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#新規事業開発 2023/3/6更新

実例解説 ソフトバンクの新規事業はどのように生まれているのか

ソフトバンクの新規事業はどのように生まれているのか ソフトバンクの新規事業はどのように生まれているのか

多くの大企業が自社の強みを最大限に活かす新規事業開発の方法を模索している昨今。
ソフトバンクでは、法人営業経験者を中心にしたチームを結成し、大企業やスタートアップとの共創で一気に新規事業開発を推進し成果を上げている。
なぜ法人営業経験者が中心なのか。このチームが解決しようとしている社会課題は何か。チームが円滑に業務を行うための鍵を握るものは何なのか。実例と共にその真意や成果に迫る。

=前編=
ソフトバンクが法人営業経験者をコアメンバーに
「共創型DX×新規事業」を推進する理由とは

=後編=
DXや新規事業におけるバックオフィスこそ成功の鍵
支援業務の質を上げる良質な情報と自律的な意思決定

【前編】ソフトバンクが法人営業経験者をコアメンバーに
「共創型DX×新規事業」を推進する理由とは

大企業が新規事業を行う際、社内で検討から実行までを一気通貫で行う内製型や、スタートアップ連携や大企業×大企業連携などの共創型、CVCなどの投資で新規事業部門や別法人を作る出島型など、さまざまな進め方がある。今回取材したソフトバンクでは、法人営業経験者をコアメンバーにしたチームを結成し、キャリア採用で業界経験者を加えながら共創型で一気に新規事業開発を強力に推進して行い、成果を上げている。なぜ法人営業経験者が中心なのか。このチームが解決しようとしている社会課題は何か。チームが円滑に業務を行うための鍵を握るものは何なのか。ソフトバンク株式会社 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 副本部長の中野晴義氏に、その真意や成果、課題などを編集部が聞いた。

[ゲスト]
ソフトバンク株式会社法人事業統括
デジタルトランスフォーメーション本部副 本部長
中野 晴義 氏

[聞]栗原 茂(Biz/Zine 編集部) / [著]フェリックス清香

経営層がコミットして、一気にDXチームを組成

-ソフトバンクの法人営業部門において新規事業開発を担当する部署が2017年10月に組成され、すでに20以上のプロジェクトが、事業化フェーズに至っていると聞いています。どんな体制で取り組んでいるのでしょうか。

中野 晴義 氏(以下、中野):DXに関して各社でさまざまな定義があると思うのですが、デジタルトランスフォーメーション本部(以下、DX本部)は新規事業の創出をミッションとしています。事業会社化した企業の社員やエンジニア、UXチームなども含めて、現在では全体で400名強の体制で取り組んでいます。

このDX本部のミッションの1つが、「ソフトバンクの基幹事業である通信以外の分野での事業づくり」でもあるため、他業界の知見やノウハウを持つ人材が必要で、半数弱はキャリア採用で参画しています。

-DX推進、新規事業開発ではキャリア採用などによる外部人材を活用する企業が圧倒的に多いと思います。ソフトバンクでは社内人材の比率が多い印象を受けました。そして人数も多いですね。

中野:一般的にはDXチームをスモールスタートとして5人、10人のメンバーから始める、IT部門のメンバーが兼務する形で始めるケースも多い、と認識しています。ソフトバンクではDX本部の発足時に約120名をドンと異動させることから始めました。母数が大きいため、社内比率が高く見えているのだと思います。

-約120名を一気に、となると経営層の方々の意思が大きく反映されているのでしょうね。

中野:現在も副社長直轄の組織です。ソフトバンクは通信が基幹事業ですが、競争環境が厳しくなることはその時点でも明らかでした。通信事業は、利用者を増やすことで成長してきましたが、日本の人口が減っていく中、圧倒的な成長を実現することは困難であると認識しています。経営層も含めて新しい事業を生む取り組みが必要だという認識を持てたことから、こういった規模感になったのだと考えています。

-最初の120名の方々はどんな部門からいらっしゃったのでしょうか。いわゆる“手挙げ”で、人材を募ったのでしょうか。

中野:最初はほぼ法人営業やSE人材から指名で集められました。実は私たちDX本部は新規事業を創ることをミッションにしたチームですが、所属は今も法人事業統括という組織にあります。

