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#経営企画 2023/3/7更新

セミナーレポート SPEEDAって経営企画部で何ができるの?-企業の未来をつくる経営戦略策定編-

SPEEDAって経営企画部で何ができるの?-企業の未来をつくる経営戦略策定編- SPEEDAって経営企画部で何ができるの?-企業の未来をつくる経営戦略策定編-

2021.11.25 THU / 株式会社ユーザベースが主催するH2H(Home to Home)セミナー『SPEEDAって経営企画部で何ができるの-企業の未来をつくる経営戦略策定編-』が開催されました。テクノロジーの進化や環境問題への注目が高まるなど、ビジネスを取り巻く市場環境が急激に変化する中、多くの企業で時代に合わせた変革が模索されているのではないでしょうか。一方で、「中期経営計画の策定場面において、既存事業の延長線上に留まってしまう」「計画の実践に向けて新しい事業機会を探りたいが、情報収集に時間がかかり議論が進まない」等、企業変革の先導役として期待される経営企画部の方はお悩みが多いのではないでしょうか。今回はDIC株式会社 経営企画部の尾崎氏と日本ユニシス株式会社 経営企画部の波々伯部氏をお招きし、企業変革に向けた経営戦略の策定およびその実践において、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」は何ができるのか?についてお伺いしました。変革を先導する経営企画部として、いかに“攻めの姿勢”を自ら実行し組織に伝播させていくか。その実践のヒントに触れる70分となりました。

[モデレーター]
株式会社ユーザベース B2B SaaS事業 SPEEDAカスタマーサクセス担当:松井 亮介

Speaker

尾崎 悠介 氏

尾崎 悠介 氏

DIC株式会社
経営企画部 経営戦略担当

2009年、東京大学大学院工学系研究科(錯体化学・超分子化学)を修了後、DICに入社。フッ素系材料やカラーフィルタ用色材の開発に従事。特殊な触媒を用いた精密重合法による高機能フッ素系添加剤の量産化に成功。2020年から現職。全社的な戦略立案・実行に携わる。“攻めの経営企画”の触媒となるべく試行錯誤中。

波々伯部 潤 氏

波々伯部 潤 氏

日本ユニシス株式会社経営企画部
経営企画室

新卒でリクルート入社、営業・財務・M&A/PMI業務を経て香港駐在。複数社の海外事業および経営企画を経て、現在は日本ユニシスの経営計画、業績管理、各種プロジェクトに携わる。特技はテレワーク向け手抜き料理(ありもの食材・時短・3品)。1年前に空手を再開。

企業変革に向けた取り組み

1.企業紹介と企業変革(日本ユニシス)

松井 亮介:はじめに、業務のミッションと取り組みについて、波々伯部さんよりご紹介いただきます。

波々伯部 潤 氏(以下、波々伯部):4社の海外事業や財務および経営企画を経て、現在はシステムインテグレーターの日本ユニシス経営企画部で競合分析や市場調査、業績管理を担い、経営戦略における意思決定を支えています。弊社は2022年4月に社名をBIPROGY株式会社に変更します。社名変更の背景には、国内でのシステム受託開発の枠に留まらず、我々自身が社会課題を解決するエコシステムをつくり、ボーダレスな視座で社会価値を創出するビジネスを手掛けるという意思が込められています。

我々の属する業界は、社会環境の変化により業種業態の異なる企業が次々に参画し、競争激化が顕著になっています。同時に、社会課題起点の新事業創出を目指す新しい変革が求められています。そこで、中長期の成長に向けて次の取り組みをはじめています。

顧客向けには、地域データを利活用するプラットフォームや全国でのMaaS(マース:Mobility as a Service)の実証実験を用いた地域活性化と、ライブコマース事業などのデジタル活用による生活者接点の拡大に取り組んでいます。

さらに社会課題の解決に向けて、行政と共に下記のような様々な活動もはじめています。内閣府と共同で大きく二つの取り組みを行なっており、一つは医療AIホスピタル、もう一つは自動運転です。社会的価値構築の例としては、他にも脱炭素社会の実現のため非化石証書トラッキング委託事業などを行っています。これらの事業は自社のみでは成立しないことが多く、様々な技術やバックグラウンドを持つ企業と共にビジネスエコシステムを形成していくことが必要です。

以上が日本ユニシスにおける企業変革の特徴です。

2.企業紹介と企業変革(DIC)

