SPEEDA EXPERT RESEARCH

#新規事業開発 お役立ち資料 2022/11/21更新

事業開発・計画策定のお悩みに 知見活用リサーチで事業づくりの「見えない壁」を突破する(後編)

知見活用リサーチで事業づくりの「見えない壁」を突破する(後編)

事業づくりは、「わからない」の連続。
なかなか進まない、時間がかかる、意思決定が難しいという経験をされることも多いはずです。

その原因には、どうしたら事業が進むかをわからなくする、2つの「見えない壁」が存在します。この記事では、そんな2つの壁を突破するために、エキスパートの知見を活用したリサーチをご紹介していきます。

後編では、前回に引き続き「新規事業の機会探索」を行ったあと、続いて「計画策定のためのターゲット市場の市場規模推計」を解説していきます。

前回の記事の続きからとなりますので、まだお読みでない方はぜひ、ご一読ください。
知見活用リサーチで事業づくりの「見えない壁」を突破する(前編)

Speaker

中川さん

中川さん

MIMIR 執行役員 百貨店からコンサルティングファーム、広告代理店 などで新規事業開発支援やリサーチを10年以上経験
現在はマーケティング部門を管掌。

前回のおさらい

はじめに、実際に知見活用リサーチをおこなっていく想定シーンのおさらいです。

【置かれている状況】

今年4月から中計のコアである新規事業創出を任された若手の中川。
長年、リサイクルにおける流通の効率化に従事してきたが、
外部環境の変化のなかで事業成長を図るには、非連続な成長を生み出すことが必須。

役員からは、「昨今注目されているケミカルリサイクル、素材のサーキュラーエコノミーのバリューチェーン全体から新たな事業を考えよ」と言われたものの・・・

どこに事業機会があり、その中でもどこにインパクトがあるかまったくわからない状況。
はたして、中川は会社の命運を握る新規事業を生み出すことはできるのか!?

【実際に調査する2つのケース】
CASE1:新規事業の機会探索 (素材・化学業界を想定)
CASE2:計画策定のためのターゲット市場の市場規模推定

 前回は、「素材・化学業界における、「カーボンニュートラルによるサーキュラーエコノミートレンド」という環境下での機会探索」をケース(CASE1)として取り上げました。

そして、機会探索においてよくぶつかる「見えない壁」である「どこに焦点を当てて調べるべきかわからない」状態を突破するために、前回は複数のエキスパートからの知見の集め方と、眺め方を実践し、事業機会の可能性や市場の概観を掴んできました。

 これまでのリサーチでわかったことを以下に要約します。

 ❶「製造業の中でも、サプライチェーンの中で素材調達部分の成熟度が他業界よりも劣っている業界は、戦略構築やSCMに事業機会がある可能性」。

❷「川上の素材メーカーと協業し、自社のリサイクル流通網と最適化ノウハウを掛け合わせることで素材提供のバリューチェーンをアップデートできる可能性」。

❸「やはり、石油由来と比較した際の価格上昇に対するエンドユーザーの許容度は重要論点。炭素税のような法規制以外に何か深掘りできるところはあるか?品質維持に関してもメーカーとして具体的にどのように解決しようと考えているのか?そこに大きな事業機会がありそう」。

❹「業界としては、金属スクラップ再生、PET/プラ→特に用途先市場として食品や建設、自動車、家電、劣後するが電池関連(特にリチウム等の再生材活用)などがありそう。

❺「欧州の先進事例をベースに、国内の法規制の動向を予測しつつ、埋まらない従来素材との価格差を価値に変えるブランディング/マーケティングにも可能性はあるか」。

❻「一方で、植物由来原料がメジャーになった際の大規模伐採が本末転倒とは確かに。コスト削減のためのアジア・アフリカからの環境を無視した調達など、元原料の調達やそこの環境整備、トレーディングにおける事業機会もあるか」。

インタビュー実践:新規事業の機会探索

前述したように、複数のエキスパートの回答から得た、機会や可能性、重要な論点をさらに深掘りし、解像度の高い事業機会を絞り込んでいくために、回答者の中から1名のエキスパートを選び、30分のインタビューを行いました。
(SPEEDA EXPERT RESEARCHのEXPERT Interviewは通常60分のインタビューが行えます)

こちらが、実際に行ったインタビューの質問概要です。

情報や知見を集めたはいいけれど、誰にどのように深掘りを行えばいいかわからないというお悩みもあるかと思います。

今回行ったインタビューのポイントは、次の通りです。異なるテーマのインタビューにおいても、特に機会探索においては、応用が可能なポイントのはずです。

  • 多様な業界での可能性から、最も具体的かつ複数の回答があった化学/素材の川上側でインタビュー対象者を選定することで、用途先の業界を横断した事業機会を深掘りできると考えた。