法人営業経験者が新規事業チームのコアメンバーになった理由

-ソフトバンクは営業力にも定評がある企業です。しかし、一般的には新規事業やDXチームを作る場合に、営業の方がメインになるのは珍しいですよね。どんな意図があったのでしょうか。

中野:営業の一線級の人間は基礎的なビジネス力が高いということが、まず言えるかもしれません。また、法人営業経験者は、日頃からお客様や業界の課題に触れ、それに対する解決策を提案しています。顧客課題、業界課題をさまざまなレベルで知っていることは新規事業開発では重要になります。そういったことから、法人営業経験者に白羽の矢が立ったのだと認識しています。しかし、配属になってからは多くの苦労がありました。

-具体的にはどんな苦労だったのでしょうか。

中野:新しい事業を創ると言われても、最初は何をすればいいかわかりませんでした。そこで最初は事業アイデアを自由にたくさん出すところから始めました。業界課題を知るメンバーだからこそ450以上のアイデアが出たのですが、思いつきレベルのアイデアから練られたアイデアまで千差万別でした。初期は、実際に経営陣からGO サインが出るものはほぼありませんでした。アイデアは面白くても、課題解決の規模が小さかったりするとビジネスとしては成り立ちません。

そのような経緯もあってDX本部のミッションをあらためて定義し、「日本の社会課題に対峙する」と「ソフトバンクの次の柱になる事業を創る」の2つとしました。業界課題だけでなく社会課題に照準を定めるとなると、さらに深い現状認識が必要になりますし、さまざまなテクノロジーも必要になってきます。

その頃、DX本部の本部長である河西(慎太郎氏)が「ソフトバンクは0→1を創るのではなく、知恵とアイデアでビジネスを1から100にすることで事業をスケールさせるのが得意な会社だ」と気がついたのです。ソフトバンクは、スマートフォンを発明してはいませんが、割賦払いを導入して既存の事業に新しいビジネスモデルを組み込み、事業拡大を加速した、という実績もあります。そういった社風もあり、パートナーの持つ業界知見とアセットにソフトバンクが持つアセットを掛け合わせることにより、大きなインパクトをもたらそうと、共創を重視するようになりました。

-そのような苦労があった中で、法人営業経験者のモチベーションをどのように高めていったのでしょうか。

中野:仕組みが「何もなかったこと」も大変でした。新規事業開発におけるガイドラインもなければ、確立されたワークフローもない。評価制度も研修制度もない。本来であれば、事業開発に100の力を注ぎたい中で、そのような仕組みを作り上げることは大きなチャレンジでしたが、一方ではチームも日々学び、成長を感じ、ワクワクした時期でもありました。

今のソフトバンクが新規事業開発に取り組まなければいけない理由やその意義を、本部長の河西が繰り返し伝えています。何よりも、こういった取り組みを通じて、法人事業統括内のみならず統括を超えてさまざまな部門やソフトバンクグループの各社と討議し、作り上げてきたことは当社の持つ団結力を強く感じられ、大きな励みとなっています。

ソフトバンクDX本部の「共創パターン」

-「共創」と言っても、さまざまなパターンがあると思います。どのようなパターンがあり、それぞれのパターンでの象徴的な取り組みがあれば教えてください。

中野:主なものは、大企業と組む場合とスタートアップと組む場合の2パターンですね。大企業と組む場合の例としては、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社との取り組みが挙げられます。物流業界のDXを支援するMeeTruck株式会社(ミートラック/以下、MeeTruck社)を、2020年4月2日に共同で設立しました。

物流事業者は従来、トラックの割り当て作業やスケジュール管理を紙やホワイトボードへの手書きで行うことが多かったのですが、ドライバー不足やECの急拡大に伴う荷量の急増などによって業務の効率化が必須でした。とはいえ効率化を図ってシステムを導入しようとしても、導入・管理コストや運用の負担が大きいという問題もありました。

これらの問題を解決するために、MeeTruck社は、トラック輸送を担う物流事業者向けのクラウド型業務支援サービスを始めました。運用しやすく操作性に優れたサービスを低価格で提供し、業務効率化を支援しています。また、2022年3月よりトラック輸送を担う物流事業者および荷主企業向けに、「輸送のニーズ」と「空車のニーズ」をマッチさせるネットワークを拡大するための仕組みとしてトラックのマッチングサービスの提供も開始しています。