松井:ありがとうございます。続いて尾崎さんの業務におけるミッションと取り組みについて、ご紹介いただきます。

尾崎 悠介 氏(以下、尾崎):化学メーカーであるDIC株式会社の事業は、印刷インキからはじまりました。そこから派生する形で、現在はインキに使う有機顔料、合成樹脂などに事業拡大しています。私は当社の技術開発担当に約10年従事した後、2020年から経営企画部で経営戦略を担当しています。

従前は、製品ごとで部門を区切っていましたが、2019年に公表した中期経営計画では、製品提供だけでなく、製品を通じて社会へどのような価値が提供できるかに主眼、関心をおき、提供価値視点で下記3つの事業部門としました。

パッケージング&グラフィック部門は、包装材料を通じて社会やくらしに「安全・安心」を、カラー&ディスプレイ部門は、表示材料を通じて社会やくらしに「彩り」を、ファンクショナルプロダクツ部門は、機能材料を通じて社会やくらしに「快適」を提供するものです。

基本戦略を実現するための新セグメントと新規事業創出のための体制は次の通りです。

左側に記載しているバリュートランスフォーメーションは、冒頭お伝えしたように既存事業の軸を製品軸から価値提供軸へ切り替え、事業を質的に転換することで、さらに事業価値を広げていく体制です。

右側に記載しているニューピラークリエーションは、社会的な市場や環境変化に応じた価値を新規事業で提供していく体制です。これは波々伯部さんもおっしゃっていたように社外と協力を行い、いかにビジネスエコシステムを創っていくかも意識しながら事業開発を行なっています。

松井:ここで視聴者の方からのご質問を拾いたいと思います。「経営企画の策定及び浸透において、どのように事業部を巻き込んでいきましたか?」ということですが、いかがでしょうか。

尾崎:2022年からはじまる新しい経営計画策定に向けて、DICでは計画段階から事業部門のキーパーソンと共にディスカッションを進めています。ただ私自身もこの質問に関して模索中なので様々な企業の取り組み方も聞いてみたいところです。

3.経営企画部の位置づけと情報収集の課題

松井:企業変革による情報収集の課題の変化についてお聞かせください。

尾崎:企業変革に伴う事業範囲の拡大や転換は、以前から想定されていました。これまでは直接顧客にニーズをヒアリングすることも多かったのですが、今後は異なる顧客への価値提供が必要になります。そこで、より多角的な視点、あるいはより俯瞰的な情報収集が必要になっています。

波々伯部:システム受託開発を中心とした既存事業は、長い期間をかけて信頼関係を築いてきたお客様との取引が多くを占めています。それに対して、新たな市場、新規事業に進出するとなると、その市場がどういう環境で、どういうプレイヤーがいるのか、プレイヤーはどういう企業でどういう事業を営んでいるのか調査する必要性が出てきます。集めなければならない情報の範囲が広がりましたが、馴染みのない領域における知見がないことが課題として浮かび上がりました。

松井:企業変革の意思決定プロセスと、その中での経営企画部の位置付けについてお聞かせください。

尾崎:事業部門が積極的に事業戦略立案を行っていけるように、経営企画部としてはいかにサポートできるかが重要だと考えて取り組んでいます。加えて部門ごとに見た際にこぼれ落ちるところを全社的にカバーしていく役割も必要です。

波々伯部:日本ユニシスはボトムアップあるいはトップダウンのような一方通行ではなく、両方向での対話を重要視しています。戦略を決める際には経営層や経営企画部はもちろん、社内の各部門が納得感を持つことができるよう議論を繰り返します。

戦略策定時や戦略を現場に伝える場合には、文字のみで伝えずオンライン対話で方針説明と質疑応答を行なっています。この活動を弊社ではキャラバンと呼んでいます。事業現場の人たちが当事者意識を持つこと、彼らの意見を汲み取ることを大切にしています。インタラクティブな会話を活発に行うには現場にも広い知識を共有することが重要なので、そのサポートをするのも経営企画の役割です。

SPEEDAって経営企画部で何ができるの?

