SPEEDAとは
資料・コラム
#新規事業開発 2023/3/9更新

セミナーレポート 変化に強い組織を創る 新規事業立ち上げの挑戦-スピーディーな事業検証におけるSPEEDA活用-

変化に強い組織を創る 新規事業立ち上げの挑戦-スピーディーな事業検証におけるSPEEDA活用- 変化に強い組織を創る 新規事業立ち上げの挑戦-スピーディーな事業検証におけるSPEEDA活用-

2021.6.16 WED / 株式会社ユーザベースが主催する事業企画イノベーターズ『変化に強い組織を創る 新規事業立ち上げの挑戦-スピーディーな事業検証におけるSPEEDA 活用-』が開催されました。ポーラ様が事業を展開する化粧品業界では、国内人口の減少による市場の縮小や消費行動の変化による販売チャネルの多様化、インバウンド動向に連動する顧客ニーズの変化など、事業を取り巻く環境が目まぐるしく移り変わっています。そんな中、化粧品の枠にとらわれない新たな価値創造を目指して「3年後に新事業を立ち上げる」ことをミッションとして2020年7月に立ち上がったのが、大城様がリーダーを務める新市場企画プロジェクトです。今回はその新規事業立ち上げに向けた取り組み、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」や「SPEEDA」上で専門家の知見にアクセスできる新サービス「FLASH Opinion」の活用方法のリアルに触れる60分となりました。

Speaker

大城 敦 氏

大城 敦 氏

株式会社ポーラ
新市場企画プロジェクト
プロジェクトリーダー

2003年ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)に新卒入社。BtoB営業、化粧品事業の企画及び国内エリア営業の後、ロジスティック、マーケティング部門にてマネージメントを歴任。2020年7月より新設部門である新市場企画PJリーダーに着任(現職)。

山中 祐輝

山中 祐輝

株式会社ミーミル(ユーザベースグループ)
プロフェッショナルファーム向け
カスタマーサクセスチーム責任者

2010年3月に東京大学経済学部を卒業後、新卒で三菱商事に入社。エネルギー事業グループ管理部にて、天然ガスや石油ビジネスにおける予決算業務や事業投資案件に関するファイナンス・税務等の計数関連業務に従事。2014年7月にSPEEDA国内セールス担当としてユーザベースにジョイン。入社以降、セールスチームリーダー、執行役員COO、カスタマーサクセス担当などを経験。2021年よりユーザベースグループでエキスパートネットワーク事業を運営するミーミルへ出向し、プロフェッショナルファーム向けカスタマーサクセスチームのリーダーを務めている。

なぜ新規事業立ち上げが必要なのか

1.新市場企画プロジェクト発足の背景

山中 祐輝:はじめにプロジェクトが発足した背景についてお聞かせください。

大城 敦 氏(以下、大城)2019年の終わり頃から新三ヶ年プロジェクト(10年後を見据えた中長期計画プロジェクト)が発足し、新ビジョン策定に向けて議論が始まりました。

創業100周年を迎える2029年のビジョンを『私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会へ。』に決定し、そのビジョンに向けた行動指針を『We Care More. 世界を変える、心づかいを。』と掲げました。

『We Care More.』という行動指針には、化粧品会社でありながらスキンケアに限らず様々な領域をケアし、これまでのターゲットを超えたより多くの人々に価値を届けていくという想いが込められています。

ビジョン策定の議論を踏まえ、2029年に現在の既存事業の延長線上でポーラは生き残っていけるのかについて真剣に向き合った結果、危機感を持って新規事業を立ち上げることが求められ、新市場企画プロジェクトが発足しました。

2.化粧品業界における変化

中:化粧品業界における、この数年での大きな変化についてお聞かせください。

大城商品の届け方や販売チャネルなど、小さな変化はありながら、ポーラは化粧品事業を軸に事業ドメインを変化させることなく続けてきました。これまでは圧倒的な国内市場中心のビジネスモデルでしたが、この数年で顧客構造は大きく変化しました。

