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資料・コラム

シナジーを強化し事業展開を加速させる

TOPPANホールディングスの戦略投資部における活用

TOPPANホールディングス株式会社

User's Voice

「ネットワークの拡充においてSPEEDA/INITIALは基本を支えるツール」

2023年に社名から「印刷」を取り、ホールディングス制へと移行したTOPPANホールディングスでは、新規事業を強化しています。経営陣からも大きな期待を背負い、事業部門とのシナジーを強化する投資や協業のあり方に「解」をもつには、他社とのネットワークが欠かせません。CVC部門に求められる情報をとりにいくために、SPEEDA・INITIALのサービスやイベントをいかに活用されているのか。事業開発本部ビジネスイノベーションセンター 戦略投資部 部長 大矢将人 氏と高橋琢朗 氏に伺いました。

サマリー

  • 初期的な市場調査から投資案件の株価算定まで幅広く使用
  • オフラインイベントなどサービスを通じたネットワークの拡充を実現

事業部との横の連携を持って開発を進める

貴部署の組織とミッションについて教えてください。

大矢氏:
我々TOPPANホールディングスのCVCの仕組みは2016年に3人で立ち上げました。近年では投資件数も増えてきたことに伴い、役割分担の必要が出てきたので、組織規模は今、3名の海外人員を含めて15人を超えています。

我々の具体的な活動は大きく2つの目的によって分類されます。一つは、本社から新事業を立ち上げること。もう一つは、事業部門が展開する新事業を投資で後押しすることです。現在のチームは目的に即した形で「投資をメインに行うチーム」と「事業部門と外部の協業者との橋渡しを行うチーム」、「ポートフォリオ管理と経営層とのコミュニケーションをメインとするチーム」の大きく3つに分かれています。

現在までの経緯としては2015年に「凸版印刷株式会社におけるオープンイノベーションはどうあるべきか」が議論された際に、一つの解としてCVCに方向性が決まったことで、翌年2016年に経営企画本部内のチームとしてCVC部門が発足し、2019年に経営企画本部から本社の事業開発本部に部署ごとジョインしました。
経営企画本部から移った事業開発本部のメイン機能は、事業部連携も活用しながら新事業をつくることであることから、この組織構造は、経営側からのメッセージとして「事業部との横の連携を持って一緒に活動すること」だと捉えております。

経営からのCVC組織への要請が「シナジーの強化」である以上、IPOの数が何件あっても、我々は褒められることはありません。売上利益目標を立てていないながらも、事業部門と連携をして事業を作って、その事業がどれくらいのインパクトがあるのかに重点を置いているのが実態です。

部として立ち上げから7−8年経った今、2023年10月に凸版印刷株式会社は社名から「印刷」を取り、ホールディングス制に移行するという社史の中でも大きなイベントが発生しました。
CVCの成果とともにホールディングス制になった今、何をすべきなのかと問われている状況です。より一層、事業部門との連携を強化して、新規事業を増やすべきタイミングでもあります。大きな予算を預かる身として、トータルで損を出さないことは大前提ではあるものの、投資機能を担う我々の部門ではないと集められない情報もありますし、投資したからこそ成立する協業があると思っています。
繰り返しになりますが、情報提供の面もある一方で、事業部門とどう取り組んでいるか、先につながる事例が生み出せているかを我々は成果として見せていかなければならないと強く感じています。

お二人のキャリアと具体的な役割について教えてください。

大矢氏:
私は元々理系で技術系採用でした。現在の生活・産業事業本部のパッケージの研究開発部門に最初に配属をされて、事業部門付きの研究開発を足かけ8年間担当しました。
その後、本社エレクトロニクスの研究所へ希望して、異動しました。会社の片隅で自分の好きな研究を続けられればと思っていましたが、研究テーマを変更しなくてはならない可能性が出てきました。その時、研究所の所長が私を経営企画本部に推し、異動となりました。
2010年に経営企画本部に異動した当初は、PLも、「売り上げ」「製造利益」くらいまでしかわからなかった中で、関連する数字の勉強をさせてもらい、株式を購入する実案件も手探りで実施してきました。その後2011年から全社の設備投資事案件を中心とした投資管理の仕事を3年ほど担当し、2015年〜16年からはベンチャー投資を行なう仕事に移りました。今年からは楽しそうな案件を横目で見ながら、チームの成果を最大化できるような環境整備、管理をする立場にいます。

