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#経営企画 お役立ち資料 2022/11/30更新

「FLASH Opinion」活用事例 インフレの影響と対策は?①

インフレの影響と対策は?①

今回は「インフレの影響と対策」をテーマに、各業界のエキスパートから回答を集めました。SPEEDA EXPERT RESEACHのサービス「FLASH Opinion」では、24時間以内に5名以上のエキスパートから回答が得られます。

ご自身でサービスを利用する場合には、今回のようにまず大きな問いを立ててみて、集まった回答から気になるテーマをFLASH Opinionでさらに深掘りする、または特定の回答者にインタビューを申し込むといった活用法もおすすめです。

FLASH Opinionとは、
SPEEDAから専門家の知見に
かんたんにアクセスできる新機能です。

アナリストが作成したトレンド・業界に関する公開コンテンツを閲覧できるほか、独自質問を投稿することで、24時間以内に5名以上のエキスパートから回答が得られます。

ご利用シーン(一例)

  • ・オープンソースでは得られない業界市場の深い情報・知見がほしい
  • ・戦略策定や参入検討において、市場の将来性を把握したい
  • ・事業や組織の立ち上げ、改善におけるノウハウや自社の打ち手に関するアドバイスがほしい

※独自質問の投稿には別途チケット購入のお申し込みが必要です。

調査概要

ウクライナ戦争や新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、世界各国で物価が上昇し続け、世界的なインフレに転換。日本においても、原油価格の高騰や円安の進行を受けてさまざまな業界で「値上げラッシュ」がおこなわれています。今回の調査では、各業界における影響、講じている対策をエキスパートに聞いてみました。

質問内容

各業界で様々な商品、サービスの値上げが相次いでいます。インフレによる、あなたが所属する業界や専門性をお持ちの分野への影響や対策を教えてください。

専門家・エキスパートからの回答

発電設備費用の高騰

インフレの定義に依りますが、為替による円安の影響もインフレに含めて記載させていただきます。
再生可能エネルギー業界において、主に発電設備費用(住宅向け、産業向け問わず)が高騰しております。

とくに産業用の発電所建設費用は建設費用のうち65-70%ほどを資材費が占めており、太陽電池モジュールを代表としてそのほとんどが中国・韓国・欧州からの輸入品であるため、円安による影響が大きくなります。

また、為替の影響だけでなく昨今からの半導体不足及び機器を構成する原材料のコストも高止まりを続けているため、為替変動がなかったとしてもドルベースで機器資材のコスト低減が進まない局面となっております。

2011年頃から太陽光や風力といった再生可能エネルギーは順調に建設コストを低減させてきましたが、この1年はおそらく前年よりもコストが高い状態が続く見込みです。為替予約や大規模ロットでの材料調達により変動コストのロックを行なっている各機器資材メーカーもございますが、現状すでに材料等が高騰している環境であるため、資金麺の問題や今後の下落シナリオを鑑み、動けていないメーカも多いのが現状です。

また、人件費については数年前から建設作業員の人件費高騰が認められております。これは人材不足に起因すると認識しており、建設作業員のなり手不足が継続する限り続くものと思われます。

エキスパート情報再生可能エネルギー業界 プロジェクトマネージャー

早期の再エネ増設と電力需給予測が必要

インフレは企業の収益悪化や消費者の購買力低下を引き起こします。電力業界でも世界的な燃料価格高騰と円安加速により大手10電力の収益は悪化しています。一方、電気はインフラであり、消費者は電気を買わないという選択はありませんので売上が立たないことにはなりません。しかしいくつか注視すべき影響があります。

1つ目は燃料調達・トレーディングの観点です。インフレと円安で燃料調達コストが非常に大きくのしかかっていますが、電力会社は燃料調達コストを電気代に価格転嫁してきました。しかし価格転嫁できる限界はありますので、今後は燃料調達におけるリスクマネジメントを徹底し、1円でも安く燃料調達する仕組みが必要です。

JERAや東北電力はETRMを導入し燃料調達計画の最適化を他電力に先駆けて進めてきました。ですがバリューチェーン全体を見て日本の電力需給を精度高く予測し、配船計画も精緻に鑑みた最適化はできていないのが実態でしょう。

また適切なリスク評価をしながらアービトラージを駆使して地域(時間)のプライスギャップをしっかりと見定め収益化を狙う仕組みが必要ですが、日本の電力会社はトレーディング機能を組織的に育てることができていません。

