「働きやすさ」の先にある「働きがい」をどうつくるか――東京海上日動システムズの組織人材開発

独自コンセプト「Be a Value Partner」の策定・浸透に伴走し、社員一人ひとりの行動変容を支援

東京海上日動システムズ株式会社

User's Voice

エンゲージメントが高く、働きやすい環境が整っている一方で、「社会への貢献実感」や「仕事への誇り」に課題を感じていた東京海上日動システムズ。同社は、社員一人ひとりが仕事の価値や意義を実感できる組織を目指し、全社横断での働きがい向上プロジェクトを推進するためのコンセプト「Be a Value Partner」の策定と社内展開に取り組みました。

親会社の先行事例をヒントにしながらも、自社の文化や事業特性に合わせてコンセプトを再構築し、社員一人ひとりの行動につなげる仕組みまで設計。自社らしい「働きがい」をどのように言語化し、組織へ根付かせていこうとしているのか。そのプロセスを伺いました。

「働きやすさ」は高いが、「働きがい」に課題

所属チームの役割と東京海上日動システムズの特徴を教えてください。

木村様: 所属する人材育成チームは、社員一人ひとりの成長と挑戦を支え、プロフェッショナル人材を育成することをミッションとして、研修や人事施策の企画・運営を担っています。

私は4年前に経営企画部から人事部へ異動し、現在は組織人材開発に取り組んでいます。経営企画と人事の双方での経験を生かし、本プロジェクトではリーダーを務めています。

東京海上日動システムズは、東京海上グループのビジネスをITで支える会社です。社員の特徴としては、技術力や専門性に真摯に向き合う社員が多く、目の前の仕事に誠実に取り組む文化があります。

東京海上日動システムズ株式会社 人事部 課長 木村有希 氏

支援以前、組織や社員の状態についてどのような課題意識がありましたか?

木村様: 当社はもともとエンゲージメントが非常に高い会社で、エンゲージメントサーベイでも高いスコアを出しています。Great Place to Workが実施する「働きがいのある会社ランキング」に12年連続でベストカンパニーにランクインするなど、働きやすい環境の土壌が整っています。

一方で、年1回実施している組織サーベイでは、「社会への貢献実感」など一部の項目について、同ランキング上位企業と比べてスコアが低い傾向が続いていました。

ユーザー系IT企業という特性上、日々システム開発に向き合う中では、その先にいるお客様や社会を実感しにくい側面があります。その結果、働きやすい環境は整っていても、それが働きがいや仕事への誇りにつながりきっていない。これが根本的な課題意識でした。

お二人に伺います。社員が働きがいを感じづらい状態を放置すると、どのようなリスクがあると考えますか?

ユーザベース加藤: 大きく2つあると思っています。

1つ目は、組織のパフォーマンスが最大化されなくなることです。働きやすい環境が整っていても、仕事の意義や価値を実感できなければ、社員が本来持っているポテンシャルは十分に発揮されません。その結果、組織として生み出せる価値も小さくなり、事業成長や業績にも影響を及ぼしかねません。

2つ目は、人材の定着が難しくなることです。価値観やキャリア観が多様化する中で、「なぜこの会社で働くのか」という動機付けは、ますます重要になっています。自分の仕事が誰の役に立ち、社会にどのような価値を生み出しているのかを実感できなければ、より意義を感じられる環境を求めて離職してしまう可能性もあります。

働きがいは、社員の継続的な成長や挑戦を支える重要な土台になるのです。

株式会社ユーザベース グロースパートナー事業 ストラテジックデザイナー 加藤俊輔

木村様:私もそのとおりだと思っています。働きがいが高まることで、自分の仕事に自信や誇りを持ち、「もっとこうした方がいいのではないか」という提案や挑戦が生まれます。

逆に働きがいを実感できない状態が続くと、東京海上グループからの期待に応えるだけでなく、期待を超える価値創出が難しくなってしまう。そうした状況に陥ることは、避けたいと考えていました。

親会社の事例をヒントに、自社独自のコンセプト策定へ

支援を依頼するきっかけとコンサルタントに期待していたことを教えてください。

木村様: 働きがい向上の施策を検討する中で、親会社である東京海上日動火災保険の組織人材開発の取り組みについて話を聞く機会がありました。そこで知った、社員一人ひとりの思いと会社の目指す姿をつなぐ「LINK」の考え方に強く共感し、「当社でもこうした取り組みができないか」と考えるようになりました。

その後、取り組みについて詳しく伺う中で、ユーザベースが伴走支援していたことを知り、ご相談することにしました。

一方で、その取り組みをそのまま再現すればよいとは考えていませんでした。

当社はシステムエンジニアが大多数を占めるユーザー系IT企業です。日々の業務や組織文化、事業構造を踏まえると、社員が自分ごととして受け止め、行動につなげられる“システムズらしい言葉”で表現し直す必要があると考えたからです。

加藤さんに期待したのは、単に言葉を整えることではありません。社員の実態や組織文化、私たちが大切にしてきた価値観を丁寧にくみ取り、自分たちの言葉として腹落ちできるコンセプトを、一緒につくり上げることでした。