  • 深掘りしたい点についてはあえて直接的かつ解釈の余地がある緩い質問を設定し、その回答から深掘りしていくことを想定する。 ※無論、事前にSPEEDA等にて先進事例や類似事例がないか確認して臨んだ。

  • 川上側が素材開発という本丸以外でどのようなところに目を向けているかを中心に聞くことで、サーキュラーエコノミー全体のボトルネックやインパクトが大きいところを探索することを心がけた。

また、インタビュー対象者の選定や質問の準備を行うことで、効果的なインタビューを行うことができます。今回も30分という短い時間で、以下のように期待以上の知見を獲得できました。

さて、インタビューを終えたら、その内容を整理して眺めてみましょう。整理するためにもメモを取ったり、エキスパートの許可を得て録画・録音を行うなどの記録を必ず残しておきましょう。

質問ごとに回答を分類すると、次の5つの知見が抽出できます。

それぞれ要約すると、以下のとおりとなります。

①用途別市場ごとに、川上から川下企業のそれぞれまたは横断で、最終消費者が選好する機能価値の探索/情緒価値をベースとしたマーケティング支援

②ブロックチェーンを活用した用途別エンドユーザー企業側の市場におけるトレーサビリティとバリューチェーンの効率化事業

「カスケード的ワンランク・ダウンサイドサイクル」の需要創造マッチング事業。さまざまな用途別市場ごとに、どの加工品からどの製品の部材に転換させるかをエンユーザー企業のニーズと、素材メーカーの技術ケイパビリティを把握した上で最適なマッチングを行う

④素材メーカー/加工メーカーと協業した、希少素材に特化した回収プロセスの効率化・最適化事業

⑤地方自治体向けスマートケミカルサイクル構築/運用支援事業

このように検討を進め、自社の状況(リソースやミッションなど)と照らし合わせることで、インパクトやシナジー・事業の適合性を検討していくことが可能です。

必要があれば、検討が進むごとに、疑問点を今回ご紹介したFLASH Opinionインタビューを用いて壁打ち・検討し、筋の良いアイデアを絞り込み、事業仮説を作っていきましょう。

CASE1:事業機会探索 (どこに焦点を当てるべきかわからない)のまとめは以下のとおりです。

実際にご紹介した流れで調査を行う際のポイントを2つご紹介します。

1つは、はじめに広い切り口でクイックに事業機会となりそうな市場の機会と課題を、多数の方から得るということ。
もう1つは、自社のアセットは最初に整理しておくものの初期の機会探索においては気にしすぎないということです。

同じテーマのエキスパートの方々で、共通した見解になる部分もあれば、立場や業種によって多様な回答を得られる部分もあります。

なるべく多角的な知見を収集することで、知りたい切り口と適合した知見や、発見に満ちたリサーチを行うことができます。思わぬ機会や課題を発見することもあるでしょう。

そのためにも、機会探索の初期フェーズでは、広い視点で知見を収集することがおすすめです。

リサーチ実践解説:知りたい情報が「どこにもない」を突破する

次に、知りたい情報が「どこにもない」状況をみていきましょう。

こうした状況は、例えばニッチな市場や特定のセグメントでの市場規模推定において、頻繁に発生します。

今回は、市場規模算定において「多少なりとも根拠がある変数を仮定できない」という課題を想定し、知見活用リサーチの実例とともにその解決方法を解説します。

テーマは、プラスチック関連市場の中での、カーボンニュートラル素材の市場規模です。

進め方としては、まずデスクトップリサーチを用いて、市場全体の規模感をとらえ、それから(前回の記事でも用いた)FLASH Opinion を活用した知見活用リサーチを、細かい変数の確からしさを調査・検証するために、行っていきます。

(今回のデスクトップリサーチでは、効率よく網羅的な情報収集を行うために SPEEDAを利用しました)

代表的な市場規模算出の手法には以下のようなものがありますが、その中でも今回は「トップダウンアプローチ」を採用し、サイズの大きい市場規模を把握し、その構成要素の比率を掛け合わせることで、分割し、自分の欲しい市場規模を算出していきます。

この手法は、新興市場やニッチ市場など、情報がない市場規模に対して、簡易的にあたりをつけていくときに有用です。

はじめにSPEEDAを使い、デスクトップリサーチでプラスチック関連の市場構造を把握しました。

この調査でわかったことは、市場構造と、各サイズの大きい市場の規模です。

そして、重要な「わからない」「存在しない」ことがわかった点としては、以下の2点です。

  • 【狙うべきターゲット市場】エンドユーザー側のどの市場をターゲットとして、事業アイデアの絞り込みや精緻化を行っていけば良いか?

  • 【存在しない情報】「エンドユーザー側の用途別プラスチック関連市場において、どの程度カーボンニュートラル素材に転換するか?