打つべき対策は、大手電力各社が出資して燃料調達・トレーディング機能に特化した連合を設立することです。石油会社も参画して良いかもしれません。

2つ目は脱炭素化の観点です。世界の潮流は石炭火力を稼働させない、廃炉にする勢いですが、日本は需給逼迫もあり、インフレ・円安で高い燃料コストを払ってでも未だに火力発電に頼らざるを得ない状況が続いています。

水力、太陽光、風力といった再エネが代替になるかと言うと、再エネは不安定であり、ベース電源となる原子力と火力に頼るしかありません。

新型原子炉の増設が政府より発表されましたが一朝一夕で稼働に漕ぎ着けるわけもなく、残る火力は水素・アンモニア混焼技術が期待されていますが実現への道のりは長いでしょう。とすると国内の既存原子力がフル稼働出来ないならばLNG火力と石炭火力をフル稼働させる必要がありCO2を出し続けますので、脱炭素化の政府目標を大幅に遅延することになるのは目に見えてます。対策は早期の再エネ増設と、再エネの不安定さをリスクとさせないように国内の電力需給を事前に精度良く予測することです。

エキスパート情報電力会社 総合職スタッフ

早期予算化や先行受注で対策

発電業界には原子力、火力、水力、地熱、風力、太陽光、水素など様々な方式があるが、昨今のサービス関連の値上げからこれらのインフラ分野においても影響が出始めている。

具体的には蒸気タービンや発電機関連パーツそのもの、またそれらに付随する特殊配管、各種ポンプ、バルブなどのパーツに使用する金属メタル素材の高騰、制御・監視分野で使用するコンピュータ関連基板への半導体の価格高騰などである。

対策としては、これまで概ね1年以内であった納期が長納期化(18ヶ月〜36ヶ月)などとなっているため、事前に顧客へ連絡し、予約製造、一部図面作製の先行エンジニアリング作業のみ正式発注など、早めに予算化や先行発注を頂くことで、定期点検に納期が間に合うよう、対外的にも社内的にも定例会議などで密な情報交換を行うようにしている。

エキスパート情報電力会社 海外営業統括部課長

航空機関連のコスト構造改革

航空機の燃料やリース代、パーツ代、整備費用などを中心に値上がりがあり、影響を受けています。その為、整備作業の委託先を一つではなく数カ国にしたり、燃料は事前にヘッジ契約をするなどしてコストを抑えられるように対策をしています。

コスト削減よりも固定費用などのコスト構造を大きく改造すべく現在のリース機材を返却し次世代航空機をリースすることによって、燃費向上や顧客増員を目指すなどの対策も検討しているとのことです。

エキスパート情報航空会社 チーフフライトアテンダント

燃油サーチャージの設定方法を検討

航空業界においては、燃油費高騰の影響が大きい。一般的に燃油費は運航コストの3割程度を占めており、燃油費高騰は航空会社の収益に直ちに悪影響を及ぼす。ウクライナ情勢により、ロシア上空通過を回避した経路で運航しなければならず、運航距離、飛行時間の増加を余儀なくされている路線もある。消費燃料増加も収益悪化に拍車をかけている。

航空会社は燃油サーチャージまたは運賃の値上げにより、コスト増加に対応している。現在の燃油サーチャージ額は過去最高のレベルにある。

例えば、日本航空の北米行き燃油サーチャージは往復114,400円だ(2022年10月1日以降の発券)。場合によっては燃油サーチャージ額が通常の運賃額を上回る。あまりにも高額な航空券料金は、回復基調にある航空需要の減退を招きかねない状況だ。

日本の航空会社は従来からジェット燃料の価格の変動に応じて自動的に燃油サーチャージを決定する方式を採用してきた。しかしながら、これほどまでに高額な燃油サーチャージの設定は需要に悪影響を与えかねず、結果として増収に結びつかない可能性もある。今後、燃油サーチャージの設定方法については検討の余地があるだろう。

エキスパート情報航空会社 市場開発企画部長

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新規事業開発部門においても、たとえば、以下のようなシーンでエキスパートへのご相談が可能です。

ご利用シーン

  • オープンソースでは得られない、業界市場の深い情報・知見がほしい
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ご相談事例(※イメージです)

  • 半導体市場の産業構造やトレンドについて
  • 新規事業の立案・推進にともなう新規部門のあるべき体制
  • 新規事業の立案・推進にともなう事業投資・M&Aの考え方

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