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#新規事業開発 2023/8/10更新

事業づくりの「見えない壁」を突破する Part3 専門家の見解を用いた新規事業の機会探索

Part3 専門家の見解を用いた新規事業の機会探索 Part3 専門家の見解を用いた新規事業の機会探索

これまでの記事では、事業づくりで誰もが直面するさまざまな壁に関して、Part1ではその原因となる2つの「見えない壁」の正体を、Part2では1つ目の壁である事業機会が「どこにあるかわからない」を突破するリサーチ方法を紹介してきました。

Part3では、更にデスクトップリサーチでは見えてこない、イマの課題や、具体的な機会の解像度を上げるエキスパート知見の活用方法ついて解説していきます

Part1:事業づくりを前に進める!6つの「わからない」を解剖する 
Part2:事業機会が「どこにあるかわからない」を突破する 
Part3:専門家の知見を用いた新規事業の機会探索 ← 本編はここ
Part4:専門家の声を意思決定に活かす方法
Part5:計画策定のためのターゲット市場の市場規模推計

前回までのまとめ

はじめに、実際にリサーチを行っている想定シーンのおさらいです。

【置かれている状況】

今年4月から中計のコアである新規事業創出を任された若手の中川。

長年、リサイクルにおける流通の効率化に従事してきたが、外部環境変化のなかで事業成長を図るには、非連続な成長を生み出すことは必至。

役員からは、「昨今注目されているケミカルリサイクル、素材のサーキュラーエコノミーのバリューチェーン全体から新たな事業を考えよ」と言われたものの・・・

どこに事業機会があり、その中でもどこにインパクトがあるかまったくわからない状況。

果たして、中川は会社の命運を握る新規事業を生み出すことはできるのか。

【実際に調査する2つのケース】
CASE1:新規事業の機会探索 (素材・化学業界を想定) ←今回はこちらを解説します。
CASE2:計画策定のためのターゲット市場の市場規模推定 

Part3では現場の「イマ」の課題や状況に精通する業界エキスパートの知見を活用したリサーチ方法を実践解説していきます。

STEP4:エキスパートの見解を用いた新規事業の機会探索

知人や紹介を通して地道に信頼できるエキスパートを探し出し、その業界について詳しく聞くこともできますが、今回はSPEEDAの機能であるEXPERT RESEARCHを使い、一気に立場の異なる複数のエキスパートから幅広く見解を収集します。

【EXPERT RESEACHとは】

素材 / 化学メーカーの技術職や事業開発職、サステナビリティ関連の研究者 / コンサルタントなど、様々な分野の専門家に直接質問をし、幅広い回答・アドバイスを得られるサービスです。

  • 【FLASH Opinion】SPEEDA上から質問を行うと、5名以上の関連エキスパートから24時間以内に回答を集めることができるサービス。
  • 【EXPERT Interview】条件に合うエキスパートに60分のインタビューを実施できるサービス。今回ご紹介するように、FLASH Opinionで特に興味深い回答をされた方に深掘りのインタビューを行うことがSPEEDA上で可能。

FLASH Opinion実践:新規事業の機会探索

実際にFLASH Opinionを利用して、以下の質問を投げかけてみました。

※対象エキスパート:素材/化学メーカーの技術職や事業開発職、サステナビリティ関連の研究者/コンサルタントなど

この質問におけるポイントは以下のとおりです。

①SPEEDAなどを活用したデスクトップリサーチで簡単に業界構造を把握し、事業機会や業界/顧客課題を単刀直入に聞くことができます。(難しく考えたり、遠慮しなくて大丈夫です。)

②切り口としては、「バリューチェーン/プロセス」「他業界の同テーマ」「他業界の同機能(営業/マーケなど)」「技術/シーズ起点であれば、顧客側に立った便益での問いかけ」など幅広く聞きます。

③対象は「特定業界/領域のエキスパート」と「コンサルタントやアカデミックなどの幅広く支援しているエキスパート」の両方から回答を得ることをおすすめします。

FLASH Opinionで集めた知見の簡単な「眺め方」

今回はFLASH Opinionで質問した24時間後に、6名のエキスパートから計3,200字の回答が集まりました。

はじめに、回答から知りたい「事業機会」にあたる部分を抜き出します。

この回答から、今回明らかにしたい内容に則して「メーカーの技術革新以外での事業機会」として、次のことを見出すことができます。

❶製造業の中でも、サプライチェーンの中で素材調達部分の成熟度が他業界よりも劣っている業界は、戦略構築やSCMに事業機会がある可能性。

❷川上の素材メーカーと協業し、自社のリサイクル流通網と最適化ノウハウを掛け合わせることで素材提供のバリューチェーンをアップデートできる可能性。

石油由来と比較した際の価格上昇に対するエンドユーザーの許容度は重要論点。炭素税のような法規制以外に何か深掘りできるところはあるか?品質維持に関してもメーカーとして具体的にどのように解決しようと考えているのか?そこに大きな事業機会がありそう。

❹業界としては、金属スクラップ再生、PET/プラ→特に用途先市場として食品や建設、自動車、家電、劣後するが電池関連(特にリチウムなどの再生材活用)などがありそう。

❺欧州の先進事例をベースに、国内の法規制の動向を予測しつつ、埋まらない従来素材との価格差を価値に変えるブランディング/マーケティングにも可能性はあるか。

❻一方で、植物由来原料がメジャーになった際の大規模伐採が本末転倒な事態に陥る可能性。コスト削減のためのアジア・アフリカからの環境を無視した調達など、元原料の調達やそこの環境整備、トレーディングにおける事業機会もあるか。

このように、回答を眺めながら、欲しかった情報や関心のある情報に、少しずつ焦点を合わせていきます。

ここまでのリサーチで、事業機会の可能性や市場の概観が見えてきました。「どこに焦点を当てて調べるべきかわからない」状態が一歩進んだと思います。

さらに事業機会を絞り込み、深掘りするために、Part4では回答いただいたエキスパートの中から、1名の方にインタビューを行っていきます。