2014年~2019年にかけて訪日中国人観光客数が激増し、団体観光客によるいわゆる「爆買い」が起きました。観光客1人当たりが大量に購入するので、瞬間風速的に売上は急増しました。一方、彼らが帰国した後に再購入があるのか、またいつまでこの現象が続くのか予測が難しく、実際に伸びた売上は2020年コロナ禍で失われました。国内外問わず外出が減り、購買の形も購入される商品も変化した結果、従来のビジネスモデルを変えることは必要不可欠となりました。

さらに国内人口の減少による市場の縮小もあり、国内市場中心の事業展開では従来の顧客構造を維持できません。加えて化粧品の在り方を再考する時期も迎えていました。将来、美容医療が発達すれば、シミは化粧品で隠すのではなく、レーザーで消す時代になるかもしれません。このような議論が社内で始まっていました。

中:市場変化に対する危機感は、経営層と現場の社員との共通認識だったのでしょうか。

大城2019年当時、経営層が示した危機感は多くの現場の社員にとっては衝撃でした。ポーラでは、創業以来続けてきたことが伝統となり、その伝統の上でそれぞれの仕事を磨いてきた社員が大半です。事業ドメインを変えることは、これまでの働きを否定されたようなものです。

新しい行動指針『We Care More.』が示されたとき、すぐには受け入れられず「もっと先のことでは?」という現場の声は、様々なところから聞こえていました。しかし、2021年現在は多くの社員が危機感をもち、何か行動しなければならないと考えています。

10件の事業案が生まれるまで

1.新市場企画プロジェクトの社内浸透プロセス

山中:新市場企画プロジェクト発足後、どのようなプロセスで社内浸透させていったのでしょうか。

大城:2020年6月に新市場企画プロジェクトリーダーの内示を受けた時点では、既存事業が強い企業の中で新規事業を立ち上げるには一体何をしたらいいのか、どんな事業が正解なのだろうかと悩みました。プロジェクト発足時に決定していたのは、3名の専任プロジェクトメンバーで、3年後に1件の事業を立ち上げることだけでした。

領域の指定もなく、実現に向けたプロセス、スキーム、ルールなどの全てを自ら創り上げなければなりません。そこで、社員全員が共感できるものを旗印として掲げなければならないと考え、新規事業の【Mission】【Vision(2029)】【Way】を自らの想いを込めて創りました。

【Mission】では、90年培ってきたポーラの伝統や組織の枠組みを超えて新しいポーラを創ること、【Vision(2029)】では、今まで誰も体験したことのない価値をポーラが10年後の当たり前にしたいという想いを、【Way】では実際に進めていく際に大事にしたいことをそれぞれ示したのです。

自前主義から脱却し組織の枠組みを越えて他社と協業することで、新たな価値を生み出すにはAllianceが必要です。Allianceを実行するためには、失敗を恐れずに挑戦する speed×trialが欠かせません。実際に社長からは「失敗の数があなたの評価だと思いなさい」とも言われました。

実はSPEEDAのオンラインセミナーでヤマハ発動機の青田さんがおっしゃっていた、「I need your help. & What Can I do for you.(まず助けを求めたうえで、自分にできることも尋ねる姿勢をもつ)という言葉が印象に残り、そのままWayに設定しました。

これらを忘れずに社内外問わず周りを巻き込みながらチャレンジしていきたいと思っています。

山中:お見せいただいた資料の右上にある『1/300』とはなんでしょうか?

大城:新規事業の打率は角度の高い企画で10%程度だと言われています。そこで、ビジネスアイデアを社内から300個集め、その中の一つを事業化することをプロジェクトのKPIに設定しました。目標数値を可視化したことで、社員からそのうちの1件に協力しようという気持ちが生まれ、アイデアが集まりはじめました。

『1/300』には社内風土に変化を起こす狙いもあります。300個を3年で集めるには1 年で100個、つまり1 年で100人がアイデアを出すことになります。これを続けると毎年、新規事業に関わる社員が100人ずつ増え、社内風土に変化が起こると考えました。最終目的は社内で新しいチャレンジが生まれ続けることなので、数値目標はそのためにも設定しています。

2. チャレンジが生まれる社内風土

山中:【Mission】【Vision(2029)】【Way】を掲げた後の社内の変化について、お聞かせください。

大城社員には不安な想いを持つ人、とりあえず様子を見ようとする人が多かったと思いますが、新市場プロジェクトは経営層の専制で発足したこともあり、会社の本気度は伝わっていたと思います。