1.SPEEDA活用法(日本ユニシス)

松井:競合分析や市場調査を担い、大胆な意思決定を支えるうえで、どのように網羅的なリサーチを素早く実践されているのでしょうか。波々伯部さんにお伺いします。

波々伯部:戦略策定に限らず、何か新しい施策を創るときは、一般的に下記のような流れになると思います。

この意思決定に至るまでの調査、分析・立案、資料作成には多くの時間と人材を投入している企業が多いのではないでしょうか。

調査フェーズでは、特に他社の財務情報を調べるだけでも、相当な時間がかかってしまいます。この調査を効率化し、本来経営企画がやるべき分析や立案に集中するために、SPEEDAを導入しました。資料作成フェーズでは、Power Pointできれいな資料を作ろうとすると、図表やフォントなどにこだわったりして、必要以上に時間をかけてしまいます。そのようなムダを少なくするために、相手が役員層であれ社外の方であれ、上記スライドのようにあえて手書きのメモで打合せをすることが多いです。

松井:手書き資料を持参することは結構勇気がいるかもしれませんが、綺麗に資料を作成することがゴールになっていることもあるので面白い発想ですね。視聴者の方からのご質問ですが、中期経営計画策定段階ではどのようにSPEEDAを活用されていますか?

波々伯部:弊社では実は中期経営計画の策定をしていません。外部環境が変化しやすい時代には、環境変化への適応が難しい中期経営計画よりも、パーパスに基づく「経営方針」を掲げ、それに沿って各現場、各組織が自立的に動くことを期待しているからです。「経営方針」の策定にあたっては、競合、顧客を含めた市場の変化(細分化した際にどのカテゴリがどのようなペースでどれだけ伸びているのか)をまずベースとして分析し、どこに重点的に取り組むかを議論しています。具体的なSPEEDA の活用方法としては、M&Aを検討する際に「競合財務比較」で企業の財務データを並べて検証します。一度作成した検索は保存が可能なので、必要に応じてアップデートしながら継続的に分析しています。

またSPEEDAでは右下のアイコンからサポートデスクに質問ができ、基本的には30分以内に返信があります。何かの会議が始まる前に質問を送信しておくと会議が終了する頃には返信が届いているため、非常に便利です。使い方や調査したいテーマなどについて、5分以上迷うようなことがあれば、サポートデスクを頼るようにしています。

2.SPEEDA活用法(DIC)

松井:SPEEDA導入に至る背景について、尾崎さんにお伺いします。

尾崎:新しい領域へのチャレンジが必要であり、これまで以上に情報収集が重要になる中で、良質な二次情報に効率的に触れるのも1つのポイントになってきます。1年ほど前からそういった情報収集、共有ができるツール導入を検討しており、次の経営計画を立てる直前のタイミングでSPEEDAの導入に至りました。

松井:SPEEDAの活用シーンについて、お聞かせください。

尾崎:興味関心のあるものがすぐ調査できるので「業界」
「トレンド」機能をよく使用します。「トレンド」では今後の社会的な変化予測を参考にしながら、自社のビジネスを広げる可能性を検討しています。

波々伯部:私も「トレンド」を参照しています。たとえば「ライブコマース」と検索窓に入力すると「ソーシャルコマース」など、キーワードから派生する周辺情報までレコメンドとして幅広く表示してくれるので欲しい情報にたどり着けます。

松井:どのように外部環境の変化からビジネスチャンスの兆しを捉え、事業部を牽引されているのでしょうか。

尾崎:SPEEDAを活用することで、事業部との対話での「どういった領域で今後のビジネスを伸ばせるか?」「別の視点や俯瞰的に見た場合にこういったところもあるのでは?」などのディスカッションを活性化し、刺激することができます。SPEEDA のレポートはダウンロードできるので、メンバーに共有し異なる視点を入れることで、議論の幅を拡げることができます。これも経営企画、コーポレートサイドの役割ではないかと考えています。また先述の通り部門ごとでこぼれ落ちる箇所をいかに全社的にカバーできるかもポイントになっているので、トレンドや業界動向にも注目しています。

松井:冒頭ご説明いただいたように、製品軸から社会への提供価値を軸とした事業セグメントへ再編され、情報収集に変化はありましたか?