-旧来型のビジネスモデルやオペレーションをアナログで続けているところに、ソフトバンクの知見とテクノロジーで事業を共創型で立ち上げたということですね。スタートアップとの事業共創にはどのようなものがありますか。

中野:WOTA株式会社(ウォータ/以下、WOTA社)と、2021年5月に資本・業務提携をしています。WOTA社は、濁度(水の濁りの程度)やpH(水素イオン指数)などのさまざまな水質項目を計測する水処理IoTセンサーと、センサーから取得したデータに応じて水の再生処理プロセスを自律的に制御するAIのアルゴリズムを活用し、使用した水の98%を循環再生するテクノロジーを保有するスタートアップ企業です。

水インフラは生活に欠かせない重要なインフラです。日本は水が豊富で課題はないと思われがちですが、実は過疎地域などでは水道配管の老朽化に伴う維持コスト増大や、人口減少による収入減、耐震化の遅れ、水処理施設における技術者不足など、インフラ維持における多くの課題が存在しています。また、世界の水問題はより深刻で、世界人口の約3分の1が水不足に直面しており、SDGsでも目標6「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられています。

こうした日本、世界の深刻な水の社会課題をWOTA社のテクノロジーと社会への実装力を持つソフトバンクの共創により解決することを目指しています。

その初手として水道いらずの水循環型手洗い機「WOSH(ウォッシュ)」や災害時の被災地でシャワーを提供する自律分散型水循環システム「WOTA BOX(ウォータボックス)」を、ソフトバンクの営業チャネルや顧客接点を活用して販売し、ビジネス拡大の取り組みを推進しています。

新規事業が既存事業の価値基準をアップデートする

-2つの事例は共に、大きなインパクトをもたらすものですね。しかし、共創というのは難しさもあると思います。共創パートナーからソフトバンクに期待されることは何でしょうか。

中野:ソフトバンクはモバイル事業のコンシューマーとのユーザー接点が何千万もあり、法人営業は日本中の企業との接点があります。グループ企業も含めると、ヤフーの会員基盤、LINEのユーザー接点もあって、リアルもデジタルも、BtoB、BtoCの接点があります。そのような顧客接点への期待が多いと思います。

-では、ソフトバンクが共創パートナーに期待することは何でしょうか。

中野:DX本部では現在、DXの重点領域を「医療・ヘルスケア」「社会インフラ」「物流」「スマートシティ」「小売・飲食」の5つに定めています。日本の各産業はオペレーションを磨き抜いて完成形に近いところまで引き上げましたが、完成度が高すぎるが故にデジタルを取り入れにくくなっている部分があると思います。テクノロジーとビジネスモデルを絡めて共創することで、業界の課題を解決していけるようなアセットを持った企業とご一緒できればと思っています。

ただ重要なことは、共創パートナーをやみくもに募集しているわけではないという点です。大きな「○○課題」がありそうだと考え、それを解決したいという想いを持ったソフトバンクの人材が、共創パートナーになれそうな企業を慎重にしっかりと調べた上で、「この事業をやるからにはこの会社だ」と惚れ込んで、ご提案するスタンスをとっています。

-そうすると、対象業界や企業のリサーチが難しいのではないかと感じますが、その点はいかがでしょうか。

中野:そうですね。業界の知見がない場合もありますし、ある程度サービスが知られている企業なら「実態はこうなんじゃないか」と想像しながらリサーチを進めることもあります。小売の店舗網や物流網をお持ちだったりする情報を得られれば、それが新規事業の大きな鍵になることもありますし。

-共創パートナーへの提案は、どのくらい煮詰めた段階で提案されるのでしょうか。

中野:きっちりと詰めて「これだ」という渾身の一撃といった感じで提案することもあれば、一緒に考えましょうとお声掛けすることもあります。どちらにしても共創型で行う新規事業ではリサーチは非常に重要です。そして、うまくいきそうであればなるべく早い段階で、会社対会社の話になるように上司同士が話す場を設定しています。

-DX本部が法人営業統括部門にある理由は、そんなところにもありそうですね。

中野:そうですね。ソフトバンクは日本中のさまざまな企業とお取引があり、日頃は「お客様と営業」という立場で接しています。しかし、お客様とDX本部での共創事業でご一緒すると、単に通信をお売りするのとはまったく違う関係性が持てることになります。お互いにビジネスを成功させるという仲間のような関係になれるのです。その結果、DX本部以外の営業チームも単に通信サービスを売るのではなく、お客様の事業課題にどう向き合うかを考える、ソリューション営業に進化しつつあります。今後は、すでにローンチした20のプロジェクトをしっかりと大きくしつつ、さまざまな社会課題を解決できるように、今仕込んでいるものをしっかりと事業化していきたいですね。