高橋氏:
私は大矢の下で、投資後の連携強化・協業推進に比重を置いた「事業部門と投資先スタートアップの協業推進を行う」チームに所属しております。
新卒から6年ほどCVC部門に所属しており、これまで投資してきた投資先や、先輩から引き継いだ投資先が増え、自分のリソースをどちらかというと新規投資よりも協業推進に傾けています。また、社内副業制度を利用して事業部門にも籍を持っており、投資したスタートアップと事業部の協業推進を自身でボールを持って活動しています。

新卒からCVC部門で働いているため、スタートアップ業界、そしてTOPPANグループの事業内容についての勉強もCVC部門では必要になりますが、「経験」から学んだことが多かったです。
スタートアップ業界に関しては、ニュースや座学で学ぶこと以上に、先輩に同行しながら色んな人とお話させていただき、学びました。
それこそスタートアップ業界のトレンドや業界の仕組みは、INITIALの社員の方やVCの方とのお話を通して知り、自分でインプットした情報をもとに会話を広げていく。TOPPANグループの事業内容に関しては、社内ですべての情報がまとまっているわけではないので、自社のショールームに足を運び、リリース情報をチェックすることで情報を掴んでいきました。また、社内のイントラネット上で気になるサービス・ソリューションの概要資料を見つけ、都度該当部門の詳しそうな人に色々聞いて、少しずつ知識をつけていきました。

面談前のINITIAL利用は「習慣」

INITIALをどのような場面でお使いいただいていますか。

大矢氏:
まずスタートアップ企業の方とお会いする際に、株主は誰か、調達プラン、どのステージにいるかをINITIALで確認するのを習慣化していました。
初回面談の前後で、株主や、調達金額、ステージを見ると大枠の会社の雰囲気がつかめると思っていて、スピーディーに情報を取れるという意味では非常に価値の高い媒体だと思っています。

高橋氏:
INITIALは、週3〜4日ぐらいは見ています。スタートアップ企業との打ち合わせ前の準備の段階で、どんな株主の方がいらっしゃるか、今までどのくらい調達されてきたのか、現在の企業価値は、など基本情報を見ます。また、その会社の競合の調達先などを調べるのに活用をしています。最近ではINITIAL上にあるNewsPicksの記事も直近の業界や企業の関連情報のチェックに活用しています。
イベントではINITIAL Circleによく参加しています。月次で開催されるのがありがたく、毎月行けば会える人がいる、立ち話で近況を知りたいと思える人に会える場があることは助かっています。赴くたびに、新しくお会いする方や、今までつながりのなかった会社の方に会えるのでネットワークを広げる一助になっています。

INITIALを通じたネットワークの拡大が実業務にどのように役立ちましたか

高橋氏:
ネットワークを通じて、VCやCVCの方から、彼らの既存投資先の紹介を受けることがあります。INITIAL Circleでお会いした方とランチをして、企業訪問して情報交換をすることも多いです。CVC、事業会社のオープンイノベーション部門の運営をされている方にどんな方針で投資をしているかなど伺うこともできました。

また、INITIAL Circleは1〜2年目のチームメンバーには絶対毎月行くように勧めています。定期的に人と会えることと、毎月行くことで顔を覚えてもらいスタートアップ界隈の人と多く会えることが大きな利点だと考えています。
継続して参加している1~2年目のメンバーにも変化が出てきました。最近、部内でディスカッションする際の情報ソースが、「インターネット上の情報」から「社外の方から聞いた一次情報」に変わってきたように思います。社外の目線も踏まえた情報の掴み方を、メンバーが知らず知らずのうちに身につけていると感じます。

大矢氏:
ユーザベースから提供されるイベントはINITIAL Circleを始めとして良い機会として活用しています。ネットワークづくりに関しては我々の立場から「参加してきなさい」というよりも、自発的に行うべきかと考えます。若い社員がプロアクティブな動きとしてイベントに参加することがとてもいい機会になっていると思うので、今後とも活用したいと思っています。

初期的な市場調査から投資案件の株価算定まで幅広く使えるツール

SPEEDAはどのような場面でお使いいただいていますか。

大矢氏:
SPEEDAは2019年に事業開発本部に導入しました。事業開発本部全体としてある特定の分野のレポートを書くときには、主要なプレーヤーの数字を含む、定性面や定量面、概要を追うために使っています。
実際のM&A案件に関して、バリューチェーン、市場調査など初期的な調査でも、いずれも使えるツールなのではと思っています。

