「情報力はグローバルな調達業務の生命線。サプライヤーとの共存共栄で日本のモノづくりに貢献しています。」

大手総合電機メーカーの調達部門における活用

パナソニック株式会社

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パナソニックは1918年に「世界の人々の暮らしをより豊かにする」という精神のもと松下幸之助が創業した大手総合電気メーカーです。全世界で冷蔵庫、洗濯機といった白物家電から、住宅設備・建材などの住宅関連機器、車載電池などの車載関連部品、また生産設備や現場プロセス改善などのファクトリーソリューションのビジネスを展開しています。

同社で部品・原材料調達を通じてモノづくりの発展を見据える長崎様に、SPEEDAの果たす役割を伺いました。

サマリー

  • 市場環境・部品環境・グローバルシェアのリサーチ時間を20分の1に削減
  • 調達戦略を練る時間を確保でき、業務の質と効率が大きく変化
  • 情報力を武器にグローバル規模の製品開発プラットフォーム基盤を構築

パナソニック全社の部品・原材料調達を担う

グローバル調達社のミッションをお教えください。

長崎様:パナソニックの7カンパニー、34の事業部で使用する部品・原材料を調達することが大きなミッションです。調達を担当するのはグローバルで約5,200名、そのうち国内には2,500名のメンバーが在籍し、高品質でコストパフォーマンスの高い部品・原材料の調達に奔走しています。中でも、私が統括する原材料機構集中センターでは、鉄、樹脂、銅、アルミといった原材料部品や、テレビのシャーシ、エアコンの外装、プラスチック部品といった機構部品について年間1.3兆円の調達を行っています。1918年の創業以来当社では、取引先と共に発展していく「共存共栄」の精神を大切にしてきました。質の高い資材や部品はパナソニックのモノづくりに欠かせない大切な要素のひとつです。調達といっても、効率良く買い付けることだけが仕事ではありません。サプライヤーのみなさんと共に知恵を出し合って最先端の部品開発を行い、より質の高い製品を開発することもミッションとしています。

昨今、世の中の変化するスピードは早まるばかりです。どのような課題に直面していますか。

長崎様:当社の主力製品である白物家電業界は、この10年で中国の巨大家電メーカーが大きくシェアを伸ばしてきました。調達の現場でも中国メーカーと競合することが増え、彼らの圧倒的な調達力と戦わなければなりません。より質の高い資材を効率的に買い付けるため、当社独自の戦略が必要になってきました。また、欧米の半導体メーカーを中心にサプライヤーはM&Aによって年々規模を拡大しています。サプライヤー自身が強い交渉力を持つようになり、価格や供給量についての発言権を増してきています。必要な部品や原材料を供給してもらえるよう当社のプレゼンスを高め、より強力なパートナーシップを結べるかどうかが大きな課題です。

「共存共栄」の精神で、自社の発展とともにサプライヤーの発展にも貢献したい

グローバル調達社では、どのような世界観を実現したいとお考えですか?

長崎様:「共存共栄」の精神で、当社の発展とともにサプライヤーの発展にも貢献していきたいと考えています。そのために大切にしているのは、QCD(Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期))を満たす優良なサプライヤーを開拓し、長期的な信頼関係を構築していくことです。ですから入札による価格競争や過剰な価格交渉せず、コスト契約という考えを実践しています。

コスト契約とは、価格契約をする上で実際に製造・物流に要したコストを把握し、そこにサプライヤーの利益を乗せた価格で調達を行う必要があるという考え方です。そのためのツールとして、パナソニックでは社内用語で「イタコナ」と呼んでいる独自の原価分析手法を実践してきました。これは、部材を板(イタ)や粉(コナ)のレベル(鉄板や樹脂のレベル)まで分解、バラしてコスト計算をするという手法です。この分析内容と、実際の製造工程・倉庫物流の差異を比較し、適正なコストで調達を行うのです。 この分析・差異比較の過程で明らかになった、実際に発生する不良等のロス費用についてはサプライヤーと協働で知恵を絞り、極小化に努めています。 サプライヤーの強みや事業戦略を理解し、私たちの競争力強化や成長に活用すべく共同で戦略を練ることもあります。開発段階のものも含むサプライヤーの技術シーズと、当社の将来的なニーズについて、1対1で積極的な情報交換も行っています。それに加えて、社会情勢の急激な変化に対応できるよう、BCP対策も重要です。近年、世界各国の政治情勢や国家間の関係性が急に変化することが増えてきました。地震や大型ハリケーン、新型コロナウィルスの感染拡大などの緊急事態に直面することも多々あります。急に一部のサプライヤーが部品を供給できなくなった場合、私たちグローバル調達社が中心となり、限られた部品の事業部への分配を全社最適視点で調整したり、代わりのサプライヤーに依頼して部品を調達したりすることもあります。

すばやく精度の高い情報収集は、調達業務の生命線

SPEEDA導入前は、リサーチにおいてどのような課題がありましたか?

