ドラッグ・ロス解決へ、富士通Healthy Livingの挑戦

富士通株式会社

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「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現に向け、2021年に新事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定した富士通株式会社。

今回はその中のいち重点注力分野である「Healthy Living」のHeadを務める富士通 ソーシャルソリューション事業本部 荒木 達樹 氏に、Healthy Livingが掲げるビジョンや直近の取り組み、日々の業務におけるスピーダ イノベーション情報リサーチ(グローバル名称:Speeda Edge)の活用シーンをお伺いしました。

サマリー

  • グローバルプレーヤーとして戦略立案に必要な補強材料、否定材料探し、客観的な情報として活用
  • 市場調査その他もろもろの戦略策定に要する時間の圧倒的な短縮を実現
  • 意思決定に必要な最小限のグローバル市場情報を効率的に集約

ヘルスケアとライフサイエンス領域におけるウェルビーイングの向上を追求

Healthy Livingについて教えてください。

荒木氏:Healthy LivingはFujitsu Uvanceで定めた7つの重点注力分野のうちのひとつで、人々のライフエクスペリエンスの最大化を目指しています。

Fujitsu Uvanceは、クロスインダストリーで社会課題を解決することを目指して策定された事業モデルです。社会課題の解決に向けて、地球の環境問題を解決する「Planet」、デジタル社会の発展を促す 「Prosperity」、人々のウェルビーイングの向上を目指す「People」の3つを富士通として取り組む貢献領域に掲げており、Healthy Livingはそのなかでも主にPeople領域を重視したアプローチとして、ウェルビーイングの向上に取り組んでいます。

具体的にはヘルスケアとライフサイエンスをまたぐ事業創出を担っており、電子カルテなどの医療情報システムから生成された医療データを収集し、加工する基盤となる 「Healthy Living Platform」の展開や、生成AIを活用し、患者を中心とした革新的なデジタル臨床試験環境とヘルスデータを管理するプラットフォーム「Patient-centric Clinical Trials※」の提供などを行っています。

※AI技術を用いた革新的なデジタル臨床試験環境とヘルスケアデータを管理するプラットフォームの連携・活用により、臨床試験の計画から申請をEnd to Endで支援し、複雑で難易度の高い臨床開発業務の効率化に貢献します。

ドラッグ・ロスの解決へ、Healthy Livingの戦略的取り組み

ウェルビーイングの向上を実現するために解決すべき社会課題は様々ありますが、Healthy Livingはその中から日本国内での「ドラッグ・ロス」に着目し、この問題の解決に向けた取り組みを始めました。この問題を取り上げた理由を教えてください。

荒木氏:理由は2つあります。1つは、ドラッグ・ロスは大きな社会課題であること。課題が大きいということは、当然、大きな市場が存在します。市場を選ぶうえで、富士通が行う事業として適正な市場規模があるかどうかという点は、市場選びの一つの基準となります。

もうひとつは、富士通がその優位性を発揮できる市場であるということです。ドラッグ・ロスの解決には、日本における治験の実施が必要で、そのためにはライフサイエンスだけではなく、ヘルスケアにも精通していなければなりません。その点、富士通グループにはこれまで蓄積してきた医療情報システムの業務知見や事業基盤そしてなにより幅広い医療機関との信頼関係があります。長い年月をかけて培ってきたこうした強みは、他社が一朝一夕では追い付けないものであり、この市場で富士通ならではのアプローチを採ることが出来るのではないかと戦略的に判断しました。

また、治験事業構想時に知り合ったParadigm Health, Inc.との提携も重要な一歩となりました。Paradigm社が目指すドラッグ・ロスの削減やライフサイエンス領域での構造変革は、Healthy Livingのビジョンとも一致し、互いに強いシナジーを生むと確信できたことも後押しとなりました。

スピーダの独自セグメントが社会課題起点の企業発掘と提携戦略を支援

今回のParadigm社との提携に至るまでにスピーダ イノベーション情報リサーチを活用いただいたとのことですが、実際にどのような場面で活用されましたか。

荒木氏:私個人としては、コーポレート・ディベロップメントを管轄する部署を立ち上げた頃からビジネスの各局面で活用しています。市場規模の探索や市場のプレイヤー、競合がどこにいるのか、ファンドレイズの金額推移などはよく見ています。