約4カ月で、働きがい向上の土台を設計

実際のプロジェクトはどのように進めていったのでしょうか。

加藤:プロジェクトの最終的なゴールは、「社員の働きがいを高め、働きやすさと働きがいが両立する組織」を実現することでした。

ただ、働きがいはコンセプトだけで生まれるものではありません。理念や人事制度、対話、個人の目標設定など、さまざまな要素が絡み合うため、長期的な視点で段階的に取り組む必要があります。

そこで約4カ月のプロジェクトでは、翌年度から全社展開できる状態をつくることをマイルストーンに設定し、働きがい向上の土台となるコンセプトとそれを個人・組織へ接続する仕組みづくりに取り組みました。

最初に木村さんと議論したのは、「社員にどんな発言や行動をしてほしいのか」「どんな組織文化を実現したいのか」という理想像です。

週次で対話を重ねながら課題を整理し、①全社コンセプト(世界観)の策定、②社員一人ひとりのプロフェッショナリズムの言語化、③個人と会社をつなぐ組織ビジョンの設計の3つに取り組みました。

プロジェクトを進める中で、特に印象に残っていることはありますか。

木村様: 一番印象的だったのは、加藤さんが当社の社史まで読み込んでくれたことです。私たちが何を大切にし、どんな思いで今に至っているのかを理解したうえで向き合ってくれたからこそ、「これなら自分たちの言葉だ」と思えるコンセプトをつくることができました。

「Be a Value Partner」を一人ひとりの行動につなげる

「Be a Value Partner」というコンセプトについて教えてください。

木村様:コンセプトに込めたのは、私たちは単なるITの担い手ではなく、東京海上グループやその先のお客様・社会に価値を提供する存在でありたいという思いです。

加藤:「Value Partner」という言葉自体は、もともと東京海上日動システムズの企業理念に根付いていた言葉です。社史の読み込みや役員・社員へのインタビューを通じて、その言葉に対する強い思いやこだわりを感じていました。

私が理念策定や浸透支援で大切にしているのは、「なるべくシンプルに」「組織の中にある共有言語を生かす」ということです。目新しさだけを追い求めて言葉を増やしても、かえって浸透のハードルを上げてしまうからです。

そこで新しい概念を持ち込むのではなく、組織の中にすでにあった価値観を磨き上げ、「Be a Value Partner」というコンセプトを提案しました。

コンセプトを社員に浸透させるために、どのような取り組みを行いましたか?

加藤: コンセプトを「理解する」「自分ごと化する」「日々の仕事につなげる」という一連の流れを意識し、それぞれの段階に応じた施策を設計しました。

具体的には、コンセプトを理解・浸透させるための「コンセプトペーパー」、社員一人ひとりが自分の価値観や目指す姿を言語化する個人向けワーク「マイプロフェッショナリズムワーク」、チームとしての方向性を整理する「チームビジョンワーク」の3つです。

役員・社員の共感を得て、全社展開へ

コンセプトや取り組みを展開した後、社内にはどのような変化や反応がありましたか。

木村様: 2026年3月にローンチし、まだ2〜3カ月という段階ですが、社員の反応は想定以上です。ワーク実施についての問い合わせを複数いただき、実際に手を動かして取り組もうとしてくれていることを実感しています。

また、「自分のプロフェッショナリズムとキャリアを結びつけて考えてみた」という声も出始めており、コンセプトを自分ごととして受け止めてもらえている手応えを感じています。

特に印象的だったのは、コンセプトペーパーで示した「個人のプロフェッショナリズムが担当システム、グループビジネス、そして社会への価値提供につながる構造」に対する反応です。「この構造は大事だよね」という声もあり、これまで暗黙知だった考え方を可視化し、組織全体で共有できたことには大きな意味があったと感じています。

役員や経営層の反応はいかがでしたか。

加藤: 役員会議でもスムーズに承認をいただき、社長や人事担当役員の方からは「我々の思想が反映されている」というコメントをいただきました。

こうした取り組みは、経営層の理解と発信が欠かせません。その意味で、経営陣がコンセプトのアンバサダーとなってくださったことは、全社展開に向けた大きな後押しになったと感じています。

年次研修への組み込みで、組織文化を変える

今後、人事として強化していきたいことを教えてください。

木村様: 一過性の取り組みに終わらせないことが最大のテーマです。「Be a Value Partner」の思想を日々の仕事や育成、キャリア形成、マネジメントに組み込み、社員一人ひとりの行動や意思決定に根付かせていきたいと考えています。

定量面では、モチベーションクラウドにおける「社会への貢献実感」のスコア向上も重要な指標として見ていきます。

加藤: 次の展開として、3年目社員向け研修を「マイプロフェッショナリズム研修」として刷新する予定です。こうした育成の仕組みに組み込むことで、「Be a Value Partner」の考え方が毎年着実に組織へ蓄積されていくと考えています。

組織文化は、一つのコンセプトだけで変わるものではありません。理念、人材育成、目標設定、マネジメントなど、さまざまな仕組みが連動して初めて定着していきます。今回の取り組みが、その変化を生み出す土台になっていくことを期待しています。

東京海上日動システムズ株式会社

www.tmn-systems.jp/
  • 業種

    システム開発・SIer・ソフトウェア開発

  • 部署・職種

    経営企画・事業戦略

  • 企業規模

    1000〜4999人

  • 主な利用シーン

    事業戦略・全社戦略の策定

  • 東京海上日動システムズ株式会社

    人事部 課長

    木村有希 氏

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