジックに基づく仮説構築に取り組むことができるようになったと実感しています。
田代氏:企業調査の視点において、コンサルタントやエキスパートから「こうした調査にはこういう見せ方が適切です」といったアドバイスを得られる点に大きな価値を感じています。組織連携における変化としては、データを基に仮説を創出しているため、納得感や了解を得やすくなったと感じています。一方、営業部門は数値目標の達成がより強く求められるため、既存のアカウントプランでは、富士通起点での提案に留まってしまう可能性もあります。そこで市場/顧客起点での新たなアプローチ戦略を提供するのがDiscovery Workshop / Discovery Discussionチームの役割だと考えています。
新たな支援サイクルを実現し、顧客が目指す将来に寄与する
―今後、ユーザベースに期待することについて、お聞かせください。
山口氏:3,000以上の商材を抱える当社は、顧客の課題を幅広く捉えながらコンサルティングセールスを実践する必要があります。例えば、スピーダ 営業リサーチと提案すべきソリューションが紐づき、アプローチ先に合わせた提案やソリューションが可視化される仕組みがあれば嬉しいです。アプローチ先のお客様と会話している中で、顧客ニーズを基に、最適な部署・提案・ソリューションがレコメンドされるようなシステムが実現することを期待しています。
―今後の展望について、教えてください。
山口氏:伝統的な日本企業である当社のDigital Salesから、他部門、全社、そして社会へと影響を与える範囲を拡大し、富士通から日本の営業が変革したという未来を創出したいです。そのためには継続的に成果を出し続けられる組織でなければなりません。実現へ向けて、セールスイネーブルメントとしても、提供価値を発揮していきたいと考えています。
田代氏:これまではオープンデータをベースに企業調査を行い社内関係部門とのディスカッションから仮説課題を創出するに留まっていましたが、今後は営業と共に我々の仮説を顧客に投げて直接フィードバックを受け、ブラッシュアップしていく活動にも取り組んでいきます。仮説課題を創出した我々だからこそ、顧客に響くお話ができる部分があると考えています。新たな顧客アプローチのサイクルを営業部門と共にまわすことで、提案の精度が高まり、それが顧客の目指す将来像の実現に、より寄与することに繋がると考えています。
富士通株式会社
global.fujitsu/ja-jp/業種
システム開発・SIer・ソフトウェア開発
部署・職種
経営企画・事業戦略、営業・インサイドセールス
企業規模
5000人以上
主な利用シーン
営業・マーケティング戦略策定
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation シニアディレクター
及川 美智代
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation マネージャー
木村 洋平
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation
山口 湧大
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation シニアマネージャー
田代 一道
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation マネージャー
吉原 一博
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富士通株式会社
CRO室 Deals Creation
田中 常元