今回のParadigm社との提携において、Paradigm社と直接話して情報を得ることはもちろんのこと、市場におけるParadigm社のポジションをスピーダ イノベーション情報リサーチでも確認しました。当事者からの主観的な情報だけでなく、データベース上でどのように認識されているのか客観的に把握することは重要ですから。具体的に見たのは、「臨床試験テクノロジー」業界の概要レポートや市場規模、主要プレイヤーの資金調達履歴などです。

他にも、スタートアップの個社ページで提携候補先の企業情報を見たり、競合比較をしたり、海外のニュース記事や業界カットのトレンドレポートなどを読んだりもしています。

ーParadigmとの提携シーン以外の通常業務の中でもスピーダ イノベーション情報リサーチを使用することはありますか。

荒木氏:もちろんあります。例えば、ヘルスケアの領域でグローバル事業として何ができるかという問いを立てたとします。

ヘルスケアに関する法規制は国によって様々なので、一律での事業展開は難しいと想定しながら業界ページを開きます。欧州、アメリカ、インドなどそれぞれの地域でどんなプレーヤーが何の事業を行っているのかを調べ、自分たちがグローバルプレーヤーとして参入する場合の戦略立案に必要な補強材料、否定材料探しに役立てています。

スピーダ イノベーション情報リサーチの最も評価できる点は、社会課題を起点とした、イノベーションテクノロジーの独自のセグメントがある点です。これは他のサービスにはない特徴ですよね。Paradigm社との提携前の情報収集で言えば、臨床試験テクノロジーという領域がありました。解くべき社会課題に合わせた事業ポートフォリオを作る我々にとって、そのまま活かせるこのセグメントがあるということは非常に有益です。

スピーダで進化する市場分析と意思決定スピード

スピーダ イノベーション情報リサーチの導入によって日々の業務にどんな変化が生まれましたか。

荒木氏:レポート報告はもちろん、市場調査その他もろもろの戦略策定に要する時間は圧倒的に短縮されました。私たちは事業部門のため、戦略策定だけを行っているわけではありません。

戦略を決めて動き出すためには、意思決定できる必要最小限の情報があればいいのですが、これまではその必要最小限の情報を集めるために、複数人で様々な媒体、リソースの情報を取得し、それらを分析してまとめなければならず、時間も労力も奪われていました。

それが、スピーダ イノベーション情報リサーチを使うと求めていた情報を迅速かつ的確に得られるようになりました。自分たちが思い描く業界区分がすでに存在しているので、そのセグメントに情報を当てはめれるだけでよく、時間短縮はもちろん、これまでチームで分担していたものを1人でできるくらいの感覚です。

意思決定に必要最小限のグローバル市場情報を効率的に集めるという点においては、もう欠かせない存在ですね。スピーダ イノベーション情報リサーチの分析結果をまとめ、体裁を整えたらそのまま報告書として提出できるので、とても便利です。

データ活用で実現を目指す個別医療の未来

Healthy Livingの今後の展望を教えてください。

荒木氏:今はまだ、ドラッグ・ロスという大きな課題解決に向けて歩み出したばかりのため、まずは医療データをしっかり収集・加工して、治験の計画に活かします。もちろん、計画だけではダメで、実際に日本国内で治験が実現する必要があります。のために実行局面での課題解決にも挑んでいきます。

富士通は治験に長く関わっていますが、今提供できているのは日本固有のソリューションです。今回の提携を通じて、富士通とParadigm社の両社が持つお互いのデータを有効活用することで、治験計画業務の効率化と期間短縮を目指します。

そして、ゆくゆくは創薬の研究と開発までを一気通貫してデータ還元できるように結びつけ、患者が必要な医薬品を入手でき、自分に合った治療を選択する社会の実現を目指しています。

このような社会の実現にあたり、常に意識しなければならないのは、人間を人間として扱った治療法を提供すること、個人が自律的に治療を決定できる環境を担保することです。

効率化を求めて、データだけをもとに「あなたにベストな薬はこれです」という、あたかも人間を機械のように見て、最適化だけを押し付けることは避けなければなりません。人体に薬を投与する治験は、大きなリスクも伴います。Healthy Livingではウェルビーイングを、ひとりひとりの個人が、「自らの生の作者」となることと考えています。その思想を根底に持ち続け、これからの事業展開を行っていきたいと思います。

富士通株式会社

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  • 業種

    システム開発・SIer・ソフトウェア開発

  • 部署・職種

    新規事業開発

  • 企業規模

    5000人以上

  • 主な利用シーン

    事業戦略・全社戦略の策定

  • 富士通株式会社

    ソーシャルソリューション事業本部
    Healthy Living Head

    荒木 達樹