それでは、次にこれらの「ない」情報を、知見活用リサーチで見出し、前に進めていきましょう。

【補足メモ】
ちなみに、用途別エンドユーザー側の現在の市場規模もデータが存在しないが、このような場合には、以下の方法で試算します。

エンドユーザー業界内のプラスチック購買金額=エンドユーザー業界全体市場規模×プラスチック加工品購買シェア(上位メーカーにおけるプラスチック加工品購買の売上比を適用)

※売上比の試算においては、エンドユーザー業界内の購買担当者(現職/OB)またはプラスチック加工品提供事業者へのインタビューを実施

複数のエキスパートから知見を集める/情報整理のポイント

FLASH Opinionを活用し、以下の質問をエキスパートに問いかけました。

24時間で6名から3,200字の回答

質問におけるポイントは以下のとおりです。

①どのエンドユーザー業界が有望かわからないため、CN素材への置き換えが有力視される業界の列挙をリクエスト

②この段階では、複数業界に絞れれば良いため、対象者をエンドユーザー側ではなく、川上の素材メーカーや加工品メーカー側とする

③ない数字(正確な算出が難しい数字)に関しては、おおよその比率をエキスパートに経験ベースで伺うことで裏付け=エビデンスとする

今回のリサーチでは、カーボンニュートラル(CN)素材への置き換えが有力視される業界と、その業界における今後の素材移行比率の見立ての獲得を目的としています。

結果、質問から24時間後に、6名から、2,100字の回答を収集できました。

集めた回答を整理すると、以下のようなことがわかりました。

有力な業界が見えてくるだけでなく、その背景や今後の見立てとセットで知見を獲得できるため、CASE1と同じく、このあと自社の状況と照らし合わせて、ターゲット市場の絞り込みや事業の仮説を考える際や、社内での合意形成や意思決定を進める際にも、大きな材料となり得ます。

ここまででわかったことから、市場規模の試算手法を使えば、知りたい情報が「どこにもない」の壁を突破し、リサーチや仮説を前に進めることができるはずです。

CASE2:市場規模推計 (どこにも情報がない)のまとめは以下のとおりです。

デスク調査では、情報が存在する大きな市場規模を調べることができます。

しかし、ニッチ領域や新興市場など、セグメントを絞った本当に知りたい市場の規模は出てこない場合が多いです。

そこで、デスク調査で得た大きな市場規模に、どのような変数を加えて、知りたい市場の規模を算出するかを定めましょう。その上で、どこにも情報がない変数を、エキスパートの知見を活用して仮定していきます。

今回利用したFLASH Opinionでは、エキスパートによる市場規模の予想値や、推計ロジックや、シェア比率の知見、5年以内の成長率見込み、考慮すべき成長トレンドやリスクといった知見を得ることができました。

また、今回のように市場規模推計のリサーチを進める上で、次に進む際、推計の確からしさを高めるためのポイントは次の2点です。

1つは、複数のアプローチを用いて、大きなずれがないか確認すること。

もう1つは、エキスパートの知見も踏まえ推計した市場規模を、最後にエキスパートに添削してもらうことです。

さいごに

知りたいことについて豊富な知識と経験をもつエキスパートの知見を活用することで、

・情報が玉石混交に存在し、「どこに焦点を当てて調べるべきかわからない」
・調べても調べても「どこにも情報がない」

という2つの見えない壁を突破し、事業づくりを前に進めることができました。

今回、実際にリサーチを行った機会探索と市場規模推計の他にも、業界トレンド調査、 参入障壁の洗い出し、 顧客の真の課題のヒアリングや、先行事例とその示唆や解釈の収集など、さまざまなシーンで、エキスパートの知見は皆様の事業づくりを推進させる大きな助けになるはずです。

今回の実践リサーチでも活用した、私たちミーミルが提供する、SPEEDA EXPERT RESEARCH では、事業づくりのお悩みに、みなさま一人ひとりに最適な調査手法とエキスパートをご提案し、知見活用リサーチでサポートさせていただいています。

今回ご紹介した見えない壁のように、何から手をつければいいかが判然としない状況は起こりやすく、限られたリソースの中、自分たちではなかなか突破口を見つけ出せないことがあります。

具体的な調査事項が固まる前段階のお悩みでも、ぜひお気軽にご相談ください。

【参考資料】エキスパートネットワークサービスと他の調査手法の違いを解説

「SPEEDA EXPERT RESEARCH」は、 ビジネスの「知りたい・わからない」ことを、確かな経験をもつ最適なエキスパートから知見を獲得できるサービスです。変化の激しい時代の中、新たな事業開発や経営計画は未知で不確実な事柄を絶えず調査する必要があります。

調査手法のひとつとして、なぜいま外部知見の活用が求められているか、資料としてまとめています。ぜひご活用ください。

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