-法人営業経験者が中心メンバーとなるDXチーム、新規事業チームが組成された理由がわかりました。新規事業で顧客や顧客課題へ向き合うことで、既存事業の価値基準にも良い影響があり、会社全体の価値基準や組織文化がアップデートされるということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク:ソフトバンクのDXによる新規事業「DX with SoftBank」
ソフトバンク株式会社

【後編】DXや新規事業におけるバックオフィスこそ成功の鍵
支援業務の質を上げる良質な情報と自律的な意思決定

多くの大企業が自社の強みを最大限に活かす新規事業開発の方法を模索している昨今。ソフトバンクでは、法人営業経験者を中心にしたチームを結成し、大企業やスタートアップとの共創で一気に新規事業開発を推進し成果を上げている。前編では、デジタルトランスフォーメーション本部(以下、DX本部)の中野晴義氏に、法人営業経験者が中心となった理由やチームが円滑に業務を行うためには共創相手の綿密なリサーチが重要な鍵となることを話してもらった。今回は、そのDX本部の各種プロジェクトを推進する組織で働くソフトバンク株式会社 法人事業統括DX 事業戦略室 三木彩有里氏と、DX事業戦略室がSPEEDAを円滑に活用できるように伴走する、株式会社ユーザベース SPEEDA事業 Strategic Partner Team 新井駿也氏にお話を聞く。

[ゲスト]
ソフトバンク株式会社法人事業統括
デジタルトランスフォーメーション本部 DX事業戦略室
三木 彩有里 氏

[語り手]
株式会社ユーザベース SPEEDA事業 Strategic Partner Team
新井 駿也

[聞]栗原 茂(Biz/Zine 編集部) / [著]フェリックス清香

共創的新規事業やDXの成功の鍵を握るバックオフィス機能

-ソフトバンクでは「新規事業=DX」ととらえ、他社との共創で社会課題を解決し、次の柱となる事業を創出しようとしているそうですね。法人営業経験者が中心のDX 本部で新規事業を行っているのが非常に印象的だと感じています。
その事業推進の原動力になっているのがDX事業戦略室の仕事だと聞いていますが、具体的にはどんなお仕事をなさっているのでしょうか。

三木 彩有里 氏(以下、三木):DX本部のミッションは、社会課題に対峙して、ソフトバンクの次の柱となる事業を創っていくことです。さまざまな社会課題を解決するために、自社だけで新規事業を行うのではなく、パートナーと一緒に共創していくことを目指しています。

DX事業戦略室は「事業戦略策定」「事業管理」「事業推進」「HR戦略策定と実行」がミッションのバックオフィス組織です。具体的な業務としては、市場調査/企業調査、ポートフォリオ管理、プロモーション戦略策定、人材育成・教育などを行っています。

-DX本部で他社との共創を行うときには、パートナーとなる企業をしっかりと調査することが重要だとお聞きしました。企業調査とおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことをなさっているのでしょうか。

三木:本部メンバーから「この企業を調べてほしい」という依頼を受けます。その際、依頼内容や目的、対象企業や対象市場、回答期限を聞いており、その情報をもとに当日か遅くとも翌日までには調査して結果を依頼部署に返しています。

-翌日までですか!非常にスピーディに仕事をなさっているのですね。しかし企業調査は時間がかかる印象があります。どのような方法を使っているのでしょうか。

三木:ソフトバンクは仕事をする上での行動指針として「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」を掲げています。幹部の経営判断も速いですし、組織文化としてスピードを非常に重視しています。そこで、企業調査には経済情報プラットフォームの「SPEEDA」を2019年から活用しています。

別の事業部でSPEEDAを利用しており、サービス概要を理解していたのと、無料トライアルを使ってみて操作性が良かったので、本契約に至りました。

調査する業界の幅も広く、日々大量のタスクを素早く効率的に進めていくことが重要なので、「まずここを見れば情報が揃っている」というデータベースが手元にあるのは非常に心強く、情報収集の手間が格段に減りました。