社内認知に向けて、プロジェクトの方針や方向性、企画内容などを全社メールでたくさん発信しました。1か月も経つと徐々に開封されなくなっていきましたが、それでもとにかく発信することを大切にしました。並行して、新規事業アイデアをもった社員は意外と多いことが分かったので、そういう人の想いをヒアリングして形にし、地道に先行事例を創りはじめました。

山中:チャレンジが生まれ続ける社内風土について、大城さんのお考えをお聞かせください。

大城ポーラにはチャレンジが生まれる土壌はありますが、まだ風土と呼べる段階には至っていません。ポーラは強いチャネルをもつ老舗ブランドで、保守的な企業です。これまでは規定の業務をいかに効率よく進めるかが問われてきました。

ただ、その中でも新しいビジネスアイデアを持っている社員は多く「火種のもとはある。あとは火を付けるだけ」という状態です。どんな想いがあっても表現する場がなければ、アイデアが表に出ることはありません。想いを表現した先に何があるのかをきちんと示すことが重要です。

3.プロジェクト発足後の挑戦

山中:スライドに記載されているアイデア募集方法「社内創出」において、挑戦してきたことについてお聞かせください。

大城プロジェクト発足から半年間は社内風土の醸成のためにアイデア創出のスキームを作り、プロセスを策定して経営層の承認を得ることを中心に進めました。

当社には、新規事業創出の方法を知る社員はほとんどいません。専任プロジェクトメンバーも新規事業経験者ではなく、想いを言語化してアイデアとして人に伝えられる社員が少ないという課題を抱えていました。そこで2021年2月に「ビジネスアイデアコンテスト」を開催することを前提に、ビジネスアイデアワークショップを月2回ほど開催し、アイデア創出に向けて動き出しました。

2021年2月に開催したビジネスアイデアコンテストには40件の応募があり、その中から3件が最終選考に残りました。2021年6月現在、コンセプト設計の段階に入っている事業案は社内創出以外のアイデアを含めて全部で10件です。

中:ビジネスアイデアコンテストの選考基準についてお聞かせください。

大城「誰に向けて、何のためにやるか」が明確になっていることに加え「どのような社会的意義があるか」を重視します。選考基準の中心には『We Care More.』があり、ポーラとして、世の中の価値として、どのような広がりをもつことができるかといった点と、立案者の情熱や想いを総合的に審査します。

中:ビジネスモデルや既存事業とのシナジー、市場性については、どの程度見ているのでしょうか。

大城どれも重要な点ですが、選考段階では重視していません。実現可能性を重視しすぎると、既存事業の延長線上になり、大きな変化が起こせなくなるからです。『1/300』で生み出したいのは、既存事業とは非連続の飛び地のビジネスアイデアであるべきだと考えています。

中:まだ粒度は粗いそれらのアイデアを、どのように磨いているのでしょうか。

大城氏:ビジネスアイデアコンテストの応募から審査までの期間は約2か月間です。その期間に応募者全員に必ずフィードバックを実施しています。

2021年1月に専任プロジェクトメンバーは5人体制になり40件の応募に対して2営業日以内のフィードバックを実践しました。ビジネスアイデアは、立案者と共にインタラクティブなコミュニケーションで創り上げていきます。さらに、募集期間のはじめの20日間の応募者には無制限でのフィードバックを実践することで、粗いアイデアも視点が定まるようにしています。ターゲット、インサイト、バリュー・プロポジション、提供価値、ソリューションの観点を1つひとつ丁寧にフィードバックすることが、プロジェクト専任メンバーとしての腕の見せどころです。

中:水面下で動いている企画群を発掘するアイデア募集方法「社内統合」についてもお聞かせください。

大城アイデアの社内創出と並行して、水面下で進んでいる企画を拾い上げる社内統合も重要です。社内ではガラパゴス的に様々な社員があらゆる企画を進めています。

例えば事業部単位で他社とのアライアンスを目標に企画が進んでいる裏で、似たような企画を進めている部署があるとします。それらを組み合わせることで新事業に発展する可能性は高まります。企画の統合には反発もありますが、先が見えずに悩んでいる企画を他の企画と統合することで、関わる人が増え推進力が上がることがあります。