尾崎:提供価値軸で部門を区切り始めたのは、社会動向を注視するためです。経営計画の策定時だけではなく、計画実行段階でも社会動向についての変化は追い続ける必要があります。さらに変化が経営計画に影響を与えるようであれば、そこを踏まえた見直しも必要になります。今後も継続して定点観測的に変化を注視するうえで、SPEEDAが役立つと考えています。

松井:変化を定点観測する上では、SPEEDAの統計データもご活用いただいていますよね。

尾崎:「ツール」→「IR・統計データ検索」から関連する統計データ、当社のビジネスとリンクしそうな業界データをいくつか調べておさえています。たとえば「半導体」で検索すると、経産省の統計をはじめとする様々な業界団体の統計が出てきます。

波々伯部さんもおっしゃっていたように毎回検索するのではなく、My SPEEDAという機能で設定を保存して定期的にデータを見ることができます。SPEEDAは短時間で過去に遡ってデータ解析できるため、長期トレンドを把握する上でも活用しています。

松井:視聴者の方よりご質問いただいておりますが、WEB検索などの公開情報とSPEEDAの最大の違いは何でしょうか?

尾崎:最大の違いは速さです。公開情報を検索サイトで1つずつ確認していくこともできますが、SPEEDAなら関心があるものをピンポイントで調べやすく、財務情報などの数値データの取得や「業界」や「トレンド」の概要を調べる調査など、かなりスピードアップしています。

松井:数値データに関しては、サポートデスクにお問い合わせいただければ、ご要望のデータを格納することも可能です。実際に尾崎さんからも3、4回ほどお問い合わせいただきましたね。

尾崎:そうですね、SPEEDA上に掲載されているデータの年次ベースを月次ベースにしていただけないかなどご相談させていただきました。そういった相談ができるのも使いやすいポイントです。

3.SPEEDA EXPERT RESEARCH

松井:オープンソースでは得られない情報やナレッジ(経験知)を得られるSPEEDA EXPERT RESEARCHには、24時間以内に5名以上の専門家の意見を得られるFLASH OpinionというSPEEDA上のオプション機能があります。実際のご活用方法についてお聞かせください。

尾崎:FLASH Opinionは、コンサルタントに時間をかけて意見を依頼するのではなく、クイックに意見が欲しい場面で非常に優れた機能です。実際にリサイクル分野のビジネス検討段階で「いかにリサイクルのエコシステムを作っていくか」という観点での成功事例、失敗事例について問い合わせをしました。回答者はメーカーの担当者やコンサルタントの方などで、多くの回答が参考になりました。どういった形で成功、あるいは失敗したか、どこがボトルネックとなり失敗したのか、様々な観点でキーワードを織り交ぜながら、充分な文章量で回答いただけました。

次のアクションはまだ未定ですが、回答者の方に直接インタビューを実施できるEXPERT Interviewという機能も興味深いです。

波々伯部:私がFLASH Opinionを利用した際も、質問したテーマの業界出身者からリアルな経験談としての回答を得られました。回答は1日で十数件集まり、その速さにも驚きました。

初期仮説を立てるうえでコンサルタントに依頼するほどでもないが、簡単なリサーチが必要なとき、FLASH Opinionが有用です。

今後の展望とその中でのSPEEDA活用

1.変革を促す経営企画部として目指す姿

松井:お二人の経営企画部としての今後の展望と、その中でのSPEEDAのお役立て方について、お聞かせください。

波々伯部:自社のみでは解決できないことや成立しないビジネスが、これから益々増えていくと思います。その中でビジネスエコシステムをつくり、複数社で1つの目標に取り組むことが重要になってきていると実感しています。

どういう企業と組むのか、どういう市場があるのかといった調査は不可欠であり、そのような場面でSPEEDAは有効です。複数の組織や個人が協業する際や戦略を立てる際、「定性的、定量的にどういった前提に立脚して、お互いが議論しているのか」を明らかにすることは、非常に重要です。そのような議論のシーンにおいて触媒となり、リーダーシップをとっていくような存在でありたいと考えています。

尾崎:経営企画部は、いわゆる事務方や調整役のような形になりがちです。そういった仕事も多い中で、いかに先を見越してプロアクティブな動きができるかは、経営企画部としての課題だと思います。SPEEDAを使って情報収集、情報共有しながら、新しい事業や方向性に関するディスカッションをしていく、そこに資する情報や前提のデータを揃えることで「攻めの経営企画」として動いていくのは1つのポイントです。

他方、経営企画部が必ずしも先導しなければならないわけではありません。各事業部門が主体的に取り組む中で、いかにその取り組みを活かし、より良い方向へ共に進むことができるか、引き続き取り組んでいきたいと考えています。

松井:本日は貴重なお話をありがとうございました。