高橋氏:
SPEEDAの利用頻度は週に1回か2週間に1回ぐらいで、トレンドレポートをよく拝見しています。よく知らない業界のトレンドレポートはとても助かっており、その業界を調べる初期段階として、海外の動向や規制、利益や収益の構造、代表的なプレイヤーの収益構造なども網羅的に載っているので熟読しています。その業界のスタートアップについて、投資検討の際の株価算定をするときにSPEEDAのツールを活用し財務情報を抜き出して使っています。
また、これはINITIALも同様に活用していますが、事業部門側から、特定の領域の会社はないか聞かれることがあると、キーワードで検索した簡単なリスト作成もSPEEDAで行っています。

※キーワード検索した企業リスト(EXCEL出力) イメージ

ユーザベースのサービスに今後期待することを教えてください。

高橋氏:
SPEEDAとINITIALを同時に検索したいことがあるので、一体型にして欲しいと思っています。
事業部門でアライアンス先を探す際は、上場か非上場かは関係なく、事業内容で探すことが多いためです。
SPEEDA、INITIALと往復してリストを作成して、後からマージする作業が手間なので、最初から一体化されていると嬉しいです。

TOPPANのアセットを活用し、外部の方と新技術を広めていく

組織からどんなことを実現していきたいのか、今後の展望をお聞かせください。

高橋氏:
一番は、やはり「TOPPANグループと連携して良かった」と言われるような成果を上げることです。

私は大学生の頃に、データ解析系のスタートアップで1年ほどインターンをしていました。その会社がよくアクセラレータープログラムへ参加していたのですが、アクセラレータープログラムに採択されると関係する会社からの仕事が一気に増え、社内が忙しくなるという経験をスタートアップ側でしてきたので、我々のような会社とスタートアップが互いにうまく連携できた時のインパクトの大きさを知っています。そのためTOPPANグループのアセットをうまく活用して盛り上げていきたいという思いがあります。

CVCやオープンイノベーションは、いまだ社会全体で解が出ていないと思うので、TOPPANグループが率先して挑戦をし続け、協業に関してこんな「正解」があるんだよと見せられるようになりたいです。

大矢氏:
M&Aの事例で初回少額出資に関わった研究開発型ベンチャーのブルックマンテクノロジという会社があるんですが、まずはそういう事例を作りたいと思っています。
もともと研究者として自身の手を動かしてきた経歴があるので、技術が好きであることが根本にあります。
新しい技術で世界を変えて、生活の役に立つ、世のため人のためになる技術を持つ会社に興味があります。自社ができない技術を持っている会社と組み、共に発展して世の中に貢献する仕事に携わることができるというのは、一人の人間としてもありがたいことだと思います。

もう一つ、今の立場を考えると中長期的に成果を出しながら組織を存続させることを考えると、まずは人を集めることが重要だと思うので、社内外から入りたいと言われる部門にしていきたいと思います。働いていて楽しい、楽しくて尚且つ成果が出るようなCVC部門を作っていきたいです。

立場が変わり、技術と研究開発の現場からは離れていますが、外部の方と新技術を広めていくことを成す仕事をしていけるのが、幸せな立ち位置だと感じていますし、こだわっていきたいです。

参照(外部サイト)
第2の凸版印刷を創る。5年で50社に投資したCVCの歩み
https://toppan-cvc-journal.jp/toppancvc/627/
スタートアップとの連携を営業の武器にする。凸版印刷が考える、CVCの本業への活かし方
https://toppan-cvc-journal.jp/open-innovation/1182/

TOPPANホールディングス株式会社

www.holdings.toppan.com/ja/index.html
  • 特色

    世界最大規模の総合印刷会社。情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3分野で幅広く事業を展開している。パッケージや建装材など生活・産業製品を中心に海外展開を加速。

  • 部署・職種

    新規事業開発、投資・融資

  • 企業規模

    5000人以上

  • 主な利用シーン

    事業開発、M&Aの企画・実行、投融資前リサーチ

  • TOPPANホールディングス株式会社

    事業開発本部
    ビジネスイノベーションセンター
    戦略投資部長

    大矢 将人 様

  • TOPPANホールディングス株式会社

    事業開発本部
    ビジネスイノベーションセンター
    戦略投資部

    高橋 琢朗 様