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#新規事業開発 2023/11/20更新

事業づくりの「見えない壁」を突破する Part4 専門家の声を意思決定に活かす方法

Part4  専門家の声を意思決定に活かす方法 Part4  専門家の声を意思決定に活かす方法

これまでの記事では、事業づくりで誰もが直面するさまざまな壁に関して、Part1ではその原因となる2つの「見えない壁」の正体を、Part2では1つ目の壁である事業機会が「どこにあるかわからない」を突破するリサーチ方法を、Part3では、更にデスクトップリサーチでは見えてこない、イマの課題や、具体的な機会の解像度を上げるエキスパート知見の活用方法を紹介してきました。

Part1:事業づくりを前に進める!6つの「わからない」を解剖する 
Part2:事業機会が「どこにあるかわからない」を突破する 
Part3:専門家の知見を用いた新規事業の機会探索
Part4:専門家の声を意思決定に活かす方法 ← 本編はここ
Part5:計画策定のためのターゲット市場の市場規模推計

前回までのまとめ

はじめに、実際にリサーチを行っている想定シーンのおさらいです。

【置かれている状況】

今年4月から中計のコアである新規事業創出を任された若手の中川。

長年、リサイクルにおける流通の効率化に従事してきたが、外部環境変化のなかで事業成長を図るには、非連続な成長を生み出すことは必至。

役員からは、「昨今注目されているケミカルリサイクル、素材のサーキュラーエコノミーのバリューチェーン全体から新たな事業を考えよ」と言われたものの・・・

どこに事業機会があり、その中でもどこにインパクトがあるかまったくわからない状況。

果たして、中川は会社の命運を握る新規事業を生み出すことはできるのか。

【実際に調査する2つのケース】
CASE1:新規事業の機会探索 (素材・化学業界を想定) ←今回はこちらを解説します。
CASE2:計画策定のためのターゲット市場の市場規模推定

Part4では、現場の「イマ」の課題や状況に精通する業界エキスパートから、インタビューで生の声を聴き、その知見を意思決定に活かす方法を実践解説していきます。

EXPERT Interview実践:新規事業の機会探索

以下が実際に行ったインタビューの質問概要です。

インタビューのポイントは、次の通りです。
これらは、異なるテーマのインタビューでも応用が可能なポイントです。

  • 多様な業界での可能性から、最も具体的かつ複数の回答があった化学/素材の川上側でインタビュー対象者を選定することで、用途先の業界を横断した事業機会を深掘りできると考えた。
  • 深掘りしたい点についてはあえて直接的かつ解釈の余地がある緩い質問を設定し、その回答から深掘りしていくことを想定する。 ※無論、事前にSPEEDAなどにて先進事例や類似事例がないか確認して臨んだ。
  • 川上側が素材開発という本丸以外でどのようなところに目を向けているかを中心に聞くことで、サーキュラーエコノミー全体のボトルネックやインパクトが大きいところを探索することを心がけた。

また、インタビュー対象者の選定や質問の準備を行うことで、効果的なインタビューを行うことができます。
今回は30分*という短い時間で、以下のように期待以上の知見を獲得できました。

*EXPERT Interviewは通常60分のインタビューが行えます。

さて、インタビューを終えたら、その内容を整理して眺めてみましょう。
整理するためにもメモを取ったり、エキスパートの許可を得て録画・録音を行うなどの記録を必ず残しておきましょう。

質問ごとに回答を分類すると、次の5つの知見が抽出できました。

①用途別市場ごとに、川上から川下企業のそれぞれまたは横断で、最終消費者が選好する機能価値の探索/情緒価値をベースとしたマーケティング支援

②ブロックチェーンを活用した用途別エンドユーザー企業側の市場におけるトレーサビリティとバリューチェーンの効率化事業

③「カスケード的ワンランク・ダウンサイドサイクル」の需要創造マッチング事業。さまざまな用途別市場ごとに、どの加工品からどの製品の部材に転換させるかをエンドユーザー企業のニーズと、素材メーカーの技術ケイパビリティを把握した上で最適なマッチングを行う。

④素材メーカー/加工メーカーと協業した、希少素材に特化した回収プロセスの効率化・最適化事業

⑤地方自治体向けスマートケミカルサイクル構築/運用支援事業

このように検討を進め、自社の状況(リソースやミッションなど)と照らし合わせることで、インパクトやシナジー・事業の適合性を検討していくことが可能です。

必要があれば、検討が進むごとに、疑問点を壁打ち・検討し、筋の良いアイデアを絞り込み、事業仮説を作っていくことも可能です。

CASE1:事業機会探索 (どこに焦点を当てるべきかわからない)のまとめは以下のとおりです。

実際にご紹介した流れで調査を行う際のポイントを2つご紹介します。

1つは、はじめに広い切り口でクイックに事業機会となりそうな市場の機会と課題を、多数の方から得るということ。
もう1つは、自社のアセットは最初に整理しておくものの初期の機会探索においては気にしすぎないということです。

ここまでで発見した事業機会は、自社のケイパビリティやリソースといった要素を鑑みて絞り込んでいく必要があります。しかし、それまでのリサーチにおいては「わからない」で立ち止まることなく、スピードを持って質の高い機会や課題にアクセスできたと思います。

最終回となるPart5は、知りたい情報が「どこにもない」状態の乗り越え方を解説します。
これまで解説したデスクトップリサーチとエキスパートリサーチを組み合わせて、効率よく情報を整理し、前に進んでいく方法を解説します。