エキスパートネットワークサービスが企業に求められる理由│ミーミル代表・川口荘史
エキスパートネットワークサービス(以下、ENS)をご存知でしょうか。
国内でも急速に普及しつつあるため、聞いたことがある方もいるかもしれません。
私たちが日々の意思決定をおこなう際、多角的な情報が必要になります。
そのために、社内で知見のある方に話を聞いたり、外部のコンサルタントに依頼したりして情報を集めますが、自分の知らない分野では、誰に耳を傾けるべきかわからないことが多いのではないでしょうか。
他方で、私たちが必要としている専門知識を持っている方でも、自分の知見がどこで必要とされるのかわからない人も多くいます。
そこで、このような専門知見へのニーズに対し、適切なエキスパートを見つけ、タイムリーにインタビューの場をアレンジするサービスがENSです。
本記事では、VUCAの時代、意思決定の精度やスピードがますます求められるこれからの企業にとって必要なENSの市場動向や、ENSが提供する価値についてお話ししたいと思います。
Speaker
川口 荘史
株式会社ミーミル代表取締役
東京大学卒、東京大学大学院修了、理学博士。UBS証券投資銀行本部に入社し、M&A及びテクノロジーチームにて、製薬業界、エネルギー業界、大手電機等の国内外のM& A、LBO案件等に従事。その後、複数のベンチャーの創業に参画し、ファイナンスや新規事業立ち上げに従事した後、株式会社ミーミルを創業。
サービス誕生の背景と広がる企業利用
冒頭でご紹介したとおり、ENSは意思決定をサポートするサービスとして、信頼できるエキスパートを見つけ出し、その知見を求めている人々に対して、あらゆる種類の知見を迅速に結びつけ、人々の知見を流通させる役割を担っています。
同サービスにおける代表的な企業としては、GLG(Gerson Lehrman Group、ガーソンレーマングループ)が有名です。グローバルでは、他にも多くのプレイヤーがビジネスを展開しており、とくに北米や欧州でENS活用が広く普及しているように思います。
ENSはまず、専門的な情報や業界知識をリアルタイムで取得し、他社に対して競争力を確保していくことを重要視している金融業界で取り入れられてきました。
かつてはENSについて「ウォール街以外では誰にも知られていない」と言われていましたが、近年では金融だけではなく、他の業界にも利用が拡大しています。
日本でも、ENSは効率的な情報取得方法として、コンサルティングファームを中心にこの数年で急拡大しつつあり、さまざまな企業が活用するようになってきました。
エキスパートネットワークサービスが企業に求められる理由
ENSが企業に求められるようになったのはなぜでしょうか。
それは、変化の激しい時代においては、仮説を構築し、検証し、意思決定していくスピードが企業の成長を大きく左右するからです。
ニーズが多様化し、専門性もますます細分化する現代において、必要な知見を持ったすべての人を組織の中に確保することは非現実的です。
しかし、ENSを使えば、多角的かつ信頼できる1次情報に一足飛びにたどり着くことができます。
これが今、ENSが求められる理由です。
とくに企業の場合、新規事業や事業開発、M&Aといった場面で、知見のない領域における意思決定が求められます。こうした非連続の機会は企業にとって大きな成長機会をもたらす一方で、意思決定の難易度は格段に上がります。
こうした状況において、知見のない領域においての意思決定の根拠を得るために、さまざまな方法で情報を収集していきます。
ただ、情報が集まればよいかというと、そうではありません。
情報が集まったとしても、実はこの事実情報の解釈が難しい。なぜなら、該当の業界や領域に関する専門的な知識や経験を持ち合わせていない場合、情報の見方や読み取り方がわからないからです。
そこで、ENSを使えば専門性をもった人々の情報の見方や解釈についても、迅速に得ることができる。こうしたことで、意思決定の精度とスピードを飛躍的に高めることができるのです。
意思決定をする際には、社内での事業関係者やコンサルタントや顧問など、多くの業界関係者に意見を求めることもあるでしょう。
それらの方々の提案や意見に沿って決定することもあるかもしれません。
ただ、情報として獲得することと、事実上の意思決定を委ねてしまうことには、大きな違いがあります。
結果的に、多数の専門家から多角的な知見情報獲得ができることで、より主体的な意思決定が可能になるともいえるのです。
だからこそ、ENSでも対立意見も含め多角的に情報を得て、自分の中で比較検討と解釈をすることが大切です。一人の意見を聞いたまま判断するのではなく、比較検討と解釈によって、より確からしいストーリーを組み立てることこそが重要です。
日常生活では“詳しい人”に聞くことが当たり前
人によっては、多角的な情報を解釈して意思決定することが難しいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、個人の意思決定においては、物を購入するときや旅行のときなど、私たちは日々、多角的に情報を取り入れて判断しているはずです。
レベルや表現は違えど、 NewsPicksやネットニュースのコメントなどがまさにそうですね。
たとえば、新しい商品が出たとき、企業側の発信だけを見て購入するのは躊躇う人も多いはずです。企業からの情報に加えて、購入者のレビューで良い点・悪い点を見て意思決定していませんか?