-情報収集の手間は、具体的にはどのくらい減りましたか。

三木:作業の種類にもよりますが、劇的に効率化できたものだと、1日かかっていた作業が10分に短縮できたり、3日かかっていた作業が15分でできたりしています。

リサーチに効率性をもたらし、DXや新規事業をドライブさせる、SPEEDA徹底活用

-三木さんは操作性が抜群だとおっしゃっていましたが、SPEEDAのUIが非常に使いやすいということは他企業でDXや新規事業に取り組む方からも耳にします。

新井 駿也(以下、新井):私たちは、日頃からリサーチに慣れ親しんでいるわけではない方やSPEEDAを初めて使う方でもマニュアルなしに操作していいただけることを目指しています。SPEEDAのプロダクト開発にはCEO、CTO、エンジニア、それから我々のようなお客様と接する立場のアカウント担当など、開発に関わるメンバー自身が「自分たちが本当に喉から手が出るほど欲しくなるモノを作る」といった想いで開発改善に取り組んでいることが、UIの評価につながっているのだと思います。

なので、SPEEDAを初めて触る方でも、企業や業界などのあらゆる経済情報に容易にアクセスでき、情報の加工分析から資料の作成まで、ワンストップで実施していただけるかなと思いますし、今後もさらに追求していきたい世界観ですね。

三木:操作性は本当に気に入っていますし、徹底的にユーザー目線で作られていると感じています。特にSPEEDAを気に入っている点が7つあります。

-ぜひ教えてください。

三木:1つ目は「シームレスにつながる情報」です。会社名で検索すると企業情報が表示されます。同一画面内に大分類、中分類、小分類に分けられた業界ページへのリンクや、関連のあるビジネストレンドへのリンクが表示され、各リンクをクリックすると、それぞれのレポートに飛ぶことができます。部内で企業調査の依頼をもらったときには市場環境などの周辺情報も一緒に調べて提供していますので、SPEEDA側で体系的に整理されているのは非常に便利ですし、DX本部メンバーの理解も深まります。

2つ目は「資料自動作成機能」です。調査結果をパワーポイントでまとめているのですが、SPEEDA導入前はそもそも利用したい図表が見つからなかったり、希望年度ではなかったりして大変でした。また情報が見つかっても、図表を加工できずにExcelに一度落として加工するなど、大変な手間がかかっていました。

しかしSPEEDAでは画面上でグラフや図も含めて情報やデザインの加工ができ、そのままパワーポイントやPDFでダウンロードすることができます。これが大幅な時間短縮につながります。

3つ目は、IR情報のフォーマットが統一されていることです。IR情報は、企業によってフォーマットが異なります。そのため、一つひとつをじっくり見る必要があって、スピーディな仕事をする上で大きな負担になっていました。

しかしSPEEDAでは共通基準で企業の財務データを横比較できるため、必要な情報をすぐに見つけられ、すっと頭に入ってくるように感じています。

企業にスピードと業務効率をもたらす、SPEEDA徹底活用

-「シームレスにつながる情報」「資料自動作成機能」「IR情報のフォーマットの統一」がSPEEDAの活用で気に入っている最初の3つですね。残りの4つも教えてください。

三木:4つ目は「オリジナル図解」です。業界やビジネストレンドについてまとめられているレポート内には、要所要所で図解があります。文字だけで書かれているよりもパッと理解できますし、私たちが社内で資料を作るにあたっても、どう見せていけばいいかのイメージを持ちやすくなります。

5つ目は、「情報の信頼性」です。これまでは、公開情報の中から画像検索でグラフを見つけ、そこからリンクをたどって情報を得ようとしたり、たどりついたとしても、レポートの更新が最新ではなかったりと、調査方法に苦労していました。また、ようやく探した情報も、データソースの信頼性に懸念がある場合もあります。その点SPEEDAでは信頼できるデータサプライヤーから情報を取得しており、上場・未上場企業データも1,000万社以上格納されているなど網羅性もあります。SPEEDA導入後は、欲しい情報にたどりつくまでの手間が省けるようになりました。

-データソースを信頼できるかどうかは非常に大事ですよね。残りの2つは何でしょうか。

三木:6つ目は「コストパフォーマンス」です。私は予算管理も担当しているのでどうしても気になってしまうのですが、SPEEDAは「コスト」の観点からもメリットを感じています。SPEEDA導入前は必要時に調査会社などから、一つひとつレポートを購入していたのですが、一件何十万円ぐらいの費用感でした。積み上げていくとかなりの金額になってしまうので、SPEEDAでオリジナルのレポートや業界レポート、トレンドなどの情報を必要なときに必要な分だけ見られるのは非常に助かっています。

