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#新規事業開発 2023/7/13更新

今更聞けない、リサーチのはじめ方。 ビジネスリサーチの基本と概要

ビジネスリサーチの基本と概要 ビジネスリサーチの基本と概要

ビジネス環境は、常に変化し、新たな課題や、機会、そして脅威が絶えず現れています。
このような環境下でビジネスを進めるには、日々のリサーチが必要不可欠です。なぜなら、常に最新の情報がなければ、変化に適応し、流れを先取るような意思決定は難しいからです。

つまり、リサーチのない意思決定は、見知らぬ土地で地図も、頼れる人もいない状態で、目的地を目指すようなものです。

この記事は、ビジネスリサーチに馴染みがない方、あるいは今一度、ビジネスリサーチの基本と概要をおさえたい方向けの短く簡単な手引きです。

Speaker

渡邉 卓哉

渡邉 卓哉

Uzabase, inc. - SPEEDA JAPAN Marketing Division - Brand/Creative
Researcher

はじめに:ビジネスリサーチとは。

まずは以下に、一般的にビジネスリサーチが役立つポイントを例示します。

  • ビジネスを成長させたり、作り出すための、新たな機会の発見
  • 顧客や自社の抱える、問題解決方法の発見
  • 先手を打って対策を取るための、新たな(潜在的な)リスクの発見
  • 事業を推進する=すばやい意思決定に必要な情報獲得
  • 大きな戦略の指針を考え、時にそれを変更するための情報獲得

ビジネスリサーチ活動は、次のように定義付けることができます。

①ある課題や問い、トピック・テーマを見つけ、
②目的を、①について新たな(あるいは確かな)情報を得たり、理解を広げること。等と定め、
③さまざまな方法で情報を収集し、集めた情報を分析し、
④新たな示唆・理解から、意思決定を行ったり、次のリサーチの起点を獲得する活動。

では、上記で説明したリサーチを、プロセスに分けて考えてみましょう。

Step1 発見:関心領域や課題/問いの特定

まず、ビジネス環境を観察し、調査の目的や対象を見つけましょう。
はじめから会社が定めたミッションやゴールがある場合は、それを基にすると良いでしょう。
具体的なミッションが無い場合でも、自分の関わっている領域や、市場、顧客と、その関連領域の最新ニュースやトレンドなどを手がかりにすることができます。

大切なことは2つ。
ひとつは、常に変化を読み取り、視野を広く保つために、関心領域についてアンテナを張ること。
もうひとつは、最初から完璧を目指さず、抽象的でよいので、関心、課題、問いをもつことです。

ゴールや期間、目指す姿が決まっていれば、確実に進めるためには良いですが、リサーチのはじまりは、「なんとなくこういうことに機会・関心・課題があるようだ。」というくらいの理解や関心からでも良いのです。
リサーチの過程で、理解を深め、機会を発見することこそが目的なのですから。そういった視点で見れば、プロジェクト単位ではなく、日常的にアンテナを張り、視野を広げることも重要です。

ソーシャルメディアや、NewsPicks、Artifact、Feedly、Podcastといったニュースメディアやアプリを利用することも、アンテナを張る意味では非常に有効です。海外の情報も、有効活用しましょう。DeepLなどの翻訳アプリを使うと、誰でも読むことができる時代です。

Step2 目的の定義:リサーチ活動を明確にする

なにを調べるかは、例えば以下のようなシートを埋めることで明確化できます。

このシートは、最初からうまく書けないこともよくあります。
その場合は、あまり時間をかけて考え込まずに、①に戻るか、③に進んで、後で②に戻ってきましょう。関心の発見⇄仮説や問いの定義⇄初期調査は、何度繰り返しても良く、その繰り返し自体が、前に進んでいると思ってください。
このプロセスでも完璧は目指さず、とりあえず言語化して、前に進んでみることが大切です。

Step3 初期調査:主に文献調査やフィールドワークを行う

このプロセスのゴールは、すでに実行されていたり、語られていたり、研究されていることを把握して、自社の現状や、立てた仮説とのギャップを理解することです。
②で定めた目的とリサーチクエスチョンを基に、文献調査(レポート、書籍、記事、ニュース、論文など)を行いましょう。なるべく信頼できるもの*を選んでください。

*Amazonの書籍検索、Google Scholar、SPEEDA、その他信頼性の高いビジネス誌など、調べる方法はたくさんあります。時間が無限にかけられてしまいそうですが、まずは情報がなるべくまとまっていそうなものを調べて、前に進むのがよいでしょう。

また、既に調べたいことに土地勘がある場合には、このフェーズは早々に切り上げて進んでも問題ありません。
必要以上に難しく考える必要はないので、複数の情報に当たり、わかったことを簡単にまとめておきましょう。また、セミナーやイベントに参加して情報を集めることも効果的です。

Step4 調査の進行:インタビューやサーベイを使って仮説を裏付ける

ネットや記事は、誰でもアクセスできる時代です。競合も同じ記事を読んでいることでしょう。
そこで、該当領域に詳しい専門家や、実際に知りたい分野の経験を積んでいる人々、潜在顧客になりそうな人々などに向けて、インタビューやサーベイを行うことで、新たな発見や、先行した(成功・失敗)事例、独自の一次情報を獲得しましょう。

コツは、仮説の確らしさを検証するために、何がわかればいいのか。を念頭に、質問していくことです。
調査の途中で、さらに知りたいことが増えたり明確になることもあります。
その場合は、③や②に戻ることも良いでしょう。急がば回れの精神が重要です。遠回りが結果近道になることが多いです。(プロセスは戻っても) 前に進むことを第一に考えましょう。

Step5 情報を分析する:収集した情報を整理・検証する

集めた情報(特に定性情報)は、まず整理しましょう。以下にポイントを例示します。

  • トピックごとに分ける
  • ファクトとオピニオンを分ける
  • 情報ソース間との共通点と相違点を分ける
  • 現状に関するものと、未来に関するものに分ける

最後に、整理した情報を分析し、意思決定に繋げたり、次のリサーチに繋げることが重要です。
以下に分析のポイントを、いくつか例示します。

  • 定量的な情報の場合は、統計的分析を行う。
  • 定性的な情報の場合は、整理した情報の共通テーマと、それに関わる変数を見つけます。
  • 外れ値や、予期しない情報を、無視せず新たな問いに変える。
  • 比較して分析する:二つ以上のデータや見解を組み合わせて関連性を見出す。
  • 分析し、考えた仮説に対して、専門家からフィードバックを受ける。

最後に、整理した情報と、分析の結果を、チームメンバーやリーダー、経営者に伝える必要があることも多いでしょう。その場合には、なるべくわかりやすくシンプルに必要な情報をまとめる必要があります。

「なんのために、何が必要で、なにを基に、なにがわかったか、そして、どうするべきか。」がすぐに伝わるような整理を心がけましょう。

さいごに

いかがでしたか?
繰り返しになりますが、一番大切なことは、まずはリサーチをはじめてみることです。
うまく出来ているかわからなくても前に進めてみることで、何がわからないのかがわかってきます。
インタビューやサーベイなど、上長の承認や、チームの協力が必要なときには、それまでに調べたことや、目的意識を伝えましょう。承認や協力を得るための改善は、それからはじめても遅くはありません。
もし、お悩みや相談があれば、お気軽にご連絡ください!