長崎様:サプライヤーとの契約は情報が命です。現場に足を運んで得られる独自情報と、業界の全体を俯瞰した客観的な情報、その両方からサプライヤーを取り巻く状況や市場動向を把握します。 これまで情報収集の手段として、サプライヤーの経営者に直接質問をぶつけて業界全体を俯瞰し、双方のロードマップを共有して現場の情報を得ていました。また、競合の家電メーカーがどれほどの価格で調達しているのか知るため、リサーチファームや様々なデータ情報サービスも活用してきました。 しかし、新規サプライヤーを開拓する際に重要な財務情報、定常情報、M&A情報、新興産業情報といった情報についてはインターネットで調べることが多く、リサーチだけで半日費やすなど、多大な時間と手間がかかっていました。 そんな時、デジタルマーケティング推進室や新規事業開発の部署などでSPEEDAが導入されていることを知り、導入を検討することとなりました。SPEEDAのセールス担当者の方からわかりやすいプレゼンとデモをしていただいたおかげで、利用イメージが湧きやすかったですね。

導入後、SPEEDAのどのような機能を利用していますか。

長崎様:業界レポートの業界概要で、各業界の情報をクイックに学習しています。例えば「鉄鋼」の項目から「電磁鋼板」の業界の大まかな動向を掴み、更にその業界の代表的なプレイヤーを深堀りしていきます。
企業情報については、財務情報、M&A情報などを重視しています。初めて契約するサプライヤーを調査するとき、継続的かつ安定的に調達できるかを知るために財務情報は非常に重要なポイントです。例えばある部品を調達したいと考えたとき、急にそのサプライヤーの工場がストップしたり、資金的な余力がなく人材配置や部品製造に必要な物資を手配できなくなったりするようなことがあっては困ります。一つのサプライヤーと長く取引を続けるためにも、取引を始める前にしっかりその企業について知っておくことが大切だと考えています。電子機器の小型化・高性能化に欠かせないMLCC(積層セラミックコンデンサ)や半導体などの電子部品、レアアースをはじめとする非鉄金属を担当するメンバーは特にSPEEDAを頻繁に活用しています。こうした部品は省エネ化やIoT化の加速に伴い需要が高まり供給が逼迫しやすくなっています。サプライヤーとの交渉をより早く前に進めるため、市場の変化や現状をすばやく把握し提案に盛り込む必要があり、SPEEDAの業界レポートから得る情報が欠かせません。

※SPEEDA『業界レポート プレイヤー一覧』より抜粋

※中国版SPEEDAトップ画面より抜粋

また、中国各地に調達拠点があるため中国語版SPEEDAも現地で導入しているため、現地のEMS(設計・製造受託)に製造を依頼するため企業を調査し競合比較することもあります。現在はマルチソースで情報収集することを心がけています。SPEEDAからは「いま」の全体感をとらえる情報を、コンサルティングファームからは彼らが足で稼いできたリアルな情報を、そしてリサーチファームからは専門的な部品メーカーについての情報を取得しています。

リサーチ時間が20分の1になり、戦略策定に注力できた

導入後、どのような変化がありましたか?

長崎様:ボタンひとつでレポート作成ができるようになり、リサーチ時間を20分の1に削減することができました。 私たちは部材や部品の調達戦略を立てるために市場環境・部品環境・グローバルシェアの3点について入念にリサーチします。それをもとに品質や価格などのその他3点について戦略を策定していきます。中でも半導体を担当するチームは、SPEEDAの導入後、市場環境・部品環境・グローバルシェアのリサーチ時間を20分の1に削減できました。 その結果、部品の品質や調達戦略を十分に考える時間を取れるようになり、仕事の質と効率を大きく変えることができました。これまではリサーチに忙殺され、戦略策定までたどり着かないケースも多くありました。

今後の展望について教えてください。

当社ではいま、設計主導でグローバルプラットフォームを整備しているところです。これまでは国ごとの生活様式に合わせた高速開発を実現するために、設計側で地域ごとに部品選定や開発を行っていました。しかしそれでは調達のスケールメリットを出しにくく、開発のリードタイムが長くなっていたのです。 今後はグローバルで統一のプラットフォームをベースとした開発にシフトしていきます。これにより開発効率を飛躍的に向上させることができるため、短期間で多品種を市場に投入することもできるようになります。すると、グローバルでの競争力を高めることもできるようになるでしょう。 こうした設計の動きをサポートするために、調達としては部品の共用化やグローバルで最もコスト力あるメーカーの部品選定によって協力したいと考えています。 サプライヤーの強み・事業戦略を理解し、34もの広範な事業範囲を網羅するためには、各サプライヤーや事業部の技術者と台頭にわたりあう必要があります。その一番の近道は、情報力を高めることです。精度の高い情報を収集する上で、SPEEDAはこれからも私たちにとって重要なパートナーになると思っています。

2020.7 インタビュー

パナソニック株式会社

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  • 特色

    創業100年を誇る国内トップクラスの総合電機メーカーです。「共存共栄」の精神の下、全世界で冷蔵庫、洗濯機といった白物家電から、最先端の美容家電、テレビ、デジタルカメラなど様々な電気製品を製造・販売しています。

  • 業種

    製造・メーカー

  • 企業規模

    5000人以上

  • 主な利用シーン

    調達

  • パナソニック株式会社

    グローバル調達社 原材料・機構集中契約センター 所長

    長崎 達夫 様