最後は「サポートデスク」です。まれに検索しても情報を探し出せないときがあるのですが、そんなときはチャットによるサポートデスクで気軽に相談ができます。営業時間内なら約30分で一時返信をいただけるのがありがたいです。

新井:たくさん挙げてくださってありがとうございます。お話しいただいたとおり、「サポートデスク」ではお客様のお問い合わせに対して、スピーディな回答や調査分析のサポートを行っております。

具体的には「SPEEDAの基本的な使い方」から「SPEEDAを用いた市場の調べ方」、「データ加工」まで、元々、証券会社や調査会社などでリサーチ業務を担当していた、調査のプロがそれらの問い合わせに対して回答させていただきます。

ただ単に一問一答で回答をするだけではなく、お問い合わせ内容には回答をお伝えしつつも、今後はお客様ご自身でもご利用いただけるよう、使い方・調べ方を合わせてお伝えすることを大切にしています。

バックオフィスの創造性と現場の自律的な意思決定を担保する良質な情報

-SPEEDAを活用して作った調査レポートは、どのように依頼者のDX本部メンバーに提供するのでしょうか。

三木:調査結果のレポートを共有する以外に、ZoomでSPEEDAの画面をDX本部メンバーに共有して一緒に眺めながら調査することもあります。レポートを渡すだけではなく、一緒に調査データを見ることで、紐づけられた内容から業界情報や競合企業を意識することになり、そこから気づきが生まれます。また、新しい発見があったり、仮説にたどりつくことができたりすることも多いと感じています。

新井:ユーザベースとしても私個人としても、情報から新たな着想を得て新しいビジネスが生まれることを支援していきたいので、とてもうれしいですね。今、さまざまな外部環境の変化がある中で企業が持続的な成長をするためには、現場で自律的に意思決定できることが重要だと思います。大前提として、意思決定には情報の量×質が必要になるので、企業で働く全ての人が、たくさんの良質な情報にアクセス、共有できるような、知のプラットフォームを目指していきたいと考えています。

-つまり、DX本部にとってDX事業戦略室の業務の質が非常に重要になってくるということですよね。お話をお聞きして、三木さんたちがなさっているのはバックオフィスとしての支援業務というよりは、DX本部のみなさんにとっての事業開発やDXのビジネスパートナーだと位置づけられるのだと思いました。

潜在的な市場はどのように「リサーチ」できるのか

-ここまでDX事業戦略室の業務とSPEEDAの活用についてお聞きしてきましたが、今後SPEEDAの進化に期待することはありますか。

三木:新規事業に取り組む際には、ソフトバンクにとっては新規事業でも「既存市場向け」の場合と、これからできるであろう「新規市場向け」の場合があります。先ほどサポートデスクで情報の提供を求めることもあるとお話ししましたが、世の中にはまだないサービスは市場規模の算出も難しく、情報量も少ないのが悩みです。何か潜在的な市場について気づきを得られるサービスができるとうれしいなと思っています。

新井:そうですね。世の中にまだないサービスの動向など、潜在的な市場の把握は難しいですよね。その場合、グループ会社のミーミルが提供しているエキスパートリサーチ事業をSPEEDAに統合した、「FLASH Opinion」というサービスがお役立ていただけるかと思います。

これはSPEEDA上で、多様な業界・分野の第一線で活躍する国内外の専門家に質問することで、オープンソースでは得られない情報やナレッジ(経験値)を、24時間以内に5人以上からテキスト回答が得られるというサービスです。新規事業開発においては、ファクト情報を効率的に収集、仮説構築をしつつ、FLASH Opinionで外部の専門家の知見にクイックにアクセスすることで、仮説の検証・ブラッシュアップまで、SPEEDA上でシームレスにご支援させていただくことが可能になるかと思います。

三木:いいですね。今度、詳しくどんなサービスかを調べてみたいと思います。

ー新規事業における「新規市場のリサーチ」は「既存市場のリサーチ」とは別物ですよね。その際に「人の知見」を使った支援も活用できるというわけですね。非常に気になるサービスです。本日はありがとうございました。