Newspicksの記事も同じです。記者が書いた記事に加えて、さまざまな人が独自の切り口で、その記事をどのように捉えているのかを知ることに価値があると思います。
つまり、個人では、専門性の高い情報を理解したり、意思決定する際に、詳しい人の意見情報を取り入れることは当たり前になっているのです。
企業の中でも、外部のコンサルタントを雇ったり、社内でいろんな人の意見を聞いて意志決定したり、専門性の高い情報を取り入れることの有用性は誰もが認識しているはずです。
それをもっと早く、一気にエキスパートの意見を集めましょうというのがENS。
こう考えると、決して難しいことではないとおわかりいただけるのではないでしょうか。
専門家の知見は企業の成長に欠かせない存在へ
私はこれからの企業の成長において、外部人材からのナレッジ活用はますます欠かせないものになると考えています。
企業は意思決定の連続で成り立っているので、ナレッジ活用によってその精度が高まり、スピードが速くなるということは、純粋に事業スピードに結びつくからです。
当然、外部人材の前に、社内に蓄積されたノウハウや知見情報もとても大事です。
ただ、こうしたノウハウなどを活用して自前主義でやってきた企業も、これからの時代は異なる業界間での価値の結びつきによるイノベーションも重要になってきます。
競争スピードが速くなり、プロダクトのライフサイクルも短くなっている今、外部の知見をうまく活用できない企業は厳しくなるだろうなと感じます。
エキスパートネットワークサービスの未来
ユーザベースグループ・スピーダでは、「スピーダ エキスパートリサーチ」として、ENSを含むさまざまな形態の専門家知見の活用機会を提供していますが、これから下記の3点をおもに強化していきたいと考えています。
1つ目は、情報プラットフォームとの連携。
すなわちスピーダとのプロダクト融合。実はグローバルのトレンドとしても、業界や企業情報のプラットフォームとENSが融合していく動きがあります。意思決定のための情報活用という観点では、これらは同じプラットフォームでシームレスに情報を扱えたほうが圧倒的に効率的です。
2つ目は、エキスパートと一緒に世界観を広げていく仕組みづくり。
得られる知見は高品質であればあるほど良い。中長期では、プラットフォームにおけるエキスパートの品質の重要度が高くなっていきます。だからこそ、高い知見を持つエキスパートに選んでもらえる、継続的に協力していただけるプラットフォームであることもとても重要です。
そのために、エキスパートとして活躍したことに価値を還元できるような評価の仕組みを実装していきます。
そして、3つ目は依頼者のマッチング精度を高めるための仕組みづくりです。
ここには2つ目のエキスパートの評価制度も活用できます。
プラットフォームに蓄積された知見情報や実績と評価から、依頼内容にマッチしたエキスパートが推薦されることで、依頼者が安心して信頼できるエキスパートに依頼をし、回答情報を活用できるようになります。
誰もが投資した時間に見合った価値を享受できる、クライアントからもエキスパートからも選ばれるプラットフォーム。
そんなENSの新しい姿を私たちは目指していきたいと考えています。
【ご参考資料】
スピーダは、ビジネスパーソンの情報収集・分析における課題を解決する最先端プラットフォームです。世界中の企業情報、独自の業界レポート、市場データ、ニュース、統計M&Aなどの定量データから、本コラムでご紹介した業界エキスパートの "経験知"を活用した定性データまで゙あらゆるビジネス情報をカバーしています。
ご興味をお持ちいただけましたら、資料DLページをご参考になさってください。