#新規事業開発 2024/7/23更新

新規事業の解像度を上げると「見過ごしていた機会」が見えてくるー意識すべき4つの視点ー

新規事業の解像度を上げると「見過ごしていた機会」が見えてくるー意識すべき4つの視点ー 新規事業の解像度を上げると「見過ごしていた機会」が見えてくるー意識すべき4つの視点ー

スピーダは2023日9月8日(金)、新規事業カンファレンス「UNKNOWN CHANGEMAKERS」を初開催しました。台風接近による悪天候予報にもかかわらず、日比谷ミッドタウンの会場には多くの方にご来場いただき、SESSIONや懇親会をふくめ、新規事業にかける熱い想いを感じる1日となりました。

本記事では、SESSION1「新規事業開発における解像度の上げ方」のTOPIC1を取り上げます。東京大学 FoundX ディレクター・馬田隆明さんが「解像度の重要性」について、事例を交えてお話ししてくれました。

◾️ご参考URL
第1回 UNKNOWN CHANGEMAKERS 公式サイト(※2023日9月8日 開催終了)
https://jp.ub-speeda.com/unknown-changemakers2023/

Speaker

馬田 隆明 氏

馬田 隆明 氏

University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップ支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スライドやブログなどで情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『未来を実装する』『解像度を上げる』。

TOPIC1「解像度の重要性」

若木豪人(以下、若木):SESSION1のテーマは「新規事業開発における解像度の上げ方」です。新規事業開発に限らず、解像度の重要性はわかると思いますが、実際にどのように上げていけばよいのか。 今日はエキスパートのお二人に詳しく聞いていきたいと思います。まずは馬田さんの自己紹介からお願いいたします。

馬田隆明氏(以下、馬田):東京大学でスタートアップ支援やアントレプレナーシップ教育、起業家の教育などに携わっている馬田と申します。スタートアップ向けのスライドやブログ、本も書いております。今日はよろしくお願いします。

若木:ありがとうございます。さっそくTOPIC1「解像度の重要性」を始めていきましょう。

馬田:「解像度を上げる」という点について、私から簡単にお話しさせていただきます。

まずは、ビジネスにおける「解像度が高い・低い」という言葉について考えてみましょう。

たとえば、1人の顧客がいたとします。

顧客の解像度が低いときは、顧客像がぼんやりしているので、何をどうすればいいのかわからない。顧客の課題をあいまいにしか認識できない状況になってしまいます。

つまり、考えや事実認識が“粗い”ときは解像度が低いといえます。

一方、顧客の解像度が高いときは、顧客像がはっきり見えているので、顧客がどのような課題を持っていて、どのように課題を解決すればいいのかが整理できている状況になります。

つまり、考えや事実認識が“詳細”で“的を射ている”と解像度が高いといえます。

解像度が高い状態とは何かというと、ロジックツリーで表したときに、詳細に要素分解できているだけではなく、「どこが重要なのか」ということまでわかっている状態です。

このように解像度を上げると、多くの人が「見過ごしていた機会」が見えてきます。これは新規事業で非常に重要になります。

また、解像度を上げるための4つの要素があると考えています。

1つ目は「深さ」。

1つの現象をどこまで深く詳細に把握しているか、症状と病因を切り分けて、要因の根本原因を特定できるか。

2つ目は「広さ」。

広く原因や構造、可能性のある課題や打ち手を多面的に把握しているか、アプローチや視点の角度が多様か。

3つ目は「構造」。

要素を分解していくときの分解の筋の良さや、分解された要素間の関係性の線を的確に引けているか。

最後4つ目は「時間」。

過去や歴史について知っていて、かつ将来の時間的な変化についても洞察があるか。

たとえば時間であれば、新規事業のターゲットになる市場は短期的に見ると小さいかもしれませんが、長期的に見ると大きくなってくるかもしれません。

こうした将来の時間的な変化を捉え、かつ時間的に変化していく課題を含めて理解していくことが大事だと思っています。

この4つの視点で解像度を認識すると、綺麗な動画や画像になっているのか、もしくはモザイクがかかっているのか、といったイメージで解像度そのものを理解できるのではないでしょうか。

もう少し具体的な例を出してみましょう。「醤油が美味しくない」という課題があったとします。

これを解決しようとしたときに、「美味しい醤油を作る」では、良い解決策にはたどり着けません。

まず醤油が美味しくない原因を深めて、さらに醤油が置かれている環境などに着目して、視野を広げて考察します。

それらをある程度構造化して(構造)、広さと深さを意識しながら、醤油が美味しくない原因の解像度をさらに上げていく。

そして時間軸を意識して、今の課題は数年後にもまだ課題かどうか、この課題の歴史的な位置づけを考えてみる。

もしかしたら将来、洋食が多くなってきて、商品の出番が少なくなってくるかもしれません。そうした時間的な変化もちゃんと見据えて、次にいくことが大事かなと思っています。

このようにして解像度を高めたうえで、重要な課題を見つけたら、そこに対する解決策を見つけていきます。

たとえば「酸化で商品が劣化する」という課題があれば、「小口で販売する」「容器を工夫する」というアイデアが見えてきます。こうした思考プロセスが、解像度を上げることです。

解像度を上げる対象はいろいろありますが、まずは課題と解決策の解像度を上げていくことです。これら両者がうまくフィットするところから、価値が生まれてくるからです。

生まれた価値の一部を金銭的な報酬としてもらうのがビジネスだと単純化して捉えると、課題と解決策がうまくフィットするように両方を見据えて解像度を上げていくこと、あるいは課題が見つかったら、うまくフィットする解決策を持ってくることが必要だと思います。

これがうまくいくと、大きな価値・大きな報酬が得られるため、解像度はビジネスにとって非常に重要になります。

最後に、解像度が低いときの症状を紹介します。

「解像度が低い」ときの症状はいろいろありますが、「ふわっとしている」「他の業界でも“よく聞く”課題しか言えない」といった状態では、何をやってもうまくいきません。

他にも「6W3Hが言えない」「具体例が言えない」「説明が長い」「安易な解決策しか出せない」というのも、解像度の「深さ」や「構造」が足りていない状態です。

競合に対する認識の粗さや計画の粗さも問題です。ここの解像度も上げていかないと、良いビジネスは作れないと思います。

このような状況に陥らないよう気を付けつつ、解像度を上げていくことができれば、課題解決ができて価値を生めて、その結果、良い事業を作っていけるのではないかと思います。

若木:ありがとうございます。今の話を理解して落とし込んで、さらに自分の行動に移していくというのは、日頃クライアント様に接することの多い私にとっても非常に難しいところだなと感じています。

TOPIC2では、実際に現場の最前線で取り組まれている阿久津さんにお話を聞いていきたいと思います。