スピーディーな事業検証におけるSPEEDA活用

1.SPEEDA導入の背景

山中:新市場プロジェクトが始動するタイミングで、弊社の経済情報プラットフォームサービスSPEEDAを導入いただきましたが、導入背景についてお聞かせください。

大城新市場プロジェクトにおいて情報収集は重要ですが、これには時間がかかります。ここをいかに効率的にするかを考えなければ、仕事がまわらなくなることは予測されていました。簡略化できるものは簡略化する、外部を頼れるものは頼りたいと考えていた時に紹介されたのがSPEEDAでした。

たくさんのアイデアを検討するために、知見の浅い様々な業界の情報を必要としていました。幅広くスピード感をもって情報収集できることが、最終的にSPEEDAを導入した理由です。

2.SPEEDAの活用事例

中:実際にどのような場面でSPEEDAを活用されているのか、大城さんにご紹介いただきます。

大城トレンド検索をよく活用しています。「トレンド」アイコンをクリックすると、注目トレンドがカテゴリーごとにランキング表示されます。

ビジネスアイデアコンテストでは、立案者に対しアイデアの壁打ちやフィードバックを行います。その際、何も知らない状態では的確なフィードバックができません。

例えば、サブスクリプションのアイデアが立案された場合、「サブスクリプション」をクリックし、全体の概要からポイントまでを閲覧します。ここで一通りの予備知識を得ます。

さらにそのトレンドを深く知りたいときは、「ニュース」をクリックします。するとトレンドに関連するニュースの一覧が表示されるので、すぐに具体事例が収集可能です。

同時に、グループ名や企業名が出てくる場合は、公式サイトでさらに情報を確認します。このように、様々な情報を整理するためによく使っています。

多いときには2日間で5件程度のフィードバックを行うため、情報収集を素早く行わなければなりません。付け焼き刃の情報収集では、立案者のアイデアを磨くことができません。アイデアの周辺情報を調査する際、資料に入れ込む際にも活用しています。

3.専門家へのインタビュー(FLASH Opinion)の活用方法

山中:大城さんはSPEEDAオプションサービスであるSPEEDA EXPERT RESEARCHの一つ、FLASH Opinionもご活用いただいています。FLASH Opinionは質問を投げると24時間以内に専門家から5件以上の回答を得られるサービスですが、そちらの活用に関してもお聞かせいただけますか。

大城新規事業企画が動き出したとき、まずは専門家の話を聞きます。専門家1人から話を聞いた場合、深い知識は得られてもその意見だけを参考にして良いのだろうかと疑問が残ります。FLASH Opinionを活用すると、あらゆる角度から様々な専門家の意見に触れることができます。

例えば私は「日本でアートビジネスを興す際に想定される市場内での壁や課題は何か?」と質問を投げかけました。日本のアート市場についてウェブ検索では情報が少なかったのですが、24時間以内に15件もの専門家から回答が得られ、市場やビジネスチャンスなど総合的に見えてくるものがありました。これに加え、ヒアリングの検証を活用すると、方向性の再確認ができます。

4.新規事業開発に重要な軸とは

山中:新規事業立ち上げに重要な軸について、お聞かせください。

大城:どのアイデアが残るか、どの領域が成功するかはわかりませんが、『speed×trial』でとにかく次に進む、失敗を恐れずにチャレンジする、アクションし続けることが大切です。「やらなければ進まない、やれば何かが残る」「失敗しても無駄にならない」これが既存事業と新規事業の大きな違いだと思います。

社員がアクションしやすい環境を作ることも私たち運営の仕事です。例えば、立案者の多くは新規事業に充分な時間を確保できるわけではありません。そこで既存事業の上長と相談して、立案者がビジネスアイデアの応募に専念できる時間を確保するようにしています。

上長たちの納得の上、立案者の時間をもらうためにも私たちがこういう想いでプロジェクトを進めているので、この人に関わってほしいと語れること、話し合えることが重要だと考えています。

山中:大城さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。